昭和15年日中戦争の影響で食糧事情は厳しくなり米を節約する節米料理が奨励されていました
(トラ)
そんな中め以子は…
(活男)来た?お母ちゃん。
(め以子)活男油揚げ出して。
(活男)よっしゃ。
めっぽう元気なおばちゃんになっておりました
・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
(一同)おはよう。
ふ久は高等女学校に通い物理に夢中な風変わりな女学生。
泰介は中学校に進学し野球部に在籍。
活男は相変わらずの食いしん坊でした
はいじゃあ御飯にしましょう。
(静)また節米料理かいな。
命懸けで戦うてはる兵隊さんの事思たらぜいたくなんてでけへんでしょう。
(悠太郎)頂きます。
(一同)頂きます。
(静)かっちゃんおいしいわ。
ふ久。
御飯!御飯食べる時は御飯食べ。
(源太)何やどんどん薄なってない?
(馬介)ああコーヒー輸入制限かかってもうててな。
税金も上がっとるし。
ああ桜子。
悪いんやけどこれお願い。
千人針。
(桜子)また?お国のために戦いに行って下さるのよ。
できるだけの事はしてさしあげたいのが人情じゃない?ああ〜ちょっとめ以子ちゃん。
頼みがあんねんけどな。
コーヒーの代用品一緒に考えてくれへん?
(ドアの開閉音)
(ふ久)ただいま戻りました。
(静)お帰り。
あっお帰り。
あ〜ふ久コーヒーの代用品になりそうなもん何やないかいなあ。
(ふ久)タンポポがええらしいで。
タンポポってどうやって作るん?そこまでは知らん。
ドイツではそうやって作るんやて。
ある日の事です
何かあったんですか?
(マツオ)来てもうたんや赤紙。
(トミの泣き声)
(源太)まあまあまあまあまあまあまあ!そんなもんばば〜っとうまい事立ち回るさかい。
大丈夫や!
ところがその数日後
マツオさん銀次さん。
(マツオ)源太知らんか?えっ?源太さんどうかしたんですか?あいつ…まだ戻ってけえへんねん。
それって…。
(室井)逃げた〜!
(銀次)聞かれたらどないすんねんお前は!
みんなで源太の行方を捜し回っていると…
ふ久!えっ何何?学校は!?その服どうしたん?
(ふ久)買うてもろた。
誰に?あの…どういう関係なんですか?
(竹元)私はこの子を愛している。
愛って…。
この子の才能を愛しているんだ。
自分で話せるか?猫娘。
何で勤労奉仕の時間に勉強してるんですか!何で学校で勉強したらあかんのですか?みんなそうやって我慢してるんです!みんな我慢してたら私も我慢せなあかんのですか?
(ふ久)そんな事が何回かあって行くん嫌になってふらふらしとったら竹元さんのとこ来て勉強してええ言われたんや。
親ならもう少し子どもの事を考えてやれ。
学校やめる訳にはいかへんや…。
学校に行かなければ勉強できないのか!料理以外はとんだぼんくらだな貴様は!竹元さんも竹元さんですよ。
普通無断でかくまいますか?親に連絡してきませんか?ふ久に自分を重ねてもうたんちゃいますかね?みんながするから自分も我慢せんといかんいう考え方がそもそもなじまない人たちもいるんですよ。
わがままですよ。
・源ちゃんどうするつもりなんだろう?
(桜子)源太さん東京に行ってるってないかな?お父ちゃんに聞いてみるね。
(ドアが開く音)源ちゃん…。
えっ?
(源太)どないしたん?どこ行ってたんよ今まで。
女んとこやけど。
順繰りに全部顔見に行っとったんや。
全部やったら全部ってちゃんと言うてきなさいよ!兵役逃れやったらどうしようってマツオさんものすごく心配してたんやからね!ごめん…。
(桜子)入営いつだっけ?ああ3日後や。
出征祝のお料理何か食べたいもんある?イチゴ。
あっ…。
せやお前イチゴ買うてイチゴ。
イチゴ。
(タネ)手間かかるしおなか膨れへんしぜいたくやて。
イチゴ作るんやったら別のもん作ろういうふうになってきとるみたいでなあ。
そうだね
何?あれ。
あのころ手に入らなかったイチゴがみんなが食べられるようになって
八百屋のおばはんから。
いつの間にかまた消えちゃったんだね
ビフテキです!
(一同)おお〜!
そして源太の出征祝の日となりました
ご存じやと思いますがわしは…まるまるしたおなごを好んでまいりました。
(笑い声)
(銀次)知っとる知っとる!
(源太)ところが先日今まで縁のあった女性にお別れを言いに回りましたところことごとく皆しゅっとしておりました。
こんな戦争は早く終わらせんとあきません。
泉源太はお肉のために一命をささげ戦ってまいります!
(拍手)
(オルガン)今日は源太さんの門出という事で源太さんにお祝いの歌を用意しました。
(一同)おお〜!何や何や。
(希子)・「高く遠くあてどもない空」・「道を失くしたあの日」・「君よ、忘るるな」・「かけがえのない君であること」・「君にすがる者達のこと」・「僕たちはここで待つ」行きとうない…。
出征祝や。
出征祝顔出してくれはったらよかったのに。
個人的に済ませましたんで。
えっ?おなかは?あ…活男に適当に作ってもらいましたんで。
あっほなおやすみなさい。
僕はひょっとしたら源太さんの代用品なんかもしれませんね。
はっ?代用品!源ちゃん。
はい。
(桜子)うわよく作ったねこんなの。
どうぞ。
代用品で申し訳ないけど。
ほな頂きます。
お前んちの味やな。
うん。
ほなねっ。
ああめ以子。
ごちそうさ…。
まだやから。
まだいっぱい残ってるでしょ。
全部食べてから「ごちそうさん」言いに来て。
おう。
うん。
ほなね。
お砂糖の配給制?砂糖が自由に買えんようになるって事ちゃうか?お砂糖に統制がかかるて事ですか!?私ね…ず〜っとお砂糖に助けられてきた気がするの。
つらい時にはいっつも甘い物が私を…。
源ちゃんもイチゴもお砂糖も…私の大事なものがどんどん知らないうちに取り上げられてく気がして…。
(多江)西門さんちょうどよかった。
皆さん剥がしてくれはる?新しいん貼って回るん。
あんさんも手伝うて。
え…ぜいたくは敵になったんですか?
(多江)今更何言うてはんの。
この度婦人会では栄養評議会で考案された興亜建国パンの普及に協力する事が決まりました。
そのパンを小学校へ寄付するというのですが…
魚粉て…。
(川久保)飼料とかに使うあれですよね?このパンはあきまへん!絶対まずいと思うんです。
どうせやったら同じ材料で違うもん作りませんか?そもそもおいしいもんを食べよう思う事自体ぜいたく極まりない話やねんでぇ。
前線の兵隊さんの事考えたらおいしいのまずいの言うてられますか?何?そんなに嫌やったらやらんかったらええん違うん?しゃあないやろう。
約束してもうてんから。
別のもんにしたらあかんの?あかん言わはんねんからしゃあないやろう!あんたの学校とは話が違うの。
おかしいな思てもやらなあかん事はやらなあかんの!けどみんながそないしたらおかしな事がおかしいて言われへんまんまにならへん?知らんわそんなん。
とうとう出来上がっちゃったね
(多江)ほな行きまひょか。
(みね)これ引き取ってくれって。
婦人会の方で処分してくれて学校の方から突き返されてんて。
学校は食べもん粗末にすんなて教えるやろ?せやけどここまでまずいと捨てるなとも言われへんよって先生が指導に困るからって。
そんな…。
ホンマ災難もええとこやねえ。
あっほな。
(静)これ人の食べるもんちゃうでえ。
それ何すんの?畑の肥やしにでもします。
はあ〜ぜいたくな肥やしやな。
肥やしにしかならんようにしたのはどこのどいつや。
えっ?わしはなぁおいしいおだしになれたんじゃこのボケ!おいしい煮物にもなれましたのに。
昆布さん…。
ホンマに何考えとんねんアホんだら。
おいしい御飯になれたのに!
(静)あんた大丈夫か?食べんでええ!こんなもんは食べたらあかん!あんたは食べたらあかん!
この世のものとは思えないパンを食べ続ける苦行の中でめ以子は己の原点に返っておりました。
どこに向けてよいのか分からぬ憤りとともに
ど…どこ行くん?買いもん行ってきます。
・
(ふ久)お母ちゃんうちには食べるなって。
何でやろ?結婚する時お父ちゃんと約束したんやて。
3食365日おいしいもんを食べさせるて。
せやからきっとわしらにもそうなんや。
今日はしまいにしよか。
マツオさん。
うわっ!
(トミ)どないしたん?お肉…下さい。
(マツオ)なんぼ要るんや?
(マツオ)あれ?肉!ごっつい肉!ぜいたくやんかこれ!今日お肉なん?
(勝治)何をやっとんやこのうちは!
(多江)あんたあれあれ。
こんな肉ぶら下げて戻ってきて何を考えとんのや!日本人としての心が…。
私はおいしいもんをいっぱい食べて育ちました。
大人になって人に食べさせる喜びを知っておいしい顔で「ごちそうさん」って言ってもらいたい。
私の心はそれしかありません。
せやから私は…犬も食わんようなパン作ったらあかんかったんです。
世間がどうでも作ったらあかんかったんです。
おいしゅう作っておいしゅう食べさせんと。
どうぞ召し上がって下さい。
あかん。
あかんであんた。
ぜいたくは敵!ぜいたくはすてきやで。
ええもんを買うて使い切る。
始末いうんは最高にすてきなぜいたくや思いますでぇ。
ぜいたくは敵やなんて浪速っ子の名が泣きますで。
お肉大きおますさかい始末手伝うてくれはると助かりますんや。
始末やなこれは。
ちょっと…。
焼き具合何がええですか?ほなこんがりで。
うまいな〜!
(川久保)お母ちゃん大胆やな。
居場所がないんやったら自分で作るっていう手もあるよね。
(多江)ちょっと。
慰問袋作るさかい食べもん何にするか考えといて。
ほなね。
はい。
婦人会のたすき掛けてはったやろ?それでそれは婦人会のしてくれたごちそうや思てる人もぎょうさんおって。
お礼言われて御機嫌さんなんやわ。
ほなね。
ああほな。
・ごちそうさん!ゆんべのお礼や。
砂糖やで。
えっ?ええんですか。
うんどうぞどうぞ。
また頼むわなごちそうさん。
そうなのです。
め以子はこの事件を機に「ごちそうさん」というあだ名を付けられる事になったのです
ごちそうさんか…。
(トラ)
この年の4月から米が配給制になりました。
肉や魚野菜などはまだ自由販売を許されておりましたが品薄かつ商品も偏ってきておりました
ごちそうさん!
