福島第1原発事故:事業者賠償16年2月打ち切り案を提示
毎日新聞 2014年12月26日 20時33分(最終更新 12月27日 00時50分)
福島第1原発事故で営業に影響を受けた事業者に対する損害賠償について、経済産業省と東京電力が2016年2月で打ち切る案を福島県の商工関係者らに提示していたことが26日、分かった。文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が昨年12月にまとめた指針では、営業関連の賠償の支払期限を「従来と同等の営業活動が可能となった日を終期とすることが合理的」と記されており、県や商工関係者は実情に沿った賠償の継続を求める方針だ。
避難で営業が難しくなったり、減収となったりした避難区域11市町村の個人事業主や中小企業が対象の「営業損害賠償」は、15年2月分までは避難後の営業状況にかかわらず支払われることが確定していたが、農林水産業以外は同年3月以降の賠償方針が不明だったため、県などは方針を早期に示すよう経産省と東電に求めていた。一方、避難区域外の事業者が対象の「風評被害による損害賠償」については、期限を定めずに損害に応じて賠償することになっていた。
東電によると、「営業損害賠償」と「風評被害による損害賠償」は11年9月の受け付け開始以降、14年11月末までに農林水産業も含めて総額約1兆6940億円が支払われている。
経産省と東電は25日、同県郡山市での県商工会連合会との会合で、農林水産業を除く全ての事業者への賠償を16年2月で打ち切ることを提案。「事業者らの意見を聞いて、今後の方針を決める」と説明した。
同連合会の遠藤秀樹事務局長は「県内の事業者が置かれた立場は、避難の状況や業種によって千差万別。どこかで線引きは必要だと思うが、事故収束や風評被害払拭(ふっしょく)の見通しが立たない現段階で、約1年後の打ち切りは受け入れられない」と話した。
全町避難が続く浪江町に本社がある放射線などの検査会社「東北エックス線」の男性幹部は「打ち切られたら、営業を続けていくのは無理」と訴える。震災後、福島市内に仮事務所を構えたが、約100人いた従業員は避難で全国に散らばり、残ったのは十数人だけ。原発の定期検査の仕事がなくなり、収益は10分の1に減った。「16年2月までに事故前の状態に戻っているとは思えない。一律に打ち切らずに個別の事情を配慮してほしい」と語った。【喜浦遊、土江洋範】