韓国最高の名門校…国連事務総長パン・ギムン氏やキム・ヨンサム元大統領を輩出したエリートの殿堂です。
競争率7倍を勝ち抜いた秀才3万2,000人が学んでいます。
今ソウル大学であまりの人気で受講さえ難しいと評判の講義があります。
キム・ナンド教授の「消費理論」の講義です。
現代の消費者行動の研究をしています。
教授は学生が評価する「ソウル大優秀講義」に選ばれました。
講義の面白さと学生指導への熱意が人気を集める理由です。
キム・ナンド教授が2010年に書いたエッセー「つらいから青春だ」は韓国で180万部という大ベストセラーとなりました。
競争社会韓国で苦悩する若者への厳しくも温かいメッセージです。
日本中国イタリアなど9か国で翻訳出版されました。
キム・ナンド教授は韓国社会に向けて「温かい資本主義」という考えを提唱してきました。
勝者だけが富を独占するのではなく敗者にもチャンスを与え一緒に成長していける社会の仕組みが長い目で見れば効率を高められるという考えです。
金利を大幅に下げるとかお金を大量に市場に流して景気を上げるという主張が韓国で大いに出ていますがそういう政策は今は良くする事ができるかもしれませんがインフレやその後の国家の債務を増加させ次の世代の負担を重くします。
かつては緊縮政策で明日を大切にする経済政策を取っていましたが現在は明日を犠牲にして今日の経済を良くする政策が多いように思います。
私はそういう点を指摘したいのです。
今回は韓国社会でさまざまな問題に直面し生きづらさを抱える女性たちに向けての講義です。
韓国の女性の大学進学率は世界的にも高い水準を誇ります。
しかし雇用率は先進国で最低の国の一つです。
その背景にあるのは…韓国に根強く残っている古くからの価値観です。
多くの女性が結婚や出産のためにしかたなく会社を辞めていきます。
働きたくても働けない悩みを抱えたとえ働けたとしても家庭との両立に苦しみます。
国もそうした高学歴の女性たちの能力を活用する事を重要課題と位置づけています。
仕事や家庭で居心地の悪さを感じ自分を見失う悩みに向き合います。
(拍手)こんにちは。
こんにちは。
(拍手)はいありがとう。
キム・ナンドです。
皆さんに会えてとてもうれしいです。
私にこんな事がありました。
1997年に教授になった時私は34か35歳ぐらいでした。
学生に教えたりしながら15〜16年が過ぎました。
2年ぐらい前に私が初めて教えた大学院生が結婚して挨拶に来たんです。
そして私に挨拶をしながらこう言ったんです。
「先生気を悪くしないでほしいのですが大学に通っている時キム先生はとても大人で芯が通っていて完璧に見えたんです。
そしてそう思って学生時代を過ごしたんだけど今の私はその時の先生よりも年が上です」と言うんです。
「自分を振り返ると今でも揺れるし全くしっかりしていないしまだ大人ではない。
だから当時の先生もきっと大人ではなかったんだろうなと思いました」って言うんですよ。
で「ギクッ!どうして分かったんだろう」って驚いたんです。
そうです。
それが大人の秘密なんです。
「指導してくれた先生だけど自分がその年になると先生もそれほどしっかりしてはいなかったんだな」と知るようになる。
私も同じ事を考えた事があります。
で今日の講義は「挫折」に関する事です。
そして「大人になるとは」という事です。
最初に皆さんに聞きたいのは「私たちはいつ大人になるのか」という事です。
この中で自分は大人だという気がする方。
じゃあ20歳を超えている人は?これは一体どういう事ですか!何事?ではちょっと聞きます。
ええあなた。
美貌が卓越してて。
20歳過ぎですよね?はい。
なぜ大人ではない?自立できてないので。
経済的に?はい。
経済的な自立さえできれば大人ですか?でも自分の人生を歩んでいれば大人だと思います。
この中で経済的な自立ができている方。
後ろにいらっしゃいますね。
お名前を教えて下さい。
はいソウル市に住んでいますパク・ユンギョンです。
私は正解かどうか分かりませんが…私が考える大人は年頃になって結婚して経済的には自立していて結婚したのですから子供を考えなくてはならないじゃないですか。
子供を産んだら責任を持たなければいけない。
これがとても怖いのです。
自分の事もできてないのに果たして子供をちゃんと育てられるか。
そして私と夫で一緒に育てながら迷う事なく生きていく事ができるか。
それで不安が大きくなって誰かの責任を取るという事に対して怖気づくのでは…。
なので子供を産むまではまだ大人になっていない気がします。
