【ワシントン=矢沢俊樹】ルー米財務長官は16日、日銀の異次元緩和と円安傾向に関連し「日本は為替レートの利点だけに依存した戦略で長期成長を目指すべきではなく、(為替政策を)注視し続ける」と述べた。金融市場で日銀の追加緩和観測が広まっている事態を踏まえ、急激な円安・ドル高の進行への一定の懸念を示した格好だ。
ワシントン市内での講演後の質疑応答で答えた。ルー氏は異次元緩和や安倍政権の経済政策について「デフレ阻止へ向けて正しい政策を取っている」と評価したうえで、構造改革への取り組みを見極める姿勢を示した。
円安・ドル高を巡っては金融政策を国内目的のみに振り向けるとの20カ国・地域(G20)合意に触れ「重要な合意の枠組みだ」と強調。「日本が国内目的で国内の政策手段を使って経済成長を遂げるのは世界の利益にもかなう」とも語り、一定の理解を示した。
それでも日本の為替政策を注視するとあえて語ったのは、足元で1ドル=105円程度まで進む円安・ドル高がさらに加速した場合の米国経済への悪影響が念頭にあるとみられる。
2月7日に引き上げ期限を迎える米連邦政府の債務上限問題についてルー氏は、期限を先延ばしする同省の緊急資金繰りが「2月終わりか3月初めまで」しかもたないと指摘。国民への税金還付など国の支出は予測を立てづらく、経済・金融への悪影響が大きいとして議会に早急な対応を求めた。
中国の経済構造改革については「評価するのはまだ早い」と言及。規制緩和などのモデルとなる「中国(上海)自由貿易試験区」で米金融機関などにどこまで中国市場参入の道が開かれるかなどに注目していると語った。
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