(貴和)《私がやったの》
(黛)《一審判決死刑》
(古美門)《私は君を無罪にする。
必ずだ》《私が》
(羽生)《直接売り渡したと読み取れますが誰ですか?》
(土屋)《安藤貴和です》《徳永光一郎を殺し》
(醍醐)《殺害しようと思って犯行に及んだんですか?》《はい》《どういうつもりだ?》《娘も殺そうとした》
(裁判長)《本件控訴を棄却する》《吉永慶子だと?この女に何を言われた?》《私が犯人》・
(黛)《お待ちください!》《貴和さまをお助けください》《お願いでございます》《町娘…》
(醍醐)《罪人から離れろ!》《さもなくば切り捨てる!》
(黛)《離れませぬ》《斬るなら私もろともお斬りください!》
(貴和・黛)《あれは…》《1つ人よりよくしゃべる》《2つふらちな弁護活動》《3つ醜い浮世の鬼も金さえもらえりゃ無罪にしちゃう》《人呼んで》
(貴和・黛)《横分け侍!》《は〜》《ここで会ったが100年目》《最後に勝つのは拙者でござる》
(醍醐)《まだ懲りぬか》《成敗してくれる》《お前は…》
(くのいち)《くのいち吉永慶子》《御免!》《だ〜!》・
(物音)
(服部)どうかしましたか?あっ…。
ベッドから落ちてしまいました。
えっ?ではあの…例のまた悪夢を?腰を診てみましょうか。
かたじけない。
「高級ブランド品に身を包み高級外車を乗り回し好物のフカヒレやフォアグラに舌鼓を打った」『悪魔の女安藤貴和』大ベストセラーだそうだよ。
おかげで君の死刑を支持する声はますます盛り上がってる。
悪魔か…。
最初に私をそう呼んだのは母よ。
中学生のとき母の再婚相手が私に色目を使うようになって。
そのころから分かってたわ。
私には男をとりこにする才能がある。
才能を生かして生きていくんだって。
最初の夫も2番目の夫も殺して大金をせしめた。
それ以外にもまだまだ犯罪と疑惑のオンパレードだ。
ホントは何人殺してる?内緒。
まさに初志貫徹。
迷いなき人生だな。
最後に呼んだのはあの子よ。
あの子?
(さつき)《いいかげん諦めなよ》《あんたなんか絶対パパと結婚させないから》《出てけよ悪魔》それで2人とも毒殺することに?保険金さえ手に入ればどうせもう用なしだからね。
がきが生き残ったのは残念だけど。
毒物はどこに処分した?自宅に置いておくようなまぬけなことを君がするわけない。
あれは検察が仕込んだ物だ。
川に捨てたわ。
今頃太平洋じゃない?吉永慶子とは誰ですか?昔お世話になった知り合いのおばさん。
罪を認めるよう言われたんですか?「素直に認めれば死刑にならないんじゃないか」って。
懲役で済むなら最悪それでもいいかなって。
懲役にはならない。
世間が「君をつるせ」と大合唱してる。
死刑は既定路線だ。
君の証言などもう関係ない。
死刑か無罪かだ。
そして無罪にできるのは私だけだ。
で最高裁の公判で私は何をすればいいの?君に出番はない。
黙ってろう屋にいたまえ。
被告人質問が行われることはまずありません。
つまり前回のように君という厄介な爆弾に台無しにされる心配はもうないのだ。
ハァつまんないの。
貴和さん本当のことは何一つ言ってない気がします。
そうだろうな。
「そうだろうな」って真実はどうなるんですか?どうでもいい。
われわれの仕事は貴和を無罪にすることだ。
できなきゃつるされる。
貴和さんが「懲役でいい」って言うなら量刑不当を訴える手も…。
ない。
これまで上告審で死刑判決が覆って無罪になった例なんてないに等しいんですよ。
打てる手を全て打つ。
あとは公判で私と敵の検事のどちらが勝つかの一発勝負だ。
そんなイチかバチかのギャンブルみたいなこと…。
「貴和は当時裁判で負け知らずの有名弁護士を雇ったが判決は覆らなかった」「彼もまた安藤貴和という毒グモの巣に引っ掛かった哀れなハエの一匹なのかもしれない」こんなことを言わせておくわけにはいかないんだよ。
無罪を勝ち取って勝率を100%に戻し不敗神話を取り戻す。
これは私の戦いだ。
結局自分のためじゃないですか。
誤解を受けやすい人なんです。
