鴨、京都へ行く。−老舗旅館の女将日記− #10【松下奈緒 椎名桔平】 2014.11.18


その上で、「もう運転はしない」と反省しているとして懲役3年執行猶予4年の判決を言い渡しました。
(峰岸)なかなか腕上げはりましたね女将。
(鴨)そうですか?
(峰岸)へえ。
(峰岸)この不格好やけどへこたれへんという感じ女将らしさがよう出てます。
(鴨)それ褒めてませんよね?
(峰岸)私もこれで安心して先々のことを考えられますわ。
(鴨)何です?先々のことって。
そろそろ隠居をしようかと思ってます。
冗談やめてくださいよ。
峰岸さんは上羽やの守り神みたいなもんなんですから。
私は天井裏の白蛇か?あら。
峰岸さんのお花。
何かいつもよりも情熱的な感じ?この間園田さまご夫妻を鹿王院にご案内してから私考えました。
男と女の愛というもんについて。
愛?これカンパニュラですわ。
花言葉は誠実な愛。
誠実な愛。
(柴田・紗江)お越しやす。
(紗江)どうぞお上がりください。
(ハワード)桐壺。
(紗江)イエス。
(ハワード)ビューティフルスメル。
ビューティフル。
(紗江)どうぞ。
(松原)しかし変わらないね。
この宿は。
何もかも昔のままだ。
(紗江)以前にもお泊まりいただいたことが?
(松原)違うよ。
働いてたんだここで。
(紗江)はっ。
ああ。
(松原)もう40年もたつ。
上羽やの男衆だった?
(柴田)そうなんですよ。
(矢沢)醍醐の間のお客さまってキュイジーヌ・マツバラの社長ですよね?レストラン業界の帝王いわれてる。
(大塚)そういえば私聞いたことあるで。
昔えらい高級ホテルにヘッドハンティングされた男衆がおったって。
(寺石)京都クイーンホテルや。
(寺石)引き抜かれた男はクイーンホテルのロビー担当になり支配人に仕事ぶりを認められて総料理長の娘と結婚。
(寺石)40代でレストラン事業を始めて大成功させた。
そんな話やったわ。
(矢沢)ええな。
僕もあやかりたい。
(大塚)無理無理。
(寺石)そやけどホンマはもう一人おった。
えっ?40年前クイーンホテルから引き抜きの声が掛かった男衆がもう一人。
(紗江)矢沢君。
(矢沢)はい。
(紗江)峰岸さん見ぃひんかった?
(矢沢)倉庫で骨董の手入れしてはりますけど。
(紗江)醍醐の間のお客さまが峰岸さんと話…。
あっ!もしかして…。
そういうことや。
(松原)やっぱりまだここに勤めてたんだな?
(峰岸)いさしてもうてます。
(松原)その年で男衆もないだろ。
(松原)何ならうちに来るか?接客アドバイザーの仕事ぐらい用意するぞ。
お気持ちだけもろときます。
(松原)よそで働くつもりはなしか。
(松原)なあ?峰岸。
悔いてないか?40年前のこと。
(矢沢)峰岸さん何でヘッドハンティング断ったんやろ。
(寺石)それがおとこ気いうもんやないかい。
金より地位より世話になった上羽やへの義理を果たす。
男はそうでないとあかん。
(紗江)ほなヒデさんが同じ立場でも断るん?当たり前や。
「わしのこの腕金で買える思たら大間違いや」言うてな。
(八木)大将!
(大塚)んなこと言うて高い報酬ちらつかされたらなびいてまうんやないの?
(寺石)見損なわんといてや。