(め以子)ああ…。
ごちそうさん!今日は何?ごちそうさん。
また来たんか…。
これ持つ。
そんな中め以子はごちそうさんとして…
焼けたで。
近所の子どもたちの体のいいカモにされておりました
かんで食べ。
・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
(諸岡)こんばんは!お帰りなさい。
あっ皆さんご一緒に。
(川久保)そこで一緒になって。
(泰介)諸岡さんどうぞどうぞ。
今日もお相伴に預かってよろしいでしょうか?どうぞ。
この諸岡という青年は泰介の通う天満南中学校の5年生。
野球部のピッチャー。
そして泰介はキャッチャーでございます
(諸岡)お前またひどなってないか?手。
(泰介)こんなもんですよ前から。
大丈夫ですて。
その縁で最近ではしょっちゅう御飯を食べに来るようになっていたのでございました
(一同)頂きます。
(川久保)今年は甲子園まっしぐららしいやん。
え…?下馬評ではひょっとして東金岡中抜いて代表になれるんやないかって。
泰介あんた何でそんな大事な事言わへんの!
(悠太郎)言うたかて何も変わらへんからちゃいますか。
変わりますよ。
知ってたら御飯かて…なあ?豪華になるよな。
お母ちゃん僕らこの御飯で十分やから。
行かせてみせますから私の御飯で甲子園。
(馬介)普通に元気の出るもん作ってやっとったらそれでええんちゃうの?それは誰でもやりますよね?う〜ん差し入れとか?それもやりますよね?
(ドアが開く音)ああ。
(桜子)どうだった?
(室井)決まった〜!ホント!?うん!ホントにホント!?やったやった!何が決まったんですか?室井さんの新作「塩と砂糖」出る事になったんやわ。
開明軒行ってお礼しなきゃね。
えっ?
(室井)大将にはどれだけ食わしてもらったか分からないからね。
あれがなかったら途中で諦めてたかもしれないよ。
うん?やっぱり御飯は夢をかなえますよね。
食べなきゃ夢はかなわないよ!そうですよね!
どうもぴんと来ないね
(静)何あれ?ああ。
いつもタダでおやつあげるのもようないかな思て労働してもろてるんです。
はあ〜。
ちょっと何サボってんの?張り合いないねんもん。
何でやの?頑張ったって頑張らんかったって出てくるもんみ〜んな同じなんやろ?ああこれや。
(活男)段階式カツ制度?そうです。
1回戦に勝てば野菜とイワシのカツ。
2回戦に勝てばイカ。
3回戦に勝てば白身魚というように勝ち上がっていくごとに中身が豪華になっていき準決勝に勝てば…牛カツになります。
(2人)おお〜!出た?やる気出た?出た!西門!俺は絶対に勝つ!はい!・「勝って来るぞと勇ましく」・「ちかって故郷を出たからは」ほな行ってきます。
行ってらっしゃい。
行け〜!泰介〜!
ままならない現実の中で泰介の夢はみんなの希望になったのでございます
泰介たちは順調に予選を勝ち進み…
わ〜おいしい!
(銀次)どやった?勝ちました。
よっしゃ〜!
(歓声)これやな!
(諸岡)うま〜。
(泰介)うまい。
(諸岡)お代わり下さい。
食べるの早いですね。
食うたらまた表で練習や。
はい!今日は白身魚か。
(銀次)イカではイカんか?白身魚って約束なんですよ。
(源太)ほなこれは?え…エイって白身なん?
(源太)そこは「白身でエイの?」やろボケ!まあせやね。
源ちゃん!?
(源太)ただいま。
へえ〜戦地で病気になって。
ああそれで任務不適格の傷病除隊いうやつや。
体大丈夫なん?えらい痩せたみたいやけど。
ろくなもん食えんかったからな。
まあうまいもん食うてたらそのうち戻るやろ。
源太さん戻ってきたん。
はい。
まあちょっとこう痩せてましたけど無事に。
よかったなあ。
・
(物音)こっちも戻ってきた。
お帰り。
お帰り。
あれ?あかんかったんか?試合。
ううん。
勝った。
(静め以子)おお〜!すごいなやっぱり。
けど…今後5年間全国大会は中止。
甲子園はないんやて。
…え?えっえ?何でそんなん急にそんな事になって…。
自分らもよう分からんのですけど試合終わったら監督から言われたんです。
(活男)これムチャクチャうまいんですよタルタルソース。
目指していた全国大会はなくなったものの2人を励まそうとめ以子はカツを作りました
何なんですかこれは?おいしい?
(諸岡)おいしいなんてもんやないです!ほなガツガツいきガツガツ。
食べ食べ。
泰介もうん。
(泰介)諸岡さん…。
すいません。
こんなに応援して頂いたのに甲子園行かれへんで。
ホンマすいません。
何言うてんの!あんたら何も悪うないやんか。
もう食べ!おばちゃんの分も食べ!ばあちゃんの分もほら食べ。
(ふ久)あの…これからも遠慮せんと来てな。
え…?2人の青春はうちの青春やから。
おはようさん。
(マツオ)おっ源太!おはよう〜!どやった?ねえちゃんは。
ああ…ああ。
あら?何やお前寝てないんか?…当たり前やないですか。
(トミ)御飯は?食べてきた?ああ…。
ああこれやっときますわ。
おおすまんな源太。
(トミ)どうしたん?ああいや…別に。
(物音)
(マツオ)おい!
(源太)あっああ〜!
(マツオ)どないしてん源太!?源ちゃんど…どうかしたん?ああ〜!源ちゃん…。
ああ…。
すまん。
何があったん?あかん…。
わし…あかん。
(一同)ああ!
(マツオ)源太!源太!源ちゃんしっかりして!お母さんもちょっとええですか?
(活男)源太おじさん?
(静)どないしたんや?
(マツオ)いや〜急に倒れてしもてな。
お医者はんに診せたら「ろくに食うてへんからちゃうか?」言われて。
1週間ほどちゃんと食べさせたらてお医者さんも言うてはったからそれぐらいやったらうちでって。
(マツオ)よいしょ!源ちゃん。
源ちゃ…あっ!源太さん?わし…。
栄養失調で倒れてんよ。
ああ…。
雑炊や。
頂きます。
うん。
ごちそうさんでした。
うん。
(泰介)源太さん?お母ちゃん!
(むせてせきこむ)
(むせてせきこむ)源ちゃん!?何食べても吐くて胃が悪いんとちゃいます?そら弱ってはおるけど胃自体がいかれとるという訳やないと思いますんで。
安静にして消化のええもんを食べさせてやって下さい。
はあ…。
ごめんな。
何言うてんの水くさい。
(亜貴子)今日は膝悪しはったん?幼なじみが兵隊から帰ってきたんですけどその…食べられないんです。
一旦は食べるんですけど戻してしまうんです。
なにかしらおなかに優しいもんから食べさせる事やな。
それができへんから来てるんやないですか。
うち専門外やし。
いや専門外やからその…別の画期的な意見言うて下さいよ。
むちゃ言うなあ。
何が何でも食べさせなあかんの?えっ?元気になったらまた行かされる人がほとんどやろ?いろんなとこ送られて結局死ぬまで行く事なるやんか。
ここで静かにみとってあげた方がええいう考え方はないん?死なせに行くために治してるようなもん…。
死なん人間なんておらんやろ!死ぬの当たり前や!あんたも私も。
「どうせ死ぬ」なんて言いだしたらアホらしゅうて飯炊きなんかやってられるか!
(戸が開く音)
(亜貴子)あの〜。
亜貴子さん。
診させてもろてええ?わしもうあかんのですか?
(亜貴子)このままやったら。
ホンマは自分で食べられへん理由分かってんのと違う?食いもんが…死体になるんです。
どんな?わしが…殺した。
食べるいう行為そのものがしんどいんやと思う。
食べるいうんは命を頂くいう事やろ?お肉もお魚も…野菜も。
ほな命を持たん食べ物やったらええいう事ですか?どうして源ちゃん…。
ただいま戻りました。
人を…殺したんかな?源ちゃん。
そりゃ…戦場ですからね。
大丈夫ですか?それが…ええとか悪いとかやなくて…。
きつかったやろなて源ちゃん。
(泰介)おじさんまた戦争行かされるやろ?それでも…やけにならへんの?夢があんねん。
夢?1,000人のおねえちゃんとつきあうんや。
…え?誰もが口そろえて無理やて言う。
けど…諦めへんのはわしの自由やろ?どないしてん?どないしたんでしょう?
(亜貴子)ああおはようさん。
お父ちゃん!源太さんの様子変なんやけど。
(亜貴子)泉さん!足持ち上げて下さい。
源太さん!源太おじさん!
(泰介)お母ちゃん!あっ泰介。
源太おじさん危ないんや!聞こえる?源ちゃん!源太さん!源太おじさん!何か言えめ以子!えっ?呼び戻すんや早う!源太さんなくしてまうで!はよジャム返せ!あの時のジャムまだ返してもらってへん!ジャム返せ〜!ジャム返せ!ジャム返せ!ジャムわやにして返しもせん。
弁当食うて礼も言わん。
全部食べてから「ごちそうさん」言いに来て。
源ちゃんはそんな奴やなかったはずや!源ちゃん…。
め以子…。
源ちゃん私ね食べもんの声が聞こえる時があるんよ。
鯛も煮干しも小麦粉も。
話すんや。
それでも問答無用に切り刻んでたたいて焼いて。
私にとって生きる事は殺す事や。
せやけどなやめる事なんてできんのよ。
せんかったらこっちが死んでしまうもん。
せやけどたまにはな例外があるんや。
ここからは何の声も聞こえへん。
乳出したかてお母ちゃん牛は死なんから。
せやから大丈夫や。
あんなふうに育ててきてもろて死んだみたいに生きとったら罰当たるね。
いつか絶対僕甲子園行くわ。
行ってみせる。
歌はもうええで。
それ心斎橋ですか?せや。
気持ちええでしょう竹元さんの造る駅は。
そうですねえ。
このころの駅はぜいたくなんです。
天井がアーチでホームには柱がなくて。
こっちのは天井も低くて何や殺風景ですね。
「ぜいたくは敵や」いうてこうなっていったんです。
夢のない話ですね。
夢をかなえるために一番大切な事は才能や根性ではなく生き残る事です。
(悠太郎)花園町の駅舎の件ですが結論から申し上げますと鉄筋は手配できませんでした。
駅舎の中2階を全面撤廃したいと思います。
・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
(竹元)地下鉄事業から私の名前を外してくれ。
上に報告します。
今までお世話になりました。
(源太)ごちそうさんでした。
(め以子)大丈夫?
(源太)大丈夫。
…な気がする。
(泰介)ああ…。
ああ。
(3人)よかった。
おおきに。
おおきに!・
(藤井)夜分すいません奥さん!はい。
・
(大村)任したで任したで。
(藤井)ああ〜!
(大村)危ない危ない。
(活男)お父ちゃん?お父ちゃん自分で立って。
(大村)何や鉄筋が足らんから設計変更するて竹元さんに言いに行ったらしゅうて。
それで何であんなに…。
絶縁言い渡されたらしいわ。
絶縁?
