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GPS捜査06年に通達 警察庁、監視の手順定める

警察庁がGPS端末を使った捜査の使用要件などを定め、各都道府県警あてに通達していた運用要領

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名古屋市の男性の車両に取り付けられていたGPS端末=男性の代理人弁護士提供(一部画像処理)

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 警察庁が二〇〇六年、位置情報を取得できる衛星利用測位システム(GPS)端末を、捜査対象者の車にひそかに設置して追跡するため、運用要領を作成し各都道府県警に通達していたことが、同庁の内部文書で分かった。こうした捜査手法は法規定がなく、実態は長年、不透明だった。今月、愛知県警が本紙取材に導入を認めて一端が明らかになったが、同庁によると既に全国の警察が組織的に運用しているといい、プライバシー侵害などを懸念する声が強まりそうだ。

 文書は〇六年六月三十日付の「移動追跡装置運用要領」。刑事局刑事企画課長名で各都道府県警に示された。GPS捜査の違法性を問う訴訟に関わる弁護士グループの情報公開請求で、開示された。

 要領は「取扱注意」と記され、警察が裁判所の令状を必要としない任意捜査で、GPS端末を使って捜査対象者の行動を監視する際の手順を定めている。

 使用要件は「犯罪の嫌疑、危険性の高さなどから、速やかな容疑者の検挙が求められ、他の捜査で追跡が困難」な場合とした。対象とする犯罪は七項目、設置場所は四項目を列挙しているが、開示文書ではいずれも黒塗りにされていた。

 使用時は、各警察本部の主管課長の事前承認が必要だとした。捜査担当者には毎日、運用状況を所属長へ報告する義務を課した。保秘の徹底も求めている。

 〇六年に愛媛県警の捜査情報がインターネット上に流出し、事件の参考人の車にGPS端末を設置していたことが明るみに出た。この問題の発覚後、警察庁が要領を作成したとみられる。今年十月には、愛知県警に無断設置されプライバシー権を侵害されたとして、名古屋市の男性会社員が県に損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。

 GPS端末の捜査使用をめぐっては、令状が必要な強制捜査として法的に位置付けるべきだとの指摘もあるが、議論は本格化していない。

◆長年の使用裏付け

 <日本刑法学会元理事長の大阪学院大・村井敏邦教授(刑事法)の話> 警察が長年にわたり、組織として秘密裏に使用してきたことを裏付ける資料だ。法的な根拠がない中、内規だけで運用を正当化することは、許されない。

◆法令上認められる

 <警察庁刑事局のコメント> 一定の条件の下、任意捜査の範囲内でその補助手段としてGPS端末を使用することは、法令上認められるものと考えている。

 

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