6時ですか。
ずいぶんお早いご出発ですね。
(松原)兼南寺で朝のお勤めを見学することになってる。
梅垣屋の女将の計らいでね。
梅垣屋さんの?あの女将なかなかの人物だ。
老舗のコネで特別プランを用意してくれた。
普段見られない文化財の鑑賞。
人間国宝との会食。
君たちもこれからはもっと客を選ぶべきだな。
特別な客に特別な体験をさせる。
そこに未来の鉱脈がある。
鉱脈ですか?誰が掘り当てるか?それは早い者勝ちだ。
チャンスに手を伸ばそうとしない者は負け犬のまま終わる。
(松原)夕食の料理に彼がえらく感動してね。
ぜひ板長に言葉を掛けさせてくれと言ってる。
(寺石)それはどうも。
えらいすんません。
(松原)ジェームス。
(英語)
(松原)ハハハ。
(英語)
(寺石)ショパーン。
(松原)モネの絵を思わせる彩りショパンの曲を思わせる味わい。
大変素晴らしかったと言ってる。
(寺石)サンキューベリーマッチ。
お口に合うて何よりでした。
(松原)そこで相談なんだが。
(寺石)はい。
(松原)君われわれの下で働く気はないかね?はい!?
(松原)実は彼のニューヨークの持ちビルで近々店を出すことになっていてね。
(松原)客単価400ドルの超高級店だ。
(英語)君ならわれわれのパートナーになる資格がある。
厨房のリーダーとして腕を振るってほしいと言ってる。
リーダーって。
ちょっと待ってください。
(松原)待遇についてはその契約書に書いてある。
目を通して問題がなければサインをしてくれたまえ。
そんな言われても。
わしには上羽やへの義理もあります…。
年俸3,000万でどうかな?不満なら君の方から希望額を言ってくれ。
いや。
そんなんわし…。
失礼しました。
(松原)まあサインは今でなくて結構。
だがなるべく早く頼むよ。
(松原)峰岸と私をよく見比べてみるといい。
10年後20年後にどっちの姿になっていたいか?それを考えればおのずと答えは出るはずだ。
(石原)えらいこっちゃ!えらいこっちゃえらいこっちゃやで。
えらいこっちゃ!おっ!?おっと!?
(石原)女将。
えっ?
(石原)大変です。
峰岸さんが。
えっ!?そんな!?峰岸さん!
(石原)えらいこっちゃ!
(衣川)「しばらく実家に帰らせていただきます」何や旦那に浮気された奥さんのような文面ですね。
冗談言ってる場合じゃないんですよ。
失礼しました。
あっ。
峰岸さんって実家どこでしたっけ?
(石原)舞鶴ですわ。
じゃあそちらにご家族が?
(鞠子)峰岸さんには奥さんも子供もいはりません。
えっ。
(京介)毎度。
あら。
皆さんお揃いで。
これねうちの店の新商品。
これちょっと使ってくださいな。
京介。
車出して。
舞鶴まで。
(京介)はっ?
(紗江)朱雀の間のお客さまお味噌汁ネギ抜きでお願いしたいって。
(寺石)おう。
分かった。
(八木)お願いします。
よろしくね。
(寺石)お紗江ちゃん。
(紗江)うん?あのな昨日のことやけど。
(紗江)私は応援するえ。
(寺石)お紗江ちゃん。
キュイジーヌ・マツバラの社長が直々に声を掛けてくれはったんや。
すごいチャンスやないの。
(寺石)そやけど。
やっぱりああいう人は違うもんやな。
見る目があるわ。

