味わい深い一品です。
日本古来の食とお寺には深い関わりがあります
お寺に受け継がれてきた無駄のない食の中に心と体を豊かにする知恵が詰まっています。
そんな各地の「お寺のごはん」を私とよた真帆が訪ねました。
「お寺のごはん」から日々の暮らし自分自身を見つめ直すヒントがきっと見つかるはず
今日のテーマは…
東京・本行寺には700年以上もずっと受け継がれてきた豆腐料理があります。
その優しい味わいを通して滋味豊かな豆腐の魅力を探ります
こんにちは。
とよた真帆です。
「趣味Do楽お寺のごはん〜心と体が潤うレシピ〜」。
教えて下さるのは料理僧の青江覚峰さんと吉村昇洋さんです。
(3人)よろしくお願いいたします。
料理僧として食を切り口にお寺を身近に感じてもらおうと取り組む2人に8回にわたり取って置きのレシピを教わります。
吉村昇洋さんは福井の永平寺で修行。
現在はお寺で精進料理塾を開く他大学の講師や書籍の執筆など幅広く活動しています。
青江覚峰さんはアメリカの大学で学びビジネスマンを経て僧侶となり食と仏教に関するユニークな試みを各地で行っています。
2人にこれまでお粥や大根の煮物など家庭でも作りやすいレシピを教わってきました。
次回以降も唐招提寺の餅や深大寺のそばなど伝統的なお寺と食の関わりを通して心も体もきれいになるようなレシピをご紹介していきます。
今回の食材は「お豆腐」という事で私たち日本人なら毎日でも頂くような食材ですけれどもこのお豆腐というのはどういう位置づけでしょうか?まずやっぱり「お寺のごはん」だと動物性のたんぱく質をほとんどとる事がないんですね。
もう肉ですとか魚をとる事がないのでどうしても不足しがちなたんぱく質を植物性のたんぱく質で補うという事で。
重要ですよねお豆腐って。
「畑のお肉」って大豆は言うぐらいなので。
またお豆腐というのは遣唐使によって仏教と共に日本に伝来してきたとも言われていますのでそういった歴史上でも仏教と非常に近いところにあるものなんですね。
吉村さんもお豆腐はよくお使いになりますか?そうですね。
私が修行していた禅のお寺でも毎日豆腐は。
毎日のように?はい。
おみそ汁に入る事は圧倒的に多いですし煮物として出てくる事もありますしもう手を替え品を替えいろんな形で豆腐は毎日食べておりました。
お豆腐はとても強い味方ですね「お寺のごはん」にとって。
ほんとですね。
そんなお豆腐なんですけれども実は今回700年以上も引き継がれている滋味あふれるお豆腐料理があるそうで私実際に行ってまいりました。
訪ねたのは東京・大田区の池上。
ここは大本山池上本門寺を中心に数多くの寺院が集まる地域です
だいぶ町なかと車が通ってるような所とは雰囲気が変わってきまして静かになってきましたね。
私がお邪魔したのは…
こちらに「大坊」って書かれてますけれどもどういう意味なのかな?
