太 陽 光 励 起 レ ー ザ ー
マ グ ネ シ ュ ウ ム エ ネ ル ギ ー



太陽光励起レーザー

エレクトラ、太陽光励起レーザーで高いエネルギー変換効率が得られることを実証

フレネルレンズを使って集光した太陽光でレーザー発振させ、エネルギー効率(スロープ効率、傾き)14%

エレクトラは、東工大理工学研究科機械物理工学専攻の矢部孝教授が、2007年1月18日に起業したベンチャーで、2007年3月24日には東工大発ベンチャー第38号の称号を得ています。

矢部教授は、1988年まで大阪大学に在籍、その後、群馬大学(7年間在籍)を経て、1995年から東工大の教授を務めています。

矢部教授は、シミュレーション手法の1つである
CIP(Cubic-Interpolated Pseudo-Particle Scheme)の第1人者でもあります。

CIP法は、計算格子上における波の伝播特性を正確に再現できる計算手法です。

船舶の設計(ノルウェーの船舶設計会社)や、地球シミュレータで利用されている気象モデルの計算の一部にも使われているのです。

このシミュレーション手法は、固体変形や塑性変形にも応用できることから、印刷や塗布、半田付けの解析、土砂崩れモデル計算などにも利用されています。

エレクトラは、千歳科学技術大学光科学部物質光科学科の加藤洌(きよし)教授と千歳市の協力を得て、千歳市が千歳科技術大学研究棟に隣接して、光の拠点として設置した工業団地「フォトニクスバレー」(インキュベーション施設)の入居第1号として、
「太陽光励起レーザー装置」の試験プラントを建設しました。

この装置は、太陽光をフレネルレンズ(プラスチック製、面積4.0平方メートル)で、Cr+Nd:YAG(クロムなどを添加した、ネオジウム:イットリウム・アルミニウム酸化物・ガーネット)の粉末をセラミックスのように焼成して作られた結晶に集光し、レーザー発信させます。

この集光装置を3機(1機の出力は400W時)設置しています。

北海道を実験地に選んだ理由として、(1)梅雨がなく、(2)台風が来ない、(3)日照時間が長い-を挙げています。

実験装置は、東工大(大岡山キャンパス石川台地区校舎の屋上)にも設置しています。

北海道よりも小型で、大岡山のフレネルレンズの出力は1枚(面積1平方メートル)当たり
24.4Wです。

2007年3月の実験では、最も効率の高い出力(太陽光エネルギーのスロープ(傾斜)変換効率14%)が得られました。

これを元に作られた大型の北海道モデルでの実験は、始まったばかりですが、すでに85Wの出力を得ています。

さらに、レーザー発振器の冷却方法を工夫することで、スロープ変換効率30%を達成できるとみています。

エレクトラは現在、この
太陽光レーザーで生成したエネルギーを、Mg(マグネシウム)に蓄積する技術の開発を目指しています。

この技術の開発には、「数年を要する」(矢部教授)としています。

(永栄 繁樹=産学連携事務局プロデューサー)
(Fri, 02 Nov 2007)日経BP社

■(株)エレクトラ
・所在地:〒158-0097 東京都世田谷区用賀4-1-5 鎌田ビル3階
 Tel:03-3709-3181 / Fax:03-3709-3054
・代表者:代表取締役社長 矢部孝(東京工業大学 教授)


東工大、三菱商事との組織的連携プロジェクトを立ち上げ

東京工業大学は2005年6月25日に、三菱商事との組織的連携による第1号プロジェクトとして、“太陽光励起レーザー”を基軸とした新しいクリーン・エネルギー・システムの推進拠点「Entropia レーザー Initiative」を設立したと発表しました。

東工大で、三菱商事との連携テーマ「持続可能な開発:地球環境を含めた循環型社会の構築」を実現できる知的資産を検討した結果、基本要素技術の検証と基本知的資産の確保ができたことによるものです。

同プロジェクトでは、太陽光エネルギーを社会や経済、産業を支える基盤エネルギーとして実用化することを目指し、最重要課題となっているエネルギー問題や地球温暖化問題の解決を図るとしています。

これまでの太陽エネルギー技術は、利用性やエネルギー効率に大きな課題を残していました。

同プロジェクトの太陽光励起レーザーでは、太陽光エネルギーを大量に圧縮し、電気や熱、動力への利用性を大きく向上させ、石油や原子力にならぶ基盤エネルギーにするとしています。

Entropia レーザー Initiative
(1)太陽光を高効率でレーザーに変換する
「太陽光励起レーザー」(変換効率30%以上)