(住職)ほな奥の院へご案内しますわ。
925年建立の一般公開がされてへんお堂です。
(八木)大将を引き抜き!?
(玉山)ニューヨーク店の料理長って。
それホンマですか?
(大塚)私が言うたことは内緒な。
絶対に秘密やで。
(柴田)嘘つきやねヒデさん。
(大塚)うん?
(柴田)自分にヘッドハンティングの話がきてもその場で断る言うてたのに。
(紗江)しょうがないわ。
(大塚)紗江さん!?心が揺れるのは当たり前や。
誰かて自分の腕を高う買うてくれるとこで働きたいもんやろ。
それはそうですけど。
俺は嫌やな。
大将のおらへん厨房なんて俺は嫌や。

(京介)あれ?この辺りのはずなんやけどな。
ホント?あっ!ちょっちょっ。
あれ見て。
あれ。
(京介)あっ。
(京介)えっ?ちょっちょっちょっ…。
峰岸さんって奥さんおれへんかったよな?そう聞いたけど。
(京介)あっ。
どうもこんにちは。
こんにちは。
(春子)はい。
(京介)ええお庭ですね。
(春子)おおきに。
(京介)これ何ていう花ですか?
(春子)カンパニュラです。
(京介)カンパニュラ。
(春子)小さな鐘いう意味やそうです。
(春子)花言葉もなかなかええんですよ。
誠実な愛。
あっ。
峰岸さんに教えてもらったんです。
上羽やの方?あっはい。
(春子)まあ。
どうも失礼しました。
いやぁ。
いっつも峰岸がお世話になってます。
いえ。
こちらこそお世話になってます。
あのう。
私上羽やの女将の上羽鴨といいます。
(春子)まあ。
(京介)僕加茂京介っていいます。
2人揃ってカモですわ。
あっ!彼女僕と結婚したら加茂鴨ですわ。
ちょっと。
何余計なこと言ってんのよ。
すいません。
(春子)あの人ふらっと帰ってきた思たらまたふらっと出掛けてしもて。
風の向くまま気の向くままです。
でもこんな日は海やろか。
海?
(春子)うん。
峰岸さん!
(峰岸)女将。
よかった。
会えて。
もうびっくりさせないでくださいよ。
えらいすんまへん。
こんなやり方してしもうて。
こうでもせんことには踏ん切りがつかへんかったんです。
本気だったんですね?隠居したいっていう話は。
(峰岸)へえ。
ホンマは何カ月も前から考えてました。
理由は何です?私言いましたよね?峰岸さんは上羽やの守り神みたいなものだって。
峰岸さんがいてくれるだけでみんな安心するんです。
(峰岸)そやからですわ。
年寄りが身引かんとホンマの意味で若い人は育ちません。
あれこれ教えるのも仕事なら黙って身引くのもまた仕事ですわ。
(峰岸)とか言うて。
ハハハ!また偉そうなこと言うてしもたけど。
ホンマの理由は他にあるんです。
近ごろあかんのですわ。
お客さまのお名前が。
(京介)名前?へえ。
昔みたいにすっとよう覚えられへんのです。
覚えられへんということをみんなにも分かってしまいますやろ。
そしていつかはお客さまにも分かってしまいます。
そうなる前に身を引かんとあかんのです。
峰岸さん。
女将。
あのう。
上羽や辞めさしてください。
頼んます。
鴨。
少し考えさせてください。
お願いします。
おおきに。
なあなあ。
うん?さっきの女の人峰岸さんの何やと思う?妹さんかな?いや。
似てないでしょ。
ちょっちょっちょっ。
鴨聞いてきてくれや。
えっ!?何で?京介が聞きに行けばいいでしょ。
嫌や。
それは鴨の仕事やろ。
仕事って。
行ってきてよ。
いや。
絶対嫌やで。
何で?
(京介)いつも俺やんか。
(春子)いいなずけです。
フフフ。
40年間ずっといいなずけ。
どうぞ。
舞鶴産のかぶせ茶ですわ。
すいません。
(京介)おおきに。
(京介)ああ。
すいません。
ほら。
行って行って。
チャンスチャンスチャンス。
(京介)あの。
あのう。
(春子)はい。
40年っていうのは。
アハッ。
うーん。
あれは婚約してすぐのことやった。
京都クイーンホテルからあの人に引き抜きの話がきたんです。
でも断ってしまったんですよね?峰岸さん。
ええ。
自分は上羽やに人生を捧げるんや。
女将と番頭さんの恩に報いるんや言うて。
はあ。
男やな峰岸さん。
なあ?
(春子)私はそんなふうには思えへんかった。
もうただ悲しかった。
私を楽にさせることなんてこれっぽっちも考えてくれへんのやろかって。
それでついあの人を責めてしもたんです。
そしたらあの人土下座して。
土下座?婚約はなかったことにしてほしいって。
自分はこんな男やさかい女房を幸せにするなんてとてもでけへん。
せやから婚約は取り消したい。
そう言うたんです。
あのとき私思いました。
ああー。
私は上羽やに負けたんやなって。
負けたなんてそんな。
そやけど今は勝ちましたよね?
(春子)はい?峰岸さん。
あなたのところに戻ってきたんやから。
体は戻ってきても心はきっと今も上羽やですわ。
富裕層向けプランのノウハウ作り確実に進展しているようですね。
(鈴風)おかげさんで。
後は上羽やさんが協力してくれはったら言うことなしなんやけど。
(高瀬)協力。
それ本心ですかね?
(鈴風)えっ?
(高瀬)どうもあなたの思惑が見えてきましてね。
あなたは上羽やと手を組みたいのではなく上羽やを手に入れたいのではありませんか?
(鈴風)どうやろ?上羽やを富裕層に特化した宿として完全リニューアルするつもりでは?ご自分の梅垣屋には手を付けずに。
(鈴風)梅垣屋は昔なじみのお客さんを何よりも大事にしてますしね。
(高瀬)億万長者を喜ばせるためには別の足場が必要というわけですか。
(鈴風)あきまへんえ高瀬さん。
(高瀬)はい?
(鈴風)上羽やさんは200年の老舗や。
足場呼ばわりしはったら罰当たりますえ。
(高瀬)これは失礼。
気を悪くしないでくれ。
支配人。
お気になさらず。
(衣川・高瀬)ハハハ。
(鈴風)フフッ。

