生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
「くらしきらり解説」です。
危険ドラッグを規制する法律が改正され今月17日に施行されました。
改正のポイントなどについて寒川由美子解説委員に聞きます。
寒川さんこの法律、薬事法から医薬品医療機器法ですかこれに名前が変わったということですけれども改正によって危険ドラッグの規制はどんなふうに強化されたんでしょうか。
寒川⇒ひと言で言いますと街なかの販売店で堂々と売られているのをなくそうということです。
主なポイントは3つです。
1つは、規制対象の大幅な拡大。
危険ドラッグは幻覚などを引き起こす指定薬物が含まれていれば規制対象になっていましたけれども、法改正で外側の指定されていないものこれも規制の対象になりました。
対象がかなり増えましたね。
はい。
そして広域的な規制です。
指定されていないものについても全国的に規制されることになりました。
さらにインターネット販売対策として、これらすべての広告の禁止が盛り込まれました。
こうした規制の強化で具体的にはどう変わるんでしょうか。
一つ一つ見ていきましょう。
まず規制対象の拡大です。
これまでは指定薬物であれば販売などが禁止されていましたが成分を調べるのに時間がかかりその間に、新たなものが次々に登場して規制を免れていたんです。
いたちごっこでしたね。
そこで今回の改正では商品名やパッケージに着目してこれが規制対象のものに、ある程度似ていれば同じような危険性があるだろうとみなして中身が分からなくても販売できないようにしたんです。
見た目だけでということですね。
はい。
改正法が施行された今月17日、厚生労働省の麻薬取締部などが東京や神奈川、大阪にある販売店に立ち入りを行いました。
危険ドラッグの販売店はことし3月には全国に200店以上あったんですが取締りもあって次々に閉店してこの日、実際に営業していたのは14店舗でした。
ずいぶん減ったんですね。
はい。
このうち5つの店では危険ドラッグとパッケージなどが似ている商品を販売していました。
そこでこれらの店に検査命令というのをかけてその時点で販売されていた50種類の商品を販売停止にしたんです。
中身が分からない段階で販売停止にするんですね。
はい、このあと実際に成分を検査を行って有害だと分かれば改めて指定薬物にして販売禁止にするんです。
今度は禁止になるんですね。
そして規制強化の2つ目ですけれども広域的な規制、これはどういうものでしょうか。
ある店で販売停止にした商品は指定薬物になっていなくても厚生労働省のホームページなどで公表したうえで、全国一律に販売できないようになったんです。
今回の立ち入り検査で販売停止になった商品も近く全国的に販売停止になる見通しです。
そして規制強化の3つ目ですけれども広告の禁止ですね。
これはネット販売を意識したものなんですが商品の写真をホームページに載せたりして宣伝していれば販売していなくても違反となります。
販売停止になったものは載せてはだめということですね。
こうした規制の強化でどれだけの効果があるんでしょうか。
販売店をなくすという意味では効果があると思います。
ただ、規制を免れようとする業者の中にはパッケージを全く違うものに変えるところまた、パッケージに入れずに量り売りするところも出てきているのが実情なんです。
パッケージそのものも、なくすということですね。
さらに、そもそも立ち入り検査を免れようと閉店したように見せかけて、客から連絡があったときだけ店を開ける。
あるいはデリバリーといって店以外の場所で手渡しをする業者も出てきています。
規制をかければ免れようとするいたちごっこは相変わらず続いているんです。
まだ続くということなんですけれども、ではどうしたら危険ドラッグをなくせるんでしょうか。
今回の改正法を水際対策に活用できるかどうかがポイントです。
危険ドラッグの原料は中国などで作られている化学物質です。
これが国際郵便で輸入されているんです。
そこで改正法を国際郵便を扱う税関の段階で活用して国内に入ってくるのをストップさせられないかというわけです。
ここで食い止めるわけですね。
はい。
こちら国際郵便局にある東京税関の出張所です。
海外から航空便で入ってくる小包などのおよそ半数をここで扱っています。
税関の職員が品名や送り主などをチェックしています。
そして、表示に疑問があるとか中身を確かめる必要があるといった場合に、包装を開けて調べるんです。
実際に小包の中身を開けて調べるということもするわけですね。
そうですね。
さらにこちらX線の検査もあります。
こうした税関の段階で改正法を活用できないか例えば危険ドラッグの原料と粉末が似ているとか輸入のルートが同じだといった疑わしい場合に、税関から厚生労働省に連絡します。
そして厚生労働省が検査命令をかけて粉末の正体が分からなくても販売停止、この場合には輸入をストップさせるというわけです。
それなら国内に入ってこないですからね。
ただ、これがそう簡単なことではないんです。
何をもって疑わしいとするのか、あるいは輸入のルートを変えられてしまったらどうするのかといったことについて今手探りの状態で検討が始まっています。
なんとか効果的に活用してほしいですね。
また、水際対策という点ではもう1つ検討されていることがあります。
関税法の改正です。
今までの話は、危険ドラッグの中身が指定薬物かどうか分からなくても流通を抑える対策についてだったんですが今度は、指定薬物と分かった場合に関税法で覚醒剤や麻薬と同じように扱って厳しく取り締まろうという話なんです。
関税法が改正されると具体的にどうなるんでしょうか。
まず税関が独自に密輸事件として調べることができるようになります。
これまで指定薬物と分かっても警察や厚生労働省に通報することしかできませんでしたが、改正されれば税関みずからが強制的に調査できるようになります。
もう1つが、関税法の厳しい罰則の対象になります。
危険ドラッグを規制する法律では罰則が覚醒剤などよりも軽くて輸入しても懲役5年以下でした。
それが関税法で覚醒剤などの密輸と同じ扱いになれば懲役10年以下となります。
より重い罰則になりますね。
実際に改正の動きはどうなってますか。
来年の通常国会で審議される見通しです。
こうした法律の改正で危険ドラッグは本当になくなるんでしょうか。
水際対策の厳しさを国際社会にアピールできれば、そもそも日本に持ち込むことを断念させることにつながると見る専門家もいます。
効果はありそうなんですね。
ただ、すでに厳しく取り締まっている覚醒剤でさえ、密輸されているという現実がありますから完全になくすには息の長い取り組みが必要です。
例えばどんな取り組みですか。
1つはそもそも生産現場、原料の生産現場を何とかできないかということです。
警察庁は先月中国に対して取締りの強化や情報提供を要請しました。
危険ドラッグのまん延に悩む欧米の国々などと連携して粘り強く働きかけていくことが必要だと思います。
さらに依存症の対策も急がれます。
危険ドラッグには依存性がありますものね。
車で危険ドラッグを買いに行ってその場で吸って事故を起こすという人は、すでに依存症に陥っているという指摘もあります。
また危険ドラッグが原因で死亡する人というのは、ことしに入って先月までに111人に上っているんです。
多いですね。
しかし薬物の依存症を治療できる病院は全国に20程度しかありません。
また家族などからの相談体制を整える必要もあります。
さまざまな側面からの対策が必要なんですね。
地方自治体の中には独自の条例を作ったり、不動産業者と連携して販売店を締め出す動きも出てきています。
危険ドラッグを根絶するには、なにより私たち自身が危険ドラッグを許さないという意識で監視を続けていく必要があると思います。
寒川由美子解説委員でした。
次回のテーマです。
担当は室山哲也解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2014/12/25(木) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「危険ドラッグ 規制強化で効果は?」[字]
NHK解説委員…寒川由美子,【司会】岩渕梢
詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…寒川由美子,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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