今から400年前中国で生まれた処世訓「菜根譚」。
実業家や政治家野球監督などに愛読者が多いのには理由があります。
それは社会や組織の中で人はどう振る舞うべきかが語られている事。
出世競争派閥争い。
社会の荒波をくぐり抜けてきたであろう作者洪自誠。
酸いも甘いもかみ分けたその言葉の数々は現代にも大きな説得力を持っています。
「菜根譚」から人づきあいの極意を学びます。
(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…さて今回は「菜根譚」。
おいしそうな名前のね「菜根譚」を読んでおりますけど「人づきあいの極意」を学んでいこうと思うんですけどもお得意そうですよね。
…って見られるでしょ。
あのねびっくりするほど駄目なんですよ。
僕携帯の中にいろんなカメラ量販店とかの電話番号入ってますよ。
お客様センターとか入ってますけど個人の電話番号が40件ぐらいしか入ってないんですよ。
それぐらい僕は駄目なんですよ。
40件?40件ですよ。
1,000件2,000件入るようになりましたってカタログに書いてあるのにもう荷が重い。
じゃあ今日はちょっと極意を。
学びます。
指南役の先生ご紹介いたしましょう。
今回も大阪大学大学院教授でいらっしゃいます湯浅邦弘さんです。
よろしくお願いいたします。
意外ですね。
そうですね。
携帯に40件ですってお友達。
ちなみに私も20件くらいしかないんです。
先生も学んで下さいよ。
はい。
では早速「菜根譚」の言葉を見てまいりましょう。
今回もあのおじさんが教えてくれますよ。
これは漢詩ですか?うん?ああ。
今のあなたにふさわしい言葉を見繕ってあげるよ。
お願いします。
じゃあどうぞ。
私今大事な局面におりまして。
同期とどっちが課長になれるかという。
つきましては何かこうライバルに勝つ心構えとなるような言葉ありますでしょうか?なるほど。
じゃあ…こんな言葉はどうかな?これはどういう意味ですか?これにはねこういう事が書いてある。
「狭い小道で人と出会ったら自分の方から一歩よけて先に相手を通してやりおいしい食べ物は3割ほど相手に譲って十分に食べさせてやる。
このような心がけこそこの世を渡っていく上で最上の安全安楽な方法である」。
譲ってやればいいじゃないかって事。
そんな…。
全く納得できません。
トップを目指して競争するから向上できるんじゃないですか。
アイドルだって選挙して順位づけする時代ですよ!?そんなに競争に勝つ事が大事かね?当たり前です。
受験も就職も出世も人生というゲームは他人との競争に勝つから楽しいんですよ。
まああんたもいつか分かる時が来るから。
持っておきなさい。
サラリーマンの彼の気持ちも分かります。
むしろ僕なんかより健全だと思う。
だって彼は人生というゲームは他人との競争に勝つから楽しいって言ってるんだから俺は負けるのが怖いの。
負けるのが怖い?負けるともうひどい目に遭い続けるんだろうなという恐怖で昔ほどがつがつ勝ちたいとは思わないけど負けるの怖いみたいな。
ちょっとでも分かりますね。
なるほどな。
先生今出てきた言葉こちらの言葉ですね。
小道で人と行きあたる時ですね先に行かせてやるという事ですね。
それからおいしいごちそうは3割ほど我慢して譲ってあげると。
これが「菜根譚」の非常に特徴的な…今伊集院さんおっしゃったようにその負ける事が怖いという「菜根譚」大きなヒントを述べてるんですけども。
負け続けるのか。
そうじゃないんですね。
逆説的な言い方なんですけどもこれが「菜根譚」の譲る思想なんですね。
「急がば回れ」というか。
ですね。
あと本当の意味での「情けは人のためならず」みたいな。
でもやっぱり僕らは給料も歩合給ですから負けるという事は。
え?そうなんですか?はい。
歩合給でございますんでレギュラー番組例えば誰かにとられる負けるという事は要するにごはんが食べられなくなるという事だから勝たなきゃってなっちゃう。
中国という国は古来国境を接したたくさんの国があって常に戦ってるわけですね。
そういう中で常に我を張って生きていかないといけないんですね。
