味わい深い一品です。
日本古来の食とお寺には深い関わりがあります
お寺に受け継がれてきた無駄のない食の中に心と体を豊かにする知恵が詰まっています。
そんな各地の「お寺のごはん」を私とよた真帆が訪ねました。
「お寺のごはん」から日々の暮らし自分自身を見つめ直すヒントがきっと見つかるはず
京都・一休寺に500年もずっと受け継がれてきた一休寺納豆の未知の味に迫ります。
うまみが凝縮した秘伝の寺納豆。
さてどんな味わいなのでしょうか?
こんにちは。
とよた真帆です。
「趣味Do楽お寺のごはん〜心と体が潤うレシピ〜」。
教えて下さるのは料理僧の吉村昇洋さんと青江覚峰さんです。
(3人)よろしくお願いいたします。
料理僧として食を切り口にお寺を身近に感じてもらおうと取り組む吉村さんと青江さん。
これまで番組ではお寺に伝わるお粥や煮物豆腐料理について学びながら2人の料理僧から家庭でも作りやすいレシピを教わりました。
次回以降も唐招提寺の餅や深大寺のそばなど伝統的なお寺と食の関わりを通して心も体もきれいになるようなレシピをご紹介していきます。
こちらの納豆でございますが。
一休寺納豆ですね。
そうですね。
一休さんはよくご存じで?私一休さんがですね宗派自体は違うんですけれども同じ禅僧として尊敬をしております。
青江さんはこちらの納豆ご存じでしたか?恥ずかしながら浜納豆とかそういうものは存じ上げているんですけども一休寺納豆というのは初めて拝見させて頂きました。
「寺納豆」とは納豆菌で作るおなじみの糸引き納豆と違いみそと同じようにこうじ菌を使って発酵させた納豆の事。
平安時代には「塩辛納豆」とも呼ばれかつては各地のお寺で広く作られていました。
現在では一休寺納豆の他京都の大徳寺の塔頭で作られるものや浜松の大福寺のものが有名です。
しかしだんだん作る人が限られ今や寺納豆はとても貴重で珍しい食材です。
吉村さん青江さんそんな寺納豆で有名な京都・一休寺さんを取材してきたのでちょっとご覧頂けますか?
(吉村青江)はい。
私が向かったのは京都駅から南へ電車でおよそ40分ほどのところにある京田辺市です。
のどかな田園風景が広がり静かで穏やかな空気が漂っていました
生け垣沿いにひっそりと佇む一休寺を見つけました
一休禅師が60歳を過ぎてからこの地に住んだ事にちなんで親しみを込めて「一休寺」と呼ばれるようになりました
枯れ山水の庭としても知る人ぞ知るお寺。
町なかの喧騒を逃れ静けさを求める人の隠れた人気スポットです
ここ一休寺で秘伝の寺納豆はどのように作られているのでしょうか?
こんにちは。
失礼いたします。
こんにちは。
はじめまして。
とよた真帆と申します。
出迎えてくれたのは…
一休寺では代々の住職が寺納豆の製法を継承してきたそうで現在は息子である副住職と共にこの寺の中で作り続けているとの事。
早速ご住職に一休寺納豆を作っている場所に案内して頂きました
あっもう入った瞬間にすごいいい香りがしますね。
そうですね。
ちょうど干してて。
あっすごい。
わっうわ〜いい香り。
甘い。
少し甘いような感じもしますしおしょうゆの匂いがね。
そうですね。
おしょうゆの最初に出来上がる時の原形の。
そういう匂いだと思うんです。
私どもでは「一休寺納豆」というふうに言ってるんですけども毎年7月の一番暑い頃土用の頃に仕込みをするんですけども。
毎年7月には一休寺納豆の仕込みは始まります
蒸した大豆炒った大麦をひいた粉塩水を加えて混ぜこうじ菌を加え2日間発酵させます
これを天日干しにするのですがおけに仕込んだものを晴れた日には毎日欠かさず返すのでかなりの重労働です
(田邊)まだ最初はお水もありますから柔らかいんですけどもだんだんこのような状態になってくるとこれではかききれないので最近はスコップを使ってするんですね。
すごい力作業ですね。
発酵食品ですから毎日回してあげないと駄目なんですね。
ぬか床と一緒だ。
そうなんですね。
あっ下がほんとに黄土色。
これがだんだん順番にかき混ぜていくとだんだんなっていくという事なんですね。
ほんとにかき混ぜる作業が大事というのが分かりますね。
すごい時間かかりますね。
これを1年かけて天日干しを繰り返し水分がなくなるまでうまみを凝縮。
更に1年寝かせて熟成させ2年たったものが完成品となります。
そもそもこの一休寺納豆はどのように作られるようになったのでしょうか?