(2)レーザーを電気エネルギーに変換する
「レーザー電気変換」

(3)レーザーと水で動力エネルギーを発生させる
「レーザー駆動エンジン」

(4)レーザー水素サイクル――の4つの要素技術からなります。

レーザー水素サイクルではマグネシウムと水の反応で水素を生成し、燃料電池で電気に変換します。

併せて水素を燃焼させて熱や動力を得ることができます。

マグネシウムの再生にはレーザーを活用し、エネルギーは水素あるいは水素生成が可能なマグネシウムとして貯蔵します。

2005年度には制御された反応装置を実証し、2006年度以降に自動車メーカーなどと共同で実用システムの検討を開始する予定です。

同プロジェクトではこのような要素技術を“核”に、

(1)高圧水素タンクを不要とする新しい燃料電池システム

(2)太陽光レーザーによるMHD(電磁流体力学)発電

(3)太陽光レーザーによるロボットや自動車、船舶用エンジンの駆動
-などを実現することを当面の課題に設定しています。

Entropia レーザー Initiativeでは、研究や技術開発、事業化に際して産官学から多くの協力や支援、プロジェクトへの参加を得るために、東工大の知財権の「ライセンス」および「コラボレーター方式の研究開発」を融合した新しい研究プログラムも準備しています。

なお、東工大では、三菱商事とのもうひとつの連携テーマ「知識テクノロジーの開発による高度知識社会の構築」として、「革新的シミュレーション」プロジェクトの立ち上げ準備も進めています。(Wed, 06 Jul 2005)


太陽光レーザーが拓くマグネシウム社会 矢部孝 日経サイエンス 2007年11月号

現在のエネルギー通貨は電気です。

電力網を介して流通し,熱や動力,照明などさまざまな用途に使えるのです。

一方,将来,通貨になる可能性があると考えられ,官民で研究開発が進んでいるのが水素です。

水素は究極のクリーンカー,燃料電池車の燃料としての利用が想定されています。

だが,まったく別の物質も次世代のエネルギー通貨になる可能性を秘めています。

それは本物の通貨と同じ金属。アルミニウムよりも軽く,銀白色の輝きを放つ金属,
マグネシウムです。
 
マグネシウムは軽くて強い構造材料として自動車部材やノート型パソコンのボディーなどに使われています。

だが,もう1つ,マグネシウムにはあまり知られていない特徴があります。

反応性が非常に高いことだ。火を付けると激しく燃える。

燃えやすさという点で言えば水素と比較したほうが、その利用のあり方に対する理解がしやすいのです。

多くの場合,水素は700気圧のボンベに詰めて用いいます。

燃焼に用いたとき700気圧の水素1立方mが発生する熱量は4.3ギガジュールです。

一方,同体積のマグネシウムが発生する熱は43ギガジュールと
水素の10倍だ。
 
マグネシウムは水と反応させると水素が大量に発生します。

普通車の燃料電池車が
500km走るには水素6kgが必要とされるが、それには約70kgのマグネシウムがあれば良いのです。

体積にして
40リットルです。

実用化の暁には,マグネシウムの燃料パックをカセットのように燃料電池の発電機構に装填する方式になると考えらます。
 
しかし,マグネシウムをエネルギー通貨として利用するには乗り越えるべき非常に高い壁がありました。

精錬に膨大な量の石炭と触媒が必要なのです。

ところが最近,石炭も触媒も使わない製錬技術が開発されました。

まず太陽光を集め,それを強力なレーザー光線に変換するのです。

この光を原料物質である酸化マグネシウムに照射すれば,
2万℃という超高温により酸素とマグネシウムの結合が解け,純粋なマグネシウムが生み出されます北海道千歳で実験プラントが動き始めました。








太陽光レーザーと燃料電池によるエネルギーサイクル

マグネシウムを水の中で燃焼させると、マグネシウムが酸化して水素が発生します。

この現象を利用すると、水とマグネシウムの補給で稼働する燃料電池を作ることが出来ます。

酸化したマグネシウムは太陽光レーザーにより還元し、再びマグネシウムをエネルギー材料に使用出来るのです。

こうしたマグネシウムの循環による燃料電池エネルギーサイクルが東京工業大学の矢部孝教授を中心に研究され、大学ベンチャーである株式会社エレクトラにおいて実用段階に入っています。


エネルギーサイクルの説明(株式会社エレクトラ)

究極の再生可能エネルギー

従来は酸化マグネシウムを還元するには多量のエネルギーと触媒が必要になり、マグネシウムを酸化させて水素を得る方法はエネルギー採算が取れないとされていました。

しかし
太陽光レーザーによる還元方法が開発されたことで、このエネルギーサイクルは太陽熱発電に列しても遥かに秀でた再生可能エネルギーへと生まれ変わることができるのです。

使用される太陽光レーザーにも効率向上が施されています。

独自開発のフルネルレンズで集光した太陽光の可視光線の波長を赤外線域にして従来の3倍まで効率を稼いでいます。

それによってレーザーの温度を
20,000℃にまで上げ、触媒無しでのマグネシウムの還元を可能にしました。

この太陽光レーザーには広大な面積は必要無く、4平方メートルの集光装置で可能で、エネルギー効率が非常に高い状態でエネルギーに変換出来るのです。(矢部教授によると
100%



高効率な燃料電池を発電を基本に置き、エネルギー源は太陽熱エネルギー。

このエネルギーサイクルが成り立つと、無尽蔵な自然エネルギーを利用した類を見ない高効率な発電システムが実現することになります。

水素ガスは精製の為のエネルギーが必要なことは元より、そのままでは可燃性のため保存や持ち運ぶのに危険であったり、補給するにも
700気圧の高圧ガスではかなりの危険が伴うため、実用化の壁となっています。

