情報通信技術の発達により、学校の授業も離れたところに届けられるようになった。「遠隔教育」と呼ばれる。

 その導入が、この春にも、全日制と定時制の高校で認められる。文部科学省の検討会議が方針をまとめた。

 教室で教員と生徒が向き合うこれまでの授業に、空間を越える形が加わる。多様な授業が生まれることを期待したい。

 検討会議は遠隔授業を二つに分けた。一つは、教員がテレビ会議などを使い生中継で授業を送り、生徒が質問できる「同時双方向型」。二つ目は、授業を録画しておき生徒が好きな時間に見る「オンデマンド型」だ。

 広く認められるのは「同時双方向型」の方だ。教員と生徒がふれあうことが重要と考えた。受信側にも教員にいてもらう。

 一方向の「オンデマンド型」は特例とし、不登校生のほか、病気や障害で通学できない生徒に限って認めた。

 まずは一歩を踏み出そうという姿勢といえる。検証しながら進めてほしい。

 遠隔教育で何ができるのか。

 まず一つ目は、地域格差を縮められることだ。離島や過疎地の小さな高校は教員が少なく、選択科目も限られる。そこで遠隔教育を導入すれば、様々な授業ができる。

 人口減が進むなか、統廃合の対象になりがちな小規模校に存続の道が開かれることになる。

 二つ目は、優れた授業を教室に持ち込めることだ。送り手に免許を出せば、大学から講義を受けることができる。海外とつなぐことで、生の外国語に接する機会も増やせる。

 三つ目は、教員の勤務の幅を広げられることだ。育児や介護などで自宅にいる教員も授業ができるようになる。職場復帰の助けにもなるだろう。

 活用法は、アイデア次第で広がる。文科省は各地の試みを集め、有効策を広めてほしい。

 課題も多い。本格的な仕組みはまだ高額だ。教員の指導力の向上も求められる。システム対応のために、技術に通じた人材も必要になろう。

 検討会議は、教職員を減らす目的での導入を戒めている。新しい技術は公教育の質を高めるためにこそ使ってもらいたい。

 世界の有名大学の講義がネット上に公開され、無料で受講できる時代だ。文科省は小中学校でも、遠く離れた学校をつなぎ、合同授業を試みる実証研究を考えている。

 技術が進んでも、学校や授業に欠かせないものは何か。それを考えながら活用したい。