味わい深い一品です。
(テーマ音楽)
(桂子)これで普通に回して。
(川上)普通に回して…。
布にちなんだ名前は布地デザイナーの母親が付けました。
布にゆかりの深い川上さんがにっぽん各地に訪ねるのは今も輝きを失わずに人々の心を捉え続けるにっぽんの布。
昔ながらの方法で手間を惜しまず生み出される布には肌ざわり色柄など独特な味わいがありおしゃれなアイテムとして最近注目されています。
川上さんが布のふるさとで魅力の秘密を探ります。
案内するのは…京都で江戸時代から続く染色家の5代目でにっぽんに伝わる布や染め物の研究に取り組んでいます。
第4回は布を織る事で生まれる模様に注目します。
今こちらでは木綿の糸で縞模様の布を織っています。
一定のリズムを刻みながら機を織る。
経糸と緯糸からさまざまな美しい模様が生み出されます。
「縞」「格子」は異なる色を組み合わせて織る事で生まれる模様です。
糸の色や太さの違いでさまざまな模様が生まれます。
「絣」はかすれたような模様が織り出された布です。
花や鳥生活用具など大きな模様も織られ素朴なシンプルさが魅力です。
縞格子絣はいずれも近世になって木綿が一般にまで広まってから発達しました。
木綿の着物をいかにおしゃれに粋に着るか。
知恵を絞って生み出した庶民の芸術とも言える布なのです。
島根県出雲市。
ここに綿を育てて糸を紡ぎ縞格子の布を織っている家族がいます。
綿の実がはじける10月初旬に訪ねました。
(川上吉岡)こんにちは。
は〜い。
60年前からここに住み木綿の布を織っています。
今は何されているんですか?綿を採って…。
収穫でございます。
へえ〜!こんなに…うわ〜すご〜い。
私初めてですこういう…。
これ割と暖かいとこでないと育たないんですね。
それをだんだんだんだん慣らしてねこういう…日本にやって来たのは大体桃山時代からって言われてるわけだよね。
江戸時代は西日本各地で競うように作ったんですけどね。
やっぱり西日本がメインだったんですか?「温暖である」という事が条件ですからね。
この辺りの地方っていうのは綿花を育ててる方多かった…?ここ出雲はあんまり暖かいとこではないんですけどやっぱり工夫されてね。
まあここは砂地であったり夏が割と暖かい日が続くという事でよく出来てる…。
適してるんですか。
これ木綿はみんな真っ白だという概念があるでしょ?ここは多々納さんのとこね茶綿も少し…ほら。
あっほんとだ!全然違いますね。
これは種類が違うんですか?種類が違うの。
これから糸になるんですもんね。
これからが大変なんです。
そうですね。
多々納さんの家では桂子さんと長男の嫁の昌子さん孫の朋美さんの3人が作業を分担して綿から糸を紡ぎ縞格子の布を織っています。
これが私たちが織った織物なんです。
見て下さいませ。
これ経緯手紡ぎの藍の座布団地でございます。
しっかりきれいな…。
一つ一つ織り方も全然違いますね。
(桂子)それぞれに思い入れがございましてね。
これも全然…優しい色ですよね。
(桂子)同じような縞ですけれど薄い浅葱を経にして。
緯にこういうふうにして。
やっぱりこのいろんな織り方っていうのは代々受け継がれてる…。
これはもう古い縞帳から縞を頂いたり拡大したり…それが一番の勉強です。
縞帳っていうのがあるんですか?はい。
これがその縞帳です。
代々伝わった縞帳なんです。
え〜。
きれいですね。
きれいでしょ。
どのページを開いても間違いがございません。
なんか古さを感じないですもんね。
こういう仕事っていうのは省略してないというか手を抜いてないのよ。
自家用というかね自分の所のものとして織ってるわけで…。
商品として売るとかそういう…。
そういう場合もありますけどほとんどそういうんじゃなくて家族のためにというか特に冬の農閑期を利用して一生懸命織ったのがこういう結果になってたんです。
ほんとにいいお手本ですこれ。
この一冊になるまでに何年っていう…。
(桂子)何代かかってますよね。
だからずっと伝わって嫁に伝えそのまた孫に伝えて貼っていったんだと思います。
いかがですか?こういうのご覧になって。
まねしようと思ってもできませんね。
こんなに細く上手に紡いで…。
相当細かい…。
そうですね。
こういう美しい仕事ができるようになりたいと思います。
先人に勝つような気持ちでね。
でもいい教科書ですよ。
そうですね。
では綿から糸を紡ぎ縞格子を織るまでを見せてもらいましょう。
摘んだ綿は天日で干したあと…。
すごい速く…サッササッサ。
出てきてるのが種ですか?手前に落ちてるのが。
そうです。
案外よくかみます。
へえ〜。
綿の中には種が隠れています。
ローラーにかけて種を取り出します。
これ手で1つずつ取ったら大変だもんね。
大変です。
手で取ろうと思ったって取れやしません。