(大村)ああ。
ちょっと出てくるさかいおとなしゅうしとってや。
という訳で…ニンニクの梅肉エキスあえです。
何が「という訳」だ?お許しを頂くために竹元さんに長生きしてもらわなあかんやないですか。
つまり貴様はわしが年寄りだと言いたいのか?ああいいえ。
あっえ…竹元さん!竹元さん?竹元さ…あ〜!ちょっと何なんですかもう!これは欲しいんですか?
(どなり声)
(トラ)
相変わらずよく分かんない人だね
ただいま戻りました。
(悠太郎と源太の笑い声)何やってんの?迎え酒です。
ホンマ頭痛治りますね。
こっちももう何や…すいすい食えるわ!
(笑い声)出てけ。
このアホボケカス!ちょっと…。
人が心配して…もう!痛い!ほなわし帰るな。
アホ!源太さん!ええ加減にせいやもう毎回毎回!
戦争のあおりを受け物資が不足。
日用品や食料品はほとんど配給制となり共同購入をする人が増えていました
(みね)もう〜まだかいな。
あの人なんや!ごちそうさん!え〜子どもらにおやつあげはる人かいな。
このご時世に子どもにおやつを配る「ごちそうさん」としてちょっとばかり尊敬され図に乗っておりました
(多江)はい。
(伸世)ちょっとこのカブラ葉っぱばっかりやがな。
はあ?目方は同じでっせ。
私のと換えます?葉っぱの方が栄養あるともいいますし。
え…ええの?ホンマ?ごちそうさん。
ああほな私はこれで。
(伸世)あっ…おおきに。
ちょっと…。
(みね)さすがごちそうさんやな。
・
(戸が開く音)お母ちゃん小池さん来はった。
あっ。
配給だけでは生活できなかった庶民はいろんな手だてを講じておりました。
警察への密告を恐れお互いひた隠しにするのが常でございました
(みね)里芋で作ったん?これ。
うん。
配給の里芋と残ってたおうどんで。
(房子)う〜んこのモチモチ感がええわ。
あれ誰?婦人会の本部の偉い人違う?近頃金属の供出と国債の購入に力を入れておりまして。
(松島)「ごちそうさん」いう人は?「ごちそうさん」いう人がいはるんやろ?こちら婦人会の副会長の松島さん。
初めまして。
お会いしたかったんよ。
お母ちゃん雑誌出るん?婦人会の座談会載せるんやて。
それで「ごちそうさん」呼ばれてる人いう事で料理の始末とか献立の事とか話してくれへんかって。
(希子)「ごちそうさん」てええ生き方ですよね。
え?
(希子)身の回りの人に御飯振る舞ってみんなが幸せになって。
ホンマにええ生き方ですよね。
・
(戸が開く音)・西門さん!はい?何ですか?
(情報局役人)この家は違法な闇物資を購入してるんとちゃうかという通報があった。
これより立ち入り検査を行う。
な…何ですか?うちは何も…。
米はどこや!おい!蔵開けろ。
えっ…。
蔵開けろ言うとるんや。
米は…あそこです。
どう見ても配給米やないな。
実は蔵の中には…
砂糖の配給制が決まってこれからは何がどうなるか分からん思て折を見て買いだめてきたんです。
帝大卒の名誉に懸けて誰にも気付かれへん地下室造って下さい。
地下室ありますよ。
あ…。
(ふ久)何でこんなんあるん?昔は火事が多かったからいざという時のために貴重品入れとく穴蔵造ったんや。
よいしょ。
はいどうぞ。
おおきに。
お願いします。
はい西門さん。
えっちょっと…。
(多江)目方は一緒やで。
お宅は闇で都合できはるやろう?いつもどおり遠慮してくれはる?
(笑い声)ちょっとやめとき。
め以子が蔵で食糧を捜していると…
あ〜!今日蔵入りました?
(静)入ってへんよ。
ほなだれが…。
お母ちゃん。
うん?これお土産。
うん?何これ。
うま介でな今日カリンゴウいうの出してん。
リンゴを細かく切って天ぷらみたいに揚げたん。
今日うちから小麦粉持ってった?うん。
馬介さんえらい助かったって。
意外にしぶちんなんですねごちそうさんは。
せやかてこれ以上うちの御飯が貧相になったら嫌でしょう?「貧すれば鈍す」。
うん?暮らしに余裕がのうなると心にも余裕がのうなるいう事です。
そんなんしゃあないやないですか。
自分のうちで食べる分は絶対確保せんと。
まずは自分の身ぃやないですか。
はい。
はい。
すいません遅れて。
(一同)あっ!
(多江)堪忍!手ぇつってもうて。
大丈夫?わざとですか?そんないけずするかいな。
昨日の配給かていけずな事しはったやないですか。
えっ?うちの木炭カスカスでしたけど。
あれはごちそうさんがいつも皆さんに譲ってくれはるから。
あの〜甘えさせてもらおうかなって。
なあ?
(時子)うん。
(2人)あっ!闇で買えんもんはあかんとか!
(一同)ああ〜!手つってもうて。
(多江)わざとやないって言うたやろ〜!水かけられたんですよ?わざとかどうか分からんのやろ?私人にごちそうすんの金輪際やめます!…えっ?来てる子らどうすんの?おなかすかして…かわいそうやんか。
中にはあの人らの子もおんねんで。
それやのに誰も何も言うてくれへんで…。
あげるばっかりでアホらしゅうてかなわんわ。
ごちそうさんするんはちい姉ちゃんなりの世の中への反抗やなかったんですか?えっ?すいません。
もうええです。
(川久保)希子は今子どもの番組やってるやないですか。
そこでもやっぱり子どもに「お国のために」ってずっと言い続けてる訳で。
せやからお姉さんのしてはった事が輝いて見えてたんやと思うんです。
おなかのすいた子らにおやつあげるのはどう転んでも絶対に正しい事やて言うてました。
世間に対する無言の抵抗やて。
私が?意識してなかったんですか?全く。
(ふ久)ほなあのステーキは?おいしいもん食べて食べさせるのが自分の人生やて言うてたやん。
私がそうしたいいうだけの話なんですけど…。
まあ今はあなたの性分そのものが自然と反骨になってしまうんでしょうね。
えっ?えっ?
(笑い声)
ある日の事です
(岩見)焼氷てありますか?
(桜子)冬場はございませんが。
(岩見)そうなんですか。
荷物整理してたらこんなん出てきまして。
(2人)あっ!
(室井)うわ懐かしい!
(岩見)ちらしもろて食べに行こう行こう思てて。
結局行かんかったなって。
さっさと来といたらよかったな。
(馬介)明日もっぺん来てくれはりますか?えっ?できるかどうか分かりませんけど。
はい。
水を凍らせるために雪を使うんや。
ふ久のアイデアで雪と塩を利用して氷を作る事にしため以子たち
その相乗効果でどんどん冷えていって…。
おお〜出来てる。
ホンマや。
氷出来てるわ。
料理は科学やな。
せやね。
(桜子)火が消えたらお召し上がり下さい。
うま介印の焼氷です。
妻が食べたがっていたんですよ。
奥様が。
結局連れてこられへんうちに病気になってしもて。
逝ってしまいまして。
向こうで会うたらどんなやったか話してやりとうて。
向こうでお会いになるって?あの〜…。
特高か?岩見亮介!立て。
立て!ちょっと待って下さい!逃げようともしてはらへんしこれ食べる間ぐらいええんちゃいますか?うるさい!
(桜子)ちょっとめ以子!ちょっと待って下さい!あの…。
馬介さん。
どけ!焼氷!皆で一生懸命作ったんです。
僕はこの人が食べてるとこ見たいんです。
この人のためやのうて僕のため僕らのため。
この人に焼氷食べさせたって下さい。
お願いします!
(ぶつける音)馬介さん!
(馬介)お願いします!死にますよ。
この人死んでまいますよ。
お願いします!お願いします!1分だけやる。
大将ごちそうさんでした。
ごちそうさんだね。
馬介さんこそ本当の
(子どもたち)ごちそうさん!おばちゃんの事をそんなふうに呼んだらあかん。
おばちゃんはただの…あかんたれや。
(ラジオ・希子)「『少国民の時間』です」。
今日室井さんが出るんやろ?ああそうやったっけ。
(室井)「眼前に広がる大海原。
おでん皇國の軍艦土鍋丸はおでんの勇者たちを乗せ一路ポトフ帝国へと進んでおりました。
捕らえられた白天の丸を助けに来た昆布の介。
ところがそこにいたのは白天に化けた薄汚いソーセージ兵であった」。
(笑い声)
(泰介)昆布の介。
(ラジオ・室井)「『なんという不覚。
もはやこれまでかと思ったその時』」。
「その時」…。
海の底から…マグマがどど〜ん!神風吹くんちゃうかったっけ?
(室井)ポトフ帝国の軍艦もおでん皇國の軍艦ももろともひっくり返ってしまったのです。
昆布の介も白天の丸もソーセージ兵と力の限り戦っています。
ところが海はどうにも温まってきました。
問題は昆布の介。
あまりの気持ちよさについついおだしをにじませてしまっているではありませんか。
「あかん!昆布の介はんおだし出したらあきまへん!それ出したら…まろやかになってまう〜」。
(笑い声)何やこれ。
(室井)気が付くとみんな笑顔で炊かれていました。
ソーセージもキャベツもニンジンも同じ鍋で。
それは大きな大きな地球というお鍋でございました。
「少国民の時間」でした。
そうや。
一つのお鍋や。
(情報局役人)どういうつもりだ!台本にない事を放送して!ただでは済まんからな!こんな非国民的な内容!どこが非国民的なんですか?海の中で昆布のおだしは無限に広がってるんですよ?これはひそかなおでん皇國の大勝利の物語やないですか。
世界が大日本帝国を中心にまとまる。
これぞまさに八紘一宇の精神やないですか!だからこそどうしても伝えたかったんですよ!ねえ?
(勝治)ほな今日はこれでお開きに。
あの〜。
うちの隣組でも共同炊事いうんをやってみませんか?みんなでお料理すれば木炭の節約になるし。
何それ?今日僕宛てに差出人不明で届いたんです。
それはめ以子が竹元に渡した壺でした
みんな来てくれるかな?
