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大学院学生の声(博士課程後期学生)

 

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 人文学専攻 人間文化学 (比較日本文化学)

陳 大陸さん

 もともと中国の大学で日本語を教えていた私は、広島大学に対する憧れとご縁がありまして、二年前に文学研究科博士課程後期に入学しました。

まず広島大学が私に与えた印象は、都会の雑音に誘惑されることなく研究に没頭できる環境と心身を癒すための校内施設が整っていることであり、また各学部にある学生支援室が生活面をしっかりとサポートしてくれることです。

これらの優れた基礎環境の下で、私は生まれ故郷ハルビン市を中心に中国黒龍江省における日本との係わりを研究しています。中国の最北部に位置する黒龍江省は、日本帝国主義の統治下に置かれ、制圧された時代もあれば、日本知識人の援助を受け入れたこともありました。いわば日本と特殊な関係で結ばれている地域である。

日中国交正常化40周年を契機に、黒龍江省を通して、未来を見つめながら過去を振り返り、現在も尚、両国民間にある蟠りを解くのが私自身の生涯の宿命だと感じています。

平和を象徴する広島でこのような研究ができることは、私にとって本当に光栄なことであると思います。
 
   
   
 人文学専攻 思想文化学 (哲学)

 

岩田 康弘さん

 

 私は学部・大学院とも広島大学西洋哲学研究室で諸外国語のテキストを正確に読むトレーニングを積んできました。学部・博士課程前期では主に、ドイツ観念論の哲学者ヘーゲルの『精神現象学』の文献学的研究を行い、博士課程後期からは現代の諸問題へと視野を広げて、生命・環境哲学にも取り組んでいます。とくに、博士課程後期二年目からは、日本学術振興会特別研究員として、「ドイツ応用倫理学の研究」という研究題目のもと、特色あるドイツの生命・環境哲学の研究を行っています。最近では、幾人かのドイツの研究者にならって、ヘーゲルの「和解」の哲学がもつ生命・環境哲学的ポテンシャルに関心を向けています。

現代の諸問題との「哲学的」取り組みにおいては、諸外国語で書かれた研究書や論文を正確に読解する技量はもちろん、伝統的な哲学・倫理学の専門的知識も不可欠です。これらの技量や知識は、やる気さえあれば、広島大学西洋哲学研究室で習得することができます。また、授業以外でも、大学院生のあいだで読書会や勉強会を行い、活発な議論を通じて知識の共有をはかっています。

2012年3月14日には、広島大学とドイツのミュンスター大学哲学部とのあいだで交流協定が結ばれました。本場ドイツで哲学をしっかりと学びたいという学部生・大学院生にはうってつけの制度です。努力はあたりまえの世界ですので、目の前のチャンスを逃さないことが研究者への一番の近道だと思います。

   
   

人文学専攻 歴史文化学 (日本史学)

 

菊池達也さん

 

私は、広島大学大学院文学研究科博士課程前期を修了して、同研究科博士課程後期に進学しました。

出身地である南九州の古代史に興味があったので、学部時代から日本古代史を専攻し、隼人と呼ばれていた古代南九州に住んでいた人々について研究してきました。
博士課程後期ではそれを発展させて、南九州だけではなく東北地方や南西諸島など、いわゆる「辺境」について研究していき、国家支配の展開を明らかにすることで、自分なりの古代日本像を提示していきたいと考えています。

大学院では、朝から晩まで研究漬けの毎日を過ごしています。博士課程前期では演習が多いのに対し、後期は自分の研究に費やす時間が多くなりました。自分のペースで計画して研究ができる一方で、結果が求められるため、自分を律して研究する必要があります。

本研究室は、蔵書数が多く、指導教員の先生も懇切丁寧に指導して下さるので、研究ができる体制が整っています。また、院生・学部生間も日頃から交流が多いので、楽しい研究生活が送れると思います。

歴史学を専門的に研究したい方、ぜひ一緒に研究しましょう!