このマグネシウムと太陽光レーザーを利用した燃料電池エネルギーサイクルにより、これらの問題が一気に解決することになります。

基本的な技術開発がほぼ出来上がっている今、十年後には新たなエネルギーとして主軸を占めているかも知れないのです。

東京工業大学・矢部孝教授による説明
from @wiki




世界は、石油文明からマグネシウム文明へ

2009年7月 3日  山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

1970年生まれ。雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして独立。
ネットカルチャー・
IT・環境系解説記事などで活動中。
『進化するケータイの科学』、『弾言』(小飼弾氏との共著、アスペクト)、『マグネシウム文明論』(矢部孝教授との共著、
PHP新書)など。

「世界は、石油文明からマグネシウム文明」で紹介した、東京工業大学 矢部孝教授の研究が「マグネシウム文明論」としてPHP新書より発売されました。 

本書では、マグネシウム循環社会へのロードマップや温室効果ガス削減の試算も紹介しています。


化石燃料の枯渇が迫っているが、自然エネルギーだけで今の世界経済を支えることはできない。

理想のエネルギーと言われる核融合への道もまだ遠い……。

だが今、エネルギーや資源の問題を一挙に解決するかもしれない研究が進んでいる。

その鍵はマグネシウム。

海水に無尽蔵に含まれるマグネシウムを取り出し、エネルギー源として利用。

生じた酸化マグネシウムは、太陽光レーザーを使ってマグネシウムに精錬する。

この壮大な計画に取り組むのが、東京工業大学の矢部孝教授である。

マグネシウムを燃やして、エネルギー源にする

次世代エネルギーとして、マグネシウムを用いる研究を進めているとお聞きしました。

マグネシウムがよく燃えるのは知られていますが、なぜ今までエネルギー源として使われてこなかったのでしょうか?

ほとんどの金属は粉末にすればよく燃えて、燃料として使うことができます。

昔から、金属燃料エンジンの研究はどの自動車会社もやってきていますし、実際にマグネシウムを配合したロケット燃料も作られています。

では、なぜマグネシウムが一般的なエネルギー源として使われていないかといえば、マグネシウムを作るのに莫大なエネルギーをかけなければならないからです。

触媒を使う今までの技術だと、マグネシウム1トンを作るために石炭が10トンも必要になります。

石炭の発熱量が
30MJ/kg、マグネシウムは25.5MJ/kgとほぼ同じ。

これでは誰もマグネシウムをエネルギー源に使うはずがありません。

それならば、自然エネルギー、例えば太陽光を集める太陽炉を使って酸化マグネシウムや塩化マグネシウムからマグネシウムを直接精錬してはどうかということになるわけですが、これも困難でした。

酸化マグネシウムからマグネシウムを精錬するには2万℃という超高温に相当するエネルギーが必要で、仮に太陽光を集めてそれだけの温度にできたとしても、炉が耐えられません。製鉄炉の耐熱温度が千数百℃ですから。

マグネシウムをエネルギー源にできるなど、誰も考えていなかったのです。

太陽光を直接レーザーに変換する「太陽光励起レーザー」

- それなのに、なぜマグネシウムをエネルギー源にできると思われたのですか?

きっかけになったのは、7年前です。

私は30年以上レーザー核融合を研究しているのですが、それを応用して、飛行機を飛ばす実験を行いました。

- レーザー核融合と飛行機にどういう関係があるのでしょうか?

レーザー核融合では、レーザーを使って数千万度の超高温を作り出します。

レーザーがすごいのは、時間的にも空間的にもエネルギーを集中できるということ。

つまり、少ないエネルギーであっても、
一瞬だけ一点に集中させることで、大きな効果を得ることができるのです。

私たちは、長さ
5cmくらいの小さな模型飛行機に水タンクを載せ、外からレーザーを照射しました。

水は一瞬で水蒸気に変わって飛行機の後方へ吹き出し、その反作用で飛行機が進みます。

つまり、
水蒸気ロケットができたということになります。

この実験で使用したレーザーの出力はたったの
5W

5Wなんて懐中電灯並みですが、レーザーにすれば模型飛行機を飛ばすこともできるのです。

では、人が乗れるような飛行機を飛ばすには、どれだけの出力を持ったレーザーがあればよいのか。

計算してみたところ、
1GW(1ギガワット=100万キロワット)という答えが出ました。

これは大規模発電所の出力に相当しますから、こんなレーザーを電気で作ることはできません。

どうしたらよいかと考えた時に思い当たったのが、太陽光をそのままレーザーに変換する、太陽光励起レーザーです。

1995年、我々のグループの一人、
吉田國雄特任教授がクロムとネオジムからレーザー媒質を開発していました。

日本のある会社はこれをさらに改良し、
2005年には効率が42%のレーザー媒質を作ることに成功しました。

太陽光をこのレーザー媒質に当てると、レーザー光線が出ます。


マグネシウムを燃やして、エネルギー源にする



金属マグネシウムは、電子機器、飛行機、
自動車などで広く使われる。


矢部研究室が用いているレーザー媒質。



これに太陽光を当てると、レーザーに変換される。



- このレーザー媒質は大量生産できるのですか?