室町時代の僧侶一休宗純。
もともとは天皇家ゆかりの生まれとも言われ京都・大徳寺の住職を務めるなど禅宗の中でも高い地位についていた人物です。
しかしその人柄は自由奔放。
権力とは一線を画し身分に分け隔てなく誰とでも接し庶民から親しまれました。
時は応仁の乱の直前。
混乱を極める都を避け現在の一休寺がある薪村へと移り住みます。
この薪村は名前のとおり薪を売る事を生業としていた村。
村人の暮らしぶりを見てその助けになるものは何かと考えた一休は禅僧の間で秘伝だった寺納豆の製法を人々に伝授したと言われています。
戦乱の世でも栄養価の高い保存食があれば生き残れる。
更にこれを作って売れば村人の収入の足しになるとの思いがあったと伝えられています。
庶民と共に歩んだ一休禅師からの贈り物。
それが一休寺納豆だったんですね
さてお味の程は?
(田邊)どうぞお召し上がり下さいませ。
先ほどの納豆作ってから2年たったものなんですけどもそういう一つ一つ豆の形が残ってるんですね。
先ほどはちょっとふっくらと大きかったですけれども小さくなってやはり水分もなくなって2年たって。
そのまま?そのまま食べて頂いてもいいですね。
うん。
ほんと濃縮された。
だからごはん欲しくなります。
うん!ごはん進みますか。
おいしい!何でしょうこれは。
後から後からうまみが出てくる。
最初はね塩辛いんですけども皆さんに「口の中で2〜3分たってくるとまた違う味しますよ」っていう。
本当にそのとおり。
奥行きを感じます。
初体験ですねこれは。
うん!これだけでちょっとごはん10杯いけそうな。
ウフフフ。
うわ〜おいしいですね。
京都では昔からこの寺納豆は和菓子に用いられてきました。
甘みの中に塩気とうまみが広がり通好みの味わいです
そしてこちらは1年前に地元の洋菓子店が作ったフランス風クッキー。
サクサクした生地に濃厚な一休寺納豆の味がプラスされた新感覚のスイーツです
また地元のフレンチレストランのデザートとしてこんなスイーツも登場。
一休寺納豆が隠し味のマカロン。
何とも斬新な一品です
このレストランでは地元野菜を使った創作料理にも一休寺納豆を取り入れ濃厚な味わいを醸し出しています
寺納豆は古くて新しい調味料。
いろんな料理に応用できるパワーを秘めていました
一休さんがいらっしゃった時に村人に作り方を教えたというのはどういう思いで?一休さんこんな歌がありまして…食べてそしてやっぱり一生懸命頑張って生きていくという事が大切ですよという事だと思うし。
ですからやっぱり今まで伝わってきたそのものを次の代に伝えていくという事がここの住職に座った一つの使命だというふうに思いますしそういう形の中で代々この一休さんの作られた納豆というものを残しておきたいなとそう思ってるんです。
代々の住職に受け継がれてきた一休寺納豆。
私にとってはこの古い伝統の食材がとてもすてきなものに感じました
はい。
まさに一休禅師からの贈り物。
そうなんです。
いろんな意味で感動してしまいまして。
頂いても思ったんですけどほんとに体にいいなというのが。
しみじみするっていうか。
やっぱ思いもすばらしいですよね村人のためにっていうね。
民衆のためにこれを伝えていったという優しさ。
誰かを思う気持ちからこういうものが生まれたかと思ってそれも含めてすばらしいと思います。
吉村さん冒頭で一休さんをとても尊敬されているとおっしゃってましたけれどもその一休さんが後世に伝えたこの納豆で今日お料理をいろいろ作って頂きますがどんなお料理にしようかなと思ってますか?これはもうほんといろんな事が考えられますよね。
可能性がものすごくたくさん。
じゃあ今日は吉村さんにお任せいたします。
あら?そんな事がありえるんですか?青江さんどうするの?お任せして僕ちょっと一休禅師の事あまり知らないので今のうちに本を読んでおきたいと思います。
じゃあすみません。
よろしくお願いいたします。
真帆さんもよろしくお願いします。
はい頑張ります。
責任重大ですね。
