イスラム国:東京在住の日仏夫妻、渡航か
毎日新聞 2014年12月29日 07時30分(最終更新 12月29日 08時29分)
東京都内に住んでいた、いずれも20代の日本人女性とフランス人男性のイスラム教徒の夫妻が11月、トルコに出国後、連絡が取れなくなっていることが政府関係者への取材で分かった。夫妻はトルコの隣国シリアに広がるイスラム過激派組織「イスラム国」の支配地域に向かう意向を示していたとされ、日仏両政府関係者が説得したが「戦闘目的ではない」として渡航を止められなかった。イスラム国では日本人や欧米人はスパイと誤解され、拘束される危険性があり、公安当局はこうした形での出国が相次ぐことを懸念している。【岸達也】
◇政府関係者の説得聞かず
政府関係者や知人の話によると、夫妻はイスラム教徒で、都内のモスクを頻繁に訪れていた。夫はアルジェリア系フランス人で、外資系金融機関に勤務していたが最近退職。夫妻が都内に借りていたマンションも出国前に解約されたという。
公安当局は今秋、夫妻が「イスラム国に加わりたい」と周囲に漏らしているとの情報を入手。夫が自身のフェイスブックでシリア関連の情報などを集めていたため、日本政府の関係者らが数回事情を聴いた。夫妻は「シリア内戦で多数の難民や遺児が出ており、人助けがしたい」と説明。イスラム国行きは否定し「(トルコ最大の都市)イスタンブールで活動する」などと話したという。
政府関係者らは、事前情報からイスラム国支配地域に入る可能性があるとみて渡航を控えるよう要請。フランス大使館にも連絡し、説得に当たってもらったが応じなかったという。
結局、夫妻は11月上旬に成田空港を出発してトルコに入国。イスタンブールからシリア国境に近いガジアンテップに移動したことが確認されたが、その後の動向はつかめていない。夫妻が事前の説明と異なる動きをしていることや連絡がつかないことなどから、既にシリアに入国し、イスラム国の支配地域に入った可能性があるとみられる。
イスラム国はイスラム教徒に対し、インターネットなどで支配地域への移住を呼びかけており、公安当局は夫妻が呼応した可能性もあるとみている。