クロムとネオジムを混ぜて焼き固めるだけですから、大量生産するのは簡単です。

ただ、レーザーで飛行機を飛ばすといっても、そんな実験にはどこもお金を出してくれないので、別の応用を考えました。

それが次世代エネルギー、
レーザーによる酸化マグネシウムの還元だったのです。

もっとも、今ではこちらが本命になってしまいましたが。

海水中には無尽蔵のマグネシウムが含まれている

-マグネシウムを燃やしてエネルギーを生み出し、できた酸化マグネシウムは太陽光励起レーザーで還元して、またマグネシウムに戻すわけですね。

しかし、リサイクルを綿密にやったとしても、エネルギー源になるほどの量があるのでしょうか?

この地球上には、マグネシウムが無尽蔵といってよいほどあります。

海水中には石油30万年分に匹敵するマグネシウムが含まれています。

-ですが、海水からマグネシウムを取り出すにもエネルギーが必要になるでしょう?

ここにもう1つのポイント「淡水化」があります。

2025年には、30億人分の淡水が不足すると言われています。

最も広く使われている逆浸透膜方式で30億人分の淡水を作ったとすると、現在世界で使われている電気の半分が必要になります。

そこで、太陽光を使った淡水化装置を作り、特許を取りました。

私たちは「エレクトラ」というベンチャー企業を興し、この装置を海外に販売
しています。

現在、アジアの二カ国から国家レベルの発注が来ています。

-太陽光を使って淡水化するということは、光を集めて水を蒸発させるということですか?

そういうことです。しかし、単純に熱を加えて蒸発させようとすると大量のエネルギーを消費します。

みんな、水は100℃にならないと蒸発しないと思っていますが、私たちが汗をかいたら自然に乾きますね。

洗濯物も自然に乾きます。

-湿度が関係しているのですか?

はい。湿度のバランスをうまく調整することで、エネルギーをほとんど使うことなく淡水を作ることができます。

現在の逆浸透膜方式は、装置コストを1とすると、20年使った場合のランニングコストは20。

これに対して、私たちの装置は装置自体のコストも1桁安いですし、エネルギーもほとんど必要としません。

スピードも速く、
1台当たり1日10トンの淡水を作れます。2Lのペットボトルなら5000本分です。

-あとには、塩やその他の物質が残るというわけですね。マグネシウムはどう取り出すのでしょう?

淡水を取ったら、あとには塩(塩化ナトリウム)と、にがり(塩化マグネシウム)が残ります。

塩とにがりを分離するのは、エネルギーが不要な昔ながらの方法を使います。

塩化ナトリウムと塩化マグネシウムの混合物に、上から少し水を掛けると、ぽたぽたと液体がしたたってくるのですが、これがほとんど塩化マグネシウムなのです。

塩化マグネシウムは塩化ナトリウムより水に溶けやすく、この性質を利用するだけで簡単に塩化マグネシウムだけを取り出せます。

マグネシウム循環社会のイメージ。

海水や砂漠の砂に含まれるマグネシウムを取り出してエネルギー源として利用。

太陽光励起レーザーでふたたびマグネシウムに戻す。

マグネシウムがエネルギー源になると、世の中はどう変わる?

- あとは、太陽光励起レーザーで塩化マグネシウムをマグネシウムに精錬するというわけですね。

それでは、マグネシウムは世の中でどう使われるのでしょうか?

まず、火力発電所です。

現在の火力発電所では、石油や石炭で湯を沸かし、その蒸気でタービンを回して発電しています。

マグネシウムの場合、水と反応させることで水素が発生し、この水素を燃やせば高温高圧の水蒸気が発生します。

これでタービンを回して発電すればよいのです。

これまでの火力発電所の設備は、タービンも含めてほとんどそのまま流用できます。

発生した水素と酸素を反応させれば水になりますから、二酸化炭素も出ません。

自動車用の燃料電池も研究が進んでいます。

例えば、米国のベンチャー企業は亜鉛燃料電池で動く自動車を2003年に開発しました。

この自動車は百数十kg弱の亜鉛を積み、走行距離は600kmです。

マグネシウムなら亜鉛に比べて3倍のエネルギー密度がありますから、10kgあれば200kmは走れるでしょう。

燃料となるマグネシウムは、コンビニで売ることを想定しています。

爆発もしませんし、少々水がかかっても大丈夫です。

マグネシウムの価格は現在kg当たり300〜400円ですが、太陽光励起レーザーによる精錬で価格が下がれば、マグネシウム燃料電池自動車以外はすべて消えることになるでしょう。

- マグネシウム燃料電池も水と反応させるのですか?