ほんとですね。
任されちゃいました。
任されちゃいましたよ。
では吉村さんなりの寺納豆を使いやすくするアイデアはありますでしょうか?あります。
寺納豆を…ペースト状!?はい。
これだけ食べてももちろんおいしかったと思うんですが更に使いやすくするためにはペースト状にしていろんな調味料として使っていくというのもありだと思うんですね。
あの寺納豆というと一般の方はどこで手に入るのかなってちょっと戸惑う方もいらっしゃると思うんですけど普通に町で手に入るような代用品というものはありますか?そうですね。
寺納豆ってその地域地域にあるお寺で文化として残っているものなんですけれども全国的に手に入りやすいものというと中華食材でよく使う豆。
あ〜豆の味。
…に非常に近いんです。
もともと原形が豆から日本に入ってきてこういった寺納豆になっていったと言われておりますので。
じゃあ豆をまた自分なりにアレンジしてごまを混ぜたりさんしょうを混ぜたりというので近くなるという事ですね。
まず寺納豆をすり鉢でペースト状になるまですり潰していきます。
いい感じで潰れて。
うんすぐ潰れますね。
あとこのごまペーストに油が含まれてますのでより滑らかな感じになっていきますのでこれがまたいいんですね。
そうですね。
さんしょうを加えていきます。
寺納豆の中でも浜納豆と呼ばれる浜松・大福寺の納豆にはさんしょうの風味がついているので今回はそれをヒントにした吉村さんのアイデアレシピです。
うんちょうどいい感じの。
さんしょうも利いてます。
これで完成という事になります。
これが出来上がった寺納豆ペースト。
パンチの効いた調味料として重宝します。
今日はこちらを使ってどんなお料理を作って頂けるんでしょうか?はい。
青江さんにも任されたので取って置きのレシピ。
あっ取って置き!何だろう。
今日は「じゃがいもポタージュの寺納豆ソース」。
あ〜おいしそうだなあ。
これはおいしいですよ。
はい楽しみにしてます。
よろしくお願いします。
今回作るのはじゃがいもの優しい風味と口当たりを生かし一休寺納豆で味を引き立たせる「じゃがいものポタージュ寺納豆ソース」です。
使う材料はこちら。
先ほど作った寺納豆ペーストを昆布だしでのばしてソースにします。
まずは丸ごと下ゆでしたじゃがいもの皮を熱いうちにむきます。
熱いうちでしたらつるっと。
つるっといける?はい皮むけちゃいます。
あ〜ほんとだ。
あら簡単!あら簡単。
まさかこんなに簡単に。
今度は先ほど作りました寺納豆のペーストを昆布だしでのばしてソースにしていきます。
押し潰すような感じでやっていきましょう。
万能ソースですねこれもしかして。
これ実は何にでも。
何に合いますか?これは普通に野菜スティックのディップみたいな形でソースとして使って頂いてもいいですし。
あとは田楽みたいな形で焼いた例えばなすだとか生麩だとかそういったものなんかに塗って焼いて頂いても。
いかがでしょう?はいこれぐらいで結構です。
じゃあこれからスープを作っていくわけですが。
まずじゃがいもをミキサーの中に入れていきましょう。
ミキサーにゆでたじゃがいも昆布だし豆乳を入れます。
こちら何でしょう?こちらがえごま油ですね。
えごま油。
これ入れる事によってどんな効果があるんですか?えごま油というのは油の中でも生食に向いてるんですね。
また最近非常に健康にいいと言われている油ですので是非摂取して頂きたいと思います。
お塩ですね。
これは味付けをするための塩というよりは少し風味を際立たせる味を引き出すためのお塩。
ちょっと少なめですね。
そうなんです。
ここが一つポイントという事で。
ポイントですね。
こちらで作ったこの塩味を利かせるためにほんとに隠し味程度という。
これは薄味にしておくという事ですね。
では…。
ではミキサーにかけていきましょう。
はいこれぐらいで結構です。
見てみましょう。
お〜おいしそう。
何かミルクシェークのような色合いといいますか。