実際に接してみると本当の彼女は素直で心根の優しい女性だと痛感します。
間違ったイメージが独り歩きしてるんです。
ねっ黛君。
はい。
われわれは決して雇われているから弁護してるわけではありません。
ただひたすら正義と真実を求めているにすぎません。
ねえ黛君。
はい。
はいここまで!諸君大々的に報じてくれたまえ。
(記者)分かりました。
(蘭丸)お疲れさま。
皆さんどうぞ。
はいよろしくお願いします。
どうぞどうぞ。
何なんですか?これ。
決まってるだろうプロパガンダ作戦だよ。
メディアを使い世論を少しでも変えるんだ。
10万も入ってるぞ。
(服部)いやいや駄目。
シッシ〜。
もろ買収じゃないですか。
あっ大手マスコミには完全に無視されてしまいましたので。
(蘭丸)金で転ぶような記者しか報じてくれないんだよね。
こんなことして何になるんですか?「打てる手は全て打つ」と言ったろ。
そういう君こそ少しは成果を挙げたのか?はっ?情報を盗んだのかと聞いてるんだ。
何の話ですか?NEXUSに移籍した理由を忘れたのか?それはNEXUSの理念に共感…。
違う!本件の担当検事だった羽生と本田は捏造を知ってる可能性が高い。
やつらの懐に潜り込んで何らかの情報を盗み取るためだろうが。
初耳です。
今からでもやれ。
特に羽生はあの性格だ。
良心の呵責を感じて誰かに打ち明けたがってるかもしれない。
ない色気を最大限に使ってやつを落とせ。
暑いな〜。
ねえ羽生君。
(羽生)具合悪いの?えっ?
(本田)どうしたの?体調が悪いらしい。
きっと疲れてるんだ。
安藤貴和の裁判やってちゃ当然だよね。
(磯貝)本はといえば私のクライアントだ。
彼女の厄介さはよく分かってる。
無理しない方がいい。
僕らも本当は力になってあげたいんだけど立場上そうもいかなくて。
担当検事だったあなたたちが手伝っちゃ駄目だよ。
ボタン留め忘れてるよ。
あっホントだ。
てへ。
結局何の役にも立たないやつだな!すいませんね!先生公判期日が決定いたしました。
担当は第三小法廷でございます。
ということは判事は弁護士出身が2人検事出身が1人裁判官出身1人に学者出身1人か。
検事出身が邪魔だな。
・
(一同のブーイング)・
(一同のブーイング)どアウェーですね。
プロパガンダ作戦全然効果ないじゃないですか。
こんな連中に何の権限もない。
羽生君。
傍聴券手に入りました。
かつて検察の一員として死刑判決を求めた事件がこの私にひっくり返されるところを見届けに来たわけか。
なかなかのどMだな。
僕の立場でこんなこと言っちゃいけないんだけど死刑判決が出てしまったことは僕にとってずっと心に刺さったとげでした。
求刑した本人が何を言ってる。
検察全体の方針にあらがえなかったんです。
だから検察を辞めました。
応援してます。
頑張ってください。
君の励ましなど必要ないがね。
相手は手ごわいですよ。
シベリアの死に神が凍死するさまをしかと見届けたまえ。
それにしてもこのタイミングで最高検に異動なんて出来過ぎじゃありません?あえてぶつけてきたに決まってるだろ。
やっぱりもう一度あの方でとどめを刺そうってことですよね。
何といっても古美門研介を倒した男ですから。
(せき)好都合だよ。
ここで会ったが100年目だ。
・
(ドアの開く音)あれ?4人だ。
判事が1人足りない。
検察出身の野村正武判事がいらっしゃらないようだね。
検察出身者がいなくなるのは私たちには有利ですけど…。
おそらく悪い物でも食べて体調を崩されたのだろう。
まさか先生…。
《お待たせしました》みたいなことやってないでしょうね?もちろんだよ。
ただこれでこの小法廷の判事は弁護士出身が2人学者出身と裁判官出身が1人ずつという理想的な顔触れになった。
特に右から2番目学者出身の板橋明美判事が死刑に消極的な傾向がある。
アピールするなら彼女だ。
では開廷します。
さあリベンジマッチだ。
最高裁判事の皆々さま検察が提出した証拠は全て間接証拠にすぎず直接的に被告人を犯人だと証明するものは何一つないのが実情です。
