「批判に対して自社の立場を弁護する内向きの思考に陥ってしまったことを深く反省します」

 朝日新聞社の渡辺雅隆社長は26日、慰安婦報道を検証した第三者委員会の報告を受け、記者会見を開いた。冒頭のように改めて謝罪したが、驚いたのは、会見を巡る朝日の過剰な厳戒態勢だ。

 本紙に朝日から「記者会見のお知らせ」が届いたのは22日。日時は明記していたが、会場は「詳しい場所は25日にお知らせします」と伏せていた。公表したのは会見前日の25日夜7時ごろだ。〈警備の都合上、この文書にもとづく事前報道をお控え下さい〉と“牽制”しただけあり、会場となったホテルオークラでは、入り口から記者席までの約10メートルの通路に10人近い警察関係者と警備員がズラリと並び、来場者に目を光らせていた。

 確かに、従軍慰安婦の記事を書いた朝日の元記者の勤める大学が攻撃されたり、今月中旬には東京本社に脅迫状と小刀を入れたレターパックが届くなど嫌がらせが続いている。

 会見の途中にも司会が事前の指定位置をはみ出して撮影するカメラマンを制止し、「撮影位置は限られます。お戻りになるまで会見を中断します」と終始ピリピリムード。

 朝日がナーバスになる気持ちは分からなくもないが、肝心の会見は“拍子抜け”。厳戒態勢の割に中身はスカスカだった。

 渡辺社長の謝罪は冒頭5分程度。あとは「経営による編集への関与をルール化・透明化する」などと、事前に配布された文書をかいつまんで読み上げただけ。約1時間半を報道陣との質疑応答に充てたが、渡辺社長は何を聞かれても「重く受け止めている」というフレーズを連発した。

 産経新聞の記者が「第三者委員会の報告に対し、『重く受け止めている』という言葉が(配布資料に)並んでいるが、(渡辺社長の説明を)聞いていると『重く受け止める』ということとは違う形で話している」とキレ気味に問い詰めても、渡辺社長は「第三者委員会の認定、判断は重く受け止めています」とノラリクラリ。これには「『重く受け止める』とはどういう意味なのか」と産経記者もカンカンで、不毛な水掛け論に陥った。

 そもそも、“朝日憎し”の週刊誌の年内発売号の締め切りがとっくに過ぎた時期に会見を設定するセコイ魂胆。朝日の自己保身体質が変わったようには思えない。