火力発電の場合は水と反応させますが、燃料電池の場合は酸素と反応させます。

酸素と反応させると水素が発生しないため、安全だからです。

水素は軽いために自動車のどこかに貯まる可能性があり、引火すると爆発してしまいます。

また、燃料電池の電極に水素が付くと、電極の性能が著しく低下します。

現在の燃料電池は、高価な白金で水素を吸着しようとしていますが、それくらいなら
最初から水素が発生しない反応を使えばよいのです。

マグネシウム燃料電池の技術的課題はほとんど解決されており、今は燃料待ちの段階。

マグネシウムの価格が安くなれば一挙に実用化が進むでしょう。

燃料電池を使って生じた酸化マグネシウムは、やはり太陽光励起レーザーを使ってマグネシウムに精錬できます。


400Wの太陽光励起レーザーを今年中に実現

80Wの太陽光励起レーザーなら、ステンレス板に一瞬で穴を開けることができる。


読書用ルーペなどにも用いられるプラスチック製フレネルレンズ。

東工大のレーザー発生装置には、4個のフレネルレンズが使われている。


- 太陽光励起レーザーを使って、いかに低コストでマグネシウムを精錬できるかにかかっているのですね。

2007年に北海道の千歳にレーザーの実験施設を作り、実験を重ねてきました。

現在4個のレンズで集めた太陽光をレーザー媒質に当て、80Wのレーザーを出力できています。

80Wのレーザーでもステンレス板に一瞬で穴を開けるほどの威力があります。

しかし、4個に当たる太陽光は4kWですから、80Wというのは2%の変換効率でしかなく、このままでは商用化できません。

目標の出力は400Wですが、すでに目処はついており、今年中には達成できるはずです。

- 5倍の出力アップをそんなに簡単に実現できるものなのですか?

まず、レーザー媒質に混ぜるクロムの割合を増やします。

理論的には、これだけで変換効率を3倍にできます。

また、太陽光励起レーザーではこういうプラスチックレンズを使っているのですが、この設計を改良します。

- えっ、こんなプラスチックレンズなんですか?

はい、これのサイズを大きくしたものを使っています。

金型でどんどん作れますから、大量生産すれば製造コストはタダみたいなものですよ。

ただし、現在のレンズは気泡が混じっていたりして、太陽光を半分くらいしか集められていません。

金型を作り直してレンズの精度を上げれば、太陽光の透過率は2倍にはなるでしょう。

レーザー媒質とレンズの改良を合わせれば、5倍の出力アップはそれほど難しくないと考えています

- 酸化マグネシウムからマグネシウムを精錬するには2万℃の超高温が必要になるとおっしゃっていました。

これに耐えられる炉は実現できるのでしょうか?

そこでレーザーの長所が発揮されます。レーザーなら、1mmのスポットだけ2万℃にするということが可能です。

その周辺はすぐに冷えますから、炉全体が2万℃に耐える必要はありません。

- 細いレーザー1本では、大量の精錬が難しいのでは?

だからこそ、太陽光励起レーザーの装置をたくさん作るのです。

何百台という装置を並べてレーザーを作り、各装置から光ファイバーで精錬所に伝えます。

酸化マグネシウムにレーザーが当たると、0コンマ数秒でマグネシウムを精錬できます。

- レーザーの発生装置は高価になりませんか?

現在東工大の屋上で実験装置を稼働させており、太陽の位置を自動追尾して最適な出力を得ることができます。

水道用のパイプなどを利用して組み立てたら、1基当たり50万円ほどで制作できました。

- 太陽光がいつもあるところでないと、精錬はできませんね。

アリゾナやモンゴルの砂漠など、1年中雲のない地域は世界中どこにでもあります。

こういう地域でマグネシウムを精錬して、日本に持ってくればよいでしょう。

淡水化事業からスタートし、マグネシウム循環社会へ

- マグネシウムの循環社会は、どういうステップを経て実現すると考えていますか?

まずは、海水を淡水化する事業で利益を上げます。

先に述べたとおり、すでに海外から淡水化装置の発注が来ており、この事業だけでも十分に利益を出せます。

今後、世界の淡水ビジネスは年間150兆円規模になると言われています。

次は、マグネシウムの精錬ですが、最初はエネルギー源としてではなく、資源としてマグネシウムを売ればよいでしょう。

携帯電話のボディなど、マグネシウムの需要はいくらでもあります。

マグネシウムは今1kg当たり400円と高価ですからここでも利益を得られ、そうすれば太陽光励起レーザーの装置をもっとたくさん作れるようになります。

ちなみに、マグネシウムに限らず、鉄やアルミ、シリコンも、レーザーを使って同様に精錬可能です。

金属産業の構造を根本的に変えてしまう可能性もあると思っています。

そうして十分にマグネシウムの値段を下げられるようになったら、エネルギー源として、発電所や家庭、自動車に使えばよいでしょう。

燃料として使った後にできる酸化マグネシウムは、太陽光励起レーザーで精錬してマグネシウムに戻します。

- これからのロードマップはどうなっていますか?

ある外国の企業が出資してくれることになり、この資金を使って今年中には沖縄の宮古島に実験施設を作ります。

この施設では、
海水の淡水化からレーザーによるマグネシウムの精錬まで全サイクルの実験を行います。

投資を得られたので、政府からの補助金も必要なくなりました。

マグネシウム循環社会は、2025年に実現する

- エネルギー生産から、産業利用、リサイクルまで、1つの街で完結するんですね!