しかも被告人は一貫して犯行を否定しております。
しかし二審では被告人質問で罪を認めていますね?自暴自棄になってしまったんです。
長い長い勾留生活。
世間は右を見ても左を見ても「悪魔の女を死刑にせよ」の大合唱。
精神が崩壊しても無理ありません。
精神科医の診断書もそれを証明しております。
(せき)私は幾度となく被告人に接見してきましたが日々やつれ水も喉を通らない状態。
証拠として提出しました彼女が自ら筆を執った告白文をぜひお読みください。
彼女の真実の姿本当の心の声が聞こえてくるはずです。
繊細な繊細な彼女の心をこれ以上壊さないためにも一日も早く過ちを正し自由の身に…。
(醍醐のせき)具合が悪いなら外へ出たらどうですか?いや失礼。
肺に穴が開いてるもので。
検察はこの点についてのご意見は?まず被告人が衰弱してるというのは誤りです。
肉体的にも精神的にも極めて健康です。
それどころかあまりの好待遇に他の被収容者から苦情が出てる始末。
(貴和)《ん〜たまんない》《無駄にエロくフライドチキンを食うな!》
(醍醐)自筆の告白文といわれるものもかつて被告人が書いていた日記とはあまりに文体や表現が違い誰かの指導によって書かれた創作文であることは明白です。
《だから付き合った男との性体験を細かく描写するなと言ってるだろ》《完全に官能小説だ!》《そこが一番筆が乗るのよ》
(醍醐)そもそも検察としては被告人の証言に重きを置いておりません。
あらゆる証拠を積み上げ客観的に証明してまいりました。
あらゆる証拠とは何を指しているのでしょうか?被告人の住居から発見された毒物。
近隣住民による現場での被告人目撃証言。
その他もろもろです。
被告人の家から出た毒物がなぜ犯行に使われた物と断定できるのでしょうか?被害者から検出された成分と一致してるからです。
成分が一致してる毒物ならば別のルートでも出回っています。
東南アジアの闇業者が調味料に偽装して密売している青酸化合物です。
インターネットでごく簡単に手に入りました。
この毒物の成分分析表が弁論要旨に添付した物です。
ご覧のとおりより詳細に分析してみるとこちらの方がはるかに一致している成分が多いのです。
犯行に使われたのはこちらの毒物である可能性が高いのであります。
(醍醐)フフ。
何がおかしい?その毒物ならわれわれもすでに入手し検証しております。
ならばこちらの方が成分が近いと…。
(醍醐)あなたは化学に疎いようだ。
物質が体内に入ると化学反応を起こします。
実験の結果変化後の成分はどちらもほぼ同じ。
差異はありませんでした。
つまり検察の証拠物の否定にはなり得ないのであります。
《何の茶番なんだよこれは!》《黙りなさい!》
(醍醐)売人土屋秀典も「被告人に売った」と証言している事実を踏まえると被告人の犯行に疑う余地はありません。
《あなたが購入したというんですか?》《犯行に使うためです》その土屋秀典も問題です。
彼は「被告人にだけ売った」と証言していますが…われわれは…。
先生代わります。
われわれは他に2名同様の毒物を土屋から購入した人物を突き止めました。
それが何か?追加提出した証拠をご覧ください。
1枚目が会社員の証言2枚目が女子大生の証言です。
つまり土屋は被告人以外にも常習的に不特定多数に毒物を売っていたものと思われます。
被告人に売ったことが否定されるものではありません。
(醍醐)《あなたの立論が間違いであると指摘したまで》《無礼千万である!》土屋秀典という人物の証言そのものに信用性がないと申し上げています。
そもそも彼がたくさんの人に…。
《間違いありませんか?》《はい》
(醍醐)《以上です》検察と土屋の間で何らかの取引があった可能性があると私たちは考えています。
根拠があってそのような発言をなさるわけですよね?売人が「被告人に毒を売った」と証言し被告人の住居からそれが発見され犯行に使われた物と一致した。
被告人が犯人である蓋然性は疑う余地がない!
