(2014年12月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャは大統領を選出できず、憲法の規定に沿って議会が解散されることになった(写真は12月29日の議員投票に出席したアントニス・サマラス首相)〔AFPBB News〕
ユーロ危機が再燃している。ギリシャで来月実施されることになった総選挙と、恐らくそこで見られる極左政党の急進左派連合(SYRIZA)の勝利に、政治家と投資家は怯えることになるだろう。
そしてデフォルト(債務不履行)から銀行取り付け、救済策、社会不安、下手をすればギリシャのユーロ圏離脱にもつながりかねない恐ろしい展開について、憂鬱な議論を再び続けることになるのだろう。
ユーロ危機は基本的に終結したと市場が思っていた年の最後になって今回の危機が勃発するというこの流れは、何となくしっくりくる。
ギリシャ情勢が物語る市場の見方の甘さ
ユーロを救うためには「何でもやる」という欧州中央銀行(ECB)の有名な約束によりユーロ崩壊のリスクは取り除かれたとの見方が市場には広まっており、それを反映して欧州の債務国の借り入れコストは急低下していた。
ギリシャの情勢が今まさに物語っているように、この見方は甘かった。この見方の最も弱い環は、欧州の政治だった。具体的に言うなら、有権者が経済の緊縮政策に反発し、ユーロを維持する方法についての欧州の合意を拒絶する「反システム」政党に1票を投じるリスクもそうだった。
もしこの合意が崩れれば、債務、救済、そして緊縮政策から成るデリケートな、それこそトランプの家のように脆い構造全体がぐらつき始める。ギリシャで今起こっているのはそういうことだ。
ユーロ危機はずっと、政治、市場、経済という3要素の相互作用を伴いながら進展してきた。事態が改善している時には、この3要素が好循環を作り出す可能性がある。有権者が主流派の政治家を選挙で選び、市場が落ち着きを取り戻して金利が低下し、実体経済も改善して政治の中心にいる人々の立場を強めるという好循環だ。
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