朝日新聞社:「経営陣が編集の独立を尊重」会見で文書発表
毎日新聞 2014年12月26日 20時38分(最終更新 12月26日 23時24分)
朝日新聞社の渡辺雅隆社長は26日、慰安婦問題報道を検証した第三者委員会(委員長=中込秀樹・元名古屋高裁長官)報告書の公表を受けて東京都内で記者会見し、1997年と今年8月の検証記事について「誤りを認めて謝罪し、わかりやすく説明する姿勢に欠けていた」と述べた。朝日新聞社は同日、報告書に対する「見解と取り組み」と題する文書を発表し、経営陣が編集の独立を尊重することや、訂正報道のあり方の見直しを進めることなどを表明した。【青島顕、川口裕之】
22日に公表された第三者委の報告書では、8月の検証紙面で検討していたおわびの掲載に対して木村伊量(ただかず)前社長らから異論が出た結果、謝罪をしなかった経緯が明らかにされた。これについて渡辺社長は会見で「経営陣が原則として記事や論説の内容に立ち入らないことを徹底する」と述べ、「批判に対して自社の立場を弁護する内向きの思考を深く反省する」とも語った。
97年の検証記事で、慰安婦を強制連行したと証言した吉田清治氏を取り上げた記事を訂正せず、「広義の強制性」を強調したことについて、報告書は「議論のすりかえだ」と批判した。渡辺社長は「指摘を受けとめて、全体像に迫るべく、強制性を含めて取材をしていく」と話し、慰安婦問題の取材を続けていく考えを示した。
一方、「見解と取り組み」は、第三者委の報告書で指摘されたことへの反省と、同社が今後取り組んでいくことを列挙している。
吉田証言記事の虚偽性が指摘されてきたのに再取材や検証をせず、放置し続けてきたことについては「改めておわびする。裏付け取材を尽くし、取り消し・訂正をすべきだった」と対応の誤りを認めた。そのうえで、慰安婦問題を継続的に担当する取材班をつくり、「読者が問題を考える材料」を示していくことを表明した。「一連の問題で、社内外からの意見や批判に謙虚に耳を傾ける姿勢が欠けていた」と報道姿勢の問題点も認めた。
報告書が「編集に経営が過剰に介入し、読者のためでなく社の防衛のための紙面を作った」と指摘したことを受け、編集の独立を尊重することを明記した。社外の有識者で構成する常設機関を設け、経営陣が記事や論説の内容に関与する場合には、意見を求めることも盛り込んだ。