出産。
(ユンギョン)はい。
じゃあまた質問。
出産された方は?大人だと思いますか?違うって言ってますけど。
あそこの方に話を…意見を聞かせて下さい。
はい男性の方。
お名前は?キョンギドから来ましたチョ・ウンヒです。
ウンヒさんね?はいお会いできてうれしいです。
少し意見が違うのですが大人になるのではなく限りなく大人に近づくという事だと思います。
お〜かっこいい答えだね。
「さすが大人」という表現はよくしますがこれは「限られた中で一番の大人」という意味です。
周りに頼るものが一つもない時その人が一番大人であるだけで誰も本当の大人になる事はできないと思います。
はい。
ではウンヒさんは一番小さい赤ん坊が0点で一番の大人を10点だとすると自分は何点ぐらいの大人だと思うのかな?大体6点ぐらいだと…。
お二人はご夫婦?はい。
彼女にマイクを渡してくれる?一番の大人が10点だとするとあなたの夫は何点だと思いますか?5点くらい。
5点!それでも5点だと優秀だね。
はいさまざまな意見を聞きましたがややもすると「大人」とは大人ではない。
法律では20歳です。
最近少しずつ変わってきて19歳からは大人であると。
19歳を過ぎると自由に契約を結ぶ事ができるし両親の許可なしで結婚する事もできる。
投票する事もできるしたばこもお酒も飲める。
ほぼ全ての行動をする事ができる。
だからと言ってそれが完全な大人だとは言えないわけです。
ウンヒさんの話では「大人」とはなるならないという問題ではなくさっき大人を10点だと言ったけれどそれに向かって徐々に成長していく事だ。
そういう意見でした。
いろいろ聞いてきましたがでは私たちがいつ大人になるのか。
大人になるという事はどういう意味か。
別の角度から話を進めます。
「最近生きていくのがそうたやすい事ではない」と感じる方は?あああそこにいらっしゃいますね。
こんにちは。
はいこんにちは。
最近嫁ぎ先でうまくいかずちょっと悩んでいるのです。
夫と夫の家族が理解してくれない状況で余計につらいのです。
そうなると私自身も夫の家族と仲良くしようと思わなくなってそれで姑や夫の家族と葛藤があります。
他の友人たちを見るとみんな実家や夫の家族と仲良くやっているのに私だけがこういう問題を抱えているのか結構憂鬱です。
私がうまくやっていけない理由がどこにあるのか気になって…。
何か慰めのお言葉を頂けたらと思います。
お名前は?アン・ジヨンです。
ジヨンさん。
はい。
ジヨンさんはそんなふうにストレスをたくさん抱えている時どうやって解決しようとしますか?初めはたくさん話し合っていたのですがトラブルが起きたりするのでだんだん話さなくなって我慢するようになってストレスがたまっていくような気がします。
では「100%解決するのは無理だろう」と考えますか?なんとかしないととは思っているのですが…。
このままではいけない。
方法が分からなくて…。
だからと言って解決もできず。
ジヨンさんは今「実家と夫の家族」。
実はみんなが困難を抱えています。
中でも私が最も耐えづらく解決するのが難しい問題は人との関係を解決する事のような気がします。
一人では生きていく事はできないのだけど努力だけではうまくいかないですから。
そうですよね?他に誰か最近克服しにくい事があるという方。
あそこにいらっしゃいます。
お名前は?こんにちは。
私はチュンナン区から来ましたイ・ハヨンです。
私は26歳の時に結婚をして今28歳ですが姉が5人いる長男の末っ子のところに嫁いだのですが…。
私にはやりたい夢があったのですが結婚をして諦めたのです。
海外に出ようと思っていたのに結婚したために行けずその他制約事がとても多くて…。
で夫との間にトラブルがよく起こるようになったのです。
今では夫との関係は最悪です。
夫は結婚後に180度変わってしまって私はほぼうつ病の状態にまでなってしまって夫はそういう状況でも優しくしてくれずずっとその状態が続いていて今とてもつらい状況です。
はい分かりました。
そうですか…。
今この中で結婚している方。
案外多いですね。
結婚は実は人間にとってとても重要な出来事です。
私たちが使う「大人」という言葉がどこから来たかというと…「オル・ウ・ダ」がどういう意味か調べると「セックスする」とか「結婚する」。
結婚に一番重要なのが成人という事ですからそこから来ているらしいのです。
だから結婚は私たちが大人になったという最も確実な証拠なんです。