(戸の開く音)・いた。
(店主)いらっしゃい。
峰岸さん。
(峰岸)女将。
まだいてはったんですか。
まあ。
まあ一杯いきましょ。
何こんなとこで飲んでんですか!何を怒ってはるんですか?そんなに。
40年も待ってくれはったいいなずけほったらかして一人酒はあかんでしょ。
聞いたんですか?そんな昔の話。
峰岸さん。
退職願受理します。
おおきに女将。
ですが条件があります。
寿退社に限ってのみ認めます。
(峰岸)えっ?つまり上羽やを辞めたければ春子さんにきちんとプロポーズすることです。
(峰岸)プ…プロポーズ。
(京介)春子さん言うてはりましたよ。
峰岸さんの心は今も上羽やにあるんやないかって。
一人の女性をそんな気持ちのままでいさせていいんですか?
(峰岸)ん…。
ちょっとすんません。
大将。
もう一杯。
(店主)はいよ。
峰岸さん。
すんません。
お酒の力でも借りんことにはどうにもこうにも。
すんません。
(店主)はいお待ち。
ほな一杯だけですよ。
(店主)へい。
(京介)あっ大将。
俺にも一杯。
(店主)はいよ。
ホントにもう。
一杯だけですからね。
(峰岸)はい。
すいません。
私にも一杯。
(店主)はい。
(峰岸)もう一杯。
(京介)早っ。
(寺石)親父。
お代わり。
(店主)はい。

