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ぼっち転生記 作者:ファースト

復活①

   ◆◆◆

「メリークリスマスっ!」
「うん、メリークリスマス♪」

 エターナル帝国では、子供たちがはしゃいでいやがったのです。
 なぜなら、今日は12月24日。
 “クリスマス”の前日だからなのです。
 ”クリスマス・イブ”でいやがるのです。
 だから、みんな、浮かれまくりなのです。
 アルのお父様が、”クリスマスは”、”楽しい日”だと、教えて下さりましたので。

「お父様が伝えた“クリスマス”、みんなに浸透しているですね」

 アルは、旧・王立公園、現・帝立公園のベンチで、一緒に座っているお父様に声をかけました。
 ちなみに、精霊使いであるお父様の《姿隠し》により、お父様も私も、姿は見えなくなっていたりもしますのです。

「ん」

 そばでアッシュお父様の声が聞えました。
 姿は見えませんけど、きっと頷いているはずなのです。

「でもでもお父様。私、気になることがあるのですよ」
「なんだいアル」

 アルの頭にお父様がポンッと手を置かれました。
 姿は見えなくとも、感触でわかるのです。
 “なでなで”を期待しまくったのですが、残念ながら、“なでなで”はなかったのです。
 残念至極なのです。

「“クリスマス”は『ザ・キリスト』の生まれやがった日にすぎないのでしょ?」
「あ、あぁ、まぁな」
「私たち『ザ・キリスト』の信者でもないのに、どうして、祝うのですか? よくわからねーです」
「アル。そこ(・・)を気にしてはいけない」
「でもでも」
「ん~。まぁ、アレだ…………」

 お父様は、信者でなくても多くの人が祝う事で、クリスマスとその数日は、 ”楽しい日” ・ “優しい日” になるのだと、説明してくれました。
 なんとなく、わかったです。

「そういえば。お父様がお話しをしてくださった星新一先生のショートショートでも、クリスマスを祝う事で滅亡の危機から救われる話がありましたですよね?」
「うん。でも、良く覚えているなアル」
「お父様の“お話”は大好きですけど、特に星新一先生のショートショートは、アル、大好きですから☆」

 ニパッと私は、笑顔を浮かべたのです。

「私もアッシュ君が“お話”してくれる星新一先生のショートショートは大好きなの! アルたん、気が合うね! ニコニコ♪ニパァ☆」

 風精霊シルフのシィルちゃんが、とっても明るい声で喋りました。
 精霊なので、普段は姿も見えないし、声も聞こえねーシィルちゃんでいやがりますけれど、最近、アルは風精霊シルフシィルちゃんの声が、たま~にだけど、聞こえるのですよ。
 アルには、夢を操るだけでなく、精霊使いとしての才能も眠っていたようです。

 フッ、我ながら自分の才能が恐ろしいのです。

 あ、でも、お父様のお陰かもしれないですけど。
 以前、お母様が『アッシュ様には、ひょっとして、“周囲にいる者たちの精霊力を高めたり”、“精霊使いとしての才に目覚めさせる” 特異な・・・・があるかもしれないですわ』なんて、言ってましたし。
 大魔導師にして上位悪魔・ハイラミアであるお母様は、愛するお父様にたいして、ストーカー的活動だけでなく、いろんな“研究・調査”をしてやがりますです。

「それはそうと、アル。ちゃんと台本の台詞、覚えているか?」
「バッチリですお父様! アルにお任せですよっ」

 絵心のあるお父様は、奴隷牧場の子供たち向けに『絵本』や『紙芝居』を描いていたりもするのです。
 その絵本や紙芝居を、定期的にアルやお母様、それにアンジェラお姉さんやレミリアおばあ様、ウォルフの叔父様たちが朗読していたりもするのです。
 子供たちを喜ばせてやるためにも開催する『クリスマス会』の出し物でもあるのです。

(ちなみに、ルナお姉さんはナレーション役なのです。あの人は普段と同じく朗読でも、声に感情があまりこもっていないし、棒読み口調なのですが、それはそれで、ナレーション役としては、アリなのです) 