さきほどの方が子供ができたら本当の大人になる気がすると言ってくれましたがだけどここにいる独身の方は…独身の方手を挙げてくれますか?独身の方がずっと多いですね。
誰かがこういう事を言っていました。
「結婚は鳥籠の鳥のようで外にいる人たちは入ってみたいが中にいる人たちはみんな外に出たがる」。
もしかすると結婚は…今日は特に女性が多いですが特に女性にとっては王国だったり同時に監獄であったりもするのです。
特に焦点を主婦や女性に合わせて考えると結婚の重要なもう一つの要素になるのが仕事を持っているかいないかです。
職に就いている主婦は時間がとてもないですよね。
また韓国では夫が家事をあまり手伝ってくれない。
だから全ての家事は主婦がするべきものだ。
最近では変わったとは言うけれどいまだにそういう認識があります。
また専業主婦は専業主婦でさきほどハヨンさんが感じたような重苦しさ「私は誰なのか」「私は価値があるのか」こういう悩みもたくさん持っている。
職に就いていようがいまいがどちらも大変だと思います。
…と教授は言います。
一度は会社への出勤。
家に帰ると今度は家事という職場が待っているというのです。
韓国では家事や育児は女性の役割。
伝統的価値観が根強く残り女性の社会進出は低迷しています。
さすがに1990年代以降働く女性が増えました。
それでも家庭内の女性の役割と地位が目に見えて変わる事はありませんでした。
また女性に対する家庭内暴力も増えソウル市だけでも…日本全体のおよそ2倍にも上ります。
家庭でも完璧を求められる働く女性の心理的・肉体的負担は増大しうつ病にかかる女性も増えてきています。
更に自殺する女性の数もこの10年で倍増。
世界一です。
私は1,000人の人にアンケートをした事があります。
専業主婦に尋ねたら「機会があったら就職したい」という人が88%もいました。
もう専業主婦はやめて仕事をしてみたいというのです。
次に職に就いている主婦に「仕事を辞めて専業主婦になりたいか?」と聞くと63%が「すぐに辞めて専業主婦をしたい」と答えました。
つまり専業主婦と職に就いている主婦はお互いに羨ましがっているんです。
それだけ私たちの結婚生活が難しいという事だと思います。
次に専業主婦と職に就いている主婦それぞれについて話をしてみます。
まずは専業主婦の人に特有の話から始めます。
これはイ・ヒョリさん。
歌手のイ・ヒョリさんのツイートです。
かなり有名になったツイートなんです。
結婚している女性の皆さん共感しますよね。
ですよね?さっきから名前を尋ねていますが実は結婚すると自分の名前を話す事が減りますよね。
私は専業主婦の最もつらい部分は名前を失う事だと思います。
もちろん名前はなくなりません。
だけど呼び方が変わります。
誰々の奥さん誰々のお母さん更にはどこどこの人…そうなんです。
専業主婦が抱えている最もつらい事のうちの一つが自分の達成感より他人の達成感の方が優先されるという事なんです。
これがどういう事かというと…。
「成功した専業主婦」。
どんな主婦が成功した専業主婦でしょうか?息子がいい大学に…。
そう!息子たちがいい大学に行く事。
すばらしい。
でも母親の努力で息子をいい大学に入れられる?簡単ではない。
母親は自分の努力で子供をいい大学に入れられると考えていますが私は聞きたい。
この中で子供が2人いらっしゃる方。
長男を一生懸命教育し次男も同じようにできる?いませんね。
親が子供を変えられる部分というのはそれほど多くはありません。
けど母親たちは我が子がどこの大学に行ったかをもって自分の達成感を測るんです。
だからかなり危なっかしい問題なんです。
また子供の問題以外でどういう人が成功した専業主婦でしょうか。
そうです。
夫が外で成功して「立派だ内助の功だ」と言われる事ですね。
でもだったら一人で成功した男性陣たちはどうなるんです?もちろん内助をした方が夫が成功する確率は高いとは思います。
それは否定しませんが主婦の立場で考えると自分が手出しできない部分なのに夫が成功するかどうかで自分が立派な妻かどうか評価が決まる。
これはとても心もとない状況です。
だから専業主婦が抱えているすごく危ない点は自分の達成感を自分がコントロールできないという事なんです。
職に就いている女性が結婚すると自分の生活の半分が変わります。
半分は職場で今までの生活どおりですが残りの半分の家庭生活が変わります。
しかし専業主婦になると全てが変わるのです。
自分が今まで働いてきた職場がなくなるために家庭の生活が全てを占めるわけです。
100%変わるがその100%は自分自身で一つもコントロールする事ができない。