(裁判長)《主文本件控訴を棄却する》先生?検察の捏造に決まっています。
何ですって?あの女がそんな簡単な証拠を残すわけがないんです。
先生。
何度も貴和に逃げられて今度こそ仕留めないと検察のこけんに関わる。
だからでっち上げたに決まっています。
いいかげんにしろ!ここをどこだと心得るか。
捏造と言うんなら君たちこそ記者たちを買収して拡散させている被告人のポジティブキャンペーンこそ捏造ではないのか?被告人が犯人だと分かっていながらあることないことでっち上げ犯罪者を野に放とうとしている。
しょせんは金と自分の名誉のために。
卑劣極まりない。
(裁判長)《主文本件控訴を棄却する》古美門先生あなたはこれまで駆け引きや弁論技術時に策謀をもって裁判に勝利する手法をとってこられた。
だがここでそんなものは通用しない!裁判はゲームではないのだ。
罪を犯した者は償う。
時には命をもって償わねばならないときもある。
それがこの社会でまっとうに生きる人々の民意だ。
(一同の拍手)
(裁判長)静粛に。
先生?もう帰る。
待ってください。
うるさい放せ!こんな所にのこのこ出てきた僕がバカだった。
どいつもこいつもお父さんに言い付けてやる!僕のお父さんは偉いんだ!お母さんに迎えに来てもらおう。
そしてデパートのレストランでプリンアラモードを食べてから屋上の観覧車にのっ…。
先生!
(一同のどよめき)先生!すごい熱…。
救急車を!先生…。
(服部)心的外傷?一種のPTSDのようなものじゃないかと。
極度の緊張とプレッシャーの中で負けた相手を目の当たりにしたことで敗戦トラウマが発症したんだと思われます。
敗戦トラウマ…。
スカイドンシーボーズザラガスジェロニモン…。
あれ?何かぶつぶつ言ってるよ。
ベムラーバルタン星人ネロンガラゴングリーンモンス…。
(服部)ああこれはウッ…ウルトラ怪獣を登場順に羅列してるようですな。
服部さんも詳しいっすね。
たわいのない取りえでございます。
幼児返りは心的外傷の症状の1つだ。
元から幼児みたいな人じゃない。
でこれどうすりゃいいわけ?今は当分裁判から遠ざける必要がありますな。
スフランピグモンガボラジラースギャンゴドドンゴミイラ人間ペスターガマクジラガヴァドンブルトンザラブ星人アボラスバニラヒドラケムラー…。
先生…先生。
あっピグモン。
黛です。
裁判頑張りましょう?裁判?そうです。
醍醐検事を倒して貴和さんを助けましょう。
もう無理だよ。
そんなことありませんよ。
先生ならきっと勝てます。
無理だって。
僕みたいな何の取りえもない無能な最低くそ野郎に勝てるわけないよ。
先生は素晴らしいですよ。
1億円稼ぐんでしょ?高速何とかやってもらうんでしょ?なかなかレアなやりとりですね。
確かに。
だって相手は民意なんだよ。
そんなの勝てっこないよ。
何言ってるんですか。
先生らしくないですよ。
ほら立ちなさい!嫌だ嫌だ嫌だ…。
立って!うわ〜。
無理強いは禁物だよ。
ああ今はそっとしておくしかなさそうですな。
あれ?どうしたんですか?