その時に「菜根譚」というのは非常に不思議な事を言うわけですね。
「譲りましょう」とこれは…これはどういう事ですかね?そういう現実を経験しているわけですね実際にね。
こういう言葉があります。
まあ完全な名誉立派な節操というですね要するに名声ですねそれを独占してはいけないと。
先輩あるいは仲間部下の協力があったからできたんじゃないかとそういう思いを抱くという事が大事なんですね。
プロ野球選手とかでも当時ね後楽園スタヂアムのホームラン賞というのにいろいろ化粧品とかが出てたんですけれども王選手がホームランを打つたびにバッティングピッチャーの人や用具係の人の奥様が喜ぶっていう。
要するにみんな「私のホームランはこの人たちのおかげです」って王さんはホームラン賞を全部あげちゃうから多分王さんがホームラン打つごとにそういう用具係の人の奥さんたちはどんどんお肌がきれいになっていったと思います。
でもあの人に打ってもらいたいから練習最後までつきあおうという用具係の人もバッティングピッチャーの人も当然出てくると思うんですよ。
王さんにとっても得みたいな事につながる。
結局は回り回って得になるんですね。
「菜根譚」は決して…やっぱり人づきあいをうまくしてみんなで幸せを求めましょうというそこが根本にあるんですね。
おや今日はどうした?部下に好かれる上司になりたいんです。
私は部下を飲みに連れていきおごってやりました。
仕事上の失敗も大目に見てやりました。
しかし先日ついちょっと声を荒げて叱ったんです。
そしたら急に部下は私を避けるようになって…。
なんて恩知らずなやつなんでしょう!そりゃあんたがまずかったな。
えっ?はい。
何て書いてあるんです?こういう事が書いてある。
「恩恵を施すにははじめあっさりしておいて後から手厚くするのがよい」。
「はじめに手厚くして後から薄くすれば人はその恩恵を忘れてしまう」。
「威厳を示すにははじめ厳格にして後から寛大にするのがよい」。
「はじめゆるやかにしておいて後から厳しくすると人はその厳しさをうらむ」。
部下にはね最初ビシッと厳しさを教えてから後で優しさも見せる。
あんたがやったのは逆だったんだよ。
でも少ない小遣いからあんなにおごったのに。
ほれこんな言葉もある。
「部下の功績と過失は少しも混同してはならない。
混同すれば部下は怠け心を抱くようになる。
これに対して個人的な恩義や遺恨はあまりにはっきりしすぎてはならない。
もしはっきりしすぎると人は背き離れる心を起こすようになる」。
おごった事を恩を着せたりいつまでもねちねちと嫌みを言ったりしない。
部下はそういうところを結構見てるのよ。
なるほど…。
あの色紙をちょっと家に貼っときたい感じの。
だってすごく分かりますよね。
それこそツンデレの感じかな。
本当に好かれようと思ったら一番最初からデレデレしない方がいいよっていう。
恩の場合は最初はあっさりして徐々に手厚くしていく。
逆に威厳の場合は最初びしっとまず厳しくする。
後から寛大にすると。
我々教員と学生の間というのは上司と部下の関係ではないんですけどもやはり毎年新学期にですねこれを間違える人がいるんですね。
やはり最初厳しくこの先生は厳しい先生なんだという事を教えてあげないといけないんですね。
湯浅先生厳しいんですか?いや私優しいんですね。
いやでもねすごいこれね本当に思いますよ。
最初に厳しい人がちょっと優しくなるじゃないですか。
最初に優しい人がちょっと厳しくなるじゃないですか。
この人すごく嫌な人に思われますよね。
嫌な人になったっていう。
こっちの先生の方が何か印象に残りますよね。
落語家時代にそれこそ亡くなった立川談志師匠が厳しいで当たり前の人ですけど何年かたって初めて「お前はバカの中でもましなバカ」と言われた時のうれしさ。
ああ。
ずっと褒めてくれる人が「この人他の人も同じぐらい褒めてるな」というのよりも厳しい人がちょっと褒めてくれた時。
まあ人づきあいの極意をずっと説いてるんですがこういう言葉も実はあるんですね。
物事はですね急げば急ぐほどいいというものではないと。
急いでも明白にならない事もある。