そのような状況によって自分の幸せが左右されるわけです。
そして韓国社会にはいろいろな制約があります。
女性は遅くに帰宅してはいけない。
外で何々をしてはいけない。
制約だらけです。
だから最も大きな問題は「私は誰なのか」という事なんです。
そして「私は誰なのか」を教えてくれるのが名前なんです。
だけどその名前までもなくす。
これが専業主婦の最も危ない点なのです。
私は専業主婦にとって最も重要なのが時間の問題と空間の問題そしてお金の問題だと考えています。
言い換えれば「全ての事は自分で変えられる」という状態が必要だという事です。
自分の達成感を夫や子供に依存するのではなく自分が変えられるものは何なのか自分がどう成長できるのかを考える事がとても重要だと思います。
職に就いている主婦の場合最も難しいのが時間管理という部分です。
この中で仕事を持っている方は手を挙げて。
どうですか?結婚したらちょっと大目に見てくれていますか?こんにちは。
キム・ミジョンです。
キム・ミジョンさん。
会社では結婚したからと大目に見てくれますか?そういうのはなくてむしろ結婚した事を克服するために結婚していない人よりも努力する状況です。
独身の人の方が当然時間が多い。
そうです。
だけど結婚して…お子さんはいるのかな?います。
そのお子さんは?保育所に通っています。
会社には保育所があるんですか?残念ながら…。
そうですよね。
ミジョンさんの状況はとても典型的で例外的な事ではありません。
独身の人たちより仕事ができないと言われたくなくてむしろ頑張って仕事をする。
その裏には保育所で待っている子供がいて御飯を待っている夫がいる。
男の私が言うと不快かもしれないが…一体勤めはいつ終わるのかと思います。
最近は女性の大統領も出ましたし企業の人事がある度に女性の役員も出るし女性長官女性初の裁判官など女性が高い地位につくとこれを見ている平凡で仕事も家庭もうまく両立できない多くの主婦たちはどれだけ喪失感を感じるだろうかと思います。
実は私はこういう問題があると思います。
「なぜ君はああいうふうにできないの?家事をこなしながら役員になるくらい仕事をしたんだってよ。
お前もしてみろよ」という暗黙の強要があるのです。
私は人生はジャグリングのようなものだと考えます。
ジャグリングって知ってますね?ボールを一度にいくつも投げる曲芸です。
ジャグリングに重要な事は1つだけをずっと持っているのではなくまた全てを手から放す事でもない。
ただ動きに身を任せる事なんです。
卑怯な表現かもしれません。
その身を任せるという事はどれだけ心を無心にするかという事だと思います。
私は社会が少し寛容であってほしいと思うのです。
もっと仕事を減らすといいのです。
私たちの社会の問題は3人でやるとちょうどいい事を2人にさせている事。
だから2人は仕事に追われて大変だし1人は就職できなくなるのです。
だから3人でする事は3人でしようというのが私の考え方です。
そのためには定刻に退社する事です。
そしたら何をします?遊ぶでしょ?映画を見て旅行にも行く。
すると遊びが占める部分が増えます。
遊ぶ事は非生産的な事ではない。
国全体で見ると仕事を減らす事も必要なんです。
自分の仕事の90%以上は自分自身で変える事ができません。
既に起きてしまった事。
まだ起きていない事。
自分がどうしようもできない事。
そういう時は英語で言うと…そして心を柔軟にするんです。
柔軟にしてどこに向かえばよいかというと自分自身を振り返ってみる事です。
これからクイズを1つ出します。
よく聞いて。
今日の夕方よりによって約束が3つ重なってしまった。
みんな仕事と家庭を持っていると想定しましょう。
1つ目は会社に重要な商談相手が来る。
担当者である自分が接待をしなければならない。
そして交渉をして契約を成立させる。
相手は明日の朝飛行機で帰るので必ず今日の7時に会わなければならない。
ところが今日は娘の誕生日でもある。
ずっとちゃんと祝ってあげていない。
何か月も前から指切りをして絶対に一緒に誕生日を祝おうと約束していた。
それが今日の7時。
娘はお母さんが帰ってくる事を楽しみに待っている。
3つ目に学生の頃から大ファンでファンクラブにも入っていたロックグループが今日解散する。
お別れコンサートです。
ファンクラブの会長をするくらいに本当に好きだったロックグループ。
コンサートは7時から始まる。
本当に大変な日になった。
皆さんどれを選ぶか手を挙げて下さい。
どちらに行くのかな?あなたならどれに行くだろう。