(服部)おかえりなさい。
だっ…誰かにつけられなかったろうな?はっ?実は新聞各紙をはじめ各メディアで古美門先生と黛先生を批判する声が高まっておりまして。
(蘭丸)これ。
「金の亡者の弁護士死ね」「悪魔の手先コロス」ネットは大炎上。
プロパガンダ作戦が完全に裏目に出たね。
その結果このような郵便物が匿名で。
「殺害予告」…。
こっ…こんなの信じてどうするんですか。
ホントにやるわけ…。
・
(窓ガラスの割れる音)うわ!いや〜!はははは〜!これが民意だ。
全国民が敵なんだ。
服部さん地下シェルターに避難しましょう。
ございません。
だははは〜。
あははは〜うわ〜ははは〜。
検察は不正をしたんじゃないの?あなたはそれでいいの?守秘義務や職務規定より大事なものがあるんじゃない?私が知ってるあなたはいつだって弁護士としてじゃなく一人の人間として自分の信念を貫いてた。
時にはルール違反をしてでもみんなを幸せにするために行動してきたじゃない。
僕から情報を取ったとバレれば君だって…。
そんな覚悟はとっくにできてる。
大事なメモをうっかり落としたのは僕のミスだ。
江上順子さん。
再就職先にまで押し掛けてすみません。
徳永家の元家政婦で事件の第一発見者であるあなたにもう一度話を聞きたいと思いまして。
(江上)全部話しましたから。
話し忘れてることはありませんか?ありません。
どんなささいなことでもいいんです。
何も隠してないって言ってるでしょ。
何も隠してないならどうして私を避けるんですか?あなたがあの女の弁護士だからよ。
吉永慶子…。
はっ?ですか?何言ってんの?訳分かんない。
悪魔の女を死刑台に送る手伝いができて満足ですか?徳永家をめちゃくちゃにした貴和さんを恨んでいるのは分かります。
でも間違った証拠で死刑が執行されたらあなたは一生十字架を背負いますよ。
あなたが死刑のボタンを押すんです。
その手で子供たちに給食を作り続けられるんですか?協力してくださればご主人が会社のお金を使い込んで請求されている多額の損害賠償奇麗にするお手伝いをさせていただきます。
獲得しましたよ。
江上順子ですよ。
なかなかの爆弾です。
誰って…もういい。
帰ってから説明します。
(男性)安藤貴和は絶対に死刑にしなきゃ駄目なんだよ。
(男性)そうだよ。
また犠牲者が出るぞ。
そうそう。
あいつは絶対更生なんてしねえんだよ。
(男性)そうだそうだよく言ったよ!ハハハ。
(男性)あっあっあっおい。
おい!
(男性)待てこら!
(男性)おい!・ヒ〜!
(服部)はい古美門法律事務所でございますが。
はっ!?黛先生が?
(本田)集団で暴行を受けたみたい。
頭を強く打ってて意識が戻らない。
(服部)何ていうことを…。
犯人は見つかったんでしょうな?ええ。
「悪魔を弁護する国民の敵だから」って供述してるらしい。
国民の敵…。
古美門先生僕のせいかもしれません。
僕が情報を渡したから…。
やらせたのは私だ。
マスコミに大々的に報じさせろ。
どこへ?弔い合戦だ。
(リポーター)古美門弁護士がやって来ました。
日本中から批判を浴びる中での厳しい戦いとなっている古美門弁護士。
では開廷します。
大変異例にもかかわらず証人への尋問を許可してくださり感謝申し上げます。
徳永家の元家政婦にして事件の第一発見者江上さん警察の取り調べに対しこう証言していますね。
「いつものように勝手口から入りその日は資源ごみの日だったので台所の瓶や缶類をごみ集積所へ運びリビングへ行くと光一郎さんとさつきさんが倒れており慌てて救急車を呼んだ」はい。
抜け落ちている証言はありますか?はい。
おっしゃってください。
(江上)資源ごみを捨てる際台所に見たことのない変な瓶が落ちていたんです。
外国の調味料か何かだと思いそのまま捨てました。
警察にそう証言したんですか?はい。
でも事件には関係のないことだと。
ちなみにその瓶とはこれですか?とてもよく似ています。
これととてもよく似た瓶が犯行現場に落ちていたそうですよ。
醍醐検事。
真犯人は毒物を犯行現場に放置して去っていったのであり被告人の部屋から発見された物は事件とは無関係なんじゃありませんか?その資源ごみを警察は?一切回収できていません。
すでに収集され手遅れだったものと思われます。
つまり警察と検察は証拠の確保に失敗したのです。
江上さんありがとうございました。
事件当夜現場付近で被告人は多くの人々から目撃されています。
証拠と証言総合的に考慮すれば結論に疑う余地はありません。
「証言石井由美」「買い物から帰宅し家に入ろうとしていたところ徳永家の勝手口から安藤貴和が出てくるのが見えた」実験結果は提出した資料のとおりです。
石井家の玄関から徳永家の勝手口は電柱が邪魔で見えません。
(醍醐)検察の実験結果とは異なりますし信用性の高い目撃証言が実に多い。
フッ。
何か?多過ぎますよ。