「紙芝居用に台詞は少ないとはいえ、本当に大丈夫か?」
「問題ありませんです! お父様が翻訳とイラストを描いた『紙芝居クリスマスキャロル』は、アルがみごと成功させてやりますですから!」

 子供たちを喜ばそうと、お父様が一生懸命、イラストを描いていたの、知っているです。
 だから、アルも一生懸命、台詞セリフ、覚えたですよ。

「アッシュ君は、『クリスマスキャロル』が好きなの。主人公の主人公は、エベネーザ・スクルージに共感もしているの。エベたん、物語初期はぼっちっぽいから☆ 」

 またまた風精霊シルフのシィルちゃんの声が聞えたのです。

「前世では、ず~~とクリぼっち(クリスマスぼっち)だったアッシュ君だけにね☆」
「………………前世でも、大切な家族ファミリーとクリスマスを俺は祝ったぞシィル」
「その家族ファミリーって、全員動物オール・ペットで、人間さんは、いなかったんだよね?」
「………まぁ……な…………」

   ◆◆◆

 ――夜。

 “聖夜”なのです。

 黒猫に似た悪魔種族・アルプを仮の姿としているアルは“闇のモノ”ですけれど、今夜だけは、聖なる存在にクラスチェンジしてやるのです。
 聖天使系悪魔アルの爆誕、いえ、聖誕なのです。
 堕天聖†アル、降臨なのですよ。

 それに、ここ数日は、良い子にしてやったのです。
 とっても良い子ちゃんにしていたのです。
 だって、イイ子にしてないと『サンタ・ザ・クロース』がプレゼントを持ってきてくれないってアッシュお父様が言ってましたから!
 それどころか、悪い子には――『サンタ・ザ・ブラック』がお仕置きにくるらしいのです。
 白かった髭を、子供たちの血に濡らし赤く染めた黒服のサンタ・ザ・ブラックが…………ガクガク、ブルブル。

 あ、あ、アルはイイ子だから、夜更かしせずに、もうおねむですっ!

  ◆◆◆

 深夜――目が覚めちゃったのです。

 アルはお父様の寝室・同じベッドで眠っていたのですけれど、なんだか、衣擦れの音がするのです。

 お父様、こんな深夜に服を着替えて、どこにいくのでしょうか?

 ?

 お父様?

「っ!!! だ、だ、だ、誰ですかテメーはですっ!!!!」

 び、び、び、ビックリしたのです!!!

 お父様の寝室に、見たことも無いオジサンがいたのですっ!

 それも、“超凶悪な顔”とメタボリックなお腹をした大柄なオジサンがっ!!

「やれやれ……見つかったか」

 確実に、ヒトを何人か殺ってきていそうな超凶悪犯みたいな顔で、ニタァァァと笑ってきたのです。

 ヒィィィ、こ、怖いよぉぉおぉっ!!!

 ま、ま、ま、まさか、まさか――『サンタ・ザ・ブラック』!?

 …………や……ヤラレル前にヤッテヤルですぅ!!!!

「《悪夢ナイトメア》」

 !

 き、効かないです!
 私が渾身の魔力で放った《悪夢ナイトメア》がっ!

 お、お父様のように、“夢の精霊”からも助力を受けられる力ある精霊使いならばともかく、『サンタ・ザ・ブラック』にも、まるで効かないなんて!

 や、ヤバいです。
 ヤバすぎなのです!

 こ、こ、このままでは、お父様がおっしゃっていたように『サンタ・ザ・ブラック』の袋にぶち込まれ、外国に叩き売られちゃうです!

 『サンタ・ザ・ブラック』が、アルを落ち着かせようとでもするかのように、両手をゆっくりとあげ――

「落ち着けアル。俺だ。アッシュだ」

 !?

「だ、だ、騙されねーですよ! 姿も声も、全然、お父様と違いやがるです!」
「ん。魔道具《変化ヘンゲ短杖ワンド》で、変身しているからな」
「へ、変身……《変化ヘンゲ短杖ワンド》……」

 アルは、信じられねーモノを見る目で、マジマジと、サンタ・ザ・ブラック――いえ、超極悪フェイスの中年オジサン(自称・お父様)を眺めたです。

「ホントなの! アッシュ君だよ☆」

 あ……風精霊シルフシィルちゃんの声が聞えやがったです。
 超極悪フェイスの中年オジサン(自称・お父様)の頭上から、シィルちゃんの声が聞えましたです。
 普段からよく、お父様の頭の上に乗っているらしいシィルちゃんの声が。

  ◆◆◆

「ほ、本当にお父様だったんですね」
「うむ」

 寝室の机の上に置いてあった《変化ヘンゲ短杖ワンド》で、元の姿に戻ったお父様が、コクッと頷いたあと――事情を説明してくれやがりましたです。

 奴隷牧場の眠っている子供たちの傍に『サンタ・ザ・クロース』の“代理人”として、お父様がプレゼントを置く予定だったようなのです。
 もし、子供たちが偶然起きてきて見つかっても、『サンタ・ザ・クロース』の格好をしていれば、夢を壊さないで済むとのこと。
 私は、お父様が『サンタ・ザ・クロース』からエターナル帝国領内での代理を任されたと聞いて――やっぱりお父様は凄いと思ったのです!

 流石ですお父様!

 サンタさんの代わりをする”なんて、なかなかできることじゃない”です!

 というか、誰にでもできることじゃないのですっ!

「《変化ヘンゲ短杖ワンド》のデパートリーに、恰幅の良い爺さんがあればよかったけどな。あいにく、この《変化ヘンゲ短杖ワンド》で変身できる種類のなかだと、似たような体型でサンタ服が似合うのは、この極悪面した中年男しかなかった」

 極悪中年男の姿に変身したお父様が、赤い色のサンタ服に着替えながら言いましたです。

「でもお父様、そのお顔では、子供たちにメッチャ泣かれると思うのです」
「大丈夫だ。ほら」

 あっ。

 モジャモジャの白い立派なヒゲ(付け髭)をして、帽子をかぶり、丸眼鏡を身につけたら、素顔がほとんど隠れやがりましたです。
 これなら、よほど間近で見られなければ、お顔が超怖いことに気付かれねーですねっ!

「せっかくだし、アル、お前もプレゼント配りをしてみるか?」
「えっ、いいのですかっ?」
「ああ、今からアルは、『サンタ・ザ・クロース』の代理人の助手だ」
「わぁい! やってやるですっ」

  ◆◆◆

 その夜、お父様のお手伝いとして、クリスマスプレゼントを子供たちに配りまくってやったのです!
 ちなみに、トナカイ役として、一角獣ユニコーンのジオ君が、赤い丸鼻をつけた状態で働かされていやがったです。

  ◆◆◆

 クリスマス当日の朝、子供たちは皆、すっごく喜んでいたですよっ!

 枕元にクリスマスプレゼントが置かれていましたからっ!

 それも、子供たちが欲しかったものがそれぞれ置かれていたのです。
 事前に、欲しい物のアンケートをとっていたようですけど、百人を超える子供たちが欲しがっていた物を“暗記”して、一つも間違えずに配れるなんて、お父様はやっぱり凄いのですっ!

 それから、お城で食べた超特大クリスマスケーキは、とっっっっっても美味しかったですよっ♪
 クリスマス・パーティということで、いろんな催し物やゲームもあり、すっごく、すっっっっごく、楽しかったです!

 お父様が、来年は、今年よりさらに楽しいクリスマスにすると、言っておりました。

 超楽しみです!
 期待大、なのですっ!