1つ目の商談相手に会いに行く。
2つ目娘の誕生日で家に帰る。
3つ目ロックコンサート。
仕事が一番でその次が家庭でその次がコンサートという結果だ。
悲しい事です。
じゃロックコンサートに行くと手を挙げた方にマイクを渡します。
はい。
スジから来たシン・ユジンと申します。
結婚していましてコンサートを選んだのは初めはみんなをそこに連れていけばいいと思ったのですがそれができなくても行きます。
残り2つは後日事情を話して了解を得て…とにかくその3つのうち自分が満足できる事自分が楽しめるロックコンサートを選びます。
じゃあ会社や娘さんへの申し訳ない気持ちは?夫に許してもらいます。
後日償うと。
はい。
立派ですね。
他には?ロックコンサートの方。
はいあそこの方。
私はパンギョウから来たキム・チョロンといいます。
ロックコンサートは今日じゃないと駄目なので。
商談相手も明日帰るよ。
相手には事前にテレビ電話やメールで解決する事ができますし娘の誕生日も毎年あるので。
プレゼントで解決するわけですね。
はい。
コンサートを諦めて仕事や娘の所に行くと心残りになって仕事はむしろうまくやれない気がして。
自分にとっていい方を選びたいと思います。
結婚されてますか?独身です。
最初にコンサートの方に聞いたのは簡単な決断ではないからです。
今皆さんは70%くらいの人が会社を選択し30%くらいが家庭を1%がコンサートを選んでいます。
似たような質問をアンケートで聞いたら48対48対4という結果が出ました。
だからこれを一般化すると仕事家庭自分。
これがぶつかると多くは仕事か家庭を選択し自分に関しては先延ばしするしかないのです。
今話してくれた方たちは実は勇気のある方なんです。
で私は考えた。
なぜ人は仕事や家庭の事を優先させるのだろうか。
これは他人と関係があるからなんです。
ふだんは好きな事をしたいと言ってもその決断はたやすい事ではないのです。
コンサートではなく普通は迷惑をかける度合いが小さい方を選びます。
快感が大きいものよりも苦痛が少ないものを選ぶんです。
結婚生活で楽しみを探し職場でお金と生きがいを探す。
そのような肯定的な側面もありますが全て自分自身の時間を割き自分自身にきついジャグリングを強要するしかないそのような世の中で暮らすようになったという事なんです。
だからここで私が皆さんに出せる答えは利己的になれという事ではなくて…特に女性が結婚を考える時学生たちはよくこういう事を言うのです。
「私はお母さんみたいに生きないわ」って。
ここには若い女性が多いですが恐らく皆さん似たような考えかもしれない。
「私はお母さんのようには生きたくない」。
アンケート調査をしてみたところ「お母さんのように生きたい」が24%で「お父さんのように生きたい」は30%になりました。
普通は母親と子供の方が意思の疎通があり父親との仲よりも良いにもかかわらず「お母さんのように生きたい」という人は3/3にも満たないんです。
それほど私くらいの世代の母親たちは犠牲を払い耐えながら生きてきたという事なんです。
女性が専業主婦としてまたは職に就いた主婦として生きていくのがつらい理由は次のような事だと私は思っています。
名前を失い時間を失いながら自分がどれくらい価値があるのかを見失っているからだと思います。
「それでもあなたは価値のある存在なんだ」。
それを伝えたかったのです。
では「人間の価値とは?」について話を進めます。
人の価値は人との関係から生まれます。
愛する人がいて愛してくれる人がいたらあなたの存在は価値のある事だと考えます。
しかし韓国ではちょっと違います。
韓国は人に価値をつけるなら管理職に就かなければならない。
家系図を書く時に官職で何をしたとか…。
また最近ではお金をたくさん稼ぎマンションもあって名誉もあってなどと考えるのですが私はそういうものは人間同士の関係や愛に比べるととてもくだらないと思います。
重要な官職に就いたり財産を残したり何かを成さなくても今そばにいる人とお互いに愛し尊敬し尊敬されるならいかなる業績を積んだ人にも劣らず価値ある事だと考えます。
もう一つ人間の価値はどこから生まれるかというと世の中をもっと良いものにしようとするならその人には価値があると私は思います。
愛する人のためにもう少しだけ勇気をあげて助けてあげて温かさをあげるとそれが世の中をより良いものにする事なのだと思っています。
そして3つ目はこれは自分自身の問題。
自分が昨日よりも少し新しく少しましな自分。
私がよく言う「成長する自分」になっている限り価値があるのです。