(ドアが開く音)出せるんネギしかなかったんやけどええ?もちろんです。
ちょっとちょっとちょっとちょっと持ってきたで。
ほれカツ節。
ありがとうございます。
(多江)うち何したらええ?高山さん…。
これは絶対要るやろ?おおきに。
ごっつう助かります。
何作るん?ああ…。
カレーうどんです。
はいお待たせしました。
(伸世)おいしい!けどあんなに小麦粉出して大丈夫なん?ほんなら今度はよろしゅうお願いします。
おおきに。
木炭ホンマに助かりました。
これでいけずは帳消しやで。
はい。
言うとくけど水かけてもうたんもたまたまやし告げ口したんもうちとちゃうで。
えっ?やり返されたら困る事やるかいな!ほな高山さんも?そうやなかったらあんなに木炭…。
あんたは声大きいんや。
大変でしたね。
そうやなそうや。
皆さん皆さん。
ちょっと皆さん。
これ見はった?「ミナミのごちそうさん」…。
(みね)ひょっとして密告したんて…。
(一同)ああ…こいつか!・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
活男は勤労奉仕のため軍需工場で働きづめでした
(活男)今日はええわ。
工場きつうてな。
(め以子)さよか。
(子どもたち)ごちそうさん!うまかったな〜!明日何やろな〜?早う明日ならんかな〜。
たまには来んでええで。
(泰介)えらい事人数増えとるな。
泰介!
(泰介)ただいま。
(トラ)
泰介は高校2年生。
京都で寮生活をしていました
びっくりする事あんで。
えっ?諸岡君。
(笑い声)
(諸岡)いや〜ホンマに御無沙汰してもうて。
ふ久さんお久しぶりです。
あっお帰り。
(泰介)お帰り。
(活男)諸岡さん今日はどないしはったんですか?ああ実は…。
心の声
(ふ久)「西門お前に会いに来たんや」。
(諸岡)先日徴兵検査を終えまして出征する事になる思います。
2人を見るのはこれっきりになるかもしれないね
諸岡君うち諸岡君の事複製したい。
ふ…複製て?諸岡君の子どもが産みたい。
えっえ〜!?そそ…それはその…。
うちに子ども産まれるんは嫌?ちょっと待って下さい!自分は出征するんですよ。
(悠太郎)おっ泰介。
せやから自分はその…。
せやから一生でけへんかもしれんやん。
うち今諸岡君の子どもが産みたい。
こういう事は手順いうかつきおうてお互いの気持ちを確かめてからその先に求婚があるんやろ。
(静)納豆の夢見てすぐ求婚…。
余計な事言わんとって下さい。
(ふ久)諸岡君の事は3年前から知ってるし一緒に御飯も食べてたしさっき気持ちを確かめてうちはお父ちゃんの言うとおりの事してると思うけど。
あの〜自分はもうすぐおらんようになる身ですし相手が不幸せになるような結婚は考えてませんから。
分かってはるんならそれでええです。
(諸岡)自分はふ久さんをそういう目で見る事はできませんから。
すいません。
何かすいませんでした。
あんな事言いだすとは。
いや〜…。
けどうれしかったわ。
行く前にごっつうええ思い出もろたわ。
(桜子)ふ久ちゃんて自分でこうだって決めたらてこでも動かないじゃない。
自分で決めた事なら案外ちゃんとやるんじゃないかなって私は思うけど。
自分のやりたい事絶対譲らない…もんね…。
昨日お断りしたはずですけど。
関係ない。
…えっ?諸岡君の気持ちは突き詰めるとどうでもええ。
そんなふうに見られへんいうのが不安要素やけどまあそこは実験や。
ふ久さん…いけません!あの〜先輩いてはりますか?
(キヨ)ああ今お姉さんと上いてんねんけど。
…えっ?・
(諸岡)やめて下さい!せ…先輩?開けますよ!ええ子やないですか。
あんなええ子なかなかおらんでしょう。
いくら娘の希望やいうたかてこんな結婚認めるんは親のする事やないです。
親の仕事を放棄したのも同じです。
親の仕事…。
娘の気持ちを握り潰すんが親の仕事なんでしょうか。
諸岡君が出征する事になって急に言いだした事やないですか。
状況に酔うてるだけでしょう。
・
(泰介)お父さんお母さん。
これから僕が今日見てきた事を話します。
ああ。
何やってるんですか!?姉ちゃんこそこれはちょっとやり過ぎと違う?どう見ても諸岡さん困ってはんねんけど。
こ…困ってませんよ!困ってはいませんけど困ったな…。
うちな諸岡君と泰介で2人でおる時に妄想しとってん。
妄想?男の熱い友情いうか女の入り込めん世界いうか。
泰介次の年もピッチャーの子連れてきたやろ?それでまた同じ事やろうと思ってんけどできへんかってん。
できへんかった?諸岡君やったらこんな時ものすごいよう食べるのにとか。
不必要に礼儀正しいのにとか。
比べてばっかで楽しめんかった。
もっと早う言うてくれはったら全然違うたのに。
うちに子ども残してくれへん?僕は純粋で強い愛情の持ち方やと思うた。
お父さん。
うん?子どもはものすごい支えでもあるんですよ。
せやから何ですか?それだけです。
ふ久。
子ども育てるいうんは簡単やないで。
お母さんがお前を育てるのにどれだけ苦労したか分かってるか?うん。
ホンマにできるんか?子どもいうんは親の見えへん力で育つもんや。
うちもそうするつもりや。
ホンマに幸せになれるんか?自分で決めた事や後悔はせえへん。
ほな今日はぎょうさん食べなさい。
食べたら挨拶に行きますよ。
お父ちゃんおおきに。
こうしてふ久は諸岡家へ嫁ぐ事になりました
ず〜っと飼いとうて飼いとうて。
・
(活男)お母ちゃん!ああお帰り。
お帰り。
わし志願する!海軍に志願する!今日な工場に海軍の偉い軍人さんが来はってな主計科いうんはコックがおるんや。
そこ入ったら船の上でコックの修業ができるんや。
アホなんか。
ほんまもんのアホなんかあんたは!かっちゃん足りるか?もっと食べほら。
戦争行かんでも空襲来たら死ぬかもしれんよな。
来んうちに終わるかもしれんやろ。
(警報音)煙が上がっとるぞ!大変や。
(警報音)
(中西)西門課長の奥様いはりますか?落ち着いて聞いて下さい。
息子さんのお勤めの工場で事故がありました。
えっ?
(中西)今課長が病院の方に確認に行ってます。
かっちゃん。
大丈夫か?ケガは?少しすりむいただけや。
よかったな。
友達吹っ飛ばされた。
小学校で一緒やった奴。
死んでもた。
おいしかった?うん。
甘いもん欲しいやろう?サツマイモの…。
(活男)お母ちゃん。
やっぱり行かせてほしい。
何で?何でやの?何で?あんた今日ごっつう怖い目見たんやろ?あんなんちゃうねんで!あんな事では済まされへんねんで。
(活男)このまま好きでもない事毎日やってそれで事故とか空襲で死ぬんやったらせめて…好きな事やって死ぬ方がええ。
このままやとわし…何のために生まれてきたんか分からん。
分からん。
あんたは…お母ちゃんを人殺しにするつもりか。
あかんもんはあかん。
お父さんは活男の同意書書いてやる気になってますよね。
何でそんな事思えるんですか?活男がかわいくないんですか?あえて最悪の場合を考えてみました。
ここで活男の意をくんで行かせて戦死した場合と説き伏せて行きたくもない工場に行かせて空襲で死んだ場合と。
僕は後者の方がたえられないと思いました。
あなたは納得せんといて下さい。
…えっ?活男を行かせるのは僕です。
バカにせんとって下さい。
私は別に責任逃れしたい訳やないですから。
産んだで。
どないすんの?それ。
お姉ちゃんの内祝一緒に考えよかかっちゃん。
志願出すんはそのあとでもええやろ?うん。
うん。
改心させる?かっちゃんにその気がなくなれば行かへん訳ですよね。
かっちゃんは料理がしたいだけですから。
うちで料理してる方が楽しいて思たらそれでええ訳ですよね。
西門のお祝いのお膳は鯛にお赤飯にお吸い物。
それから杉玉に粕漬けやけど。
(活男)杉玉て大根で作った?覚えてんの?きれいやな〜って。
お姉ちゃんにもどうにかして作ってあげようや。
せやね。
お豆腐はどやろ?せやんね。
にがり作るために海水くみに行ってたんですか?それで遅くなってしもて。
ええ顔してますね。
おめでとうございます。
(一同)おめでとうございます。
ふ久の内祝の日
豪勢ですね。
この杉玉のお豆腐かっちゃんが作ったんよ。
(諸岡)ホンマに!すごいな!うんおいしい。
(すすり泣き)こんな…。
行く前にこんなうまいもん食べられるなんてありがとうてありがとうて。
活男がな料理がしたいから兵隊になるて。
ふ久はどう思う?お母ちゃんの息子やな〜って思う。
今日初めてお国のために働きたい思うた。
諸岡さんが食べてくれるん見てお国のために働きに行く人のために少しでもおいしいもん作りたい。
わしの手はそのためについとるんちゃうかて。
お母ちゃんみたいになりたい。
兵隊さんのごちそうさんになりたい。
大きなったんやなかっちゃん。
大きなってしもたんやな。
頑張っといで。
め以子は父大五に手紙を書きました
どうやって配置が決まるかは知りませんけど有利になるための武器は持たした方がええやないですか。
私にできる事はもうそれだけです。
(大五)「め以子へ。
この上は卯野の意地に懸けてかっちゃんを厨房に送り込むだけだ。
以下俺の考えを記す」。
遅い!手回す。
(大五)「戦場で一番求められるのは速さだ。
とにかく包丁使いを鍛えろ」。
こんなんやないで。
(大五)「鍋振りすりこぎ裏ごし。
とにかくコックは重労働だ。
特に手首を使う。
いかれちゃ話になんねえ。
鍛えろ。
聞いた話だがとにかくめっぽう握り飯を作るらしい。
これはきっとお前の方がうめえな」。
熱々で握った方がおいしいんやけど速さ考えたら少し冷ましてからの方がええかもしれん。
炊きたてでムチャクチャ速う握れるようにする。
そして活男が出征する日となりました
今日はお母ちゃんにやらせてぇな。
わしも作りたいんやけど。
のびのび〜。
(活男)アイスクリン!
(活男)びろ〜ん!
(一同)うわ〜!頂きます。
(希子)これ豆乳ですか?うん。
かっちゃんの案で。
うまいよ活男。
お母ちゃんのだしや。
最後かもしれないもんね。
みんなと御飯を食べるの
活男ごちそうさん。
はい。
料理楽しんどいでな。
卑怯者言われても一番安全なとこ逃げんねんぞ。
絶対やぞ!い…行かんとって。
お母さん…。
(川久保)お母さん…。
すご〜くすご〜くおいしかった。
ごちそうさん。
兵隊さんの「ごちそうさん」いっぱい聞いといで。
聞いたら戻っといで。
戻ったらまた一緒に…。
一緒に…。
アイスクリン作ろうな。
うん。
お母ちゃんごちそうさんでした。
お粗末さんでした。
行ってきます。
行ってらっしゃい。
かっちゃん!元気でやるんやで!
悠太郎は空襲による火災に備え建物の取り壊しを推し進めていました
絶対立ち退かん言うとるやろう!
