大みそかの風物詩、NHK紅白歌合戦は「蛍の光」の合唱で幕を下ろす。その歌詞に沖縄が登場する。めったに歌われない4番だ
▼〈千島の奥も沖縄も 八洲(やしま)のうちの守りなり 至らんくにに いさおしく つとめよわがせ つつがなく〉。「八洲」は日本の古称。沖縄を国防の要衝と位置付ける国家の意思が垣間見える。男はお国に尽くせと鼓舞する歌だ
▼小学校唱歌として詞ができたのは1881(明治14)年。2年前に琉球併合があり、6年前には千島列島が日本領土になった。植民地化した帝国日本の版図を示す意図があったと、「蛍の光」研究者の中西光雄さんは著書で指摘する
▼当初の詞は〈八洲のそと〉だったが、国家意識を高めようと〈うち〉に変えた。日清戦争後は〈千島のはても台湾も〉、日露戦争後は〈台湾のはても樺太も〉に変更、帝国主義を色濃く映していった
▼原曲はスコットランド民謡だ。かの地ではことし、独立を問う住民投票があった。否決されたものの、自治権拡大を求める炎は燃え続けている
▼沖縄も「自己決定権」がかつてなく叫ばれた1年だった。辺野古新基地をめぐり、県民は相次ぐ選挙で民意を明確に示してきた。それなのに政府は聞く耳を持たない。強権で琉球をねじ伏せた併合時と同じ思想が今も残っているのではないか。沖縄はもう「八洲」を守るための手段ではない。
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