2014年3月5日水曜日

続・iTunes Store と Amazon MP3 の音質比較

楽のダウンロード販売としては現状で最も品揃えが良く、利用もしやすいと思われる iTunes Store と Amazon MP3 の音質を、 CD と比較 してみます。

前に「 iTunes Store と Amazon MP3 の音質比較 」と題して、それぞれから同じ楽曲を購入して比較しました。もともとは CD が手に入らないので仕方なしに、少しでも音質が良い方を選ぼうという話でしたが、やはり CD との差が気になります。このたび、ようやく CD を購入できる目処がついたので、早速購入してみました。

入したのは、もちろん前回と同じ、 Misth のアルバム "Rise of a New Day" です。前回も紹介しましたが、お気に入りなのでもう一度。

CD を購入したと書きましたが、実際には FLAC のダウンロード販売 です。方々探しまわって、ノルウェーの音楽ダウンロード販売サイト Klicktrack Music Store で購入できるのを見つけました。

き道に逸れて Klicktrack を紹介しておくと、 CD や CD-R も販売していますが、多くの商品がデジタルコンテンツで、MP3 (320kbps) と FLAC (44.1kHz/16bit) が選べます。再ダウンロード回数に制限はあるようですが、いったんダウンロードしたファイルはコピーやバックアップの数・回数・方法には制限がないようです。ユーザ登録は E-mail アドレスとパスワード、居住国だけなので簡単です。決済方法は VISA か Master Card 又は PayPal ですが、 Vプリカ で決済できました。

回は FLAC を選び、価格はアルバム全体で 12.00 USD でした(1曲単位だと 1.5 USD)。 あれ? ロスレスなのに iTunes Store の AAC より安くね? 明細を見ると、為替手数料込み1255円だったようです。決済が終わると、すぐにダウンロードを開始できます。1曲ずつダウンロードすることも、アルバム1枚をまとめてダウンロードすることもでき、その場合は Zip 形式で圧縮されます。今回は約 470MB で、ダウンロードに2時間弱かかりました。

念ながら、 FLAC のままでは iTunes での管理ができないので、バックアップをとったあと、 Apple Lossless に変換して iTunes に取り込みます。当たり前ですが、ロスレスからロスレスへの変換なので音質は変わりません。

1. ファイルの情報

今回購入した中で、比較対象の "Rise of a New Day" のファイル情報です。

データ量は、47,109,818バイトでした。前回の AAC や MP3 が 13〜14MB だったのと比べると、さすがに大きいですね。 WAVE に変換すると 66.8MB ほどなので、圧縮率は 30% 程度です。

2. スペクトラムとスペクトログラム

まず、前回の比較で結果の良かった iTunes Store の AAC を見てみましょう。

能書きは後にして、今回の FLAC の結果はこの通りです。

これをどう見るかですが、
  1.  波形図(上段)が若干違いますが、これは縮尺を間違えたのが原因のようです(よく見ると Sacle: Linear の右のダイヤルの位置が微妙にズレています)。
  2. スペクトラム(中段)だけ見比べると、一見して違いは分かりません。前回「4〜6kHz 付近で一段下がっているのは圧縮の影響ではないか」と書きましたが、どうやら制作段階からこのような周波数特性になっていたようです。
  3. スペクトログラム(下段)は違いが見て取れます。 iTunes Store の AAC の方はよく見ると最上部に「歯抜け」の部分があって、細かな櫛笥状になっていますが、 FLAC の方はみっちりと詰まっていて欠けがありません。全体的な色の濃さ、特に上半分(10kHz 以上)の密度感も高いように見えます。
これらを総合すると、
  1. 前回比較した iTunes Store の AAC も、 Amazon MP3 も、4〜6kHz 付近であからさまな間引きをしていた訳ではないようです。
  2. Amazon MP3 は 16〜18kHz 付近を境にバッサリ高音を切り落として、その分で浮いたビットレートを中音域に割り当てて音質を確保する方向性のようです。
  3. iTunes Store の AAC は、できるだけ高音域も残して、中音域も含めて満遍なく間引くことで音質を確保する方向性のようです。

3. 音を聞いてみる

ここでは今回の FLAC だけでなく、前回の iTunes Store の AACAmazon MP3 も交えて比較してみます。

FLAC
CD 相当のクオリティなので、これを基準にします。最近のポピュラー音楽のご多分に漏れず、ダイナミックレンジを圧縮した音ですが、音の広がり感や色彩感は悪くありません。

iTunes Store AAC
FLAC を聞いた後だとさすがに分が悪いですが、出だしの数秒だけでも シンバルの雰囲気が失われている のが分かります。特に 余韻が不自然 で、 全体的に細い というか痩せこけたような印象になります。また、重心の高い、 腰が浮いたような音 です。ボーカルのハイトーンなどは、 喉を絞めて無理やり声を絞り出したような窮屈さ を感じます。前回「霞がかかったようなモヤモヤ感がある」と書きましたが、全体的に 一歩下がったような感じ で、いわゆる「前に出ない音」です。 箱庭的 とも言えます。もっとも、全体としての雰囲気は維持されていると言って良いでしょう。そういう意味では違和感の少ない音です。

Amazon MP3
iTunes Store AAC と比べて、さらに辛くなります。まず、シンバルの 余韻があからさまにちょん切れている のが耳につきます。 全体的に色彩感がなく、伸びやかさもありません が、不思議とボーカルは嫌味が少ない印象です。音が左右に分離して、センターが薄く感じます。分離が良いというよりは、 空中分解 という表現が当てはまります。いかにも「左右のスピーカーから音が出てます」といった鳴り方で、音場感がありません。前回「メリハリのある音」と書きましたが、 iTunes Store AAC に比べると前に出てくる感じはあります。「 雑だけど分かりやすい音 」という表現が当てはまるでしょう。

おそらく、単体で聞いたときには、 Amazon MP3 の方が高音質だと感じる人も少なくないと思います。刺々しくて雑な音ですが、その分「音の頭」は捉えやすいので、リズム感やフレーズ感は分かりやすいと思います。

反対に、音を「音のお尻」で捉える人には、 iTunes Store AAC の方が自然に感じられるでしょう。また、こちらの方が Amazon MP3 よりは色彩感があり、荒さも見えにくい印象です。

4. まとめ

  • AAC の iTunes Store より、ロスレスのダウンロード販売の方が安い場合がある。プリペイドのクレジットカードならセキュリティ面でも安心で、手続も簡単なので、よく探してから買った方が良い。
  • iTunes Store や Amazon が圧縮時に「せこい」間引き方をしている訳ではないらしい。
  • 視覚的には iTunes Store の方が高域まで伸びているが、 CD 相当のクオリティを基準に比較すると Amazom MP3 ともども一長一短ある。

2 件のコメント:

noonkoon DJ さんのコメント...

興味深かったので、twitterにリンク貼らせていただきました。 問題ありましたら、おっしゃってください。 djnoonkoonというアカウントです

S'bhuth さんのコメント...

お返事が遅くなりました。
ご紹介いただき、ありがとうございます。拙い内容ですが、これからも少しずつ調べていこうと思っています。