(悠太郎)どうしても立ち退かないとあらばあなたごと引き倒すまでです。
かかって下さい。
(トラ)
その迷いのないやり口に悠太郎は疎開の鬼と異名をとっておりました
・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
(め以子)これカボチャの種煎ってすり潰してみたんです。
ゴマみたいでしょう?へえ〜。
(静)大丈夫かいな?悠太郎さん。
啓司君ほどやないですよ。
(静)みんなぐったりやな。
そういえば桜子のとこ疎開が認められたらしいんです。
(静)えっ?よう認めてもらえたな。
お父様がうまい事計らってくれはったみたいで。
何はともあれよかったですよね。
(3人)そうですね。
どや?具合。
(ふ久)うん普通。
うん。
さよか。
ほなごゆっくり。
(キヨ)疎開の話ですよね。
あ…はい。
決まりかけてたんですけどねそこの家にもう一件別の妊婦さんからの申し出があって。
ふ久さん譲ってしまいはったんです。
えっ?自分は丈夫やからて言わはって。
お母さん私お姉さんとこ行ってきます。
和枝ちゃんとこ?もしもの時のふ久の疎開のお願いに。
(和枝)次の方〜。
お願いします。
(和枝)はい。
着物です。
(和枝)うん。
これぐらいでどないでっしゃろなあ?ああ〜これ日焼けがありまんなあ。
どうぞ。
おおきに。
(和枝)次の方。
お久しぶりでございます。
実はふ久にややこがでけたんです。
それでその…ふ久の疎開を受け入れて頂けないかと。
もちろんタダやなんて言いません。
お金もきちんと入れますしこれ手始めにお持ちして。
(静)ええんちゃう?こんなんぎょうさん持ってはるみたいやし。
ああ〜要らんわそんなボロ。
こんなかいらしい色どないしたかて似合わへんもんなあ。
お母さん。
受け入れてあげてもええで。
ホンマですか?ただし一つ条件がおます。
西門の家の権利をわてに渡す事だす。
そんな事できる訳ないやないですか。
うちら住むとこ無くなるやないの。
貸したげますがな。
何でうちらがうちらの家で店子にならんとあかんの!お嫌なら無理にとは言わしまへんけど。
(藤井)お芋だらけやけどおいしそうですね。
ありがとうございます。
あんたまだ怒ってるん?せっかく行ったのに手ぶらで帰ってきて。
(静)ふ久の疎開のためや言うから出したんや。
食べもんに換えられてたまるかいな。
いや…。
あの藤井さんの会社て軍の仕事請け負うてはりますよね。
幼なじみが司令部におってな。
軍事関係の資料とか手元にそろうてたりしますか?何でやの?今度民間の防空指導をする事になって本格的に勉強を。
いまだに若者みたいやな。
ほっといて下さいよ。
(中西)課長。
何かあったんですか?引き倒しの現場で…死者が出ました。
死者て…!?
(中西)人手がのうて頼んどった学徒動員の中学生の子が台所に忍び込んで食べ物物色しとったんです。
こっちは気付かんとそのまま引き倒してしもて…。
泥棒なんかする子やなかったんです。
この子は…何のために生まれてきたんですか?申し訳ございませんでした。
悠太郎さん。
何かあったんでしょ?僕は結局何も守れていないような気がします。
子どもたちの夢や未来や。
街はちゃんと守ってはるやないですか。
心鬼にして引き倒しやって。
そんなん誰にでもできる事ちゃう思いますよ。
おおきに。
(警報音)すんません!め以子!?ふ久!
(正蔵)お前言うたやないか。
わしが壊して回った分俺が守って回る言うたやないか。
あっ!悠太郎さん大丈夫?
(荒い息遣い)
ある日
あの〜課長が逮捕されました!…えっ?
(中西)市役所の主催で防火演習をする事になって最初は予定どおり演習が行われていたんですがさて水をかけるいう段になって課長が…燃えてるとこに更にガソリンをまき始めたんです。
何でそんな事を?空襲いうんはこんなもんやない。
焼夷弾が降ってくるいうんは空から火ぃついたガソリンが降ってくるようなもんや!消してなんかおられん!命が惜しかったらとにかく逃げろ〜!街は人を守るためにあるんです!街を守るために人がおるんやないんです!街を守るために命なんか懸けるんは道理が通らんのや!あんた…あんたどこ行くん?悠太郎さん何も間違うてないやないですか。
正しい事教えようとしただけやないですか。
街の人の命を守ろうとしただけやないですか!
(静)聞こえたらどないすんの!捕まらなあかんような事何もしてないやないですか!
(勝治)今は納めとき!確かにあんたの言うとおりやとは思う。
実際に燃えるん見て西門さんの言う事が正しいんはよう分かった。
けど…あんたまで連れてかれたらこのうちどないなるんや!
(戸が開く音)
(源太)何やってんねん。
嘆願してくれそうな人に手紙。
もっと何かないんか?早い事動いてくれそうなつては?処分決まったら終わりやぞ!知ってたら頼んでる!こいつ何でこんなもん持ってんねん?…あっ。
ほな。
こんな夜分に悪いなさんちゃん。
(里見)ホンマに何なんや。
まっとりあえず。
これでも食べてや。
(里見)カルメラか。
よう出来とんなこのカルメラ。
わしの部下がちょっと捕まってもうたんや。
まさかあれか?市役所の。
せや。
あれはあかん。
いくらこうちゃんの頼みでも。
西門君はな昔ミナミの大火でお母さん亡くしとるんや。
それでな安全な街を造りたい。
その一心で今までやってきたんや。
あいつに思想性はないんや。
あいつにある思想は「建物は人を守るためにある」。
それだけなんや。
ちなみになこの見事なカルメラ焼いたんそいつの奥さんや。
挨拶ええか?はっ?ご所望であれば何百回でも何千個でもそのカルメラお焼きします。
閣下のために一生作り続ける事もいといません。
ですから何とぞ寛大な処置をお見せ下さいませ。
(里見)あんなドウナットは作れるか?ほな今まで延々甘いもん作ってたん?ものすごい甘党の方で。
(希子)あるとこにはあるんですねお砂糖。
あんまり腹立ったんで頂いてきちゃいました。
こんな事して大丈夫なん?あんた。
これでばれるような量ちゃいましたから。
(子どもたち)頂きます!はい。
おばちゃんどないしたん?このお砂糖。
「し〜!」やで。
絶対「し〜!」やで。
僕らにも頂けますか?ホンマにすいませんでした。
みんながどれだけ心配したと思ってるんですか!あなたを頼りにしてる家族の事何も考えてませんよね?ホンマに…。
せやけど…立派でした。
立派なお仕事でした。
あんなめ以子。
うん?拘留は解けてんけど市役所はクビになったんや。
当分は職探しでうちにおるから。
何やそないな事ですか。
まさか言わんつもりか?陸軍の軍属として満州行く事になったなんて聞いたらどれだけ泣くかと思うと…。
そやかて言わん訳にはいかんやろう。
みんなの笑うた顔だけ見て行きたいんです。
せめて最後は楽しい思い出だけ残していきたいんです。
(泰介)勉強の具合?理系学科行けそうか?できるだけ頑張るけど…。
「何で僕には姉ちゃんみたいな才能がないんや」いうんが正直なところやな。
お父さんはお前の才能の方がよっぽど欲しいけどな。
ええ?人の気持ちが読めて気遣いがでけて。
人を動かす知恵も回る。
すまんかったな迷惑かけて。
格好ええて思たよ。
本気てこういう事やな〜って教えてもらった気がする。
この人の息子やいう事が誇らしかった。
あの実験は若干間違うとると思うわ。
どうせやるんやったら…。
分かった。
分かったから。
お前は見えへんもんを見ようとする子ぉやておじいちゃんが言うとった。
その目で子どものええとこ見つけてやるねんで。
うん。
陸軍の軍属で満州に行かされるて。
僕の知り合いも頑張ってくれてんけどな。
西門君の場合公衆の面前での事やったから無罪放免いうんはどないしても示しがつかな過ぎるいう事で。
(川久保)あさって…。
そういう事みたいで。
どないしたん?料理屋どっこもやってへんかったから希子の歌聴きに行こかって。
よかったら中で聴かへん?・「君がみ胸に抱かれて聞くは」・「夢の船唄鳥の唄」・「水の蘇州の花散る春を」希子の歌はええよ。
幸せな気持ちになれる。
そう?希子にはいつでも希望を与えられる武器があるんやな。
何も出えへんよ…。
ほなまだ放送あるし戻ろうか。
頑張ってな。
啓司君。
希子をよろしく。
はい。
活男に手紙です。
ええ年して…。
ええ年しててれんでもええやないですか。
明日満州に行きます。
この先あの人の事を助けたってくれますか?お願いします。
そんなん頼まれんかてやってきてるやろうが。
あいつは表向きはお前の嫁はんやけどわしにとっては…たった一人の人生の相方なんや。
ちょちょっと行って戻ってこいや。
これはもしかして?そうです。
スコッチエッグです。
うまくいってるかな?う〜ん!うん!食べてばっかりでしたよねあなた。
誰かさんに何の魅力もないって言われましたよね。
覚えてるんですか?忘れられる訳ないやないですか。
あれで私の人生変わったんですから。
結局悠太郎さんの夢がかなう事が私の夢になりましたけど。
次は何造るんですか?ホテルやビルアパートメント。
とにかく上に伸びるもんやってみたいですね。
ふ久や泰介やかっちゃん希子ちゃんとこもみ〜んな一緒のアパートメント住めたらええですね。
孫預かって地下鉄乗ってホテル行っておいしいもん食べてこれみ〜んなおじいちゃんが造ったんよって。
いけませんね。
年取るといろんなとこが緩なってしもて。
これお願いします。
はい悠太郎さん。
ごちそうさんでした。
うん?ゆうべ言い忘れた気がします。
ほな行ってきます。
行ってらっしゃい。
お母さん今日…。
やっぱり…。
やっぱり…あんた追いかけ!なっ。
えっ?悠太郎さんな軍属で満州行きはんねん。
ちゃ〜んとお別れしてき!「こんな大きな事を黙っていてホンマにすいません。
どうしてもあなたの笑った顔を見て行きたかったんです。
最後までわがまま放題な夫ですいません。
僕はいつの間にかとてもとても幸せな夫になっていました。
自分がこんなに幸せな人間になるとは僕は夢にも」。
悠太郎さん!「あなたと出会うまで夢にも」。
あのねもう一つ食べたいもんあった。
悠太郎さんの手料理。
言い忘れた気ぃがするから。
それだけ。
行ってらっしゃい。
できるだけ早く戻ります。
待ってます。
年の瀬も間近い日の出来事でございました
(め以子)「ふ久とお母さんの疎開先が無事決まりました。
お母さんは桜子の所。
ふ久は諸岡さんの親戚の所へ。
送別会は鶏鍋です」。
おおきにな。
・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
(静)ちょっと〜誰も来んのやけどどういう事?何かあったんですかねえ?・
(菊子)すいません諸岡の菊子ですけど。
来た来た。
いらっしゃい。
こんばんは。
お姉ちゃん産気づいてしもて。
(2人)ええっ!?