そう考えています。
日常の中で少しずつ成長をして自分自身にその価値を証明できる事が最も大切な事だと思います。
抽象的な話ばかりなのでより具体的な話をしてみたいと思います。
私は女性に必ず必要な事が3つあると思っています。
それは自分だけの空間が必要だという事です。
韓国の家庭はそれぞれの家がそれなりに大きい。
驚くのはその家の主人とも言える専業主婦のための空間がない事です。
私は昨日よりももう少し成長して価値ある人にならなければならないと言いました。
そのために必要なのが自分自身を見つめ直す自分です。
自分を見つめ直しながら学習する自分なんです。
そのためにはまず空間からそろえなければならない。
仕事をする主婦は時間がなくて大変だと言いましたが実は専業主婦たちの時間は多いんです。
自分で使える時間が多い。
だから食器洗いを今やっても後でやってもいいし掃除は明日でもいい。
だけどこんなに融通がきいてしまうと時間が多くなくむしろなくなってしまう。
だから絶対時間自分のための絶対時間。
例えば朝の10時から11時までは何もしない。
ただ自分のために使うというように時間表どおりに守るのがとても大事です。
ただの通帳ではなくて給料を入れる通帳です。
とりわけ専業主婦です。
へそくりじゃないですよ。
へそくりのための通帳ではなくてあなたの夫から給料をもらって下さい。
主婦の家事労働の価値はとても大きいと言われます。
実際にある銀行で主婦のために「妻への愛」というふうな名前の通帳が作られました。
サラリーマンと同じような金利や特典がついている商品なのですが利用者に聞くと自分のためにブランド品とかを買ったりせず実家に何かあったら送金したり夫の家族に何かあったら送金したりするそうです。
夫のお金を節約して夫の家族に送金するのではなく妻が自分のお金として送るのです。
自分の給与を送るのです。
もちろん気持ちの問題ですが。
私はこの3つがとても重要だと考えています。
講義の最後一人の女性が深刻な悩みをキム教授にぶつけます。
深い暗闇にある人生をどう生きればいいのか教授は答えを探します。
今までの話が結婚に関する話ならこれからは自我に関する話を少ししてみたいと思います。
この中で自分ではどうする事もできない大きな悩みに今まさにぶつかっているという人はいますか?はいマイクを渡して下さい。
私はキョンナムのチンジュから来ましたイ・テヒといいます。
私は早くに両親が亡くなりました。
そのあと新しい母も交通事故で亡くなり…。
私は留学にも行きたかったですし他にもしたい事がありましたが…。
公務員試験も受けようとしたのですが妹が問題を起こしたために諦めました。
両親が財産を残してくれたわけでもないので自分で稼ぐしかありません。
その日暮らしが続いています。
そうしていると…妹が結婚をしたのですが相手の男性と仲が悪くなり甥っ子に手を上げるようになったのです。
そのあと妹には別の男性ができましたがその男も暴力を振るうんです。
これがあんまりひどいので私は警察に届け出たんです。
そのあと甥っ子は養護施設に入る事になり今年小学校に入学しました。
とにかく私の人生は妹にかき回されました。
私は夢もあったしやりたい事も多かったし欲もあったのに全て諦めてコーヒーショップとかいろんな所に履歴書を出したのですがちょっと年を取っているからといって採用してもらえないんです。
私はとても絶望的で今まで何をしてきたのか私は一体何なのか韓国では私は役に立たないんだといつも考えてしまうんです。
挫折感がいっぱいで価値のある人間なのかつくづく疑問に思っているとつらいです。
はい分かりました。
甥御さんは今は大丈夫なんですか?妹さんとお子さんは悪い状態ですか?母親である妹がたまに1年に一度くらい会いに行くと甥っ子は変になります。
まだいろいろときつい状態です。
テヒさん自身はやりたい事をまだ探している状態ですか?はい。
はい分かりました。
私も心が痛みます。
今日私どうですか?私はいつもあまりきれいにしていないのです。
さきほど舞台裏で私をきれいに化粧してくれたメークさんが私に化粧をしながら話してくれました。
両親が反対する職業を選んだためにとてもきつくてもうやめようかと100回は考えたんだけど我慢して我慢して今に至ったと。
そして印象的な事を言ったんです。
「強い者が生き残るのではなく生き残った人が強い者でもなくただ生き残っていたら少し強くなりました」。
そうです。
よく「日が昇る直前の空が最も暗い」と言いますが実は重要なのは失敗するのが怖いのではなく前が見えないのが怖いのです。