普通は目撃者などそうそういるものではない。
恵まれました。
「藤野真希子」「夕食の支度をしながらふと窓の外を見ると徳永家の勝手口から安藤貴和が出てくるのが見えた」「川辺好美」「日課の犬の散歩をしていたところ徳永家の勝手口から安藤貴和が出てくるのが見えた」よくもまあピンポイントで安藤貴和が出てくるところを見るものです。
この地域には5分に一度は徳永家の勝手口を見ることにしましょうという条例でもあるんでしょうか?どなたも証言には自信を持っており偽証してるとは考えにくい。
そりゃあ自信を持ってるでしょう。
徳永家の勝手口から出てきたのがたとえ『突撃!隣の晩ごはん』のヨネスケであったとしても安藤貴和に見えたに違いない。
みんながそれを望んでいるから。
人は見たいように見聞きたいように聞き信じたいように信じるんです。
検察だってそうでしょう?侮辱だな。
ええ侮辱したんです。
証拠によってではなく民意に応えて起訴したんですから。
われわれは公僕だ。
国民の期待に応えるのは当然だ。
愚かな国民の愚かな期待にも応えなければならないんですか?愚かですか?ええ愚かで醜く卑劣です。
傲慢極まりない。
私は素晴らしい国であり美しく誇り高い国民だと思っている。
逸脱した議論を勝手に進めないで。
(板橋)いいじゃありませんか。
興味深い議論です。
美しく誇り高い国民が証拠もあやふやな被告人に死刑を求めますか?
(醍醐)本件の場合有罪であるならば極刑がふさわしい。
わが国においてそれは死刑だ。
生命はその者に与えられた権利です。
それを奪う者はたとえ国家であっても人殺しです。
あなたが死刑廃止論者だとは意外だな。
いいえ反対じゃありませんよ。
目には目を歯には歯を殺人には殺人を。
立派な制度だ。
ただ人知れずこっそり始末することが卑劣だと言っているだけです。
白昼堂々と殺せというのか?そのとおり。
青空の下市中引き回しの上はりつけ火あぶりにした上でみんなで一刺しずつ刺して首をさらし万歳三唱した方がはるかに健全だ。
だがわが国の愚かな国民は自らが人殺しになる覚悟がないんです。
自分たちは明るい所にいて誰かが暗闇で社会から消し去ってくれるのを待つ。
そうすればそれ以上死刑について考えなくて済みこの世界が健全だと思えるからだ。
違いますか?仮にそうだとしてもそれもまた民意だ。
民意なら何もかも正しいんですか?それが民主主義だ。
裁判に民主主義を持ち込んだら司法は終わりだ。
果たしてそうかな?そうに決まってるでしょう。
(醍醐)いささか古いな。
法は決して万能ではない。
その不完全さを補うのは何か…。
人間の心だよ。
罪を犯すのも人間裁くのも人間だからだ。
多くの人々の思いに寄り添い法という無味乾燥なものに血を通わせることこそが正しい道を照らす。
裁判員裁判はまさにその結実だ。
そして本件において人々が下した決断は安藤貴和は死刑に処されるべきというものだった。
愛する家族と友人と子供たちの健全な未来のために。
これこそが民意だ。
・
(一同の拍手)
(裁判長)静粛に!静粛に!素晴らしい。
さすが民意の体現者醍醐検事。
実に素晴らしい主張です。
いいでしょう。
死刑にすればいい。
確かに安藤貴和は社会をむしばむ恐るべき害虫です。
駆除しなければなりません。
次に寝取られるのはあなたのご主人かもしれませんからね。
あなたの恋人かもしれないしあなたの父親かもしれないしあなたの息子さんかもしれない。
あるいはあなた自身かもしれない。
死刑にしましょう。
現場での目撃証言はあやふやだけれど死刑にしましょう。
被告人の部屋から押収された毒物が犯行に使われた物かどうか確たる証拠はないけれど死刑にしましょう。
現場に別の毒物らしき瓶が落ちていたという証言があるけれど気にしないで死刑にしましょう。
証拠も証言も関係ない。
高級外車を乗り回しブランド服に身を包みフカヒレやフォアグラを食べていたのだから死刑にしましょう。
それが民意だ。
それが民主主義だ。
何て素晴らしい国なんだ。
民意なら正しい。
みんなが賛成していることなら全て正しい。
ならばみんなで暴力を振るったことだって正しいわけだ。
私のパートナー弁護士を寄ってたかって袋だたきにしたことも民意だから正しいわけだ。
冗談じゃない…。
冗談じゃない!本当の悪魔とは巨大に膨れ上がったときの民意だよ。
自分を善人だと信じて疑わず薄汚い野良犬がどぶに落ちると一斉に集まって袋だたきにしてしまうそんな善良な市民たちだ。
だが世の中にはどぶに落ちた野良犬を平気で助けようとするバカもいる。
己の信念だけを頼りに危険を顧みないバカがね。
そのバカのおかげで今日江上順子さんは民意の濁流から抜け出して自分の意思で証言をしてくださいました。
それは江上さんたった1人かもしれませんが確かに民意を変えたのです。
私はそのバカを…。
誇らしく思う。
黛先生!