(菊子)ちょっと今日はおうかがいできそうにないて。
ふ久入るで。
(ふ久)3.1415926535…。
大丈夫か?
(ふ久)産まれたら呼ぶから向こう行っといて!
(泰介)予定より早ない?そういえばふ久もひとつき早う生まれてきたな思て。
大みそかでなあ。
にぎやかでしたよねえ…。
(警報音)
(警報音)
(勤)空襲警報や!落ち着いて落ち着いてね。
(警報音)・
(静)開けるで。
私が…。
(産婆)産まれましたで。
(産声)・
(産声)男の子や。
・
(爆発音)リヤカー用意したからみんな逃げるで!
(キヨ)向こうは火の海でこれ以上は行かれへん。
えっ?あっ!死んでしまう…。
(警報音)あっ!
(警報音)地下や。
えっ?地下鉄や。
すいませ〜ん!開けて下さい!開けて〜!開けろ!開けろ〜!開けろ〜!・
(駅員)おいやめんかい!空襲時は駅は開けられへんねや!危険なんや!この地下鉄造ったんはうちの人や。
何かあったら地下鉄に逃げ込めってここに書いてある!造った人がそう言うてるんや。
ホンマにお願いします。
大丈夫か?ふ久。
(駅員)梅田方面は火ぃが回ってませんからとりあえずそちらへ走らせます!
(歓声)ふ久さん。
お母ちゃん。
おおきに。
(トラ)
守ってくれたね悠太郎さん。
よかったね
翌日西門家へ戻ってきため以子たちですが…
これ…。
(赤ん坊の泣き声)とにかく落ち着けるとこどっか探さんと。
・
(源太)め以子!源ちゃん!
(泰介)源太おじさん。
(源太)よかった。
みんな無事か。
うん。
とりあえずふ久とこの子どっか避難できるとこってある?うま介は焼けてへんからあっこやったら。
(源太)これからどないすんねん?
(静)うちは桜子さんとこに。
和枝さんとこは受け入れてもらわれへんの?来るんやったら家屋敷渡せ言われてんねん。
焼けてしもたやん。
土地の権利はまだ残ってるんや。
そんなん渡してでも行った方がええと思うけどな。
そんな私の一存で渡すなんてありえへんわ。
赤ん坊を抱えたふ久は諸岡家の人たちと疎開する事に
あんたもしっかり食べんねんで。
お母ちゃん倒れたら終わりやからな。
うん。
よろしゅうお願いします。
よしほなお母さんも行くで。
えっ?僕がうまい事やるから伯母さんのとこ行くで。
(和枝)それは難儀でしたなあ。
(泰介)母の受け入れを何とかお願いできないでしょうか。
(和枝)わては一度も受け入れんなんて言うてまへんで。
条件のみはらへんのはそちらの方で。
これの事ですよね。
(和枝)何やこれ?
(泰介)土地の権利書と印鑑です。
ふざけてはる?
(泰介)いえ。
ホンマにこれが権利書でこれが印鑑なんです。
悠太郎さんがそんな大事なもん燃えるようなとこに入れとく訳ないやろう。
(泰介)ホンマなんです。
燃えへんとこなんてないような空襲やったんですよ。
何なら一緒に見に行ってもええですよ。
とりあえず置いてもらえたからええやない。
・
(和枝)め以子はん?はい。
あ〜!お台所手伝うてくれはる?うわおいしそう〜!ねえ。
久しぶりやんねえ。
こんなちゃんとした御飯。
(和枝)何で3膳なん?ハナちゃん通いやないんですか?あんさんらこれ食べはるつもりでっか?せやかて一緒に作ろうて。
ひゃ〜いきなり押しかけてきはって白いおまんままで食べはるつもりでっか?
和枝のいけずぶりは相変わらず
今日中にこれ全部…。
・
(ハナ)西門さ〜ん!追いかけ茶持ってきました!奥さんらがご主人が出たあとに炊いて追いかけて持ってくるから。
お茶がゆ?
(すする音とかじる音)にぎやかな音する御飯やねえ。
ずるずるばりばり。
家族多いともううるさいですよ。
この辺ではずるずるばりばりは家族の音いうんです。
ふ〜ん。
へえ〜。
ああっ!タイチ!よいしょ。
(くじく音)あ…。
何でいまだにお母さんにだけはしょうもないいけずしはるんやろなあ。
ずっといけずし合うて約束したからや。
あの…奥様が呼んではるんですけど。
あの〜何か?後ろ向いてかがんで。
ちょっと乗るさかいな。
えっえっ?えっ?
(和枝)足首やったんや。
村の寄り合いに出なあかんさかいはよ。
いやいやちょっと…。
ええんですか?私わざと落とすかもしれませんよ。
何やわての事好きや言い続ける言いはったあれはほごでっかいな。
僕やりましょうか?どうぞお姉様。
うん。
(和枝)あんさん大きいだけで乗り心地悪おますなあ。
・
(泰介)伯母さん足だいぶようなりはったな。
明日からもう私はお役御免やて。
あのなお母さん。
うん?僕そろそろ京都戻ろかな思うんやけど。
そろそろ学校始まるもんねえ。
明日の昼まではおるさかい。
うん。
そうでっか。
明日帰りはるんでっか。
はい。
一つお願いがあるんですが。
何でっしゃろ?時々母と一緒に食事をとってやって頂けないでしょうか。
食卓を囲む事に全てを懸けてきたような人ですからとうとう1人になってしもうてかなりこたえる思うんです。
女は一人で御飯食べられるようにならんと。
(泰介)えっ?まっ考えときますわ。
あっついでにそれ持ってって。
これですか?種芋と二十日大根の種だす。
明日植えてから行きはったらどないだす?かわいい息子と植えた思たらあの人も大事に世話しはりますやろ。
これどないするんですか?お母さん。
うん?これ出来たら送ってな。
ほな頑張って育てんとな。
・
(ハナ)西門さ〜ん!あっ。
奥様がすぐにうちに戻ってこいて。
何か用事で呼んでるだけかもしれへんし。
とりあえず行ってくるわ。
うん。
ほな。
(配達人)おめでとうございます。
(泰介)ありがとうございます。
来てしもうたわお母さん。
そうか。
何食べたい?何でもええの?何でもええよ。
泰介がお姉様の作ってくれはった柿の葉ずしをもう一度食べたいと申しておりまして。
米も魚も手配できゃしませんやろ。
材料はわてがそろえますさかい。
ホンマですか?行かはるんやったらもうあんさんの息子やないさかいな。
お国の人になるいう事やろ?ありがとうございます。
あと5日や。
頭上げてなはれ。
はい。
(和枝)柿の葉はまだ若すぎてな。
どうにも包めんから笹の葉ずしで堪忍や。
お姉さんが縁起担いでくれはったんよ。
いぐさは邪気をはらってくれる。
転じて難を逃れるいう事だすわ。
うん。
頂きます。
お母ちゃんあんたに何かしてやれたんかいなあ。
お母さんは一番大事な事教えてくれたで。
生きてるいう事は生かされてきとるいう事なんやて。
僕は命の犠牲の上に成り立った命の塊なんやて。
せやから僕の命は擦り切れるまで使いたいて。
僕やりたい事いっぱいあるんや。
僕は僕にそれを許さんかったこの時代を…。
絶対に許さへん。
僕は…この国を変えてやりたい。
せやからはってでも帰ってくるさかい。
生き返らせてや。
あそこでまたみんなで…御飯食べさせてな。
任せとき。
そうして泰介が出征した日の夕方
・ごめんください。
あっはい!山下は今出かけておりまして。
ああいえ。
こちらに西門さんはいらっしゃいますか?私ですけど。
公報が届いています。
どないしはったんですか?・これホンマなんかいなあ?希子ちゃん。
分かれへんよなぁそんなん。
(希子)間違いいう事もありますから。
し…信じる事ない思います。
・そうやんねえ。
ごめんね。
(かじる音)
(すする音)
(かじる音)
(茶わんと箸を置く音)
(たたく音)こんな事のために…。
御飯作ってきたんと違う!開けまっせ。
(ハナ)うち捜してきましょか?行かんでええ。
けど変な気ぃ起こしはったり…。
死ねんかった。
このくらいではわては死ねんかった。
(折れる音)あっ!かっちゃん。
お母ちゃんなあかっちゃんおったとしてもそっちには…行けそうにないわ。
おなかのすかん国には行かれへん。
かっちゃんもなあ!戻ってきた方がなんぼかええんとちゃうかいなあ!大丈夫ですか!?
(武夫)山ん中で道に迷いはったらしい。
(ハナ)ええっ!?武夫さんおおきに。
お茶でも飲んでって。
奥様!枯れてるやろ!せっかく出てきた芽ぇが!あんさんが放り出したからやで。
あんさんがやる事やったらへんから死んでもうたんやで!あんさんが殺したんや!その…とおりです。
あっあの子を殺したんは私です。
(泣き声)御飯一緒に食べて下さい。
私…。
あんさんは見送るお人やろう。
心も体も生きる力が強うて。
恐らく見送って見送って最後は一人で生きるお人や。
一人に慣れはった方がええ。
(セミの声)
(玉音放送)「米英支蘇四国に対し其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり」。
終わった。
(め以子)お世話になりました。
食料こんなに。
野菜の種まで。
ほな失礼します。
(和枝)二度と戻ってこんでええで〜!落ち着いたらお礼に伺います。
(ハナ)市内どないなってるのんか分かってはらへんのと違いますかね。
大丈夫でっしゃろ。
一番きつい暮らしに黙々と耐えはったんやから。
・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
(希子)びっくりしはったでしょう。
市内えらい事になってて。
もうちょっと落ち着くまでお姉ちゃんのとこいはった方がええんと違いますかね?みんなどうしてる?ふ久ちゃんは無事や思いますよ。
諸岡君は?諸岡君も泰ちゃんも多分内地にいる可能性が高いと思いますけど。
大阪の連隊に聞きに行ったら分かるやろか?あの今はもう…みんなもう…ホンマにそれどころやない思います。
お願いしますよ戻って下さいよ。
ねっ。
うん分かった。
ほなまたな。
あの〜安否の確認ですか?はい。
私も行くところなんです。
入り口はこちらですよ。
はい。
嫌っ!
め以子は和枝にもらった食料を奪われてしまいます
やられた…。
そして西門家へ戻ってみると…
開いてる…。
軍用品?ああ〜!室井さん…。
(室井)めいちゃん?何でここに?めいちゃんもう戻ってきたの!?戻ってきたの!?どうぞ。
うん!焼け跡で御飯くれる人なんて誰もいなくてね。
やっと…僕に御飯くれる人が…。
ごちそうさまでした。
ごちそうさんでした。
(室井)ごちそうさまでした!ごちそうさんでした〜!