「君が無職で5年いたら6年目から職を持てる」と誰かが保証してくれたらこの5年はつらくはないのです。
今は最悪の暗闇の中にいる。
だけど明日就職できるのにもかかわらず誰も教えてくれないから今この瞬間は不安でとてもつらいのです。
生き残ってずっと繰り返してたら強くなる。
私はそう確信しています。
だから耐え抜いて生き残って下さい。
そうしたら強くなります。
さきほど伺ったお話はとても心が痛みます。
特に幼い子たちの話を聞くと何で世の中はこんなにも不公平なのだろうと。
その子には何の罪もない。
そうですよね。
この話を聞いたら私が以前もらった手紙を思い出しました。
ある日一人の女性からメールが来ました。
そこに何と書いてあったかというと「教授必ず読んで下さい。
二人の命がかかっています」。
そして初めの文章はこういうふうに始まっていました。
「私は2歳の時に母の浮気が原因で両親が離婚をしました」。
それから内容を要約すると母の浮気で離婚したので父親と暮らすようになったのですが父親は事業をしていたのでいつも忙しくて一緒に暮らせずおばあさんと暮らしていた。
おばあさんと弟と彼女との3人暮らしだったがそのおばあさんもある日亡くなってしまった。
そのあとは父親と暮らす事になります。
父親はお酒を飲んで帰ってくると彼女と弟に暴力を振るっていたそうです。
文中のある一言に心が痛みました。
「父がいない時はとても会いたいのだけどいざ帰ってくると私たちは逃げるのに忙しかったです」。
だから父親の暴力に耐えながらも父親の事業がうまくいくように願っていたそうです。
しかし父親は自殺したのだそうです。
その後彼女は母親に連絡を取りました。
2歳の頃に別れた母親をいろんな方法を使ってやっと見つけ出したら母親は再婚していて新しい家庭があるから「あなたたちはもう私は死んだものと思って今後は連絡しないで」と言って立ち去ったそうです。
二人は天涯の孤児になったんです。
そして弟は高校生になったがちょっと前に退学になったそうです。
彼女は弟を高校だけは卒業させてあげるのが唯一の望みでしかし弟はインターネットカフェに入り浸っているのかいくら連絡をしても連絡が取れないし家にも戻ってこない。
彼女は何の収入もない。
そしてこう結ばれていた。
「私は良い学校に通っているわけでもないし顔がかわいいわけでもないし勉強ができるわけでもないし弟とは連絡が取れないし先生私には希望があるのでしょうか」。
私が腹が立つのはこの子たちには何の罪もないという事だ。
家が貧しいのも両親が離婚したのも父親が亡くなったのもこの子には何の罪もない。
なのにこの子が背負わなければならない生きる重みを考えると本当に不公平で腹が立ちます。
その手紙を泣きながら読み私はこのままではいられないと思ってまずは何かできる事はないかと私の人脈を総動員して連絡しました。
当時女性家族省の長官が私の知り合いで家族部にも連絡してもらってその子に緊急で面接しその子のいる自治体の福祉の先生に相談に乗ってもらい私の知っている教会の方にもお世話になりさまざまな手助けをした。
しかし私には宿題が残されていた。
この子の手紙への返信だった。
どう返信すればいいのか。
本当に返信メールを何度も書いては消し書いては消しを繰り返しとても短い手紙を送りました。
その時にこの子に贈った言葉がこの言葉です。
この言葉はニーチェが言った言葉なんですがニーチェは私たち人間の中にはそれぞれ偉大な自我があって限界を超えていくと「超人」になれると信じていました。
そのためには自分に降りかかる運命をまずは愛さなければならないという主旨で運命愛「アモールファティ」「あなたの運命を愛しなさい」というような言葉を言ったんです。
送信ボタンを押した途端に後悔しました。
「運命を愛しなさい」と言われてこの子のように耐えがたい運命をどうやって愛せというのか。
私は本当に残酷な事を言ってしまったと心が痛み後悔もし…。
だけどそうやって手紙を送って時間が過ぎた。
3〜4か月が過ぎて私が少し忘れかけていた時です。
4か月ほどたってその子から返信が来ました。
長い文章でしたが大まかに3つの部分に分かれていました。
初めは「助けて頂き状況が良くなってきました。
弟も帰ってきてありがとうございました」。
2番目の文章では「だけれども『君の運命を愛しなさい』という先生のお言葉は恨めしかったです。
どうして私のような運命を愛せとおっしゃるのか他人の事だからと簡単におっしゃっているのではないのか。