(鞠子)おんなじの私にもちょうだい。
(店主)はい。
(寺石)鞠子さん。
(鞠子)フフッ。
ここ前に峰岸さんに教えてもろたん。
(寺石)わしもです。
(鞠子)仕事の後の一杯染みるなぁ。
(寺石)へえ。
(店主)はい。
お待ち遠さま。
(寺石)はい。
(鞠子)はい。
おおきに。
ほな。
ヒデさんの前途に乾杯や。
(寺石)えっ?
(鞠子)ゆうべ醍醐の間に呼ばれてからずっと思い詰めてるやろ。
どんな話があったんかだいたい見当つくわ。
(鞠子)好きにして構へんのやで。
自分に正直になったらええわ。
(寺石)フッ。
かないませんわ。
鞠子さんには。
何もかもお見通しや。
(鞠子)さっき女将から電話がきたわ。
色々あって今夜は舞鶴に1泊するって。
色々?まさかまた女将余計なことに手出してるんや?
(鞠子)そう思うやろ?私もそれで落ち着かへんのや。
女将のしでかすことだけはさすがの鞠子さんも見通せませんか?お手上げやわ。
一難去ってまた一難。
そのたびにみんな驚かされて振り回されて走り回らされて。
(寺石)フフッ。
あの子が来てからずっと嵐の中にいるみたい。
そやけどいつの間にか嵐が楽しなってる。
アホやな私。
あーあ。
もうこんなんなっちゃって。
(京介)この人慣れてないんやな。
えっ?
(京介)自分のこと考えんのに慣れてないんや。
何十年もずっとお客さんのことばかり考えてきたさかいな。
あっ。
(京介)あっ。
春子さん。
(春子)えらいすいません。
お世話かけてしもて。
いえ。
こちらこそご迷惑お掛けしました。
結局こんな時間になっちゃって。
(春子)ようあることです。
この人上羽やを離れるとまるきりあかんのです。
(峰岸の話し声)うん?何か言ってる。
(峰岸)戸締まり火の元頼むで…。
(3人)ハハハ。
(京介)峰岸さん。
戸締まり火の元大丈夫ですからね。
安心して寝てくださいよ。
(春子)40年たってもやっぱり私の負けや。
この人の心の中は上羽やのことだけ。
フフッ。
はいどうぞ。
すいません。
(京介)よし。
ほら。
帰りますよ。
はい。
(京介)お願いします。
はい。
おはよう。
(春子・鴨)おはよう。
『ボンバー体操』の時間です。
今日は太極拳バージョンです。
よっ!よいしょ!
(春子)面白いねこれ。
峰岸さんよりも上手です。
(春子)当然。
やーっ!やーっ!
(春子・鴨)やーっ!今日のラッキーアイテムは。
バラ。
あー残念。
うちの庭にはバラは咲いてへん。
(春子)はい。
ありがとうございます。
うん!おいしい!
(春子)うーん。
海を眺めながら食べるとまた格別やな。
うん。
ホントにいい眺め。
(春子)海も空も40年前とおんなじやわ。
待ってる時間はあっという間。
待たれてる時間もあっという間かもしれません。
私待たれてたんです。
ずっと。
待っててくれたのは私を突き放した人。
本心ではそばにいてほしいくせにわざと突き放した人。
大事に思うからこそ本心とは違う態度を取った人。
峰岸さんもそうだったんじゃないでしょうか。
うん?40年前春子さんのこと大事に思うから犠牲にしたくなかったからだからこそ結婚を諦めたんじゃ。
鼓太郎さんの言うてはったとおりや。
えっ?先代の女将も素晴らしい方やったけど今度の女将も決して引けを取らへんって。
峰岸さんそんなこと言ってたんですか?見る目だけはあるんえ。
あの人。
恩返ししないと。
私鬼になります。
鬼!?・おはようございます!
(むせる声)女将!?おいしいですよね?酔いざめの水って。
ここで何してはるんですか?あきれた。
ゆうべのこと何にも覚えてないんですか?さっぱり覚えてません。
はぁ。
もしかして女将。
こ…ここにお泊まりになられた?このまま帰るわけにはいきませんから。
峰岸さん。
今から海に行ってください。
う…海?そこに春子さんがいます。
彼女にきちんとプロポーズしてください。
その後即行で婚姻届を提出。
それが済んだら上羽やでお披露目です。
そんな。
勝手に決めんといてください。
覚悟を決めてください!ああ!?ええかげんに腹据えたらどうなんですか!?ホンマ情けない。
人間にはけじめをつけなあかんときがあるんです。
鬼や。

