子育て:1歳児の鉄分、母乳では不足
毎日新聞 2014年12月29日 15時47分(最終更新 12月29日 16時12分)
乳幼児は成長するペースが速いため、鉄分が不足して貧血になりやすいとされる。食事で積極的に摂取するほか、日ごろの子どもの様子から貧血を防ぐ方法を探った。
◇血液検査で発覚
「どうして成長が鈍いんだろう」。東京都のフリーアナウンサー、竹井志織さん(40)は、長男健介君(1歳11カ月)の体重や身長の伸び具合を気にしていた。母子手帳に載っている乳幼児の発育曲線に当てはめると、標準とされる範囲の下の方で推移していた。
複数の小児科で相談したが、いずれも「様子を見ましょう」と言われた。地元の児童館などで開かれる測定会に足を運んでも、「成長のペースは個人差があるもの」となだめられるばかりだった。
健介君が1歳になる頃、転居を機に新たな小児科クリニックを受診すると、すぐ血液検査をすることに。体重の増え方は3カ月間で約300グラムと、かなり緩やかで、医師は「こんなに増えないのはおかしい」と言った。
検査の結果、「フェリチン」というたんぱく質の一種が、検出できないほど少ないことが分かった。フェリチンは体に貯蔵された鉄分量の目安になる物質だ。貧血の症状は表れていなかったが予備軍だと説明され、鉄分を補給するシロップを処方された。
竹井さんは診断結果にショックを受けた。生後半年から母乳と並行して離乳食を始めたが、ホウレンソウなど、鉄分が多いとされる食材を積極的に取り入れていたからだ。
シロップの服用を始めると、健介君の体重は目に見えて増えた。半年後には、フェリチンの値が正常値の範囲になり、薬の服用は終了した。
健介君は1月で2歳になる。身長80センチ、体重11キロで、まだ小柄な方だ。竹井さんは「遅れを取り戻すには時間がかかりそう。検査を受けるまで数カ月間、足踏みしてしまったのが悔しい」と話す。
◇すぐ泣く原因にも
日本医科大小児科の前田美穂教授(小児血液・腫瘍)によると、子どもが鉄分を特に必要とするのは、2歳ぐらいまでの乳幼児期と思春期という。いずれも、急激に体が成長する時期だ。
前田教授は近年、貧血の乳幼児が増えているように感じるという。「20年ぐらい前の調査では、1歳前後で貧血の子どもは5%ぐらいだったが、今は1割以上いるのではないか」と推測する。乳幼児は血管が細く採血が難しいこともあり、検査をする機会は少ない。何かの病気にかかった時に判明するパターンが多いという。