【北京=阿部哲也】中国の2大鉄道車両メーカー、中国南車集団と中国北車集団は30日、2015年中に合併すると正式発表した。地下鉄車両や高速鉄道で高い世界シェアを持ち、カナダ・ボンバルディアや独シーメンスなど欧米大手を圧倒する巨大メーカーが誕生する。国を挙げて海外進出を加速する狙いで、新興国開拓に力を入れる日本勢にとっても脅威となりそうだ。
南車が北車を吸収合併する。合併後の新社名は「中国軌道交通車両集団(中車集団)」とする案が有力だ。北車の株主に南車の株式を割り当てる計画で、15年春にも開く両社の株主総会を経て正式決定する。今回の統合は「対等合併」としており、合併新会社の幹部人事も当面「たすき掛け」が続く見通しだ。
2社は当初、10月中にも合併計画を公表するとしていた。しかし合併方式や新社名を巡り交渉が難航したもようで、計画発表は2カ月間後ずれした。高速鉄道などの輸出拡大を目指す中国の海外インフラ戦略がようやく本格始動することになる。香港や上海に上場する両社の株式も来年1月から取引を再開する見通しだ。
独SCIフェアケーアによると、合併新会社は地下鉄車両で世界シェアの約50%を占める最大手となる。事業規模も13年度の売上高合計で1951億元(約3兆7700億円)と、ボンバルディア、シーメンス、仏アルストムの「欧米鉄道ビッグ3」の鉄道部門の合計を上回る超巨大メーカーが生まれることになる。
「国内同業同士の競争による資源の浪費を避け、国際化を加速する」(南車)狙いだ。これまで2社は海外市場でも競合し、中国勢同士による受注価格の「たたき合い」で採算が悪化する悪循環が続いていた。今後は「オールチャイナ」として東南アジアや南米などで激しくなる日米欧大手との受注競争に挑む。
南車と北車の合併は、2つの点で日立製作所や川崎重工業といった日本勢にも脅威となりそうだ。第1が合併で、価格競争力が一段と高まる可能性が出てきたことだ。
10月下旬、中国北車が米マサチューセッツ湾交通局(MBTA)から合計284両の地下鉄車両を受注した。日本や欧州、韓国大手も参加する国際入札だったが、北車は日欧勢の約半額で落札したという。「合併新会社は研究開発や営業に資金を集中投入できるようになるため、世界中で強力なライバルとなりそうだ」(日本の鉄道車両大手)と懸念する声は多い。
第2の脅威が「オールチャイナ」を前面に押し出した営業攻勢を一段と強める可能性だ。
中国政府は15年末の創設を目指してアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導するが、合併新会社をその主要な受け皿に位置付けて海外インフラ需要を取り込みたい考え。すでにインドやタイ、南米など、日本企業も進出を狙う地域で「モノづくり」と「金融」の両面で営業攻勢を強めている。
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