(京介)峰岸さん。
これ買うてきました。
プロポーズいうたらやっぱりバラでしょう。
これ持っていざ出陣。
(京介)男になってください。
峰岸さん。
それはあかん。
それはあかんわ。
ちょっ。
ちょっとちょっと。
あっ。
峰岸さん。
考えてあげてください。
春子さんの気持ち。
彼女がどんな思いで40年間待ち続けていたか。
上羽やの200年よりも彼女の40年の方がホントはよっぽど重みがあるんです。
ねえ。
峰岸さん。
(京介)上羽やに飾る花もそうしてはりましたよね。
バラやザクロボケの花。
みんな丁寧にとげが切り落とされてましたわ。
(峰岸)このとげついてるとなくつろいだ気持ちになられへんねん。
私にもそうしてくれた。
上羽やに来た当時私たぶんすごくとげとげしかったと思います。
でもそんなとき最初に少しだけ認めてくれたのが峰岸さんだった。
あれから少しずつ私の心のとげが落ちてった。
そんな気がします。
女将。
峰岸さんなら必ず幸せにできます。
春子さんのこと。
とんだ人間国宝だ。
サンキュー。
(松原)おっ。
(鈴風)寺石さん。
(寺石)あっどうも。
お出掛け前にえらいすんません。
(松原)持ってきてくれましたか?契約書。
(寺石)へい。
(松原)まあどうぞ。
(ハワード)プリーズ。
サインはどうした?
(寺石)すんません。
よう考えたんですけどこの話やっぱりお断りさしてもらいますわ。
(松原)正気か?あっ。
報酬が不満かね?
(寺石)まさかそんな。
ただ今やないんです。
いつかわしも上羽やを離れることがあるかもしれません。
そやけど今はまだあの場所にいたいんです。
あの場所を支えてあの場所のみんなと一緒にじたばたしていたいんですわ。
嵐ん中で。
ほな失礼します。
待ちたまえ。
(松原)一つだけ言っておく。
チャンスに手を伸ばそうとしない者は一生負け犬のまま終わる。
峰岸のようにな。
ほなわしも一言ええですか?
(松原)何だ?わしのこの腕金で買える思たら大間違いや。

