地向斜説は１９世紀後半に、アメリカのアパラチア山脈の研究から始まり、１００年間、細部の研究が進められた。しかし、なぜ沈降・隆起が起こるのか、なぜ沈降から隆起に転ずるのか、なぜ火山活動が誘発されるのか、など、根本的な疑問に対しては解答がなかった。２０世紀にはソ連で研究が進み、日本では左翼系学者が中心となって、ソ連の研究成果を日本に適用する地域探しが行われた。学生もこの教授は右か左かを見極めて、試験問題の解答は地向斜説とプレートテクトニクスとを区別して書き、点数をもらうための努力をした。しかし、明らかに地向斜説は、研究が進むほど、珍妙な学説であり、学生の信用はなかった。１９６０年は安保改定、１９７０年は安保延長の年であり、政治的には重要な節目であった。１９６０年代、ベトナム戦争では北ベトナムの共産主義勢力が有利であったが、日本の大学では学生の就職がベトナム特需のおかげで好き放題に決まった。また、各大学の反米・反帝勢力は、警察によって駆逐された。同じ頃、大学からは地向斜説が静かに消えた。
１．地向斜説は、大量の砂礫が流入する外湾と山地との存在が、必要であった。長さは５００ｋｍ〜１０００ｋｍともなると、日本には、関東平野か濃尾平野が適度な規模ではあった。１９世紀にアパラチア山脈形成の理論としたものであった。沈降した海岸に、陸上から運ばれた砂礫や海水に含まれる石灰などが堆積した。この沈降した部分の地形が向斜であることから、地向斜といわれた。
２．地向斜が１〜２億年かけて深くなり、深くなった分だけ、砂礫・石灰などが堆積する。堆積層は１００００ｍに達することもある。しかし、なぜ、広範囲に沿岸地域が沈降して２億年もかけて地向斜ができるのか、そのエネルギーの起源が不明であり、地向斜説の否定される原因となった。
３．地向斜が深くなるとマグマに到達し、堆積岩が深成岩に変質する。現在、陸地の大部分を占める花崗岩が、地向斜の深部でつくられる。この変成作用を機に、地向斜は一転、隆起する。山地・山脈がつくられる。これが、地向斜の造山運動である。※冷戦下のソ連では「革命」のような語句が使われていたのかどうかは知らないが、日本の大学には、講義中に、地向斜が隆起に転ずることを「革命的」と呼ぶ教授や研究者がいた。受講している学生諸氏が思わず苦笑いした。なお、ロシアの地質学者ベローソフは地向斜説一辺倒であるかのように言われているが、『構造地質学』では、否定的文脈でプレートテクニクスを取り入れて、地質構造を説明した。否定的にプレートテクトニクスを引用したとしても、プレーテクトニクスの方に説得力があった。べローソフは結果的にプレートテクトニクスの紹介をしたことになる。
４．浅海にできた地向斜は火山活動の弱く、ミオ地向斜といわれる。深海にでき、火山活動の活発な地向斜はユー地向斜といわれる。その他、様々な名称の地向斜ができ、山地・山脈ごとに地向斜が異なった。科学的統一的説明が性がないため、地向斜の支持の拡大ができなかった。１９４９年にできた地向斜説は、１００年後にはほぼ消滅した。※一部には熱烈な支持者がいて、高校の教科書とかファンクラブ機関誌などに残るだけになった。1990年までにはすっかり姿を消し、地球科学はプレートテクニクス一色になった。
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大陸移動説はドイツの気象学者ウェゲナー（１８８０〜１９３０年）のアイデアである。世界地図で、南アメリカとアフリカとが移動したことを考えついた。大陸の海岸線の形のみならず、生物・地質もつながった。しかし、当時は、南アメリカとアフリカとの間には橋のような細長い陸地でつながっていたとする架橋説が有力であって、ウェゲナーの大陸移動説の支持者は少なかった。※南アメリカの大河アマゾン川がアフリカ大陸に流れ込むことになるが、その水はどこに貯まったのか、という疑問はなかったようだが、大きな問題であった。しかし、プレートテクトニクスの紹介者は何も言わなかったし、地向斜信奉者はプレートテクトニクスを否定するための問題提起としたようである。
