引退のご挨拶
皆 様
この度、私は今シーズン限りをもちまして、現役の選手を引退することを決断致しました。
近年では、スポーツ選手のセカンドキャリア問題が社会問題となるに至っており、JOCも問題解決に向け、アスリートセカンドキャリアサポート事業などに取り組んでいるほどです。私も、自分自身の選手引退後のキャリアデザインに苦労した一人です。しかしながら、周囲の方々のご指導のもと、自分自身でセカンドキャリアへの一歩を踏み出せるよう、競技を続ける傍らで、文武両道を旨に、ここまで準備をして参りました。
実は、今シーズン序盤、スケートアメリカに出場するためにシカゴへと出発する直前に、私は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科・修士課程2年制の一般入試を受験致しました。その合格が発表されたのは、スケートアメリカのショートプログラムが行われる日のことで、文字通り万感の思いで演技を致しました。
その後もシーズンを通して、私は文武両道を志し、今シーズンのプログラムである「ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲」と「第九交響曲」の作品としての完成を目指して、周囲の方々の心強いご指導のもと、初志貫徹で精進して参りました。そして今大会(全日本)での自分の演技を終えた結果、私は自分の引退を、本当に晴れやかな気持ちで本日(12月28日)の朝、決断することができました。ご指導頂いている大西勝敬コーチにも、本日その意志をお伝えしたところです。約21年間の競技人生でしたが、何も思い残すこと無く、誇りを胸に、堂々と競技人生に終止符を打てます。これもひとえに、関西大学、国際スケート連盟および日本スケート連盟、歴代コーチ、歴代振付師の先生方をはじめ、周囲の方々のご支援・ご指導、また家族の支えがあった御陰です。本当に心から感謝を申し上げます。
またこの長い競技人生において、とりわけ成績不振の時期でも私を信じて応援して下さったファンの方々に、今、思いを馳せております。さらにはソチ五輪以来、多くのファンの皆さまからお心暖かい応援を頂きました。
なお、去る2014年2月のソチ五輪出場に際し、関西大学を通じて多くの皆さまより賜りました活動支援金等のご芳情にも、改めてこの場で御礼申し上げます。皆さまへの、私なりの御礼の気持ちの一端としても、今シーズンの二つのプログラムを制作し、演じてきたつもりです。そうしたことなども含め、改めてありがとうございました。
2015年4月、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科・修士課程2年制に入学後は、博士課程進学を視野に入れ、将来的には研究者を目指し、一大学院生として精進して参りたいと強く思っております。フィギュアスケートをスポーツマネジメントの領域で考察する研究者として、社会から真に必要とされる人材になるべく、真摯に新たな道を歩んでいく所存です。
なお機会を与えて頂ければのお話ではありますが、今後とも研究活動の一環として、アイスショー等での演技や創作活動を、必要最小限の数の舞台において経験させて頂きたいと考えておりますので、宜しくお願い申し上げます。
皆さまには今後とも、静かに見守って下さいますなら幸いです。重ねて心よりお願い申し上げます。
2014年12月28日
町田 樹