(鈴風)エクスキューズミー。
ああっ。
頑張って。
何持ってんの?
(峰岸)いや。
何でもない。
(春子)この場所やったね。
(峰岸)えっ?
(春子)40年前あんたが私に結婚はできひん言うて土下座したん。
(峰岸)ああ。
ここやった。
(春子)ああー。
海も空も昔とおんなじやのにお互い年取ったもんやね。
ハハハ!
(峰岸)すまんかった。
(春子)うん?
(峰岸)長い間ホンマにすまんかった。
(春子)何で謝んの?あれはあんたの優しさやったのに。
優しさって分かってたさかい私は待ってられたんや。
あの庭でずっと花を育てることができたんやで。
(峰岸)わしもや。
お客さんにほっとしてもらえるような優しい花を毎日飾ることができたんはそれはお前が待っててくれたからや。
(峰岸)わしはずっとお前に支えられてたんや。
鼓太郎さん。
結婚してください。
(春子)わっ!?やった!よっしゃ!やった!あんた何泣いてんのよ?いや。
泣いてないし。
あのう。
これは峰岸さんがまぶしいだけやし。
何やってんのよ?いや。
あのう。
(八木)大将。
帰ってきた。
(玉山)ヒデさん。
大ニュースですよ。
(寺石)どないしたんや?
(石原)峰岸さんがこれから奥さんを連れてきはるそうです。
(寺石)あの人そんなんおったんか?
(柴田)それが婚姻届はこれから出すらしいんです。
(大塚)しかも峰岸さん寿退社やって。
(寺石)寿退社!?
(矢沢)もう舞鶴で何があったんや!?
(鞠子)ハハハ!
(柴田)鞠子さん?
(鞠子)あーおかしいホンマに。
いっつもこうや。
あの女将のせいでとんでもないことになる。
いっつもいっつもや!
(笑い声)
(寺石)ほら。
こうしてる場合やないで。
奥さん連れてくるんやったら俺らで披露宴やらな。
(玉山)今日これからですか?
(寺石)善は急げや。
(八木)そやけど祝い膳今から用意できるやろか?
(寺石)じたばたしたら何とかなるわい。
峰岸さんの門出やで。
何十年も上羽やのために尽くしてきた人や。
この先何十年上羽やで世話になる俺らで祝ったろ。
(紗江)ヒデさん?
(寺石)うん。
(寺石)ほなやるで!
(八木)はい!
(石原)ヘッドハンティング断ったんや。
アホや。
ヒデさん。
ホンマにアホ。
(高瀬)人間国宝がドタキャンですか。
そりゃ大変でしたね。
まあ安井瑞雲先生は気まぐれで有名ですからね。
(鈴風)ええ勉強になりましたわ。
富裕層向けプランのノウハウ作りもっと本腰入れよう思います。
(高瀬)転んでもただでは起きませんなあなたは。
奇麗な顔をしてまったく頼もしい。
(鈴風)こわもてなお顔してお世辞も言わはんねんな。
(高瀬)自分では優男のつもりですが。
(鈴風)ほな優男さん。
うちいつごろ手に入れられるやろか?
(高瀬)はい?世界に打って出るためのうちの足場。
(高瀬)上羽やの件なら間もなく彼が最後の一押しをするはずです。
そうだな?衣川君。
はい。
待ち遠しいなぁ。
早この足乗せたいわ。
祇園祭のころになるやろか?送り火の時分やろか?楽しいことばっかりや。
京都の夏は。
怖い女だ。
(石原)支配人お願いします。
はいよ!矢沢君。
そろそろビール持ってきてくれる?
(鞠子)女将。
はい。
(鞠子)安井瑞雲先生が後でお祝いにみえるそうです。
安井瑞雲って人間国宝の?
(鞠子)うちには何遍か泊まらはったことがあるんです。
峰岸さんには世話になったさかい祝わせてほしい言わはって。
(矢沢)女将。
財務大臣から花が届きました。
(京介)鴨鴨鴨鴨。
東山老人会のおっちゃんらが今夜お祝いに来たい言うてるけどどないしよ?ちょっと待ってちょっと待って。
順番に順番に。

(春子)あのう。
すみません。
(鞠子)新婦はゆっくりしててください。
準備ができたらお呼びしますさかい。
(大塚)そうそう。
新郎が寂しがらはりますよ。
(春子)それが消えてしもたんです。
(一同)はい?あのう。
鼓太郎さん。
目離した隙にどっか消えてしもて。
(一同)えっ!?
(紗江)手分けして捜しましょ。
(一同)はい。
峰岸さん?ちょっと待って。
あーっ!ちょっとちょっと。
(矢沢)中身誰やねん!
(京介)ちょっちょっちょっ!よっ!
(峰岸)ああ!?あっ!もう峰岸さん。
こんなときに何やってるんですか。
(峰岸)えらいすんません。
働かんとじっとしてんのは性に合わへんので。
(鞠子)働いてもろたら困ります。
主役なんですから。
柄やないですわ。
照れくさい。
峰岸さんの結婚とご夫妻の前途を祝って乾杯。
(一同)乾杯。
(峰岸)あっ。
乾杯。
(一同)よっ!よっ!
(大塚)新郎。
新婚旅行はどちらへ?
(峰岸)えっ?どないする?そうやね。
ああ。
私ここに泊まりたい。
(石原)ホンマですか?それええですね。
(八木)いや。
あかんあかん。
峰岸さんまた働き始めてまうやないか。
大丈夫です。
私がずっとこうしてますさかい。
(寺石)よっ!色男!
(歓声)あっ。
衣川さん?素晴らしい披露宴でした。
私ホンマに感動しました。
何やまるで自分も上羽やの一員になったような気分でした。
長居をし過ぎたようです。
実は上司から再三戻ってくるように指示がありましてね。
私これで上羽やを去らしてもらいます。
おやおや。
何やえらいショック受けたような顔してますね。
まさか。
うぬぼれないでください。
うぬぼれでしたか。
うぬぼれですとも。
それは失礼しました。
短い間でしたがお世話になりました。
こちらこそ。
今度会うときにはワイズコンサルティングの衣川としてお目にかかります。
そんときまでに例の件決断しといてください。
例の件?富裕層向けプランに伴う貸し切り契約の件ですよ。
梅垣屋さんに協力を頼まれたはずですが。
それに関しては…。
鈴風さん。
こんにちは。
峰岸さんのお祝いのお花後で届けさしてもらいます。
それはわざわざありがとうございます。
ちょうど今例の件についてお話ししていたとこです。
そう。
どうぞよろしゅう。
上羽やさん。
ほな行きましょ。
うん。