種がね。
1個でも大変です。
種を取り除いた綿は繊維をほぐして平らにまとめそれを12cmくらいの幅に手でちぎってクルクルと巻きます。
この塊から糸車で繊維を引き出し紡ぐのです。
どうなってるんですか?これ。
これがいわゆる「紡ぐ」という。
ある一定の量を絡ませながら出して。
この手前の所にちょっと絡ませてるんです。
そしてもう一回撚りをかける。
かかった分だけ…ここ見とって下さい。
かかった分だけ伸ばしていくんです。
そのまんまほっとくとここ太くなっていくらでも太くなります。
動かなくなる。
だから撚りがかかった分だけ動かしていかないと。
先生やった事あります?ありません。
できません。
できない?難しいですよね。
なさいます?どうぞ。
えっ私ですか?どうぞ。
え〜ちょっと待って下さいね。
はいどうぞ。
軽く持ってるだけ。
それで伸ばす。
そうそう…もうちょっと伸ばす。
もうすぐ切れてしまいそうで怖いですね。
撚りかけて。
撚りかけるっていうのは…。
ここへかけて。
回して。
ああ〜。
難しい!アハハハハ!ほんとに難しいですね。
これは理屈と手では…。
全然ね頭で考えてる事と…。
そう。
それはあります。
川上さんまあここにひとつきほど寝泊まりして…。
アハハハ!修業して。
修業して下さい。
紡げるようになりたいですね。
フフフ…。
糸が出来ると藍で染めます。
縞格子の模様を織り出すには糸ごとに濃淡をつけておかないといけません。
(昌子)酸素にふれると色が緑に。
なるんですか。
まだ「藍」っていう感じじゃないですよね。
見てて。
すごい!あ〜きれい!うわ〜!すごいきれいですね!空気にふれるだけでこんなに変わる…すごいきれい。
色を濃くしたい場合は染める作業を何度か繰り返します。
いよいよ「織り」にかかります。
布を織るのは孫の朋美さんの役割です。
桂子さんが横に付き添って織り方を指導しています。
ゆっくり踏木を踏むようにして糸が絡むのをおさえながらたたいて下さい。
縞を織るために経糸の色をところどころ変えておきます。
経糸に直角に緯糸を通して布にするのですが緯糸を同じ色で織り上げれば縞に途中で緯糸の色を変えれば格子になります。
(桂子)できるだけ緯糸はゆっくり入れるようにしてね。
山のようにして。
そうすると幅が出ますから。
朋美さんはどうですか?実際にやり始めて今どんな…。
こういう手紡ぎの仕事をふだんからたくさんする事がなかなかできないのでなるべく若いうちに体で覚えるというか…。
とにかくたくさん織ってという事が大事だと思うので。
ねえ。
つないでってほしいですねこの技術をね。
昔はこういうのは農家に必ず1〜2台あってねお嫁さんが姑さんから習ってまた次につないでいくというふうにしてたもんですが今はそういうのがほんとに珍しい…。
ここはこれ3代…。
そっか。
続けてやっておられるんで非常にいい例ですから。
(桂子)頑張って下さい。
(朋美)はい。
縞格子絣。
この中で少し複雑な織り方をするのが絣です。
どのようにすればこのような美しい模様を織る事ができるんでしょうか。
その秘密を探りに代表的な絣久留米絣の産地を訪ねました。
・「わたしゃ久留米の機屋の娘」こちらは明治初期に創業した工房です。
図案作りから染め織りまで絣を作る一連の作業を家族でこなしています。
五代目の森山哲浩さんは染めの担当です。
染めた糸を見せてもらうと何やらまだらに染まっていますが…。
これはもうあえてこういう糸にしてます。
実は織って模様が出るように計算してまだらに染めているのです。
どんな模様にするか決めたらそれから計算して糸に印をつけます。
哲浩さんの父虎雄さんの役割です。
糸に印をつけた所は大麻の表皮から作った粗苧で括ります。
括った部分が染まらずに白いまま残る事になります。
括った糸は藍で染めます。
糸は染めながら地面にたたきつけます。
いくら長く藍染めずっとつけていても空気にふれて初めて発色しますので「たたき」というのは重要になります。
糸を括っていた粗苧を外せばこのように藍色と白のまだらに染め上がります。
この糸は「絣糸」と呼ばれます。
この絣糸で妻の万井さんが布を織っていくのです。
では絣糸でどうして柄が織れるのでしょうか。
元の図案に従って並べられた経糸に緯糸を順番に通していくと模様が現れるのですが糸をまだらに染める段階で綿密な計算が必要なのです。
糸一本一本を計算して織る。
絣の美しい模様はこうして生まれていたのです。
機械だったら精密にピシッといくんですけどどうしても人間がやるっていうのは誤作動じゃないですけどずれがありますよね。
それがまたかすれの部分で久留米絣としてのかすれになるのでその味わいで手作りの良さが出てると思います。
縞格子絣でカジュアルなアイテムを作りましょう。
あっこれですね今日。
