CD棚を晒してミスチルを叩く

 

この増田に触発されて書いた。
 

洋楽



 
大学時代に、音楽好きな友人の影響で洋楽を聴くようになった。
『Modern life is rubbish』でBlurにはまって、ブリットポップを中心にCDをたくさん買うようになった。
生まれて初めて見に行ったロックバンドのライブは、98年のRadioheadの来日公演だった。
私はMUSIC LIFE派で、ロッキンオンは読んでいなかった。
MUSIC LIFEのレビューで高評を得ているCDを、タワレコHMVに試聴しに行くのが習慣になっていた。
ネット黎明期の洋楽界隈は、雑誌メディアが強い影響力を持っていた。
 
BlurRadioheadのような洋ロックバンドは、日本の音楽シーンの中だといわゆるメジャーのマイナー、
マイナーのメジャーといったポジションだろう。当時の私は、チャート音楽の世界しか知らない
人たちに対して優越感を持っていたし、好きなバンドが日本で有名になってしまうのは嫌だった。
だから『OK computer』で吉井和哉のライナーノーツを見たときは少々嫌な気分になったものだが、
その後に『KID A』の椎名林檎の紙切れ、さらに田中宗一郎の「助けて助けて助けて……」を見たときは、
むしろ拍子抜けしてしまった。ロックを高尚なものとして扱う姿勢も、ここまで来るとさすがに滑稽だった。
このあたりからRadiohead、さらに洋ロックに対する気持ちが冷めていったように思う。CDも買わなくなった。
 
 

邦楽



 
ロックにはまる以前はチャゲアスを聴いていた。
96年にサニーデイサービスに出会って、90年代終盤からロックも邦楽寄りになっていった。
その後、DTMで作曲を始めたのを機にゲーム音楽への情熱も戻ってきた。
 
邦楽においても、やはり好きなロックバンドには売れてほしくなかった。
曽我部恵一加藤ひさしがテレビで芸人にいじられて道化になる姿なんて見たくなかった。
ラブサイケデリコを馬鹿にしながらデキシード・ザ・エモンズを聴いていたし、
ミスチルを馬鹿にしながらプレクトラムグレイプバインを聴いていた。
 
 
学生時代はロックが教養だった私も、現在はyoutubeでアイドルとK-POPを聴く日々……。
まあ元々キャッチーな曲やボーカルのカリスマ性が好きなミーハーだったから、矛盾は無いのだろう。
 
 

ミスチルについて

家族や友人、住んでいる町への感謝の気持ちを爽やかなメロディに乗せて歌う曲が、
ロックやHip Hopの垣根を越えて同じジャンルとして扱われることがあるが、
私はミスチルを、マライア・キャリーセリーヌ・ディオンと同じジャンルだと思っている。
この人たちは、陳腐なヒロイズムを情緒過多なメロディに乗せて歌う点で共通している。
流行りの洋楽の真似だからというより、情緒過多で安っぽい点でミスチルは好きになれない。
 
学生時代からミスチルはダサいと思っていた。
ミスチルやドリカムは、チャート音楽しか知らない人たち、“洋楽を聴かない洋楽かぶれ”な
人たちから熱狂的に支持されている印象があった。
ただ、カラオケでミスチルを歌う友人知人が多かったし、世話になった先輩をはじめ、
ミスチルのファンは良い人が多かったので、人前でミスチルを悪く言うことはなかった。
 

歌詞について

件の増田に対して、「自分は歌詞を重視しない」という主旨のブコメがいくつかあったのは意外だった。
母国語の歌詞は内容を理解できるのだから、日本語がぎこちなかったり、
レトリックがあまりに陳腐だったりすると、耳障りになってしまうはずなのだが……。
 
たとえばレミオロメン『南風』やGoing underground『ランブル』は、メロディは好きだが歌詞が良くない。
それっぽい言葉をメロディに当てはめるので精いっぱいという感じの未熟な歌詞だから、
表現の拙い箇所が度々頭に引っかかってしまうし、何のイメージもわかない。
 
ミスチルの歌詞は破綻の無い丁寧な文章で書かれているが、説明的な作文ゆえに詩情に乏しく、
描かれている内容も明示的かつローブローで、大仰なメロディと釣り合っていない印象がある。
ただ、そんな凡庸な歌詞でも、曲の中ではもっともらしく語られているような気もする。
これについては、感傷極まるメロディによって詩情性がでっちあげられていたり、
日本語らしくない発音による独特な歌唱のおかげで、陳腐な歌詞にも複雑な感触が出てしまったり
しているせいではないだろうか。少なくとも、歌詞単体では良さが感じられない。
 

『深海』を聴いてみた

今までミスチルのアルバム曲をほとんど聴いたことが無かったが、
この記事を書くにあたって、試しにyoutubeでアルバム『深海』を聴いてみた。
このアルバムを衝撃的な作品として深刻に語る人たちを多く見てきた記憶があるので、
もし本当にすごいアルバムだったらどうしよう……という懸念があったが、
一通り聴いた結果、私がミスチルに対して抱いているイメージ通りの内容だったので安心した。
まるでクイック・ジャパンを音楽にしたような一曲一曲だった。
 
 
 

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