あまりにも他人に対して性急にですねあれをやれこれをやれというと怒りを招いてしまいますと。
これすごいですね。
何か子育てと一緒です。
あ〜。
今めちゃくちゃ私に響きましたけれどもすごく大変なんですよ。
靴履いて出かけるママ急いでるという時にもう履かせたいんだけど「私がやる」って言うんですよ。
でもちゃんと履かせるとうわ〜っと泣いて結局泣かしてほんと何度も失敗してるんですけど10分ぐらい履かなくて出られなくてママ諦めて「じゃあいいよ好きにして」と言ったらようやく自分でやるっていう。
でもそれがきっと自分で靴ひもをちょうちょ結びにできるようになったりとかするスピードはずっと履かしてあげてたより全然速いでしょきっと。
きっとね。
だんだん母も学ぶんですけど待つという事がものすごく大事。
これがなかなかできない。
「急いては事を仕損じる」ということわざもあってやっぱり時間をかける事でむしろうまくいくんだという事はあるんですね。
いや〜でもしかし「菜根譚」は譲るし待ちますね。
待ちますね。
それは特徴的ですね。
他人の成長をですね他人に対してもぐっと我慢して待ちましょうという事を言うんですよ。
あの〜また相談に乗って頂きたいのですが…。
今日はどうしたの?家庭の事なんです。
妻がいつも風呂やトイレの電気をつけっぱなしで私帰る度にいつも消して回るんです。
ハハハ…。
息子も妻に似たのかいつもおもちゃを出しっぱなしでほんとにだらしない。
そのつど口うるさく言うんですがどうも空気が険悪になってぎすぎすしちゃって…。
はい。
どういう意味なんですか?「家族に過失があったら激しく怒ってはならずだからといって放っておいてもいけない。
もし直接その事を言いにくければ他の事にかこつけてそれとなく注意し今その事に気づかなければ別の機会が来るのを待ってもう一度注意する。
ちょうど春の風が凍った大地をとかし和気が氷を消し去るように。
これが他でもない家庭の模範である」。
家族には感情的になっちゃ駄目。
ゆっくり時間をかけてうま〜く少しずつ変えていくの。
仕事上のミスと同じくきっちりやろうと思ったのに…。
仕事とね家庭は違うの。
家族を大事にしないとねある日突然もぬけの殻。
ハハハ…あれはショックだよ。
えっ?何か身に覚えありそうですね。
まあ持っていきな。
(ため息)家族に過ちがあった時にこの激しい怒りを発してはならない。
だけれども放っておいてはいけないと。
まあ家族というのは愛情が深い濃いわけですね。
だから普通は「骨肉の親」と言って親しみがあるわけです。
しかし一旦こじれると…「骨肉の争い」になっちゃうんですね。
だからこの暴怒に気をつけましょうと。
さっきのと次いで面白いのは家族ってそういう成績で表すような事でもなく。
そうですね。
家族とは何だみたいな事を考えるのにとてもいいきっかけになる言葉かな。
家族に関してはですねずばりこういう言葉があるんですけども。
仏教では極楽西方浄土に行かないと仏様に会えないわけですけれども仏ははるかかなたにいるんじゃないと。
家庭の中にあるんだというわけですね。
誠の心と和らいだ気「和気」とありますね。
そして穏やかな顔つきと優しい言葉。
そして親兄弟が体がとけあうようにそして気持ちが交流するようにそうしておれば殊更に座禅を組んで息を整えたりする必要はないと。
そういう事よりも何万倍も効果があるというふうに言ってるんですね。
ママが優しい時は子供たちも「お手伝いしようか」みたいな。
逆に言えばその子供がやれおもらしをしたやれ何かをひっくり返したってなってても穏やかでいれるというのはそれは座禅を組むよりもずっと修行になりますもんね。
そういえば「和気あいあい」って言いますけど。
言いますね。
中国の重要な思想の一つに「気」の思想というのがあるんですね。
この世界は「気」で出来ていると。
これは目に見えない物質あるいはエネルギーなんですけどもこの空中にも「気」があるし私たちの体の中にも流れていると。
「気」というのは感応するんですお互いに。
あ〜なるほど。
これが家庭円満の秘けつなんですね。
そうかいい「気」を出せばそれに応えるいい「気」が返ってくるという。