(室井)ごちそうさまでした!ごちそうさん…でした〜…。
明日の汽車で戻ってくれはりますね?ちい姉ちゃんに何かあったらもう私お兄ちゃんに何て言えばええんですか。
ここがええの!ここで待ちたいの。
戻ってきたら一番に「お帰り」言うて御飯出したいの!それが私の仕事やから私の人生やから!何でもあるやないですか。
ホントにどこに隠してあったんだろうねえ。
め以子たちが訪れたのは闇市でした
(室井)どうしたの?めいちゃん。
ここ割と安い。
せやけど馬の餌用か…。
おねえちゃん安うしとくで。
1貫8円でどやろう?
馬の餌にするような小さい芋を揚げてみると…
はい。
はい。
あっ!あっあっ。
ホクホクして皮カリッとしてておいしいよすごいよ!商売にならへんかな?馬の芋で?うまいも〜ん!室井さんは呼び込みに行ってきて下さいよ。
私は揚げんとあかんのですから。
僕も揚げんとあかんのです。
(源太)何やってんねんお前。
源ちゃん!
(源太)馬の芋からうまいもん!浪速の新名物うまいもんぼおるいかがっすか〜!うまいわ。
うまいわ。
おばはん。
はい。
ごっそさん。
また来るわ。
あ…はい!
(室井)210円のもうけ!うわ〜。
これ少しやけどお礼。
お酒でも飲んで。
(源太)ええ。
お前何で戻ってきてんねん。
みんな戻ってくる前にやらなあかん事たくさんあるやん。
ああ…。
あっそれ今日の僕の御飯だよ。
ほらこれどうぞ。
おなかすいてたんやな。
あんなあお前…。
(チンピラ)おいおばはん。
誰に断ってここで商売してんのや。
勝手に店開いてどないするつもりじゃ?ショバ代払え。
ショバ代。
とりあえず今日の分。
(香月)おらぁ眼鏡!はい!あっ!はい!ちょっ…!
(源太)おいめ以子。
あっ…。
うまいもん作りや。
やめとけもう!な…何であんなお金取られなあかんの!よそ様の土地で店出すんやしゃあないやろう!お前のやってるこれかておかしいやろう!闇やぞ!とにかく私はここにおるから。
・
(源太)何であいつあんなむきになってんねん。
ショバ代一つにおかしいおかしいて食うてかかりよるし。
実はかっちゃんの戦死公報が来たんですよ。
えっ?家も思い出の品も何もかんも焼かれてしもうて心の奥底でものすごい怒ってるんやないかなと。
気合いで全部元どおりにしてやろうと思うてはるんかもしれません。
そういうやっちゃもんな。
おばちゃん。
あっちょっと待っとき。
おい。
おいおい早く。
5人。
作ったれや。
芋はわしが何とかしたるさかい。
よろしゅうお願いします。
お前何持ってこられても料理できるん?毒あるもんとか難儀な下ごしらえとかいるやつやなかったら。
(馬介)「うまいもん」て何?馬介さん!
(タネ)めいちゃん!
(マツオ)めいちゃ〜ん!みんな無事やったんですか?いや源太から聞いたんやけどなくず芋買うてくれるってホンマ?ああはい。
買います。
これは配給には回せへんもんなんやけど…。
買います。
やります私。
(子ども)おばちゃん。
食べられる物やったら何でも買うてくれるでっておっちゃんが。
(カエルの鳴き声)カエル…。
(源太)うまいも〜ん!
(銀次)ほうるもんにカエルもん!
(源太)浪速っ子やったら食うていかんと〜!
(銀次)はよ買わんとのうなるで〜!
(馬介)プリップリでうまいで。
精つきまっせ〜!うまいもんほうるもんカエルもんどうですか〜!楽しかったな。
(トラ)
め以子
呼ばれてる。
おい。
め以子〜!
あっ…。
大丈夫か?
め以子。
私だよめ以子
(藤井)べにこ〜!藤井さん!?その子捕まえて下さい!それぬか床なんですよ!待て!べにこ。
えっ?
久しぶりだねめ以子
ほっとするねあんたの手は
(源太)よかったな。
ぬか床戻ってきて。
うん。
さい先ええわ。
馬介さんどう?こっちあかん?やっぱりおなか膨れるもんの方がええんやろな。
(真岡)それ…ぬか漬けですよね?はい。
キュウリ頂けますか?あっはい。
あっ!ああ〜。
そ…そのまま。
うまい〜!ありがとうございます。
2円になります。
あの〜!お願いがあるんです。
何や?今の客。
何や?お前ら。
お米買わへんかて。
(源太)え?3俵!アホかお前。
えっ?食い逃げちゃうん?
(3人)ああ〜…。
数日後
しゃぶしゃぶくらいがちょうどええです。
焼きやすいし。
・
(真岡)奥さ〜ん!え?いや〜遅なってすいませんお米持ってきました。
お金ある?いくら?4,500円。
4,500…。
あるか!そんなん!よねえ。
め以子を助けてくれたのは倉田でした
(倉田)米や。
このお米でみんなでお祝いしましょう!いかがですか?太っ腹やな。
アホですから後先考えられんのですよ。
アホの仏か。
(泰介)お母さんこれもろてええの?
(泰介)ただいま戻りました。
泰介…。
お帰り…。
ただいま。
(希子)これがうわさのほうるもん鍋ですか?ええだし出てるんよ。
(川久保)お姉さんのおむすびや。
しかも白い。
(笑い声)
(希子)いつぶりやろね。
(室井)あ〜うまい!わしの口から言うてええもんかどうかとは思うけど…。
かっちゃんの戦死公報が来たんやて。
紙一枚のもんやし信じるもんかて思うとるみたいやけど…。
活男…。
僕が行ったあとあっこでどうしてたん?あのなあかっちゃんの戦死公報が来たんや。
紙一枚の事やさかいホンマかどうか分からん思うで。
うん。
それからは一人で畑して一人で御飯食べてた。
畑てなあ世の中なんよ。
世の中?普通に手入れしてるつもりでも「何で?」って事が起こるんよ。
お母ちゃんの世話なんか大きいとこでは関係ないんや。
無力やな〜って。
どうしたらよかったかて。
言わなあかん事は言わなあかん。
おかしい思うたら言わなあかん。
これは無力な大人の責任や。
偉い人はそれを言わせなあかん。
山のように言わせて聞く耳を持たなあかん。
多分どっちも無責任やったんや。
へいらっしゃい!具はなしみそ…。
(源太)おう何やお前。
大学生がこんな事手伝うとんのか。
お呼びでない感じなんですけどね。
(子ども)おじちゃん靴墨のうなった。
ああちょっと待ってな。
後で持ってくるわ。
あんたらお焦げ食べていき。
(子どもたち)頂きます。
(泰介)子どもに仕事させてるんですか?何かやらんと食うていかれへんからな。
あのなお母さん。
うん?しばらく休学しよかな思て。
…何で?人捜しとか養子縁組みの世話とか始めようかなて。
せっかく生き延びたのに家焼けてもうて擦れ違いになってしもうてる親子とか兄弟とかいるかもしれへんし。
孤児になったて分かったらもらいたいて言うてくる近所の人もおるかもしれへんし。
言うてる事は分かるけどな。
今やらんと後悔する気がするんや。
できたはずの事をやらんかった自分が嫌んなるいうか。
休学やで。
そのままずるずるやめるいうんはなしやからな。
おおきに。
住所て分かるか?住んでた所。
どこやった?
闇市に人捜し尋ね人の掲示板が立つ事となりました
ごっつうまいですよ。
(静)ちょっとあんた!お金ある?お金。
借りてくで。
一獲千金や。
桜子ちゃんは!?一緒ですか!?要りません。
要ります!桜子ちゃんは!?要りません!どっちやの!?
(源太)その着物ごっつお買い得なんや。
うん。
銘仙と友禅同じ値段で売られとってな。
高いだけやと思うてたけどそんな事もあるんか。
あの〜桜子ちゃんは…?
(泰介)おばあちゃん!?泰介!泰ちゃん!泰ちゃん!泰ちゃ〜ん!おばあちゃんも元気そうやな。
(静)この子誰?あっ!
(藤井)その子捕まえて下さい!それぬか床なんですよ!ああまあええわ。
その子どないしたん?掲示板の再会第1号なんや!
(和正)お兄ちゃん!
(復員兵)よう頑張ったな。
うん!こういうのあかんねや。
再会のお祝いです。
少しですけど。
えらいすんません。
ほな頂こかかっちゃん。
うん。
かっちゃんいうんですか?
(復員兵)和正いいますのや。
(活男)う〜ん!あんた泣き過ぎや。
ある日の事です
すいません。
御飯まだ炊けてないんですよ。
・警察が来たぞ〜!手入れや〜!早う逃げ〜!あっ!なんぼのもんや〜!
(源太)め以子こっちや!おい!お母さん。
この米は私の米や〜!どんだけ取ったら気ぃ済むんや!食べるもん取られて家も旦那も子どもも何もかんも取られてここにおるんや!死んでしまうからしてるんや!これが罪や言うんやったらなまず飯食わせアホんだら〜!ああ…お母さん!こうなるわなあ。
昭和20年秋それは突然の出来事でございました
(め以子)警官はいつから泥棒になったんや!
闇市で店を出していため以子は逮捕されました
・「突然偶然それとも必然?」・「始まりは気付かぬうちに」・「予報通りいかない模様」・「そんな時こそ微笑みを」
(静)それであの子まだ連れてかれてしもたまんまなんかいな。
(室井)そうなんですよ。
心配ですよねえ。
(戸が開く音)
(静)泰ちゃん!
(泰介)ただいま戻りました。
(静)あっ!
(源太)まあアホなおばはんがやった事やて罰金増額でチャラにしてくれたんや。
何で私が罰金払わんとあかんの?米とられて金払うなんておかしいやろ!?逆や!お前何も悪ない。
何も悪ない。
だっておかしいやろ?おかしいやろ?なあなあなあ?大ちゃんや。
大ちゃん。
(静)かいらしかったで。
捕まってしもたら会えんようになってしまうなあ。
せやけど…。
ばあちゃんお縄になったら大ちゃんかわいそやろ!何で私は商売したらあかんのですか?
(香月)あんだけ暴れて何で罰金ぐらいで出られた思う?わしが裏から手ぇ回して何とか罰金で納めてもろたんじゃ。
えっ?
(香月)おばはんにはもう市では商売させんいうんが向こうの出した条件や。
ショバ代って何のためにあるんですか?はあ?こういう時に守ってくれるから払ってるんとちゃうんですか?しゃあないやろう!今回は進駐軍にやられたようなもんやねんから!はあ!?配給どうにもならんさかいな。
お上がまず進駐軍に泣きついたんや。
ほしたら闇市があるやないかと。
泣き入れる前にまず自分らであれどうにかせい言われて。
アメリカのせいで私は米持っていかれたんか。
チョコレート…。
(子どもたち)ギブミーチョコレート!ギブミーチョコレート!お母さん帰ろう。
なっ。
別んとこから帰ろう。
ちょっとあんた!ハイ!食べもん投げたらあかんやろ!そんな事も分からんのかどアホ!プリーズ。
いや返す言うてるんや!あかんやろ!チョコレート配るなんて!チョコレート見せられて心動かん人間なんておらんやろ!食べもんで釣るやなんて人の一番弱いとこついて。
汚いわ!汚いやろアメリカは!お母さん。
うん?何やってはるんですか?あんた食べへんねやろ?私は悠太郎さんとかっちゃんが戻ってきたら食べます。
チョコレート戦争や。
(川久保)今更開戦てチョコっと遅いな。
そうですね。
お弁当?