はい。宮古島の施設が成功したら、東南アジアの各所に同じような施設を作り、もっと大規模な実験を行う予定です。

うまく行けば、2025年頃にはマグネシウムをエネルギー源とした社会を実現できるのではないでしょうか。

みなさんが考えるより、早いペースで進むと思っています。

- 少し前には、水素社会という言葉がもてはやされました。マグネシウムではなく、水素をエネルギー源にしてもよいのではないでしょうか?

水素は、保管場所が問題になります。

700気圧で保管すれば場所を取らないという人がいますが、700気圧に耐えられるタンクはごくごく小さいものしか作れず、結局は1気圧で保管するしかありません。

日本が必要とするエネルギーをすべて水素にしたとすれば、日本中の地下が水素タンクになるでしょう。

- マグネシウム循環社会の実現可能性をどう見ていますか?

私は30年間レーザー核融合の研究をしてきました。

レーザーを出す、金属を溶かして反応させる、そうした研究はマグネシウムの精錬や淡水化にすべて活かされています。

そして、
吉田國雄特任教授によるレーザー媒質

こうした要素が今この時期にすべて合わさったのはとても不思議で、自分はこれをやるために生まれてきたのではないだろうかという気すらします。

実験を繰り返して実証データも蓄積されており、実現には絶対的な自信がありますよ。


太陽光励起レーザーの発生装置は1台50万円

東工大の屋上で実験中のレーザー発生装置。上部のフレネルレンズで集めた太陽光を、中心部にあるレーザー媒質に当てる。


研究者プロフィール 矢部 孝(やべ たかし)現職は、東京工業大学・大学院理工学研究科・教授。1973年、東京工業大学工学部を卒業後、同大学助手に就任。その後、1981年に大阪大学・レーザー核融合研究センター講師、85年に同助教授、1995年には東京工業大学・教授となり現在に至る。また大学発ベンチャー「株式会社エレクトラ」の代表取締役も兼任。1999年の英国王立研究所200周年記念招待講演を行うなど、数多くの賞を受賞。現在、国際数値流体学会の名誉フェロー、計算力学国際連合の理事など。







マグネシウムを電極に使う新型電池 実用化にメド 東工大など 携帯電話、長持ち

海水に豊富に含まれるマグネシウムを電極に使う新型の電池を矢部孝・東京工業大教授らの研究チームが開発し、さいたま市で21日までに、この電池を動力とする車の走行試験に成功した。

マグネシウムを電極に使った試験車の新型電池部分(20日、さいたま市の藤倉ゴム工業工場)

マグネシウム電池は理論上、電池の主流であるリチウムイオン電池の約7倍の電力を取り出すことができる。

新たなエネルギー資源として注目されており、実用化にめどを付ける画期的な成果だという。

充電はできないが、携帯電話なら1カ月もち、電気自動車は500キロ走行できる見通しだ。

マグネシウムは軽い金属で電極にして塩水に漬けると電池になる。

ただ
従来のマグネシウム電池には大量の塩水を数時間おきに交換する必要があるなどの問題があった。

矢部教授は藤倉ゴム工業(東京)と共同で研究。

薄いフィルム状のマグネシウムをロール状に巻き、テープレコーダーのような仕掛けで少しずつ送り出して塩水と持続的に反応させ、塩水を交換しなくても長時間使える電池を実現した。

さいたま市岩槻区にある同社岩槻工場で20日、この電池を動力とする試験車で性能を確認した。

電池は縦34センチ、横17センチ、厚さ2センチで重さは800グラム。

40個載せて560ワットの電源にすると、重さ約200キロの車がスムーズに走った。

2013-12-22(日経)