「大坊」とは一般的に大寺院に付属する寺の中で中心的な寺の事
どうもこんにちは。
はじめましてとよた真帆と申します。
中野と申します。
(2人)よろしくお願いします。
こちらのお寺には700年続くお豆腐のお料理があると伺って来たんですけれども。
はい。
本行寺には1年に1度お作りいたします特別な豆腐料理がございます。
1年に1度?はいそうでございます。
本行寺で1年に1度作られるというひきずり豆腐です。
下味をつけた豆腐にだし汁をかけすった黒ごまを載せただけのシンプルなもの。
一説には大量にすったごまを「ひきずるように」絶え間なく食べる事からそう呼ばれるようになったと言われています。
日蓮宗の開祖日蓮。
実は700年前に日蓮聖人が食べたと伝えられる長い長い歴史を持つのがこのひきずり豆腐です
日蓮聖人が1282年にこの地を訪れた事をしのぶ法要が行われました。
この日にお供えされるのがひきずり豆腐。
本行寺でこの料理を作るのは1年に1度。
しかも700年以上も続くというから驚きです
なぜこのシンプルな料理が絶える事なくずっと受け継がれてきたのでしょうか
日蓮は1222年現在の千葉に生まれました。
当時まさに世は乱れ災害も相次ぐ時代。
幾多の災難に遭遇しながら自身の信念を貫きます。
そして53歳の時山梨の身延山に入り久遠寺を開きます。
しかしそこは寒さ厳しい土地。
食料は乏しく日蓮の体は次第に衰弱していきました。
その身を案じた信者たちは身延山へ食料を届けます。
その時の事を中野住職に教えて頂きました
日蓮聖人は多くの信者の方々からご供養としてお餅とかわかめとかいろんなものを頂いたお礼をちゃんと送っております。
…と書かれています。
体が弱って気力が衰えそうな時でも弟子や信者たちと食を介して通じ合っていた事が分かる逸話です
身延山に赴いてから9年ほどたった1282年9月。
日蓮は病気の治療のため茨城の温泉地を目指しました。
しかしその道中容体が悪化。
日蓮は当時池上の地元有力者の館現在の本行寺のある場所に立ち寄ります。
何を食べてもおなかを下し日に日に痩せ細る日蓮。
しかしそこで出されたひきずり豆腐だけは食べる事ができたといいます。
人々は弱っていた日蓮を思いやり少しでも口にできるものをともてなしたのがひきずり豆腐だったのです。
中野住職に案内して頂いたのはそんな日蓮聖人が最期を過ごした場所でした
ここで日蓮聖人が弘安5年1282年に亡くなられた所なんでございます。
あの中央にある柱が?
(中野)もう病が相当進んでおりましたのであちらの柱に寄りかかりながら講義をされた柱でございます。
その一部は触れるようになっています。
大勢の人々が触れるうちに磨かれて艶々に光っていました
日蓮聖人がここに着かれた時には既にもうお体が悪くて滋養にいいそして胃に優しいという事でひきずり豆腐を出されたわけでございます。
日蓮の生きた鎌倉時代豆腐やごまは大変貴重なものでした。
特に豆腐は手間がかかり貴族や僧侶など一部の人だけが食べる事のできるものでした。
豆腐が庶民に親しまれるようになったのは江戸中期。
1782年に発行された書物「豆腐百珍」には煮る焼く炒めるなど100通りの豆腐料理が記されています。
豆腐料理は当時の江戸で大流行したとか。
豆腐は時代ごとに味や調理法が増え和食の中で最も重宝される食材の一つとなりました。
変幻自在の豆腐ですがひきずり豆腐は日蓮が亡くなってから700年以上レシピは変わらず当時のまま作り続けられています。
日蓮聖人の御入山会に集まった人々にひきずり豆腐が振る舞われました
とってもおいしいです。
素朴な味だったですね。
本行寺の僧侶も1年に1度だけこの日にひきずり豆腐を食べます
「いただきます」というのは命を頂くというものと時間を頂くんだという事も言いますよね。
この700年を頂くという事にもオーバーですけど言えるんじゃないでしょうかね。
ひきずり豆腐はどのように作られるのか。
お寺の職員の藤沼さんに特別に教えて頂きました。
味付けには細かいレシピはなく代々口伝えで味を受け継いできたそうです
湯通しした焼き豆腐を入れ味を含ませます
今おだしにお豆腐入れましたけれどもこれからどのくらいの時間を置くんでしょうか?この状態を1日置きます。
1日寝かすと味がすごく染み込むという感じですね。
次にごまをすります。
力を入れてごまの油が染み出し艶が出るまですり続けます
今すられてたごまの他にこちらに持ってきて下さったのが1時間ぐらいすったもの。
艶が出てまいりますのでそしたら砂糖としょうゆお酒を入れてまいります。
じゃあまだもう少しするんですね。
番組の第1回でごま塩作りは油を出さないように力を入れずゆっくりする事を学びましたが今回は油が出るように力を入れてするそうです。
ごまのすり方にもいろいろな方法があるんですね
更に2時間すり続ける事で柔らかなペースト状になりました。
ひきずり豆腐はシンプルな料理ですが手間暇かけて丁寧に作られていました。
一晩煮汁の中で寝かせた豆腐に昆布だしのつゆを入れ最後にごまを載せてひきずり豆腐の完成です
こちらがひきずり豆腐の出来上がり。
出来上がりました。
ではいただきます。
どうぞ。
日蓮聖人が召し上がったひきずり豆腐。
どんな味なのでしょうか?