人づきあいの極意これはひと言で言えば和気という事になると思います。
この言葉全体がとてもいいな。
私も穏やかになれるかな。
穏やかになりましょうよ。
なりましょうね本当に。
さあところであのサラリーマン出世できたんでしょうか?ああ久しぶり。
どう?出世できた?駄目でした…。
私は部下に裏切られました。
2人でリサーチした取って置きの企画を部下は私の全く知らない間に私のライバルと組んで社内提案したんです。
それが採用されてライバルは課長に昇進。
私は部下も昇進も失いました。
いや〜そりゃ災難だったねえ。
部下を信用してたんだ。
はい。
疑いもせず…。
私がばかでした。
そんな事はないよ。
ほい。
どういう言葉ですか?「人を信用する者は相手が全て誠実であるとは限らないが少なくとも自分だけは誠実であるといえる。
逆に人を疑ってかかる者は相手が全て偽りに満ちているとは限らないが既に自分は心を偽っている事になる」。
あなたは人を誠実に信じた。
その自分の心には胸を張っていいんじゃないかね。
はあ…。
どう?休みでも取って温泉にでも行ってきたら?温泉…。
妻が行きたがってたんですよね。
ああ…。
そうします。
はい。
ハハハハ…。
前半後半分かれるんですけど前半の人を信ずる方なんですけどね。
人を信じても人に裏切られる事があると。
全ての人が誠実だとは限らない。
でも人を信じたという段階で少なくとも自分だけは誠実だと言えるというふうに言ってるんですね。
じゃあ疑う場合どうなるか。
相手が必ずしも皆うそ偽りで固まってるわけではないと。
しかし他人を疑ったという時点でもう既に自分の心は偽ってしまっているんだと。
400年前のものに対して最先端の事なんだけどスマホのアプリに彼氏が今どこにいるかを逐一観察できるっていうアプリケーションがあって。
え〜!すごいんだよ。
いつもと違う帰り道を通っただけで「いつもと違う行動をしてます」とちゃんとメールが来る。
でね最新型はそれをごまかせるアプリ。
そうだよね。
これを入れ合ってるという事はどんなにつまらないというかより不幸に近づいてるか。
そうですよね。
それが特にその後半の方の感じで。
しかし彼が最終的にたどりついたこれ一つの終着点ではないかと思うんですね。
こういう気持ちを1人でも2人でも持っていくあるいはだんだんこういう人が増えていけばおのずから良好な社会ができていくんですね。
そうですね。
何かすごい。
400年前に言ってるんだなぁ。
誠を持って譲りましょう。
そういう事ですね。
ただ負けたくない。
まあまあ難しい。
いつまでも終わらない。
ちょっと自問自答しましょう。
自問自答しております。
先生どうもありがとうございました。
はいどうもありがとうございました。
(テーマ音楽)2014/11/19(水) 23:00〜23:25
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100分de名著 菜根譚 第3回「人づきあいの極意」[解][字]
「菜根譚」には、交際術に関する具体的な指南も数多く記されている。第3回は「家族との接し方」「組織人としての振舞い方」等「人づきあいの極意」を読み解く。
詳細情報
番組内容
政争にもまれさまざまな人間模様を見続けたと推測される洪自誠は、人間洞察の達人でもあった。「菜根譚」には、「人づきあいの極意」ともいうべき交際術も数多く記されている。「家族との接し方」「友人との接し方」「組織人としての振舞い方」「人材育成法」……およそ人とかかわるあらゆる局面で、どう振舞ったらよいかを具体例とともに細かく指南しているのだ。第3回は、「菜根譚」から「人づきあいの極意」を読み解く。
出演者
【ゲスト】大阪大学大学院教授…湯浅邦弘,【出演】平泉成,森塚一真,【司会】伊集院光,武内陶子,【語り】小野卓司
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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