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<犬遺棄>背景にペットブーム沈静化 販売業者数、高止まり

毎日新聞 12月28日(日)18時8分配信

 大量の犬が捨てられる事件が今年、全国各地で明らかになり、ペットショップ関係者が逮捕されたケースもあった。遺棄の背景にはペットブームの沈静化で以前ほど犬が売れなくなった事情があるようだ。一方で悪質な業者をチェックする仕組みはなく、規制強化を求める声も上がっている。【末永麻裕】

 ◇規制強化求める声

 栃木県内の河川敷や山林で10〜11月、ミニチュアダックスフントやトイプードルなどの死骸が相次いで見つかった。これを機に各地で大量遺棄が発覚し、佐賀県でも10〜11月、生きたまま放置された約30匹のマルチーズが保護された。栃木の事件ではその後、県内の元ペットショップ従業員2人が犬80匹を捨てたとして動物愛護法違反などの容疑で逮捕された。

 一連の事件について、自治体(保健所)が犬猫の引き取りを拒否できるようになった昨年9月の動物愛護管理法改正の影響とみる意見もあった。しかし、動物愛護団体のNPO法人「地球生物会議ALIVE」(東京)が法改正前の2011年に実施した調査では、全国110自治体のうち89自治体は既に業者からの引き取りを拒否していた。ALIVEの小澤利子さんは「報道されなかっただけで以前から年に数件は大量遺棄があった」と話し、佐賀県生活衛生課は「業者からの引き取りは08年ごろからしていない。法改正は関係ない」と言う。

 そうした中、関係者が事件の背景として指摘するのがペットブームの沈静化だ。

 ペットフード協会(東京)によると、ピーク時の08年度に約1310万匹だった全国の犬の飼育数は、今年度約1034万匹に減少。担当者は「00年前後の大ブームのころに飼われるようになった犬が寿命を迎えつつある。これを機に飼うのをやめる人も多いようだ」と語る。少子高齢化や1人暮らしの増加も飼い主の減少に拍車をかけているという。

 他方、環境省によると、犬猫など動物販売業の登録数は07年度の2万195事業所から11年度は2万4299事業所に増加。13年度は2万1715事業所に落ち着いたが依然高止まりしている。福岡県内で小型犬を繁殖する女性は「以前のように売れなくなった。特に生後4カ月を過ぎると売れ行きが悪くなる」と嘆き、一連の事件について「飼育し続けるのにもお金がかかる。困って捨てたのでは」と話す。

 遺棄まで至らなくても、買い手がつかない犬が劣悪な環境で飼育されている例もある。ALIVEが今年5月に確認した兵庫県の繁殖業者の70代男性は1人で約150匹を飼っていた。飼育場はふんや毛で荒れ放題で、水を入れる皿は乾いていた。外に出された十数匹の犬は風雨をしのげず震えていたという。

 販売や繁殖を含む動物取扱業は必要書類と申請料を都道府県や政令市に出せば登録できる。取り扱い責任者を1人置く必要があるが、簡単な資格でも責任者になれ、行政の立ち入りも営業開始時と5年に1回の登録更新時のみだ。繁殖にライセンス制を導入する米・ロサンゼルス市や、繁殖に細かい規制を設け違反者に罰金を科すドイツなどとは対照的だ。

 ALIVEの小澤さんは「無責任な業者を増やさないよう日本でも許可制やライセンス制を導入し、飼育状況なども厳しくチェックすべきだ」と訴える。

最終更新:12月28日(日)19時51分

毎日新聞

 

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