ソーシャルゲームの影。儲からないソーシャルゲームの一生とは - ソシャゲ業界の片隅で3
- コラム
- 2014年12月29日
- タグ
- その他|
- ソシャゲ業界の片隅で|
1年ぶりとなります。ソーシャルゲーム開発者のアルベルトです。
前回に記事を書いてから、運良く幸せな方向で忙しくなることができまして、年末になってようやく休めたので筆を執りました。
前回から間が開きすぎてしまったので、1回話題をリセットしまして、儲からないソーシャルゲームの一生について書いて見たいと思います。
「累計100万DL突破!」
「あのゲームの月商は○億円!」
などなど、ソーシャルゲームの世界は景気が良く、とても儲かっているイメージがあると思います。
そんなイメージ通りの会社があるのは紛れもない事実です。
しかし、世に存在するソーシャルゲームの大半はイメージ通りではなく、死ぬか生きるかの瀬戸際にあることをご存じでしょうか。
今回は、多数派の儲からないゲームの一生を順を追って説明したいと思います。光あれば闇もあるのを知っていただければ幸いです。
前回に記事を書いてから、運良く幸せな方向で忙しくなることができまして、年末になってようやく休めたので筆を執りました。
前回から間が開きすぎてしまったので、1回話題をリセットしまして、儲からないソーシャルゲームの一生について書いて見たいと思います。
「累計100万DL突破!」
「あのゲームの月商は○億円!」
などなど、ソーシャルゲームの世界は景気が良く、とても儲かっているイメージがあると思います。
そんなイメージ通りの会社があるのは紛れもない事実です。
しかし、世に存在するソーシャルゲームの大半はイメージ通りではなく、死ぬか生きるかの瀬戸際にあることをご存じでしょうか。
今回は、多数派の儲からないゲームの一生を順を追って説明したいと思います。光あれば闇もあるのを知っていただければ幸いです。
今回の記事では、前提条件は下記のようにします。生のデータは出せないので仮定の話が多くなりますが、ご了承下さい。
・iOS用アプリ『ゲームキャスト』の開発費は5,000万円
・1人の人件費は50万円/月として、10人でアプリを運営
・最初の広告費は200万円、サーバー代は月額50万円
・課金率は5%
・課金ユーザーは1万円を使う
・iOS用アプリ。売り上げの3割は Apple に取られる
ゲームを作るとき、必ず開発費がかかります。
その開発費以上に儲けなければそのゲームは赤字。つまり、ゲームが始まる前から開発費と同額以上を儲けることが義務づけられているのです。
今回は、開発費5,000万円のゲームアプリ『ゲームキャスト』を作った(最近では1億が最低額と言われています。私が業界に入ったときに1,000万円台だったので、恐ろしい高騰です)と仮定して話を進めます。
『ゲームキャスト』は、生まれた瞬間から5,000万円という十字架を背負っているのです。
また、ただアプリを作ります!作りました!では誰も遊んでくれません。
ここで広告が必要です。ここで、200万円が追加で投入されます。
さあ、ここまでかかった金額5,200万円!『ゲームキャスト』は、会社の期待に応えられるのでしょうか?