(蘭丸)真知子ちゃん!先生!民意などというものによって人一人を死刑にしようというのならすればいい。
しょせんこの一連の裁判の正体は嫌われ者をつるそうという国民的イベントにすぎないんですから。
己のつまらない人生の憂さ晴らしのためのね。
そうでしょう?醍醐検事。
あなた方5人は何のためにそこにいるんです?民意が全てを決めるならこんなに格式ばった建物も権威づいた手続きも必要ない。
偉そうにふんぞり返っているじいさんもばあさんも必要ない!判決を下すのは断じて国民アンケートなんかじゃない。
わが国の碩学であられるたった5人のあなた方です!どうか司法の頂点に立つ者の矜持を持ってご決断ください。
お願いします。
数々の無礼お気を悪くされたかもしれませんがしょせんは金の亡者で嫌われ者のどぐざれ弁護士のたわ言です。
どうかお聞き流しください。
以上です。
不謹慎にも程があるだろ!いやいや…だって真知子ちゃんが「やろう」って言うから。
真知子。
蹴散らしたんでしょうね?粉雪になってシベリアの空に飛んでいったよ。
君の捨て身の体当たりバカ作戦に乗ってやった!体当たりバカ作戦?自分が暴行を受ければ世論の風向きが変わると踏んだんですかな?わざと暴行を受けたのか?
(男性)《待てこら!》
(男性)《おい!》
(男性)《黛待て!》《安藤貴和は絶対に死刑になんかさせない》《何だとこら!》《文句があるなら掛かってきなさいよ》《おら!お〜ら!》《やっちまえ》
(男性たち)《おら〜!》ハッ。
何とまあ無謀なこと。
女相手にそんな手荒なことはしないだろうって思ったんですけど意外にやられました。
天井知らずのバカだ。
しかも世論は何一つ変わってない。
お前に同情するやつなんかいないんだ。
バ〜カ。
でもおかげで先生はPTSDを克服して立ち上がりました。
それが本当の狙いだったんですよ。
だまされましたね。
あれは君を追い込んで情報を取らせるための作戦に決まってるだろうが。
だまされやがって愚か者め。
気付いてましたよ。
気付いた上で乗ってあげたんじゃないですか。
だまされましたね。
君が気付いてることも気付いた上でやっていたんだ愚か者め!先生が気付いていることに気付いてることも気付いた上で乗ってあげたんでしょうが!君が気付いていることに気付いてる…。
(服部)はいもう結構です。
あっあっ…。
開廷します。
安藤貴和に対する殺人および殺人未遂被告事件について次のとおり判決を宣告する。
ベムラーバルタン星人ネロンガラゴングリーンモンス…。
やっぱりトラウマだったんじゃないですか。
主文。
あ〜!静かに!
(裁判長)原判決および第一審判決を破棄する。
ゼヤ!よっしゃ!本件を東京地方裁判所に差し戻す。
差し戻し…。
最高裁め自分で判断するのを避けたな。
でも異例中の異例ですよ。
判決を覆したんです。
歴史的勝利です!