   
   
 人文学専攻 日本・中国文学語学 (日本文学語学)

 

片桐 まい さん

 私は平安時代に編まれた和歌集について研究したいと思い、広島大学文学研究科博士課程に進学しました。ここで1つ、『古今和歌集』巻第五・秋歌下にある和歌をご紹介致します。

      仙宮にきくをわけて人のいたれるをよめる        素性法師 
273  ぬれてほすやまぢのきくのつゆのまにいつかちとせをわれはへにけむ

 これは寛平御時菊合において詠まれた歌で、人々は州浜を作り菊を植え、その菊を愛でつつ和歌を詠み合いました。素性法師はこの州浜の中にいる人物になりきって、「仙人の住む宮に来てほんの少しの間に、私は人間界での1000年をもうとっくに過ごしてしまったのだろうか」と詠んだのです。
ところで、この和歌が詠まれた寛平3年(891)は、今から1100年以上も昔です。素性法師の和歌は長い年月を経て、"いつの間にかとっくに1000年の時を超えて" しまいました。
1000年も昔のことを研究する、というのは、考えてみればとても不思議なことです。誰ひとり「残そう!」と思わなかったら、私達はそれらを手に取ることができなかったはずなのです。素性法師の和歌に限らず、1000年以上も昔の言葉を私たちが読み、味わい、研究の対象にもできるのは、数えきれないほど多くの人たちの努力によるものなのだと、しみじみ考えさせられます。

 本学にはそのような研究を可能にする豊富な資料があり、すばらしい先生方がそれを支えてくださいます。大学院の生活は刺激的で、とても充実しています。1000年以上も前のことを扱うために、多くの知識や手続きが必要であることを実感するなかで、研究に必要な力をつけ、納得のいく結果に繋げるべく悪戦苦闘する毎日です。そこで鍛えられた後の私の最終目標は、素性法師の和歌が経てきた1000年のように、日本古典文学が次の1000年を伝わっていく、その流れに加勢することです。

   
   
人文学専攻 欧米文学語学・言語学 (言語学)
 

 

松井真雪さん

 私は、特に、私たち人間が話すことばの音声に関心を持って研究をしてきました。
これまでの研究では、ロシア語の話しことばを対象として、音声を、言語の構造的な側面・物理的な側面・心理的な側面から考察してきました。より具体的には、中和と呼ばれる現象を、音声の音響分析結果や聞き取りの正誤分析結果に立脚して検討してきました。今後も、様々な学問分野からの知見を融合しながら、同現象を中心とした研究を進めていくつもりです。

本研究室での大学院生活は充実しています。
本研究室には、今年度、先生・院生・学部生を含め約30人が所属しています。そのうち大学院生は、私を含め3人から成っています。一言で「言語学専攻」と言っても、扱われる研究内容は多岐に渡っています。私のようにことばの音声面に関心を抱いている人もいれば、ことばの意味面を研究している人や、語の使われ方と社会の関係等を研究している人もいます。

年に数回研究室で開かれている研究発表会やゼミ合宿では、上述のような様々な研究分野からの発表や意見が飛び交います。それ以外にも、学生同士の自主勉強会や言語学的雑談も随時開かれています。

このような学問的刺激に溢れた環境は、研究生活を送る上で最高だと思います。

   
   
 人文学専攻 地表圏システム学 (考古学)

 

宮岡昌宣  さん

 

 私は、還暦を過ぎて考古学の勉強を始めた。会社勤めを終え、若き日に通った母校の文学部考古学コースに三年生として学士入学し、卒業と同時に広島大学大学院で学んでいる。広島大学大学院には、五十歳以上の熟年世代を対象に勉学と研究の道が開かれるフェニックス特別選抜が設けられている。私は、その制度によって入学の機会を得、現在文学研究科博士課程後期で考古学研究室に籍をおいている。

研究テーマは、「陶棺」である。陶棺は、古墳時代に使用された焼き物の棺である。その製作技法や形態的特徴などから編年と地域性を捉え、陶棺を使用した集団の動向、さらには当時の政治的社会的諸関係の一端に迫り、陶棺の歴史的意義を解明することを課題としている。学位取得にむけて博士学位請求論文の作成に、持てるすべてを注いでいるところである。考古学は、発掘現場や出土遺物を重視し、現場で考え、問題解決の糸口を探るという「現場第一」の姿勢において、かつて身をおいたビジネスの世界と、まさに相通ずる。現場に出向き、発掘現場や遺跡・遺物に直接接することに、何よりも喜びと生き甲斐を感じている。

広島大学考古学研究室は、「鉄」の考古学的研究、石灰岩地帯における石器時代研究、さらには西アジアの考古学的研究などの分野で、学界における重要な位置を占めている。同時に自由でオープンな学風は、多様な研究と人材を包み込んでいる。現役の歯科医、フランスからの留学生、中国留学経験者など多彩なメンバーと机を並べていることは、その象徴といえる。

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