オイコノミア「旅に出よう!鉄道の経済学」(前編) 2014.11.19


(テーマ音楽)今日の「オイコノミア」は鉄道の経済学!2014年鉄道に関するホットなニュースが相次ぎました。
開業50周年を迎えた東海道新幹線。
こちらは東京駅。
開業当時の姿がよみがえりました。
「鉄道」に潜むさまざまな経済学。
これを知ればもっと鉄道が好きになる!?先生住宅街ですけどね。
何か変わった建物がありますね。
(大竹)そうですね。
あれなんか電車みたいですよ!あっそうですね!高校って書いてありますよ!そうですね。
はい。
これ鉄道高校なんですか?昭和鉄道高等学校。
はい。
へぇ〜!2人が訪れたのは都内にある昭和鉄道高校。
こちらにあるのは「鉄道科」のみ。
1学年の生徒数はおよそ250人で鉄道マンを目指す学生が全国から集まってきます。
まあ将来鉄道会社に入りたいというのが自分の小さい頃からの夢だったんで。
父もこの学校の卒業生で鉄道員を目指してここに来ました。
この学校では実際に使われていた車両を譲り受けています。
それを使って実践に近い形で授業が行われているんです。
(中島)200mぐらいですね。
難しいですね。
それでは「鉄道の経済学」出発!又吉さん今日はねこんなものを用意したんですよ。
おっこれ駅の模型ですかね。
そうですよ。
はい。
又吉さんの人形があるんです。
ああ。
で実際に又吉さんが駅を訪れたとして。
はい。
改札を通って電車に乗るまで。
はい。
又吉さん人形を使って見ていきましょう。
分かりました。
今日は私たちが駅に着いてから電車に乗るまでを経済学の視点で見ていきます!駅に来ました。
はい。
まず来たら…切符買いますよね。
そうですよね。
ここにこう行くわけですよね。
はい。
はい。
そうするとですね2つ先の駅まで行くことにしましょうよ。
2つ先。
はい。
これオイコ駅ですからね。
隣の駅がA駅。
B駅まで行くと。
B駅は220円。
そうですね。
運賃220円ですからB駅までの切符を買いましょう。
はい。
はい買いました。
はい。
電車に乗るときに必要なのは「乗車券」ですよね!ここに1つ目の経済学があります!運賃表をよ〜く見ると初乗り運賃ってその後増えていく運賃よりも高く設定されていますよね。
どうしてなんでしょう?最初の料金が初乗り運賃高いでしょ?はい。
そのあと10円ずつ増えていくとか20円ずつ増えていくっていうのは価格差別でどうしても乗りたい人は少ない距離でも乗ると。
だから高い値段払ってもらう。
で値段が安くなると長距離乗ってくれる人っていうのがいると。
長距離乗る人は安くするとたくさん利用してくれる。
まあねえ。
乗る距離に応じて絶対乗らなきゃっていう人っていうのは短距離でも乗るんで。
う〜ん。
なるほど。
価格差別になってるんですね。
一駅でも乗らざるを得ない人には高い運賃を。
安くなければ長距離を乗らない人には安い運賃を設定します。
そうすれば乗客は長距離を利用でき鉄道会社の利益も増えます。
運賃にはもうひとつ価格差別があります。
切符代の下にもうひとつカッコで値段書いてますよね。
そうですね。
切符の運賃表。
こうなってましたよね。
はい。
これ恐らくこども料金ですよね。
そうですね。
まあ私たち大人なのでこっちの料金払いますけれどもまあ大体こども料金というのが鉄道にはあって子供の場合は安くなってますよね。
はい。
又吉さんどうして「こども料金」ってこんなに安いんですか?子供は小さい…スペース的な問題もあるかもしれないですね。
確かにね小さいことが多いですね。
もし座席が決まっている電車だったら小さくても座席1つ占有しますよね。
あんまり関係ないですもんね。
うん。
家族で出かける場合こども料金が安ければその家族は鉄道を利用すると考えられます。
また子供同士で出かける場合もともとお小遣いが少ないため安くなければ乗らないかもしれません。
こども料金が安いのも価格差別なんです。
運賃の決まり方には更に経済学が潜んでいます。
鉄道事業には駅や線路車両など巨額の投資が必要。
この特殊な事情が運賃にも影響しています。
うわお〜!そうです。
それはやっぱりそのう使う人全員がまあ共有する設備とか。
うん。
そういうメンテナンスとか。
うん。
