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【MANGAの時間】生きる意味に気づく奇跡の本…「死んで生き返りましたれぽ」

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【MANGAの時間】
生きる意味に気づく奇跡の本…「死んで生き返りましたれぽ」

『死んで生き返りましたれぽ』(C)村上竹尾/双葉社

 マンガというのは、人がめったにしない体験や、非常に特殊な知覚のあり方を、他の人にも伝わるように描くということでは突出して優れたメディアなのではないかと思う。どうしても「マンガ」でなくては描けない表現というのがあるのだ。

 ウェブで連載されていたとき、550万を超えるアクセスがあったという、村上竹尾『死んで生き返りましたれぽ』を読んで、強くそう思った。

 これは自宅のトイレで倒れているところを発見され、文字通りいったん心肺停止しながらも蘇生(そせい)した作者の体験の記録である。だが、臨死体験とかそんな単純な話ではない。

 扉をめくると、まず何ページも、作者の2つの目と、涙と、ぼんやりとした人影と、時に口、そしてその人影が話すいくつかの言葉だけが続く。じつは、この作品ほぼ全編にわたってそうだといっていい。極限まで切り詰められた表現。

 それは、作者がそれしか認識できないからである。その中で時に、人に持ち上げられた自分の手が信じられないくらい重かったり、ある知覚だけが印象的にフォーカスされる。これによって読者は、作者の身体の感覚を共有していくのだ。

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