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家の外も中もスマートになる「IoT」が作る未来 - 川合雅寛

あと数日で2014年も終わろうとしている。そこで、今回は2015年のITの動向について考えてみたいと思う。その中でも、最近話として取り上げられつつあるIoT(Internet of Things)について少し話をしたいと思う。特にこの数年、IoTに先行してHEMSと呼ばれるスマートメーター関連技術が格段に進歩してきており、ホームエレクトロニクス関連技術の進歩が目覚しい。同様にホームセキュリティ関連も次のフェーズにシフトし始めている。今回はこの分野を中心に説明していく。

■家庭の電力事情を大きく変えるHEMS


あまり話題にならないが、現在建設されている最先端のマンションや持ち家には電力コントロールが叶なHEMSが標準搭載されているものも多い。また、このHEMSはオープンな仕様になっており、その仕様に従っていれば、ベンダーが違えど電力使用料を使用機器毎にパソコンやスマートフォンでいつでも確認することが出来る。また、ピークシフトコントロールも自動でやることが出来る。エコキュートや太陽光発電設備と連動させることで、発電所からの電力供給を最低限に抑えさせ、逆に余った電気を購入してもらうような制御も可能だ。

大手電気メーカーやSIerがこぞって開発している分野だ。提供形態は大きく2つに分かれており、ソリューションとして住宅環境毎に提供するタイプと、パッケージとして専用のSaaSやパッケージとして提供しているタイプだ。前者が日立やIBM等が、後者がNECや東芝・富士通が提供している。また、専用の通信機器を家庭内に配置することで、外出先からスマートフォン等で家電をコントロールすることも出来る。

元々、スマートメーター関連はかなり昔から取り組まれてきたが、活況になったのは2011年の東日本大震災以後だと思われる。やはり、原子力発電所の倒壊及び運転停止による国内の総電力量が目減りする事もあり、国民全体が省エネに思考をシフトさせたというのもある。現に2012年以後に発売された家電の省電力効率は凄まじく、従来機器と比較し年間総電力量が25%程度も減ったという報告もあるほどだ。

ところが単純なスマートメーター技術では似たり寄ったりで決め手に欠けるためか、各社はIoTとの連動を模索し始めた。それが家電コントロールである。

■インターネット家電の進化系=IoT家電?


みなさんはインターネット家電というキーワードを覚えているだろうか?2000年代中盤、ブロードバンドの普及に伴い提唱された次世代家電の名称である。冷蔵庫に液晶ディスプレイを付けセンサーで中身をチェックしレシピ表示する、買い物中に冷蔵庫の中身がわかる、洗濯機をリモートで操作できる、テレビをインターネットに接続するなど沢山アイディアはあり、実際にテレビなどは実装されたが、使い勝手はいまいちだ。同時にスマートフォンが台頭してきたため、家電のIT化話は立ち消えてしまった。

ところが、ITのメッカであるシリコンバレーではインターネット家電にIoTという名目で投資が盛んであるというのだ。様々なモノをネット接続し、スマホと連動させAIを組み込み自動化していく。そして、人間の行動ログを取得し続けることで所謂ビッグデータ解析が出来ると謳っている。Googleが買収したNest Labのネット対応火災報知器等が代表例だ。

ホームエレクトロニクス分野というのどうしても遅れがちで、AV(オーディオ・ビデオ)分野が先んじるため目立つことが少ないが、人間の行動様式を観測する市場と捉えることで、大きく生まれ変わると思われる。

■ホームセキュリティ分野もIoT化していく


ここまではホームエレクトロニクスを中心に説明してきたが、ここに来て俄然重要なIoTアイテムが出てきた。それはホームセキュリティのスマートキーだ。次年度からAirbnb特区が出来る流れがあり、Airbnb特需に向けて、ベンチャー界隈も動き出している。その中でも私が注目しているのが、スマートキーだ。Airbnbのオペレーション上の問題は鍵の受け渡しである。物理的に何かしらの方法で受け渡しを確実に、行う必要があるからだ。

海外ではKickStarterを中心にスマートキープロダクトが出揃ってきている。また、老舗企業もホームセキュリティを総合的に提供する形でスマートキーを提供しようと考えているようだ。では日本ではどうなっているのだろうか。日本では今目立っているのが、電通が母体の電通ブルー、ソニーと投資会社Wilが合弁で作ったQrio、そしてAkerunを開発中のPhotosynthの3社だ。

電通ブルーは南京錠型のスマートロックを作成している。Qrioは取り付け型のスマートキーを作成しており、現在クラウドファンディングで資金を集めている。Akerunも取り付け型だが独自資金で開発を進めている。大手が横綱相撲を取らず、ベンチャーが王道を行くというのが一つキーになりそうな気がする。

Akerunの仕組みは非常にシンプルで、既存のドアを一切加工せずスマートキー母体を取り付け、認証済みのスマートフォンからBluetooth通信で暗号化した信号をスマートキー母体に送り、スマートキー本体がサムターンを回し解錠するというものだ。やQrio Smart lock もほぼ同様だが、ソーシャルネットワークを使って鍵を受け渡すというものであり、こちらの仕組みは気持ちが悪い。Airbnbも宿の予約から決済まですべてをスマートフォンで完結できるが、ここに鍵もスマートフォンだけで完結できれば、運用効率は非常に良くなる。

■スマートキーの未来と課題

この様に明るい未来を見せてくれるスマートキーだが、スマートフォンを持っていない場合はどうするのだろうかという課題が見える。だが、そもそもAirbnbを使う層はスマートフォンを利用している率が高い。また、このようなサービスは個人ユースによる利用よりも、中古マンションを大量に保有しているベンダーや、大手マンションデベロッパーとの相性が良い。最初にも書いたがHEMS以外のIoT連携を模索している。そのため、プロダクトが出た後は営業力が決定的な差になると思われる。

その点、Akerunは既に不動産情報のHOME'Sを展開するネクストと鍵管理システムの開発や、NTTドコモとのホテル向けスマートロックシステム開発などの提携を発表している。今後もベンチャーならではのスピード感で大手との提携を進め、日本のスマートキーでは1歩リードした存在になりそうだ。

一つ気になるのが、既存の鍵メーカーが全く動いていないという点だ。これに関しては完全に仮説だが、日本は老人人口が全人口の3割を超える国であり、アナログなキーの需要が暫くは高いという事なのだろう。確かに、もし仮にスマートフォンやスマートロックの電池が切れた場合はどうすればいいのか、ハッカーに狙われたらどうなるのか等のコンティンジェンシープランが確立する前のため、やむを得ない。

しかし、イノベーションを起こすためには上記のような問題に立ち向かっていく必要がある。2020年東京オリンピックの、訪日需要が最高潮になるまでどの様に市場が形成されていくのか、非常に楽しみである。

■私がソフトバンクモバイル社を退職しましたというエントリーを書かなかった理由
http://www.xrosriver.com/?p=209
■消費者はやっぱり賢い
http://www.xrosriver.com/?p=1928
■目指すは10億DL!怪物脳トレアプリBrainwarsの成長は更なる高みへ。(川合雅寛 IT企業経営)
http://sharescafe.net/41841657-20141111.html
■イノベーションは「デザインする」ことから始まる(川合雅寛 IT企業経営)
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■サラリーマンでも大丈夫。サンカクで経営参画できるリクルートの本気(IT企業経営 川合雅寛)
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川合雅寛 クロスリバー株式会社 代表取締役社長 兼 CEO

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