(醍醐のせき)醍醐検事。
おめでとうございます。
ありがとうございます。
最高検に来た途端にこのような大敗北。
お気の毒に降格でしょうか?どこであろうと国家のために働くことに変わりありません。
差し戻し審ご健闘を。
地裁の検事にあなたより強敵がいるはずがない。
あっ!念のために申し上げておきますが原判決破棄ということは私の敗戦も奇麗になかったことになったわけです。
つまり私は今も無敗。
あなたが私に勝ったという事実もなくなりました。
どうでもいいじゃありませんか。
よくない!今後あなたが私に勝ったことがあるなどという虚言を吹聴した場合は明らかな名誉毀損ですのでそのおつもりで。
もちろん。
私はあなたに勝ったことなど一度もない。
結構ですね〜!あなたに勝った人間がいるとすればそれは私ではない。
本当の敵は敵のような顔をしていないものです。
では。
健康診断の結果出たかな?
(検事)オールAでした。
(醍醐)そうか…。
《大事なメモをうっかり落としたのは僕のミスだ》先生これ…。
《被告人質問の前日にこの方と会ってますね》《吉永慶子だと?》《「慶」の字が間違ってる。
偽名だ》・
(足音)ああ君たちか。
全て希望どおりに手配しておいたよ。
ありがとうございました。
無理を申し上げすいません。
差し戻し審は君たちが担当になるだろう。
きっちりやりたまえ人たらし。
はい醍醐検事。
(本田)頑張りま〜す。
サウジアラビアにこういうことわざがある。
「乗っている人間がラクダを操っているように見えても実はラクダが人間を導いているのだ」ここまでご苦労さまでした。
本当の敵は敵のような顔をしていない…。
私が負けた相手はあいつだ。
2014/11/18(火) 15:53〜16:48
関西テレビ1
リーガルハイ #09[再][字]【最高裁!全国民が敵でも必ず命を救う!堺雅人 新垣結衣】
「ついに最高裁!例え全国民が敵でも必ず命を救う」堺雅人 新垣結衣 岡田将生・小雪・田口淳之介 黒木華 古〓寛治・松平健/里見浩太朗
詳細情報
番組内容
古美門研介(堺雅人)と黛真知子(新垣結衣)は、上告を決めた安藤貴和(小雪)に面会。貴和は、殺人容疑については否定しない。また、地裁での判決前に面会に来た吉永慶子は、昔世話になった近所のおばさんと話す。それでも古美門は、最高裁では貴和の無罪を勝ち取ると言い放った。貴和が真実を何も話してくれないことを気にする黛に、古美門は打つ手をすべて打って無罪にすると、あくまで強気。だが、古美門のこだわりは、
番組内容2
裁判の勝率を100%に戻すことの様子。
手段を選ばない古美門は、マスコミを招いて貴和のイメージを向上させる報道を依頼。しかし、大手マスコミには無視され、招いた記者たちにも金をばらまく始末。挙句、古美門は黛に、移籍先の『NEXUS』の羽生晴樹(岡田将生)と本田ジェーン(黒木華)から検事時代に担当していた貴和事件について、検察のねつ造情報を盗み取れと言い出す。しぶしぶ従おうとする黛だが、羽生たちから
番組内容3
情報を得ることは出来なかった。
そんな状態で、古美門たちは公判初日を迎えてしまう。貴和への死刑判決を求めて裁判所前に群がる民衆を横目に入廷する古美門も、さすがに緊張の色は隠せない。傍聴には羽生も駆けつけていた。黛は、検察側に醍醐実検事(松平健)がいることが不安。醍醐は都合良く最高検へ異動になったのだが、それは古美門にとどめを刺すためではないかと思ってしまう。古美門自身は、好都合だと強がるが…。
出演者
古美門研介: 堺雅人
黛真知子: 新垣結衣
羽生晴樹: 岡田将生
☆
安藤貴和: 小雪
☆
加賀蘭丸: 田口淳之介
本田ジェーン: 黒木華
磯貝邦光: 古〓寛治
☆☆☆
服部: 里見浩太朗
【ゲスト】
松平健
ほか
スタッフ
【脚本】
古沢良太
【企画・プロデュース】
成河広明
【プロデュース】
稲田秀樹
山崎淳子
【監督】
石川淳一
城宝秀則
西坂瑞城
【音楽】
林ゆうき
【主題歌】
「SLY」RIP SLYME
【オープニングテーマ】
「Re:」9nine
【制作協力】
共同テレビ
【制作著作】
フジテレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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