うん。
何か優しいながらもすごく濃縮されたうまみがギュッと。
ああ。
おつゆもごまの甘みを引き立たせるぐらいの。
ほんとに何も受け付けなくなってる時にこの温かい汁物とお豆腐とすごく甘く優しいごまがすんなりと体に入ってくる。
これを皆様毎年毎年日蓮聖人をしのんで頂くという事ですね。
今の世の中は大変飽食の時代でございまして皆さんおいしいものばっかり食べてるかと思います。
素材のそのものの味を生かしたものを是非とも頂いて見直してほしいとそういう思いでお出ししております。
1282年10月13日大勢の弟子たちに見守られる中この場所で息を引き取った日蓮聖人。
その日は秋だったにもかかわらず庭の桜が一斉に咲いたという言い伝えが残っています。
その言い伝えにあやかって境内には「御会式桜」という秋に花を咲かせる桜がありました。
私が訪れたのは11月。
御会式桜は言い伝えどおりに花を咲かせていました
ほんとにごまとお豆腐の良さがギュッと濃縮した体にしみ込んでくるお味でしたよ。
おだしも薄味でお豆腐もお豆腐のお味じゃないですか。
ごまがちょっと甘くてやっぱりねっとりしてるんですね。
だからそこでアクセントでスーッと。
薄味同士でごまでまた柔らかくみたいな。
つないでるという感じですね。
薄味でありながらもコクのあるというか。
そうなんです。
淡味っていうんですか?はい。
淡味っていうのは前もお話ありましたけれども「典座教訓」の中で出てくる6つ目の味ですよね。
薄味じゃなければ「お寺のごはん」とは言えないんだというような事を書いてあるわけですね。
薄味で初めて引き出される素材の味というものが昔から大切にされてきてるという事なんですよね。
だから全部が味わえたんですよね。
ごまもお豆腐もおつゆもって。
今回は青江さんのお薦めの豆腐を使ったアレンジレシピを教えて頂けるという事で。
はい。
今回のレシピはこの冬の寒い季節にぴったりなものをご用意しました。
「豆腐の豆乳鍋」をご用意いたします。
おいしそう。
温まりそうですね。
今日吉村さんはまたアシスタントをして下さると。
お手伝いさせて頂きます。
私もお手伝いいたします。
今日紹介するのは…大豆の甘みとまろやかさを味わえる豆腐が主役のお鍋です。
材料はこちら。
季節の野菜をお好みで加えて下さい。
続いて豆乳だしの材料です。
豆乳に練りごまを加える事でコクが出ます。
具材をこれから私たちでもって切っていきますのでお豆腐を大体8等分ぐらいに手のひらの上で手を切らないように丁寧に切って下さい。
今日は豆腐が主役なので少し大きめに切っていきたいと思っております。
それでは青江さんここで豆腐料理の心得をよろしくお願いいたします。
豆乳というのはやはり豆腐の原料にもなるもので火を加えると固まりやすいんですね。
なのでほんとにサッと具材を入れてサッと作って頂きたいと思うんですね。
具材一つ一つに下ゆでをしていくというのが大切になるんです。
皮付きのままですか?そうですねはい。
皮もしっかりと頂いていきたいので皮付きのまま使っていきます。
にんじんはよく洗い丸ごと無駄なく使います。
にんじんの下ゆでは1〜2分。
ゆで過ぎない程度に。
お湯につけてサッとくぐらすぐらいで大丈夫です。
今日この根っこの部分もすごくおいしいので使っていきたいと思います。
続いて白菜を切ります。
これは今日は白菜をせん切りにしていきたいと思います。
せん切り?アハハハ振り向いたよ。
縦に切ると繊維に沿って切る事になるのでゆでてもシャキシャキ感がずっと残るんですね。
こちら芯はどうするんですか?芯の部分はほんとに一番かたい部分だけ落としてこれはまた別の機会に例えば漬けたりですとかあとは刻んでスープの浮き実にしたりして使っていきます。