広告費を投入し、『ゲームキャスト』は1ヶ月で運良く5万DLを達成。実際にアプリを遊び続けてくれるプレイヤー数も2万人になったとします。
なお、白猫プロジェクトなどが威勢良く○○DL突破!と発表しますが、多くの無名アプリは1ヶ月で○○万人もいかないのが実情です。
このうち課金してくれるユーザーが5%だと、単純計算で1,000人が課金してくれることになります。
1,000人が1ヶ月に1万円使うとこのゲームは月に1,000万円稼ぐこととなります。
おお、これなら5ヶ月で開発費を回収……できません。
まず、App Storeで商売すると売上げの3割を Apple にとられます。この時点で1,000万−300万で、メーカーにわたる金額は700万円になります。
また、ソーシャルゲームは家庭用ゲームのように開発したら売って終わりではありません。
プレイヤーの皆様に楽しんでいただくために「イベント」を開催したり、「新しいプログラム」を作ったりしなければいけません。
万全の態勢で10人で運用したとすると月500万円かかり、サーバー代の50万円も毎月必要です。
すると、700万−500万(人件費)−50万(サーバー)で、残りは150万円。広告費を引いたらリリース初月は50万円の赤字です。
翌月に広告費をかけなければ150万の黒字になる計算ですが、プレイヤー数が減らなくても34ヶ月(約3年!)運営しなければ開発費も取れません。
そう、月1,000万の売上げではゲームを維持することも困難なのです。
『ゲームキャスト』には、2つの道があります。1つは運営人数を減らして黒字幅を増やしつつ、赤字になったら終わる「短期終了コース」。
SAP系(元々ゲーム会社ではないメーカー)で企業体力のあるメーカーの場合、儲けが少ないアプリはすぐに終了して新しいアプリを作ろうとする開発しようとする傾向が強いと感じています。
自分が関わっていたアプリも、そこそこ黒字で閉鎖になったことがあります。
もう1つの道は、さらに広告を打ったり、積極的にゲームを改良して利益を増やそうとするコースです。例えば1,000万が1,500万ぐらいになれば、そこそこ長く生きられますからね。
こちらはアプリの売上げが悪くてもプレイヤーに愛されている(つまり、何かしら長所があると認められた)ときとか、次のアプリを作る体力がない企業が選択します。
どう見ても売上げが悪いのに続いているアプリもこのコースです。
しかし、スタートダッシュに失敗したアプリは、何かの幸運に恵まれるか大々的に改修して再度広告しないと伸びません。
そんな中でお金を注いで努力して、それでお金が尽きたら……最後の前触れがやってきます。
会社からお金が出ないなら、プレイヤーからとればいいじゃない!ソーシャルゲームの末期とも言われる、搾り取り運営です。
課金がキツくなると多くのプレイヤーが「搾りにきた!」とか言うのですが、これで運営が豊かになるかというとそうではありません。
金がないとゲームをより良くすることができない。だから、「プレイヤーからお金をもらって、最後にできることをすべてやる!」という最後の足掻きなのです。
何もしなかったら死ぬ。ならば、何かして万が一に生き返る可能性にかけるという、前向きな課金です。
ただ、ユーザーからお金を使って大量にガチャを回してもらうとプレイヤー離れがおき、結局サービス終了になってしまうことが多いですね。
そして、この自爆技を使っても売り上げが増えなければ、ほとんどのゲームは逆に緩くなってサービス終了に向かうのです。
最後に緩くなるのは何故か。
それは、最後までゲームを支えてきてくれたプレイヤーに対するささやかなお礼です。最後までゲームを遊んでくれたプレイヤーは、本当にありがたい人たちです。できれば、その人たちが次にやるゲームも自分たちのゲームであって欲しい。
だから、最後はプレイヤーに優しく運営して良い思い出にしてもらいたいと思っています。
しかし、この状態になると開発者としては非常に悔しい思いをします。経営している方は「ソシャゲは金を生む博打」と思っている方もいる。それは事実です。
しかし、現場の開発者にとってゲームは我が子。
遊んでくださっているプレイヤーは本当にありがたい存在なのです。そのプレイヤーから金を託されて、有効に使えなかったことに悔いが残ります。
あれをやっていれば、あのバグを出さなければなど、今でも昔関わったゲームに対して思うことがあります。
しかし、それでも多くのゲームはこの道筋をたどると思います。
「ソーシャルゲームは絞りすぎ」
「簡単に儲かる」
などと言われることもありますが、派手に儲けていないゲームの方が多く、影に悔しい思いをしている開発者がいることを知っていただけると嬉しいです。
ということで、儲からないゲームの一生を書いてみました。
次回は色々と話題に上がる「特効カード」の仕組みについてお話できればと思います。
(アルベルト)
2014/12/30 0:45
特定の会社をイメージさせる表現について、アルベルトさんの確認をとった上で削除しました。
(GCドラゴン)
-
コメント(2)
- Tweet
コメント一覧
-
- 2014年12月30日 00:35
- 自分の正体を表に出さずに、他社の運営が言ったことについて批判するのはどうかと思いますよ
-
- 2014年12月30日 00:50
- >>1さん
確かにおっしゃる通りです。そもそも、特定の会社をイメージさせることのないように進めるはずの連載でしたので、削除いたしました。
私の校正漏れです。
ありがとうございます。