それは確かに鉄道だけは例外なんです。
施設や設備などの固定費を考慮して運賃が決められてるんですよ。
はい。
どうしてだと思います?どうしてなんですかね?これはね自然独占っていうことが関係してるんです。
自然独占。
はい。
ある地域を例にとって考えてみましょう。
この地域に住んでいるのが10人だとします。
ここにオイコ駅ができ10人全員が利用したとします。
もうひとつ並行した路線ができてノミア駅が作られたとします。
すると2つの駅で利用者の取り合いが生じます。
住民が増えないかぎり駅は2つも要らないことになります。
初めからこの状況が分かっていると巨額の投資をしてまでノミア駅が参入することはありません。
この状態を「自然独占」と言います。
うん。
1社で独占しているっていう事のデメリットっていうのもあるんですよ。
はい。
何だと思います?それやっぱり値段ですかね。
そうですね。
だから競争相手がいないわけだから一番利益が高くなるように値段を設定しますよね。
そうするとたくさん電車を運行させるとですねお金もかかるじゃないですか。
だからちょっともうあんまりお金がかからないように少なめに運転して料金を思いっきり上げると。
はいはい。
そうすると一番もうかりそうですよね。
そうすると利用者にとってはすごく不便ですよね。
本数は少ないし値段は高い。
そういうのがやっぱり独占の弊害なんですね。
なるほど。
規制しなきゃいけないですね。
今の鉄道の運賃の規制のしかたは上限だけが決められてるんですね。
はいはい。
だからこれよりは高くしちゃいけません。
それでそれより低い料金であれば届け出さえすれば認めますよという仕組みになっているんです。
その上限を決めるやり方っていうのが総括原価っていうので決まってるんですね。
はい。
「総括原価」とは営業費や資金を調達するためのコストに適正な利潤を加えたもののこと。
営業費には人件費や車両の維持線路の敷設などの費用が含まれます。
この総括原価と利用するであろう人数から鉄道会社は運賃の上限価格を割り出し国土交通省の認可を受けます。
鉄道会社によって上限価格って違うんですけれども。
例えば東京のある地下鉄の会社だと初乗りの上限価格っていくらで設定されていると思います?初乗り大体僕らが乗ってるのは200円ぐらいですよね。
200円以下が多いですよね。
でも上限価格は310円までというふうになってますね。
それ以下の価格だったらいいってことですが310円つけてるところはあんまりないですよね。
あれ?あったかな?あんまり印象ないですね。
そうですね。
だから上限価格規制があるとはいえ日本の鉄道会社というのは企業努力をしてるという事ですね。
別に310円でもいいけどお客さんのこと考えたりいろいろで下げてるっていうことですよね。
そうですね。
それから鉄道はその路線を独占してるかもしれないですが潜在的に競争相手いるじゃないですか。
車で移動するとかタクシーとかバスとかいろいろありますよね。
それこそ一駅二駅やったら自転車でも行けますもんね。
上限価格よりも低い運賃に設定するのは他の交通手段に対抗するため。
競合相手には飛行機や船バスなどがあります。
そのため運賃を下げてお客さんを増やしたほうが利益が上がるという鉄道会社の判断なのです。
こうした民間企業に対する政府の適正な規制の手法を理論づけたのが今年ノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロールです。
(校長)どうぞ。
はい。
運賃の仕組みが分かったところで応用問題に挑戦してみましょう。
昭和鉄道高校の1年生の授業に参加させてもらいました。
(生徒)礼。
初初しい!教えてくださるのは星山先生。
13年間車掌を務めていた元鉄道マンです!この日の問題は?大阪駅から東京駅までの運賃を求めます。
使うのは時刻表です!まず目的地までの距離を計算します。
その距離に応じた運賃を「普通運賃表」に当てはめる事によって導き出せるのですが…。
又吉さん分かりましたか?ドキドキ。
あっドキドキ。
556.…。
うん。
…4kmですよね。
うんうん。
(星山)はい。
で…。
うん?値段が…。
値段が?8,750円ですね。
はい。
ありがとうございました。
いいと思います!
