「福島をずっと見ているTV」。
今日は芝居で震災を描き続けている高校演劇部のお話です。
弟はあの3月11日の朝家の鍵を欲しがりました。
会津地方にある福島県立大沼高校演劇部。
この部を率い脚本も書いているのは顧問の佐藤雅通先生です。
震災の翌年に書いた芝居は反響を呼び去年演劇の聖地下北沢での公演で満員のお客を集めました。
高校演劇部としては異例の快挙。
しかしその成功は佐藤先生にとってゴールではありませんでした。
その言葉どおり佐藤先生は今年も続編となる作品に取り組みました。
演じる生徒は代わっても震災の芝居をやり続ける。
ある思いが先生を動かしています。
芝居を通して震災とずっと向き合っていくと決めた高校演劇部の姿を見つめました。
会津美里町にある大沼高校。
東電福島第一原発から100キロ以上離れています。
ただ単に何でもいいから変身する小説を中島敦は書いたわけじゃない。
佐藤先生は国語を教えながら2年生の学年主任も務めています。
(一同)おはようございます。
お願いします。
演劇部の顧問になって7年目の佐藤先生。
今でこそ震災の芝居をやり続けようと決めていますが震災が起きた当初はそんな気になれなかったといいます。
そんな先生に震災を描く事を決意させた人がいます。
卒業生の坂本幸さんです。
え〜そうなの?って。
坂本さんの思いを代弁しようと会津に避難してきた高校生を主人公に書いたのが前作でした。
うちら生き残ったからさだから…。
私生き残ったんじゃない。
死ななかっただけ。
そして今年。
先生の中には新たに描かなければいけないと思う事が出てきていました。
新作「Paradise」の核となるシーン。
原発近くの町で暮らしていた女性が2011年3月11日の朝を自宅でどんなふうに過ごしていたか独白するという場面です。
いってきます。
じゃあね。
父と祖父と妹は家から2キロ離れた場所まで流されて母は港のスーパーで兄は車の中で弟は学校の近くで見つかりました。
家も流され私に残されたのは弟の手に握られたこの鍵だけでした。
私はあれからずっとこの鍵がぴったりとはまる鍵の穴を探していたんだと思います。
今だからこそ被災した人たちが失った原点に思いをはせたい。
その上で主人公のセリフに未来に向けた願いを込めました。
立場とか境遇が違っても人は人の気持ちを分かろうとする事ができる。
私は人の優しさを信じています。
(合原)よろしくお願いします。
今回は顧問の佐藤先生に話を聞きます。
(箭内)あえて質問したいんですけど忘れない事がなぜ必要なのかというのは先生はどういうふうに?なぜ忘れちゃいけないのかというところどう置いてるのか聞いてみたいなと。
(佐藤)この子たちにとってというかそこから見える被災者全体に言える事だとは思うんですけど…ですからそれはやっぱり…
(佐藤)それは違うんじゃないですかね。
僕は演劇…。
でもかっこよかったから。
でもずっとあんな感じなんですけど。
何ていうんでしょうね…震災の芝居を演じるにあたり部員たちは仮設を訪ね住民の話に耳を傾けてきました。
こうしていろんな人たちから聞いた話を書き留め部員同士で共有しました。
こうして聞き取った言葉は台本にも反映されています。
…っていうか帰りたいけどもう住みたくないって。
会津地区の高校演劇部が集まるコンクールが開かれました。
ここで勝ち抜くと福島県大会に出場できます。
私は人の優しさを信じています。
優しさを信じている?人の優しさを信じているから弥生さんは自分の事を由紀さんには話さなかったんだなきっと。
かっこつけちゃって。
そして審査発表。
最優秀校大沼高校。
(拍手)県大会に駒を進めた大沼高校演劇部。
みんなで作ってきた芝居が伝わったと実感できた瞬間でした。
しかし…。
(一同)おはようございます。
お願いします。
この日先生が震災を描くきっかけとなった卒業生の坂本幸さんが練習を見にきました。
続編が出来たと聞き進学先の茨城から駆けつけてくれたのです。
私は人の優しさを信じています。
坂本さんの感想は…。
以上です。
ありがとうございました。
最も見てほしかった一人である坂本さんには伝わりませんでした。
はい。
坂本さんはどうして感情移入できなかったか考えたあとで先生にメールをくれました。
佐藤先生は改めて台本と向き合い始めました。
被災した人たちの心に届くように。
台本に修正を加え続けます。
一方被災した主人公を演じる2年生の大崎理咲さん。
通学路で毎日仮設の看板を目にしますが演劇に関わるまで特別意識した事はありませんでした。
震災の芝居に取り組むようになってから被災した人に寄り添う事の難しさを痛感したといいます。
それでも大崎さんは演劇を通して震災の事を考え続けたいといいます。
この日先生は練習後部員たちを集めました。
県大会の前に話しておきたい事がありました。
え〜っと…
(一同)はい。
(佐藤)以上です。
(一同)ありがとうございました。
すごい先輩ですね。
あれは言わない事ももしかしたら選択肢にはあるかもしれないけど。
あれはでもかなりショックでしたよね。
この番組も続けるというタイトルでね「ずっと見ている」ってしてますけど。
もう続けざるをえないというかね…高校生特に…そんな気がしますけどね。
まあ悪いとこもいっぱいあると思いますけどね。
そして迎えた県大会。
(一同)お〜!立場とか境遇が違っても人は人の気持ちを分かろうとする事ができる。
私は人の優しさを信じています。
あっ虹だ!今の精いっぱいの気持ちを込めて演じきりました。
(拍手)上位2校が東北大会に進む事ができます。
最優秀賞いわき総合高校。
最優秀第一席保原高校。
東北大会には届きませんでした。
悔しい思いさせてほんとに申し訳ない…。
ほんとに申し訳ない。
以上。
(一同)ありがとうございました。
2014/12/07(日) 00:00〜00:25
NHKEテレ1大阪
福島をずっと見ているTV vol.43「終わっていないから、やり続ける」[字]
福島県立大沼高校演劇部。東日本大震災以降、被災して避難している人たちの気持ちを、演じ続けている。その理由と描き続けるうえでの葛藤とは?顧問の佐藤先生に聞いた。
詳細情報
番組内容
箭内道彦さんと合原アナウンサーが訪れたのは福島県いわき市。この日、福島県の高校演劇県大会が行われていた。震災から3年半、被災した人たちが今どんなキモチでいるのかを描いた大沼高校演劇部の舞台を鑑賞するためだ。現在の部員たちの中に被災経験を持つ者はいない。それでも佐藤先生は、生徒たちに仮設住宅を訪問させ被災者の気持ちを脚本や演技に反映させていった。「終わっていないから…」その言葉に込められた思いとは?
出演者
【司会】箭内道彦,合原明子,【語り】相沢舞
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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