(希子)うん。
闇市で店やりはらへんのやったら放送局にこっそりお弁当売りに来はったら?お弁当…か。
お金。
足りる?うんおおきに。
おおきに。
気を付けて。
おおきに。
どうも。
ありがとう。
おおきに。
(大野)川久保君のお姉さんのお弁当はええねえ。
うん?そうですか?同じもんが続かへんところがええわ。
何とか違うふうにしたろいうせめてもの母心みたいな。
(希子)言うときます。
喜びます。
(大野)これはモリス大尉!あっお弁当ですか?どうぞどうぞ。
ある日の事です
どないしはったんですか?
(倉田)これもらいはってんけどな。
(細川)まあまあどうぞ。
(倉田)見てみて。
いやっ!
(倉田)タコ。
(静め以子)ああ〜!何とかしてもらわれへんやろか。
分かりました。
お待たせしました〜。
(一同)おお〜。
ゆでタコです。
(細川)ええなこれは!まずこれで。
どうぞ。
(3人)ほな頂きます。
(太田)うまい!うまい!熱いけどうまい!串焼きです。
タコ飯でございます。
(一同)ああ〜!夢にまで見たタコ飯や。
め以子ちゃんあんた座敷やってえな。
金なんぼでも出すさかいに。
ガスも引き。
ガスも。
(静)ガス!?ホンマですか!?うんホンマやがな。
一筆書いといてもろてええですか?ごっつうええ話やないかい!ええ?それはホンマにありがたい話やねんけど…。
どれくらい来はるつもりなんか分からへんし。
稼がんとあかんしな。
カチカチ決め込まんと始めてみたらええやん。
お前人に料理すんの好きなんやから。
せやね。
(トラ)
…という訳で早速西門家のバラック造りと蔵を座敷にしつらえる計画が始まりました
(大村)蔵座敷てどんなふうにしたいんや?あの…。
・
(竹元)奥!竹元さん!?生きてはったんですか。
来てくれはった人がくつろげたらそれでええんですけど。
悠太郎さんやったらこう建てるみたいなんがあるとうれしいなあって。
赤門らしさて…なあ。
(藤井)う〜ん。
いまひとつ…。
(竹元)ないんだ。
あいつには建築的な個性が何一つ。
とにかく安全で頑丈でいう事以外になあ。
(泰介)ただいま。
うん?何や蔵の相談?
(静)よかったら源太さんも知恵出して。
あっそういえば小学校の窓のうて。
(2人)ああ〜。
あったな。
あったね。
悠太郎さんのやりそうな事やな。
そうですねえ。
そうだ!窓が一つもないというのはどうだ!えっ?
(竹元)いっそ斬新じゃないか!安全安全いうても家内安全の方はなあ。
お母さん。
何だその興味深い話は!こいつがね通天閣のこんな話をこんな大きして大騒ぎしてな。
やめてホンマに。
いつ?いつごろの話だ?一緒にカレー食べはったやないですか。
ああっ!見えたぞ奥!カレーだ!この空間の決め手はカレーの女神だ!はあ?この空間はお前の愛と勘違いのファシズムだ!
(笑い声)嫌や…。
大変やったやろな西門君。
藤井さんその後父の事で何か分かった事とかて…。
まだ満州からの引き揚げが始まってないから何とも…。
(竹元)生きている。
えっ?屁理屈で面白みもない。
しかもいるだけで物理的に閉塞感が倍増する。
そんな男をそばに置きたい神も仏もいるはずがない!竹元さん…。
(馬介)ああ〜め以子ちゃん今日くず芋余ったから持ってきたで。
(竹元)マスター!はい!うま介が無くなってるじゃないかマスター!空襲でボボボボボッドカ〜ンって。
話し合おうマスター。
よし行くぞ。
マスターこっちへ。
はい!?先生?はい!?
(泰介)カレーの女神おらんやん。
(静)何や普通やね。
そんな事おまへんで。
ここ。
(藤井)階段わざわざコンクリートとはな。
わざわざ手すり。
あの人迎えるための座敷やないですか。
こうして蔵座敷の建築が始まっていくのでございます
(ベッカー)希子。
はい。
モリス大尉ガ話ガアル。
お話って。
(英語)マタアノライスボールガ食ベタイノデドウニカシロ。
それで?モリス大尉にお弁当作ってもらわれへんやろか。
嫌や。
そんなん絶対嫌や。
お願いします。
大体希子ちゃん信用ならんて言うてたやん。
信用はしてないけどでも逆らうとややこしい事になるんで。
何とかお願いできませんか?
(川久保)大きく出はりましたね。
材料費かかってるし。
(希子)えっ中身違うん?同じもんやったら何や言われるか分からんから。
(モリス)オウオムスビ。
アメリカはこっち。
アイシー。
おおきに。
あっお姉さん。
僕にも1つ。
毎度。
1つ。
おおきに。
おおきに。
ヤミー!えっ?ちょちょちょ…何してはるんですか?せやかて今闇て闇て。
「ヤミー」いうんは「おいしい」いう意味らしいですよ。
そうなん?
おいしい顔っていうのはアメリカ人も日本人も変わらないね
いよいよ蔵座敷が出来上がったのでございます
ええわこれ。
はあ。
ああ。
空見える。
青空が見えるんもええし星空が見えるんもええでしょう。
ホンマにおおきに。
こちらこそ。
何かおおきに。
近頃め以子ちゃんどんな具合?元気にやってますよ。
(倉田)この新巻何とかしてえな。
・
(泰介)この間は倉田さんが大きな新巻ジャケ持ってきはって。
近所の人たちにまで振る舞う事になって。
(太田)め以子ちゃん何か食わしてえな。
はよしてな。
・
(泰介)そのうち手ぶらでやって来はったりして。
面白なってきたんか自分から仕入れして。
今日ええカニ入ったんですけどどうですか?自分から営業して走り回ったりしてます。
そろそろ言うても大丈夫なんと違いますかね。
アメリカ嫌いもだいぶ薄らいできてますし。
えっ?そうなん?ああ馬介さん。
すんませんねえ屋台任してしもうて。
僕もそろそろうま介やろうか思うてんねん。
えっ?それでな店多分…オンリミットになるんや。
「オンリミット」って何?米軍の立ち寄り自由な店や。
そういう事を条件に資金引っ張ってきたいうかそれでしかできへんかったいうか。
私はアメリカは嫌いやけど馬介さんの入れてくれるコーヒーは好きやから。
おおきに。
店開いたら来てな。
当たり前や!はよ復活して下さいよ。
カスタード巻きにハモニカも。
あと焼氷な。
(笑い声)あの〜泰介のお友達ですか?
(小関)私は西門活男君と同じ船に乗っとったもんです。
活男と…。
最後の出撃の時は病気で基地の病院に入れられてたんです。
生き残りの恥さらしです。
ほなかっちゃんは…。
立派な最期だったそうです。
あの…これをと思いまして。
(静)これは?
(小関)荷物に西門君の手帳が紛れ込んでて。
(静)活男は海軍でお役に立ちましたか?西門君はいつも笑ってて。
みんなにかわいがられてました。
握り飯を作るのがとても速くて上手で。
「ごちそうさん」って言われるとうれしそうな顔して。
「うちの母親は『ごちそうさん』てあだ名なんや」ていつも自慢してました。
おう。
何や?それ。
かっちゃんの手帳。
源ちゃん。
お葬式やろう思うんやけど。
やるんか?源ちゃんの助けがいるんやわ。
なんぼでも。
(活男)「1月19日けったいな夢を見た。
朝わしは起き出していつものように調理場へ行った。
けどそこは何でか台所でお母ちゃんがグツグツと何か作っとる。
わしがぼ〜っと見とるとお母ちゃんはそこにカレーを踊りながら持ってきて」…。
(活男)「わしはカレーを食べようとする」。
(活男)「けど何でか食べられへんで。
いつの間にかお母ちゃんはおらんようになってて『ごちそうさん』は言えんかった」。
(活男)「2月10日肉ジャガとお浸し。
ネギと揚げのみそ汁。
今日もあかんかった。
3月12日ドーナツとしょぼ焼き。
今日もあかんかった。
夢やもんしゃあない。
けど生きて戻れたらおなかいっぱい食べて」…。
(馬介)これがかっちゃんのお葬式か。
(川久保)全部夢の中で食べられへんかったって書いてあったんですか?作れんかったもんもあるしかっちゃんが食べたがってたもんに仕上がってないもんもあるけど。
(泰介)活男お前のおかげで今日はこんなごちそうが並びました。
ほな頂きます。
(一同)頂きます。
おいしい。
かっちゃんはもう…おなかすかへんのやなあ。
「活男のお葬式をしました。
皆来てくれていいお葬式でした」。
前向かんと。
向かんとね。
うま介再開の日
(ドアが開く音)いらっしゃいませ!コーヒー。
め以子ちゃんごめんな。
馬介さんごめんな。
私はお母ちゃんやから。
かっちゃんの敵の国の人にコーヒー入れたりはでけへん。
・
(藤井)すんません奥さん。
藤井さんどうも。
どないしはったんですか?西門君の事なんですけどね。
2014/12/23(火) 15:15〜18:00
NHK総合1・神戸
も一度まんぷく!「ごちそうさん」ダイジェスト一挙放送! 第17週〜第24週[字]
め以子と悠太郎が帰ってきた!連続テレビ小説「ごちそうさん」を第17週から第24週までダイジェストでお送りします。戦争の時代を経て、新たなる出発。
詳細情報
番組内容
赤紙がきた源太(和田正人)のためイチゴの代用品を作り送り出す。配給制が進み、食糧が手に入らない中、 ふ久(松浦雅)が諸岡(中山義紘)の子どもを産みたいと言い出し、結婚、出産。活男(西畑大吾)は海軍に志願。悠太郎(東出昌大)は逮捕される。一人で皆の帰りを待つめ以子(杏)。終戦を迎え、め以子は闇市で揚げたくずじゃがいもを売って生活することに。料理が評判を呼び、め以子は蔵を改築して「お座敷」を始める。
出演者
【出演】杏、東出昌大、キムラ緑子、高畑充希、和田正人、茂山逸平、菅田将暉、松浦雅、西畑大吾、吉行和子、宮崎美子 ほか
原作・脚本
【作】森下佳子
キーワード1
連続テレビ小説
キーワード2
ごちそうさん
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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