(拍手)うわ〜お!見事正解!う〜ん。
でも新幹線を使ったら1万円を超えるはずですよね!?どういうこと?
(星山)料金というのは新幹線は今言った在来線よりも速いじゃないですか。
その速さに対して支払っていただくのが料金なんですね。
ですので新幹線だと一番速いのは何が速いですかね?「のぞみ」ですね。
のぞみ号はひかり号よりも高い。
えっそうなんですか!?はい。
というふうなのが料金です。
ですので運賃を支払えば鉄道には乗れるんですけどもそれよりも快適に旅行したい場合には料金というのも支払わなければならないということです。
はい。
ありがとうございます。
いいえ。
いわゆる乗車券の価格。
大阪ー東京間の運賃は8,750円でした。
特急券や指定席券などの価格。
新大阪ー東京間でのぞみを利用すると料金に当たる部分は5,700円。
2つ合わせて14,450円ということなんです。
皆さんご存じでした?
(新幹線の警笛)電車の遅れ「遅延」です。
さて又吉さん。
切符も無事購入したところですし電車に乗りましょうか。
そうですね。
改札を通りましてホームに行きます。
はい。
ホームに到着しましたか?はい到着しました。
間もなく電車が到着しますから待ちましょうか。
はい。
電車が来てますが。
はい。
はい。
電車が来てます。
ん?なかなか来ないですね。
はい。
これ遅延ですね。
遅延?はい。
先生がでも止めてますよね。
まあいろんな障害が起こって止まることがあるんですけど今は私が止めるという障害を起こしてます。
(笑い声)現実ではありえないことですけど遅延自体はよくあることですね。
首都圏ではね今遅延とか運休なんか輸送障害多いですよね。
多いですね。
近年鉄道の輸送障害が増えています。
こちらは輸送障害の件数の推移です。
主な理由は3つ。
自然災害線路内への転落や立ち入りによるものそして車両や信号のトラブルなどです。
中でも特に増えているのが線路内立ち入りによる遅延の増加。
これをいかに減らすかが鉄道会社の課題です。
ねえ。
ああどうも。
こんにちは。
(木暮)こんにちは。
はじめまして。
はじめまして。
よろしくお願いいたします。
電車の遅れを減らすため転落事故の防止に力を入れている会社を訪ねました。
こちらがそのホームドアなんですね。
はいはい。
何年か前からよく見かけるようになりましたよね。
皆さんおなじみのホームドア。
閉まりま〜す。
ホームドアが付いてから事故の件数は減ってるんですか?そうですね。
お客様がホームに転落するということに関してはもうこのホームドアが設置されてからゼロになってます。
へぇ〜!確かにありがたいですね。
気をつけてここを歩いてても結構電車通ると怖いんですよね。
そうですね。
はい。
ホームドアには更に工夫があるんです。
(木暮)分かりました?出てきたの。
出ましたね。
そうなんですよ。
はい。
なるほどなるほど。
今の分かりましたか?電車とホームの隙間に何か出てきましたね!これです。
これ。
こちら可動ステップです。
よくできてる。
可動ステップと言いまして……きつい所が出てしまいます。
そうしますとそういった所に電車が止まりますと…ちなみに1駅分設置するのにおよそ1億円。
更に地下鉄ならではの対策もあります。
自然災害というものも列車の運行に大きな影響を与えますのでそういった災害への対策も取っています。
こちらは地下鉄の通気口。
大雨の時には機械で塞ぎます。
流れ込む水の被害を最小限にして遅延や運休を防いでいるのです。
やりますねぇ!こちらの鉄道会社では正常運行のために年間300億円以上投資しているのだそう。
すごいですね!大竹先生。
鉄道会社がどのような安全対策をしてるのか実際に見てきたんですけど安全にちゃんと正確に運行しようと思ったら膨大なコストがかかるみたいですね。
そうですね。
事故が起きたとき事故処理のお金って結構かかりますよね。
それから鉄道会社への不信感っていうのも無視できないですよ。
