一見、生前贈与に当たって使いやすい制度に見えるが、注意点がある。
第一に、受贈者が贈与者ごとにいったん相続時精算課税を選択すると、暦年課税の基礎控除額110万円は使えず、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要がある。
第二に、2500万円まで贈与時には非課税であるが、相続時には課税対象となる。特に、後で相続税が掛かると予想される際には納税資金を手当てしておくべきだ。
第三に、この制度で贈与した財産は贈与時の時価で相続税を計算することになるので、不動産や株式など価額が変動する財産については注意すべきだ。特に、贈与時より相続時に価額が下落していると不利になる。
第四に、「小規模宅地等の特例」は相続により取得した宅地のみが対象であるため、相続時精算課税制度を使って贈与した土地については、相続時に評価減の特例が適用されない。土地が複数ある場合にはどの土地について相続時に小規模宅地等の特例を使うのかをよく検討した方がいい。
一方、上手な利用法としては、遺留分対策との組み合わせが挙げられる。遺言によって特定の相続人にだけ資産を引き継がせたい場合、あらかじめ遺留分を持つ他の相続人に相続時精算課税制度でまとまった資産を贈与し、「遺留分放棄」をしてもらうのだ。
また、自社株の評価額を引き下げた後に、相続時精算課税制度で後継者へ自社株を贈与すれば、その後、後継者が事業を発展させ自社株の評価額が上がっても、贈与時の低い評価額で相続税を計算することができる。あるいは、アパート、賃貸マンションなどの収益不動産を相続時精算課税制度で早めに子や孫へ贈与するのもいいだろう。
不動産は相続税評価額での評価となるため現金で贈与するより有利であり、贈与後、収益不動産の賃料収入は贈与を受けた子や孫の所得となって、親の相続財産が増えるのを防ぐことができる。
ダイヤモンドQ編集部による「失敗を避けるポイント」
1 そもそも「相続時精算課税制度」は安易に使わない
2 もし使うなら、遺留分放棄と組み合わせたり(遺留分対策)、贈与時に評価額を下げて自社株を生前贈与したりするなど戦略的に行う
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