 私、お父様にこう言いましたのです。
「来年も再来年も、ずっと、ずっと、お父様と一緒にクリスマスを過ごしたいですっ!」
 お父様が、嬉しそうにしてくれましたので、私、とっっっっっっても幸せな気分になれました♪

  ◆◆◆

 ――お父様……ずっと……ずっと………一緒に……
 ――来年も……再来年も……
 ――一緒に……クリスマ……ス……を……

 子猫の姿に戻っていたアルは、混濁する意識の中、楽しかった思い出に浸っていた。

 それは、”死にゆく者が視た一瞬の思い出”であった。

 急速にアルの体温が下がり、そして――アルは息絶えた。

 敬愛し、世界で一番好きな“お父様”との思い出に浸りながら死ねれば、まだしも幸運だった。
 だが、アルは、完全に息絶える前に、気付いてしまった。

 自分が、死ぬこと――殺される――殺されつつある――ことを、

 ――お……父様……お父……様
 ――嫌……嫌……です……
 ――せ……めて……
 ――せめ……て……もう一度sあ
 ――もう一度……だけ……お……と……う…………
 ――……さ……………………………………………………

「神の名の下に…………駆除処分――完了」

 アルの心臓を抉り殺した男=《悪魔祓い師エクソシスト》が至福に包まれているかのような恍惚とした笑顔を浮かべた。
 だが、すぐにまたの無表情に戻った。

「では、これより――悪魔《解体作業》を開始する」

  ◆◆◆

 子猫姿で息絶えていたアルは、見るも無残な遺体に“解体”された

  ◆◆◆

 駆けつけたアッシュは、《悪魔祓い師エクソシスト》として最高位のAAAトリプルランクであった男を、骨まで焼き尽くし、灰化させ、そしてその灰を烈風で撒き散らす。
 アルの仇は討った。
 しかし、だからといって、死んだアルが戻ってくることはない。

 アッシュは――泣いた。
 アルの惨殺死体を前にボロボロと涙を零しつづけた。

 突如。

 アルの遺体が炎に包まれた。
 無残な遺体になっていたアルを黄金の焔が包みこんだのだ。
 そして、その金色の炎(焔)が不死鳥の形をとった。
 生命の大精霊であり、不死、そして復活をもたらす不死鳥フェニックスの姿に。

 呆然とするアッシュに、不死鳥フェニックスが話しかけてきた。
 声を出さず、脳に直接、【声】を届かれる【念話】だった。
 とても優しい【声音】でもあった。

【“フルき友”よ、希望を捨て絶望に呑みこまれてはいけません――愛しい人よ、希望を持ち続けることを――ですよ】

 涙を残したまま目を見開くアッシュに、不死鳥フェニックスは続ける。

【まだ絶望するような時間ではありません。《復活》の可能性はありえるのですから】

「……復……活……」

 アッシュが掠れるような声で言葉を繰り返した。

【そう、《復活》です。浄化と転生、そして不死と復活を司る不死鳥フェニックス。神鳥にして生命の精霊。その不死鳥フェニックスであるワタシの“力”を、『ワタシのフルき友』よ、貴方ならば、使えるはず】
「…………」
【ワタシが宿っていたことで、フルき友、貴方の魂や存在は生命の精霊・不死鳥フェニックスと“ちかしく”なっています。そして、貴方には精霊使いとして、類まれなる才能があります。その貴方なら、あるいは――」
次回更新予定は本日(12月28日)正午です

『ささやき - いのり - えいしょう - ねんじろ!』

――――――――――――

投稿してから、すでに半年ほど経っておりますし、仕方がないのかもしれませんが…………
更新のたびに…………ブックマークが…………かなり減ります…………
新規の方が登録してくださっているおかげか、数日で回復はするのですが――やはり、更新直後にどっとブックマークが減少するのは、数字としてわかるだけに、精神的にとてもキツイです。

心が折れそうになります。
もう必要とされていないのかと、執筆の手が止まってしまいそうにもなります。

これは、私以外の作家様に対してもそうなのですが――読者様には、できましたら、更新直後にその作品のブックマークを外すのは避けていただけると、非常に嬉しいです。
(人によるでしょうが)私も含めて多くの作家にとって、更新直後の大量ブックマーク外しは”非常にキツイ”と思いますので…………。
長い目で暖かく見守っていただければ、本当にありがたいです。
それが無理でも、更新直後ではなく、更新から日数を空けてから外していただければ、精神的ダメージはまだ少ないほうですので…………


 
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