ほんとそんな感じですね。
これを鍋で温めていきます。
これは強火でいいですか?これはもう中火ですね。
中火でグツグツグツグツ火を入れていくというところになっていきます。
しっかり煮立たせてカプチーノのようにクリーミーな泡が立ってきたら盛りつけです。
はい。
それぐらいにしましょう。
そしてこれはどのぐらいの分量で?少し落とすような感じでいいと思いますね。
はい。
これを竹串で…。
模様を描くように。
模様を描くように。
こんな感じでやっていきましょう。
素材の甘みが生かされた風味豊かな「じゃがいものポタージュ」。
寺納豆の濃厚なコクと強いうまみを生かしたソースが優しい味わいを引き立てます。
寺納豆ペーストは野菜スティックにも添えました。
今日のメニュー完成です!青江さん。
はい。
何か随分難しい顔してましたけど何してたんですか?勉強してましたよ。
あっこれがじゃあ先ほどのあの一休寺納豆。
いい香りですね。
ほんとにいい香りですね。
(3人)いただきます。
うんおいしい!おいしいですね。
何か今まで頂いた事のないじゃがいものスープですけど喉の奥で鼻に抜けてくるのが寺納豆なんですよ。
フフフフフ。
だから味わった事のないスープだなと思うんです。
じゃがいもがすごい優しい味なんですけれども味わいはしっかりしてておいしいですね。
ほんと。
すごいクリーミー。
「この泡がおいしい」っておっしゃったのが分かりました。
よかったです。
うん!おいしい!合いますね。
合いますね。
これは1年後にはあちこちのお店で出てくるんじゃないですか。
出る!出るね。
ほんとですか?何かどこかさ魚介のちょっと内臓系の濃さみたいな感じがしません?スティックで食べると。
ちょっとアンチョビー的な?アンチョビー的な!ジャパニーズバーニャカウダですね。
そうです。
この一休さんが伝えた村人のために大事に伝えた納豆がこの何百年の時を経てまだ残ってそして今だからこそこのお二人のような方によって新しいお料理に生まれ変わるというその流れがねとても感動したといいますか。
私もちょっと勉強してみます。
一休さんの事。
吉村さんはどう思われますか?この納豆。
やはりこの…先ほど真帆さん言われてましたけどその古いものというかずっとつながってきたものっていうしかもそれがしっかりと僧侶の手によってつながってきたというのが私もすごく驚いたんですね。
まさかお寺のご住職と副住職だけが作っている。
それをずっと続けてこられたというのはこういう伝統の残し方というのがあるんだなというところにすごく感銘を受けました。
これはでもほんとにおいしいですね。
今日もおいしく頂きました
ごちそうさまでした。
(3人)ごちそうさまでした。
2014/12/24(水) 21:30〜21:55
NHKEテレ1大阪
趣味Do楽 いただきます お寺のごはん〜心と体が潤うレシピ〜 第4回「納豆」[解][字]
「寺納豆」と呼ばれる糸を引かない納豆をご存じ?あのとんちで知られる一休さんが製法を伝え、今も京都・一休寺の住職によって手作りされている独特の納豆の味わいとは?
詳細情報
番組内容
京都・酬恩庵一休寺には、500年もの間守られてきた味がある。「寺納豆」と呼ばれ、大豆とこうじ菌、塩を使って作られるみそに似た独特の納豆だ。全国的にも珍しいこの納豆を、一休寺の住職は、代々手作りしてきた。地元の洋菓子店やフレンチの店でも応用される、古くて新しい味。そのおいしさとは?料理僧の吉村昇洋さんが、この納豆をアレンジした寺納豆ソースを考案。じゃがいものポタージュに添える斬新な一品を紹介する。
出演者
【案内人】とよた真帆,【出演】酬恩庵一休寺住職…田邊宗一,曹洞宗普門寺副住職…吉村昇洋,浄土真宗緑泉寺住職…青江覚峰,【語り】青井実
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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