太陽熱発電

太陽熱は、熱としての利用だけでなく、大規模な発電も可能となります。

世界最大の太陽熱発電所は、米国カリフォルニア州のモハベ砂漠にあるSEGSプラント」で、85年の発電開始以降増設を重ね、35万kWの出力を誇っています。

熱を集めるコレクタと呼ばれる設備は、オフィスの蛍光灯器具を逆さにしたような形で、真っすぐな集熱管と湾曲した半円筒の反射板で構成されています。

集熱管の中を流れる工業用の油が反射板で温められ、この熱で蒸気タービンを回して発電するのです。

コレクタは幅6m、長さ100mと巨大で、約1.7kmの広大な敷地に整然と敷き詰められています。

トラフ型(分散型)と呼ばれるこの方式に加えて、タワー型(集中型)という方式も開発されています。

中でも
「東工大式ビームダウン集光太陽熱発電」と呼ばれる日本発の最新技術が注目されています.。

ヘリオスタットと呼ばれる反射鏡を太陽の動きに合わせて動かし、光を中央のタワーに集めます。

光は中央反射鏡で再び反射され、溶融塩レシーバーに集まります。

これは、配管が密集した熱交換器で、管の中を流れる溶融塩は600℃にまで熱せられます。

この熱で水を沸騰させて、蒸気タービンを回して発電するのです。

昨年12月、コスモ石油とアラブ首長国連邦のアブダビ政府系機関であるMASDAR-ADFEC」は、東京工業大学と、この技術の共同研究開発契約を結びました。

大型構造物の建設を得意とする三井造船と先端的な光学技術で高精度の鏡を作れるコニカミノルタが参加します。

集光熱量
100kWの実験プラントをアブダビに作り、2009年4月から実験を始めています。

10億円の費用は、コスモ石油と
MASDAR-ADFECが折半しています。

実験結果を踏まえて、2010年には集光熱量2万kW(熱電変換効率25%)の実証プラントも建設します。

直径600mの敷地に8m四方のヘリオスタットを500基設置します。

高さ60mのタワーに直径70mの中央反射鏡を載せるという巨大な設備になるのです。

最終的に2012年に、3〜4基のタワーを組み合わせた集光熱量12万kW(熱電変換効率36%)の商業プラントを完成させることを目指しています。

1kWh当たりの発電コスト(発電単価)は8〜9セントを目指しています(トラフ型は15セント程度)。

東京工業大学・炭素循環エネルギー研究センターの玉浦裕教授は、「太陽光発電の平均的な発電単価は20セント程度で、太陽熱の採算性のよさが際立つと言っています。

石炭火力は4セント程度ですが、炭素税などが上乗せされれば、十分に戦える」と自信を見せています。

採算性の高いプラントを作るには、発電のシミュレーション技術が極めて重要になります。

ヘリオスタットが互いに干渉しない配置を割り出したり、1基のヘリオスタットが太陽の位置に応じて、最適なタワーに光を送るようにしたりといった、コストと発電の効率を上げるための工夫をするには、実際の太陽と設備の動きを再現する必要があります。

東工大は10年かけて光学設計シミュレーターを開発してきました。

東洋一の演算速度を誇る東工大のスーパーコンピューターを使えば約10時間で1年間の発電を再現できるのです。

アブダビの実験プラントを使って、シミュレーションの“正しさ”を確認できれば、大型プラントが容易に設計できるようになります。

これは世界初の試みとなるのです


欧州の大手シンクタンクのローマクラブは2003年、再生可能エネルギーの利用を目指すコンソーシアム「TREC」を設立しました。

EU(欧州連合)、中東や北アフリカなど地中海周辺の国々の政府系機関や産業界が参加し、これらの地域で再生可能エネルギーによる発電をして、送電ロスが無い直流送電網でEUに供給するという計画です。

太陽熱発電がその主軸を担うのです。

年間日射量が多いサハラ砂漠では、
254km四方に太陽熱発電施設を敷き詰めたとすると、世界の電力が賄えるとの試算もあります。

TRECは、2050年までにEUの年間電力消費量の10〜25%が、北アフリカや中東の砂漠から供給された太陽熱を中心とした電力に置き換わると予測しています。

玉浦教授は、「中東が石油で豊かになったように、北アフリカの国々は太陽熱に賭けていると言います。

海水を淡水化するエネルギー源も石油から代替できるのです。

豊富な電気と水を求めて砂漠地帯に産業が集まるはず」と話しています。太陽熱は無限の可能性を秘めているのです。

●太陽熱発電所のしくみ
イラスト/タジマヤスタカ
(BP NET)








太 陽 熱 発 電 シ ス テ ム
ビームダウン方式太陽光集光装置



三鷹光器と国立天文台、太陽を追尾する「太陽光集光実験装置」を開発

〜これぞリアルソーラーシステム?

太陽熱発電システムの実現を目指す宇宙観測機器の設計製造会社三鷹光器株式会社と国立天文台は8月17日、「太陽光集光実験装置」を開発したと発表し、記者会見を行いました。

太陽観測用望遠鏡の技術を応用したもので、太陽を自動で追尾し、太陽光を受熱部に導きます。

この熱を使って蒸気エンジンを動かしたり、蓄熱して利用することを目指すものです。 

今回、第一期として
「蒸気発生実験装置」と「ビームダウン方式太陽光集光装置」の2種類の実験装置を設計製作しました。

国立天文台三鷹キャンパス内で太陽光集光能力と追尾精度について当初の数値目標を達成し、発電性能においても基礎データを得ることができたとして発表しました。

会見で国立天文台副台長で太陽天体プラズマ研究部教授の櫻井隆氏はまず、なぜ国立天文台が実用性を重視した研究に参画しているのかについて解説しました。 

天体観測においては常に問題となるものの一つに、電源があります。

天文台は電力インフラが整備されていない山の上などに設置されることが多いのです。

観測機器を動かすにしても電源が必要となること、それが今回の研究に協力した理由の一つです。

また、今回のような太陽熱利用発電は世界各国で研究開発が行なわれているが、意外と太陽観測の技術が使われていないこと、それもまた国立天文台が協力した理由の一つです。 

たとえば海外の同様の設備には赤道儀が使われておらず、複雑な制御を必要とするものが多いのです。

今回の装置は機構に従来の太陽観測装置と同様の仕組みを取り入れ、小型のモーターと光電センサーを使ったのです


まだエンジニアリング段階のため発電効率のコスト計算などは行なっていないが、比較的安価に、過酷な環境でも安定して使えるものとなっているということです。 

今回、具体的には追尾精度±1分、蒸気発生装置(ボイラ、ベーンエンジン、発電機)の出力は
300W/3A/3,000回転を達成しました。

また
ビームダウンミラーと光濃縮装置(Clustered Mirror Concentrator : CMC)を使用した別のシステムではアルミニウムを溶かすことにも成功しました(アルミニウムの融点は660度)。