私は全くその言葉を理解する事ができませんでした」。
それから3段落目にはこう書かれていました。
「だけど私が生きれば生きるほど考えれば考えるほど私の人生を生きるのは私しかなく私が自分の人生を愛してやらなければこの人生を愛してくれる人は誰もいない」。
そう思うようになったそうです。
そしてこう考えるようになったといいます。
「だったら私も自分の人生を愛さないといけないのではないか」と。
そうしたら不思議な事が起こり始めたそうです。
周りの人たちから表情が明るくなったと。
大丈夫だと。
状況は何も良くなってはいないけれど心を少し入れ替えてみたらみんなから良いと言われる。
それで次の言葉で私はまた涙が出ました。
「今は先生があのような言葉を言って下さった事に感謝します」。
本当にすごいと思いませんか?私は本当につらい言葉を言ったのにこの子はその真意を受け止めてくれ理解して私に感謝するというこの子の言葉を聞いた時私は本当に涙が止まりませんでした。
このような運命的なつらさに共通するものは「自分自身のせいではない」という事です。
自分のせいで試験に落ちたり誰かに誤った事を言って事が起きたら自らを責めて次回から気を付けようと思うでしょうが自分に何の罪もないのにただそういうふうに生まれただけ。
それを「運命」と言います。
だから運命を愛するのはたやすい事ではありません。
だって他人の運命はとても良く見えるのに私の運命だけとてもつらいのです。
その意味は何か分かりますか?何で「いつも自分だけがつらい」と思うのか。
皆さん。
皆さんと私の関係人と人の関係は地球と月の関係に似ています。
月は自転の周期と公転の周期が同じだそうです。
だから地球の私たちはいつも月の表だけを見ているんだそうです。
宇宙船に乗らずに月の裏側を見る事はできません。
だとすると私たちはお互いに最も良い姿だけを見せているんですよね。
喜劇俳優のチャーリー・チャップリンがこう言っています。
実に意味深長な言葉です。
他人の人生は遠くからしか見る事ができない。
だから他人の人生はいつも喜劇に見える。
自分の人生は最も近い所から見える。
だから自分の人生だけ悲劇なんです。
それで人は自分が世の中で一番つらいと思うのだと思います。
だけど裏を返して言うと自分の絶対的な苦しさは実際には普遍的です。
私はやたらと誰かを羨ましがったりまたはやたら同情しようとはしません。
なぜならその人には必ず私には見えない月の裏側があるからです。
私がこの話をするのは皆さんも自分だけが裏側を持っているのではない。
ただ見せてくれてないだけでみんな影のように離れる事のない運命的な苦しみを持って生きていると言いたいのです。
だから…私がここで皆さんに最後のお話をしてこの講義を終えようと思います。
さきほどお話を頂いた皆さん笑顔になっていますね。
青春だけがつらいのではなく私のように中年になっても老年になってもつらいのです。
私が「つらいから青春だ」を書いた時多くの人が尋ねました。
「私も青春でしょうか。
こんなに年を取っているのに」。
その度に私が書くのが…今未来が見えないとか今年を取っていると思っていても絶対に忘れないで下さい。
自分の心に燃え上がる情熱がある限りあなたはまさに「青春」です。
ありがとうございました。
(拍手)2014/11/21(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
白熱教室海外版 ソウル白熱教室〜温かい資本主義(3)名前をなくした女性たちへ[二][字]
ソウル白熱教室アンコール。第3回は、結婚した女性に向けて。韓国では、他国と比べ女性の地位は低く、男性優位の社会である。会場の女性の苦しみに答える。
詳細情報
番組内容
男性優位社会の韓国にあって、女性たちは、結婚によって自分の名前を失い、子どもや夫の成功を自らの成功とみなすようになってしまう。教授は受講者たちに「急に飛び込んだ重大な仕事と子どもの誕生日と大好きなコンサートが同じ夜に重なったら、どれを選ぶか」と投げかける。仕事と家庭と自分、3つの自我を抱えて悩みが尽きない人生で、何に価値を認めるべきか。深い暗闇にある人生をどう生きればいいのか。教授は答えを探す。
出演者
【出演】ソウル大学教授…キム・ナンド
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
韓国語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:10103(0x2777)