結局事故が起きてしまったときの鉄道会社の損失ってかなり大きいんですよね。
ですからそれだけの安全対策をするということですね。
実際に事故などで遅れが生じた場合乗客が被る損失がどのぐらいか計算したものがあります。
朝の通勤時間帯に1分遅れた場合1人当たりの損失は32.8円。
これはもし遅れがなかったらその1分で乗客が稼げたであろう金額です。
例えば一日の乗降者数が日本一の新宿駅。
朝の通勤時間帯に電車が止まってしまい10万人に影響が出たと仮定すると…。
1人当たり32.8円×10万人で1分の遅れは328万円の損失になります。
あは〜っ!1分ですもんね。
はい。
だからやっぱりちょっと電車が遅れるという事のコストっていうのは大きいですよね。
まあね1時間ぐらい止まったりとかありますからね。
ありますよね。
うん。
そうするとねえ。
かなり…。
とんでもない額が…。
そうですね。
いくら又吉さんのギャラが高くてもなかなかカバーできないですね。
全然できないですよ。
うん。
だから相当の額ですよ。
先日ね台風19号でJR西日本って事前に16時以降全ての電車を運休するって発表したんですけど覚えてらっしゃいます?はい覚えてます。
これはもし途中まで行って止まったらすごい困りますけど最初から「16時以降は動きません」と言われてるとそれを計画することができるので私たち被害を最小限にできますね。
まあこういうふうに予定外の事で止まってしまうと一番損失大きいじゃないですか。
あらかじめ計画できないから。
こうやって考えていくとですね事故に対する投資を行わなかった金額と比較すれば鉄道会社っていうのは又吉さん見てらっしゃったとおりかなりの金額を安全に投資しても十分やっていけると。
そういうことしてないと社会的な損失も大きいし事故が起こってしまうとですね鉄道会社の信用も大きく低下しますよね。
だからまあ鉄道会社は一生懸命安全に投資をしていると。
そうしないとやっぱり万一のことが起こったときに私たちの被害はそれ以上になってしまうという事なんですね。
又吉さん今回は駅からみた鉄道のお金について学んできましたけど実際に私たちが電車に乗ろうとして駅から電車に乗るまでこれだけ経済学があること分かりました?そうですね。
身近な鉄道を通しても経済学が見えてくるってことですよね。
そうですね。
まあ次回は引き続き「鉄道の経済学」っていうのをやるんですが今話題の「ななつ星」とか満員電車っていうことをそういう話題を通しながら日本の鉄道の今を経済学で考えていきたいと思うんですよ。
分かりました。
先生僕は一体いつ電車に乗れるんでしょうか?まだ故障中です。
ハハハッ。
そうなんですね。
はい。
2014/11/19(水) 23:25〜23:50
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「旅に出よう!鉄道の経済学」(前編)[字]

通勤や買い物から旅行まで、何かとお世話になる「鉄道」を経済学で一刀両断!?まずはその料金体系。初乗り運賃はどうして決まる?そこには鉄道ならではの事情があった!

詳細情報
番組内容
鉄道運賃にはさまざまな事情が働いている。おおむね初乗り運賃がやや高めに設定され、距離に応じて少しずつ料金が上がっていく。初乗り運賃が高いのはなぜ?そこに潜む経済学とは…。また鉄道は新規参入が非常に難しい業種。そのため会社は独占状態に陥りやすい。料金を不当に高く設定することも可能だ。これを防止するため、国土交通省は運賃の上限だけを定めている。眼からウロコの鉄道料金事情に迫る。
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】大阪大学教授…大竹文雄,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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