だから3〜4ミリぐらいですかね。
これぐらいですね。
今日何か青江さんが切らないで私たちがやってますよ。
お鍋ってそういうのが楽しいですよね。
アハハハハ!どういう事ですか?お鍋の時はみんなでワイワイ食べるのと同時にみんなでこういうふうに少しずつ役割を分担してこう作っていくのも楽しいんですよね。
あっ登場やっと!ようやく。
やっと重い腰を…。
あれ3人でこんな同時にやったの初めてじゃないですか?ほんとですよ。
ほんとですね。
これで準備は完成ですね。
はい。
次に豆乳鍋のおだしを作っていきたいと思います。
コクを出すため練りごまを入れてみりんしょうゆ塩で味をととのえます。
これはどれぐらいの味の感じで作っていくのがいいんですか?僕はちょうど飲んでおいしいなと思うぐらい。
ちょうどいいぐらいの。
ちょうどいいぐらいで。
最後ととのってそれが豆乳と共に野菜とからんで頂けると一番いい塩梅になるので。
いいんじゃないですか。
OKが出ました。
出ましたね。
豆乳だしを鍋に入れ温めます。
だしは全部入れずに様子を見ながら後で追加するようにします。
じわじわ〜っと温めないと駄目なんですね。
ふつふつきましたよ。
では具材を入れていきたいと思います。
うわ〜きれいな彩りですね。
何か優しい豆乳の香りもしてきました。
じゃあ蓋を閉めて一煮立ちさせて完成を待ちましょう。
野菜に火が通り柔らかくなったら「豆腐の豆乳鍋」の完成です。
豆腐の甘みと練りごまのコクでまろやかな味わい。
栄養たっぷり体の芯から温まります。
はい!うわ〜おいしそう!お〜!ふつふついってますよここ。
いい感じですね。
(3人)いただきます。
まずスープから頂いて。
あ〜おいしい。
何だろうこの優しいお味。
白菜いかがですか?ほんとにシャキシャキしてこれはすごいですね。
おいしいですね。
まさか白菜に気付かされると思いませんでした。
お豆腐もおいしい熱々で。
日蓮聖人が亡くなる少し前にお豆腐とごまで命をつないでいたというお話でそのぐらいお豆腐っていうのはほんとに滋味あふれるものなんだなと思いましてこのようにまた豆乳鍋にするとまた違った味わいでいろんな顔を見せてくれるそして体にとてもいいものだなと思いました。
お豆腐はやはり我々の心と体を優しく満たしてくれる。
それほどありがたい食材なんだなと改めて感じる事ができました。
ごちそうさまでした。
(青江吉村)ごちそうさまでした。
2014/12/24(水) 11:30〜11:55
NHKEテレ1大阪
趣味Do楽 いただきます お寺のごはん〜心と体が潤うレシピ〜 第3回「豆腐」[解][字]
今回は豆腐。東京・池上の本行寺には700年もの間、ずっと守られてきた豆腐料理がある。鎌倉時代、日蓮が最期に食べたその味わいとは?料理僧が伝授する温かい豆乳鍋も!
詳細情報
番組内容
東京・池上にある本山大坊本行寺では、毎年9月18日に日蓮をしのぶ法要が行われる。そこで供えられるのが「ひきずり豆腐」と呼ばれる料理。薄いだし汁で味を含ませた豆腐に、時間をかけて練った黒ごまをのせたシンプルな料理。700年もの間、本行寺にずっと受け継がれてきた滋味あふれる味だ。また、料理僧の青江覚峰さんが、寒い時期に身も心も温まる「豆腐の豆乳鍋」のレシピを紹介する。【出演】とよた真帆、吉村昇洋 ほか
出演者
【案内人】とよた真帆,【出演】本山大坊本行寺住職…中野日演,料理僧/曹洞宗普門寺副住職…吉村昇洋,料理僧/浄土真宗緑泉寺住職…青江覚峰,【語り】青井実
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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