くらし☆解説「途上国で生かされる日本の震災経験」 2014.12.24


東北は5度以上の所が多く、寒さが和らぐでしょう。
生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
あさって26日はインド洋大津波から10年。
大きな被害を受けた南アジアのスリランカで日本の震災経験を生かして取り組まれてきた防災教育が現地の間に広がりを見せています。
早川信夫解説委員に聞きます。
インド洋大津波からまもなく10年になるんですね。
早川⇒10年前の12月26日インドネシアのスマトラ島沖を震源とする地震がありましてインドネシアをはじめタイやスリランカで津波が押し寄せて22万人余りが犠牲になりました。
スリランカでも3万人を超える人たちが亡くなりました。
当時は警報システムが整備されていなかったことに加えて住民の間に津波に備える意識がなかったことが、これだけの被害につながったといわれています。
その後日本からさまざまな援助が行われたんですけれどもきょう取り上げるのは、そうしたもののうち、草の根の小さなプロジェクトなんです。
どんなプロジェクトなんでしょうか?兵庫県の防災教育の専門家3人が阪神・淡路大震災の経験を生かして子どもたちの心のケアと防災教育の支援を行っているものなんです。
年に2回スリランカ南部のマータラ県という地区で学校の先生を対象に研修を行ってきました。
もともとは大津波のよくとしに現地の教職員組合からの要請で先生方に子どもたちの心のケアのセミナーを行ったのがきっかけです。
支援に入ってさまざまなNGOが引き揚げてしまった中で、このチームは手弁当で活動していて3年前からは、JICA国際協力機構の資金援助を受けて活動を続けています。
この3年活動を本格化させてきたということなんですがどんな成果があったんですか?いちばんの成果は先生方、現地の先生方の手で防災教育用の副教材が作られたことです。
地震や津波がどうして起きるのかなど科学的な知識から震災後の子どもたちの心理面のチェックリストが先生向けに書き込まれています。
こちらのページは、子どもたちが調べた津波の被害状況をもとに避難訓練をするなどして学校としての防災計画の作り方が書いてあるんです。
現地の先生たちが日本の専門家から学んだことを生かして現地のことばで書き上げたものでまさに、自前の副教材ということが言えると思います。
自分たちでテキストを作れることになったということは相当現地の先生方も学んだことが多かったということですね。
それまでスリランカでは防災教育と呼べるような取り組みはなかったものですから現地の学校関係者の間に防災教育という概念を根づかせたということが本当の意味での成果だと言えるんじゃないかなと思います。
この間、先生たちは2度にわたって東日本大震災の被災地を訪れました。
宮城県石巻の大川小学校では74人の子どもたちが犠牲になりました。
そのことに、防災教育先進国と思っていた日本でこうした悲劇があったことに衝撃を受けました。
この訪問で、防災教育を通じて子どもたちの命を守るんだという強い使命感を持ったことが副教材作りに生かされたということです。
防災教育は、具体的には現地の学校でどんなふうに取り組まれているんでしょうか。
学校が地域の防災拠点を果たし始めているということです。
日本の専門家からは現地の先生方に4つの課題が示されたんです。
それぞれが、独自の取り組みを進めてきました。
まず1つは子どもたちに津波の経験を思い出して作文を書いてもらうこと。
振り返りをすることが心のケアにつながると判断したからなんです。
2つ目は、津波を経験した人から話を聞く授業を行うこと。
子どもたちの中には津波の経験がなかったり、幼すぎて覚えていなかったりする子が増えてきたために記憶の風化を防ぐ、という意味があります。
10年になりますからね。
3つ目は津波が起きる前の日に戻ることができたとしたらそれまでにどんな準備をしておくべきなのか。
子どもたちどうし議論をする授業を行うことです。
4つ目は浸水マップ作り。
実際にどこまで津波が来たのかを調べて、どこを避難場所にしたらよいのか考えること。
実はこの4つ、これだけの防災教育に取り組んでいる学校というのは日本でも、それほどないんですね。
学校が防災拠点の役割を果たし始めているということでしたけれども、それはどういうことなんでしょうか。
こちらの学校で見ますと海からすぐ近くにある学校なんですね。
子どもたちが調べた結果をもとに作られた地域の浸水マップというのが地域の人たちの目にとまるように学校の敷地に掲げられているんです。
みんなが見られるようになっているんですね。
すぐそばには自治体がたてた津波の高さを示す看板もありますがこちらの浸水マップには赤いところは、津波が3m以上きたところなんですけれども、段階的に色分けして津波の高さが示されています。
緑色のところが安全な高台の場所です。
白い矢印で避難経路も書かれています。
そうしたことが特徴です。
学校で学んだことを学校内にとどめておかずに地域の人たちにも役立つようにしているということなんです。
そのほかに、子どもたちが調べたことはどんなことに役立てられているんでしょうか?こちらは、子どもたちが大人たちから聞き取ったことをもとに作った紙芝居です。
どういうお話ですか?何ごともなかった平和な村に地震が起きた。
津波が来ることを心配した大人が村の人たちに高台に避難するように呼びかけた。
しかし日本と同じようにどうせ津波なんか、来るはずがないとか、家に忘れものを取りに行かなくては、と言って避難しなかったり避難したものの家に戻ったりしている間に、津波が押し寄せてきて助かるはずの命が助からなかったという実際にあった話なんです。
いい教訓になりますね。
来年以降は、この紙芝居を使って子どもたちが下の学年に伝える活動に発展させる予定だということです。
いろいろ広がり始めているわけですね。
最初はスリランカ南部の僅か3校から始まった取り組みなんですけれども現地の先生が身に着けた自分たちのやり方を、今度は講師役になって周辺の学校に広げるというやり方をしています。
中核となる学校は、この地方だけでも14校にまで増えています。
一地方の取り組みなんですが全国的に広がりを見せていましてことしは、この地区の先生たちが首都圏にある大都市コロンボに出向いて講習会を開くまでになっています。
防災教育がこれだけ広がりを見せているというのはそれだけでも、ずいぶん大きな成果だと思うんですが今後の課題をあげるとしたらどんなことがあげられますか。
一地方の取り組みをいかに全国展開できるかということなんだろうと思います。
それぞれの学校の取り組みをどれだけ地域に還元できるのか。
JICAによる支援は今年度で終わりなんですね。
今後は現地の自立的な取り組みにゆだねられることになります。
子どもたちから家庭に。
そして家庭から地域へと防災意識を高める好循環を生み出せるかどうかというのが大きな鍵になってくるんじゃないかなと思います。
一方、日本にとっても学ぶことがあるわけです。
遠い国の出来事だ、と思ってしまいがちなんですがそうではなくてスリランカの先生たちは日本から学んで先生たちの間で自分たちの役割を分担しあいながら学校が一体となって防災教育に取り組むようになっています。
すでに日本を超えようとしているということです。
日本では東日本大震災の当時、校内組織が有効に機能しなかった学校が4割に上ったという調査結果もあるんです。
防災先進国だと胸を張って言えるほどしっかりした備えができているというわけではないんです。
そうした意味で途上国に根づき始めた防災教育の姿から今度は日本が学ぶ順かもしれません。
そう思いました。
早川信夫解説委員でした。
次回のテーマは、こちらです。
2014/12/24(水) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「途上国で生かされる日本の震災経験」[字]

NHK解説委員…早川信夫,【司会】岩渕梢

詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…早川信夫,【司会】岩渕梢

ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:245(0x00F5)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: