学期 |
前期 |
時間 |
火3 |
担当教員 |
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授業形態 |
講義 |
学年・対象 |
3・4 |
授業のテーマ |
京大法学部での私の最後の講義になる特別講義「存在論と政治」は、「ハイデガーとその時代」という副題をもつ。この特別講義は、一貫して西洋における存在論と「政治的なもの」の関わり合いを主題としてきた。3年目の今年度は、はじめてハイデガーその人を主題として、法学部の学部講義としては不適切と思われるほど彼の思想を全面的に考察する。「ある」ということの意味への困惑を語るプラトン『ソピステス』の引用から開始される『存在と時間』は、現代存在論の興隆の嚆矢となったが、しかしながら、その「存在の問い」への解答は、プラトンから始まる伝統的な存在論とまったく異なる。伝統的な存在論が、「ある」と「ない」を二項対立的に設定した上で、「ある」の根拠を解明するのに対して、ハイデガーのそれは「あり且つない」という両義性の観方/考え方を提示する。今日、この両義性の思想が脚光を浴びているのは、それが時代の雰囲気を見事に表わしているからであろう。そして、それは政治学のパラダイム変換をも惹き起こしている。ハイデガーの思想を通して現代に生きる我々自身を再考すること、それがこの講義の最終的目的である。但し、この講義は、ハイデガー哲学の解説でもその現代的意義の探求でもなく、あくまでも精神史の立場からハイデガーの思想を歴史的文脈の中に位置づけ、時代の雰囲気に光を当てることが本来の目的である。ファシズムの時代から現代のポストモダニズムまで、常に時代の渦中にいた彼の思想が如何に時代と切り結んでいたのかを解明することを目指す。従って、「現代に生きる我々自身を再考すること」は、聴講生諸君が試みることである。
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シラバスID |
law_921 |
レベル |
Undergraduate |
授業計画 |
具体的には、講義は次のように進められる。
序-1精神史とは何か? 2プラトンの存在論
① ハイデガーへのニーチェの影響
② ⅰ)初期ハイデガーにおける「政治的なもの」
ⅱ)『存在と時間』における両義性の諸相
ⅲ)30年代前半の政治的関与
ⅳ)「ケーレ」以降の言語論・芸術論・技術論
③ ハイデガーのポストモダニズムへの影響
結-「存在の耐えられない軽さ」(クンデラ)?!
聴講するにあたって政治思想史の予備知識を必要としない。極めて難解で抽象的な哲学的議論が、実は誰でも日常生活の中で覚える卑近な体験に由来していることを理解することが重要である。特別講義であるから、必要な単位を既に取得した4回生以上の諸君に気楽に聴講してもらえばよい。 |