20分ほど焦点を絞り続けることで
最高温度は906度を観測しました。

今後は、第2期の開発実験として集光装置の小型化や分散化、発電装置の性能向上を目指します。

将来は、海水から塩を作り出し、水を精製し淡水化したり、触媒に高圧蒸気をかけて水素を取り出したり、高温を使った廃棄物処理、原油に頼らないビニールハウスの温水暖房等々、さまざまな応用が考えられます。



ヘリオスタット。太陽を追尾する一次ミラーの集合体。
焦点距離は30m


ミラーで集められた光をさらに大ざっぱに4倍程度絞る。
来年は150cmのCMCを製作予定


三鷹光器株式会社代表取締役の中村勝重氏は、最終的には二酸化炭素を一切出さない太陽電力を作り出して天文台の電力としたいと主張しています。

三鷹光器は、今年で創立
43年目を迎える観測機器の設計製造会社です。

天体望遠鏡は夏の暑いときでも冬の寒いときでもドームを開けて観測を行なう必要があります。

いっぽう天体望遠鏡はミクロン精度でなめらかに動くように制御されています。

このような精密機器を安定して動かす技術がすべての基本にあるのです。 

三鷹光器はオゾンホールの発見や、ブラックホールの観測、太陽コロナの観測などに貢献する機器を開発・製作してきました。

また人工衛星のスターセンサー、スタートラッカーなどのほか、温度差の厳しい環境で用いる太陽観測用気球望遠鏡も開発しています。

この太陽観測用気球望遠鏡の仕組みが、今回の機器の原理に繋がりました。 

太陽熱を利用した発電は主に海外で進められています。

同社では集光ミラーの表面形状(粗さと歪み)を、やはり同社が開発した非接触三次元測定装置で測定しました。

するとミラーの精度が粗いことが分かったため、まだ外国製にこれからでも追いつけるのではないかと考えたのです。

なおこの測定装置はレーザー光とマイクロレンズアレイとを制御することで、
1nmから130mmまでをダイレクトに測定できる世界で唯一の機械です。 

海外では1基で120平方mの大きさのヘリオスタット群を数値制御で動かしており、駆動系にもコストがかかっています。

いっぽう今回、
三鷹光器が作ったものは焦点距離30mで直径50cm、反射率90%のミラーを小型機で32枚、大型機で92枚組み合わせた小型ヘリオスタットで、コンピュータ制御は使っていないのです。

太陽電池パネルを使った光電センサーに光があたっているかいないかでモーターが回転し、向きを制御する
簡単な仕組みとなっています。


CMCで集光した太陽熱で溶融した金属


右がミラーを92枚使った大型のヘリオスタット、
左がミラーを32枚使った小型ヘリオスタット


(森山 和道)2009/8/18 00:11
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「ビームダウン式太陽集光装置」

東京都三鷹市の郊外住宅地の一角で今春稼働した太陽熱利用の実証試験施設が、環境・エネルギー関係者の注目を集めています。

市と三鷹ネットワーク大学、光学機器メーカーの三鷹光器(三鷹市)が連携して建設した「ビームダウン式太陽集光装置」です。

既存の施設を大幅に小型化する新技術が、発電や海水淡水化などの分野に新たな可能性を生み出すと期待されています。

三鷹の設備は

(1)精密加工した凹型反射鏡装置を地上に設置し、個別センサー制御で効率よく光を反射します

(2)塔上には2つの焦点がある楕円(だえん)形の反射鏡を置き、地上の凹型鏡からの光を筒型集光装置(光濃縮装置)に集めます。

(3)集光した光はさらに受熱部(高効率光熱交換器)で高温を生み出します。 

心臓部の濃縮装置は高さ1.5メートル、上部の直径1.5メートル、下部直径70センチの円すい形容器で内部に縦横20〜30センチの反射鏡を百数十枚張り付けてあります。

高温や温度変化にも強いのです。 

この施設は市民や小中学生が先端技術を実地見学する環境学習拠点にもなっています。

ただ、用地や高さ制限の枠内で建設しており、本格的な実用化には規模が小さすぎます。

1000度以上を得る実用レベルの集熱システムは1500基の反射鏡装置と高さ70メートル規模のタワーが必要」(中村実専務)ということです。

それでも海外既存施設の2分の1から3分の1に小型化できる画期的な技術です。 

こうして得られる高温の用途の1つに
1000度前後の高温空気を噴射する高効率のガスタービン発電があります。

通常のガスタービン発電に比べ燃費を約6割削減できるのです。

また加熱したジルコニアと酸化鉄などの触媒によって水を酸素と水素に分離することも可能になります。 

さらに蒸気タービンと発電装置、減圧室、冷却室などを組み合わせた海水淡水化装置への応用が期待されます。

小さな設備に中東諸国の政府関係者らも高い関心を示しています。(編集委員 鈴木純一)
2010/52010/5/14付 日本経済新聞 朝刊





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