(松下)このパンツを作っていきたいと思います。
私も作れるでしょうか?絶対大丈夫です。
(2人)よろしくお願いします。
作るのは型紙なしでできるかわいい木綿のもんぺ風パンツです。
教えて下さるのは大阪の…今回は着丈の83cmの長さで作っていきましょうか。
はい。
まず材料です。
着物地のほかこれらをご用意下さい。
型紙を作らずにこの寸法で各パーツを裁断します。
前パンツ後ろパンツは生地幅をそのまま利用して裁ちます。
ポケットとまちの布端にはジグザグミシンをかけておきます。
まず前パンツを縫っていきます。
中表に合わせて縫い代1cmで32cm縫います。
そして縫い代から6cm離れた所を23cm縫います。
後ろパンツも寸法を少し変えて同じように縫います。
前パンツを開いて縫い代を割ります。
この縫い代とタックの部分を合わせてアイロンを当てます。
割った所が動かないように上から0.5cmの所を縫っておきます。
後ろパンツも同じように縫ったら前パンツと後ろパンツを中表で合わせ両脇を縫います。
この時ゴム通し口を開けておきましょう。
ウエストは左脇の所。
裾は両脇のこの部分です。
縫えたら…表に返ったらウエスト側を1cm折りさらに5cm折ってアイロンをかけます。
川上さんどんな様子でしょうか。
おっいい感じ。
いい感じでいってますか?まっすぐいってます。
なかなか慎重派ですね。
そうですか?ちょっと緊張しますね。
こんな感じで。
一応まっすぐいってますか?まっすぐきれいにいってますね。
最後お尻も合ってますしバッチリですね。
きれいにいってます。
ではポケットを作っていきます。
アイロンを当てて折り返した端から0.2cmで縫い留めます。
残りの布端は縫い代1cmで折りアイロンを当てておきます。
これをパンツの両脇につけます。
入れ口を上から19cmの所に合わせて3辺を縫い留めます。
口の角は斜めに縫って補強します。
縫い目が落ちない程度に際の方を縫っていきますね。
これちょうど縞のラインがあるので割と分かりやすいですね。
この布だと。
だから縦縞なんで同じ縞の方向もありだし横に逆に…ポケットだけね。
ポケットだけ生地変えてもかわいいですよね。
ではまちを作っていきます。
端から縫い代1cmの所をグルッと一周印をつけます。
これを股の所に縫い留めます。
先ほど印をつけた頂点とパンツの縫い止まりを合わせます。
縫う順番は先ほどの頂点からこちらの辺の方向。
そしてまた頂点の方からこちらの辺を縫っていって下さい。
逆側も同じように頂点からスタートして下さい。
4辺が縫えたら補強のためにまちのつけ止まりの縫い代4か所をまち側に倒して縫い留めておきます。
まちがついたら股下を裾まで縫い代1cmで縫い合わせます。
そして表に返して裾を縫い代…最後に…出来上がりです。
さあいよいよ最後の裾を一周グルッといったら完成ですね。
はい。
最後のとこもう重ねちゃって下さいね。
もうちょっと先まで重ねます。
そして…。
返して。
完成ですね!あっ縫えてますね。
うんきれいにいけてます。
あ〜よかった〜。
川上さん今回は裾にゴムを入れずストレートなラインに仕上げました。
幅や丈を小さくすれば子供用になります。
タイツやレギンスと合わせれば一年中家族みんなで楽しめますよ。
かっこいいですよね。
ありがとうございます。
出来たてホヤホヤを着てみましたけどなんかラインがストーンと出て…すごいうれしいです。
いや〜似合ってますほんとに。
同じように作っていてもやっぱり柄が違うだけで全然印象違いますもんね。
柄も違ったら印象違うし丈も違ったりしても印象変わりますね。
今回は縞格子絣っていう伝統的な模様をいろいろ見させて頂いたんですけども庶民の人たちが着てきたもので使ってきたものを…そこで生まれたものっていうのを改めて見てすごい勉強になりましたし。
今回もんぺ作りまで教えて頂いてほんとにうれしかったです。
(2人)ありがとうございました。
2014/12/23(火) 21:30〜21:55
NHKEテレ1大阪
趣味Do楽 にっぽんの布を楽しむ〜訪ねて・ふれて・まとう〜第4回縞・格子・絣[解][字]
見ているだけで心引かれる「にっぽんの布」。魅力の秘密を日本各地の産地に探る。今回は女優・川上麻衣子さんが縞(しま)・格子を島根で探訪。福岡では絣(かすり)が。
詳細情報
番組内容
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出演者
【講師】染織史家…吉岡幸雄,服飾デザイナー…松下純子,【生徒】川上麻衣子,【出演】多々納桂子,多々納昌子,多々納朋美,森山哲浩,森山虎雄,森山万井,【語り】一柳亜矢子
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