(貴和)《私がやったの》
(黛)《一審判決死刑》
(古美門)《私は君を無罪にする。
必ずだ》2014/11/18(火) 14:57〜15:53
関西テレビ1
鴨、京都へ行く。−老舗旅館の女将日記− #10[再][字]【松下奈緒 椎名桔平】

「上羽やを辞めさせて頂きます…」40年勤め上げた男衆のけじめ…長年待たせた女性を海辺の街へ迎えに行く!鴨がプロデュースする時を超えた感動のプロポーズ!

詳細情報
番組内容
 上羽鴨(松下奈緒)と峰岸鼓太郎(笹野高史)が花を生けていると峰岸はそろそろ隠居を考えている、と話すが鴨は冗談と受け流す。
 「上羽や」に松原祐一郎(矢島健一)とジェームス・ハワード(イアン・ムーア)という客がやって来た。松原はレストラン業界の帝王と呼ばれ、40年前「上羽や」で男衆として働いていた。当時、高級ホテルに引き抜かれ、今の地位を手に入れた。実はもう1人、引き抜きの声がかかった男衆がいた。
番組内容2
それが峰岸だった。松原は峰岸に、40年前に断ったことを悔いてはいないのか?と尋ねる。
 松原らは、次の日早朝から普段は見られない文化財の鑑賞と人間国宝との会食に出かけるという。「梅垣屋」の女将・梅垣鈴風(若村麻由美)の計らいだった。鈴風は富裕層向けに特別な体験ができる旅行プランに着目していた。鈴風は衣川周平(椎名桔平)に、「梅垣屋」のコンサルタントになってほしいという話を忘れていないかと確かめる。
番組内容3
 その日の夜、夕食を終えた松原は、板長と話したい、と寺石秀(高杉亘)を呼ぶ。松原は自分たちのもとで働かないか?と寺石に持ちかける。
 翌日、「しばらく実家に帰らせていただきます」というメモを残して、峰岸が消えた。峰岸には妻も子どももいない、と鞠子(かたせ梨乃)から聞いた鴨は、加茂京介(大東駿介)を引き連れて、実家があるという舞鶴へ向かう。すると、峰岸家の軒先に遠野春子(松坂慶子)の姿があり…。
出演者
上羽鴨: 松下奈緒 

衣川周平: 椎名桔平 

梅垣鈴風: 若村麻由美 

間山紗江: 堀内敬子 
加茂京介: 大東駿介 
寺石秀: 高杉亘 
八木飛雄馬: 小柳友 

峰岸鼓太郎: 笹野高史 
高瀬裕次郎: 伊武雅刀 

仲代公吉: 松平健(特別出演) 
上羽薫: 市毛良枝 
塩見鞠子: かたせ梨乃 

松原祐一郎: 矢島健一 
ジェームス・ハワード: イアン・ムーア 
遠野春子: 松坂慶子
スタッフ
【脚本】
森ハヤシ 
酒井雅秋 
岩下悠子 

【プロデューサー】
手塚治 
妹尾啓太 
中尾亜由子 

【演出】
並木道子 

【主題歌】
「いろはにほへと」椎名林檎(EMI Records Japan) 

【制作】
フジテレビ 

【制作著作】
東映

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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