アマゾンは7000年前までは西に流れていた。ニジェール川とつながり、大河が太平洋かマラカイボ湖（カリブ海）に流れていた。しかし、アンデス山脈の隆起によりアマゾン川が河口を失い、流域は巨大な湖になった。そして2000万年前には、現在のアマゾン河口に向かって流れ、「アマゾン湖」は消失した。なお、このように考えると、アマゾン川の流路の問題は解決する。ボリビアのウユニ塩湖は面積12,000ｋｍ太平洋の海水からできた
海洋と大陸の高度分布を調べると、海洋の平均深度は3,795ｋ�、大陸の平均高度は875ｍである。高度分布に２つのピークがある理由は、海洋プレートが重く、大陸プレートが軽いからである。海洋プレートは比重３．３の玄武岩、大陸プレートは比重２．７の花崗岩である。偶然に海と陸ができたのではなく、比重が重くて沈んだ玄武岩のプレートが海であり、比重が軽く海洋プレートの上に浮いているのが陸である。玄武岩は重いから低くて海になり、花崗岩は軽いから高くなったのである。
プレートテクトニクスは、戦後、ソ連と対立するアメリカ海軍が、原子力潜水艦の航路を探すため、海底地形図を作成したことから、中央海嶺があることを発見したことから始まる。地球科学の研究者は、中央海嶺が火山山脈であること、海底の玄武岩は中央海嶺に近いほど新しいこと、海溝に近い玄武岩ほど古いことから、海底が海洋プレートとして移動することを発見した。大西洋中央海嶺がアフリカと南アメリカを分裂させたこと、インド洋中央海嶺がアフリカとインド・オーストラリアを分裂させたことも分かった。大陸の分裂・移動は、海洋プレートの移動によって起こることも分かった。このような地球科学の研究には海軍の全面協力が不可欠であり、プレートテクトニクスが帝国主義的学問、と、地向斜研究者から批判される原因になった。
太平洋プレートが移動して、日本海溝に沈み込む。太平洋プレートはハワイなどの珊瑚礁を運んで日本列島に付加させた。珊瑚礁が古くなると石灰岩になるが、日本の石灰岩は熱帯太平洋から運ばれた珊瑚礁である。ハワイ諸島も8,000万年もすれば、太平洋プレートで運ばれて、日本海溝に沈み、先に沈んだ島があとから運ばれた島に押し上げられて日本列島の付加体になる。日高、北上、阿武隈、赤石、紀伊、四国・九州などの山地・山脈の石灰岩地域は、熱帯の珊瑚礁が、日本列島に運ばれたものである。
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プレートテクトニクス批判
(１) 星野通平（反プレートテクトニクス論）：地向斜説にもとづく大陸形成論であり、プレートテクトニクスを具体的事例をあげて批判している。プレートテクトニクスは中央海嶺をマントル起源の玄武岩質溶岩とみなすが、星野説では中央海嶺には大陸起源の岩石が多く含まれれている。海溝は玄武岩の海洋プレートのみに限られるのではなく、大陸起源の岩石が多いし、玄武岩が海溝底に存在しないケースもある。ヒマラヤ山脈はインドプレートとユーラシアプレートの衝突との解釈されるが、現実にはこのプレート衝突とヒマラヤ隆起とでは、時間的誤差が大きく、ヒマラヤ隆起は地向斜説に分がある。海洋プレートが海溝に沈み込む力で海洋プレートを動かすとする考えに対しては、最初にどのようにして海洋プレートが海溝に移動したのか、納得できる説明がなされていない。
(２)角田史雄（熱移送説）：地球内核で発生する熱が地球表面に伝わり、地震・火山活動を起こすのであり、すべての地震・火山活動をプレートテクトニクスで解釈するのは正しくない。熱移送説は、地球内核の高熱が地殻を通って地球表層に伝わり、地震を起こしたり、火山を噴火させたりする。地球内核の高熱が地球の地震・火山活動のエネルギーである。過剰なエネルギーが火山ガスとして地表に伝わるが、ガスによる火山噴火が大きいと地震活動は弱い。逆に、地震活動が強いと、火山活動は弱くなる。プレートテクトニクス説によれば、プレート境界で地震・火山活動が盛んであるが、現実にはプレート境界ではない海域に海底火山があったり、地震がプレート中央で起こったりする。プレートテクトニクスは例外的事象に例外的説明をつけたり、長期間、精密な海底調査を続けた駿河湾の地震の予知ができず、その間に起こり、プレートテクトニクスを根拠とする予知は失敗している。