柳家権太楼の演芸図鑑「春風こうた・ふくた、三遊亭王楽、山本益博」 2014.12.07


おはようございます。
権太楼でございます。
このごろはふらっと行ってすっとお店に入るっていう事がなかなかできませんでねインターネットだとかまた電話予約なんてんでもってお願いをする。
「すいませんけれども柳家権太楼と申しますけれども明日6時に2人なんですけども」なんて言うと「はい!」なんて事言わないですね。
大抵はね「ちょっとお待ち下さい」なんて事言いながらしばらくして「え〜お二人でございますか。
え〜柳家様あ〜柳家様でしたらどうぞお越し下さい。
お二人でございますよね」なんて念を押されてね大変混んでるんだろうなと思って行ってみたら私と2人しかいないというね。
こんなんならあんな言い方しなくたっていいでしょというのがあるけどそれが店の格ってやつだそうでございますけど。
本日の演芸でございますけれども本日の出演はまずは春風こうた・ふくた。
もう東京漫才ではベテランでございましてね私なんかともほとんど同期でございます。
そして落語の方は三遊亭王楽さんでございます。
どうぞ。
どうも〜。
どうもありがとうございます。
もうたくさんの皆さんで…。
朝早いのにこんなに集まってるんだもんね。
これだけのお客さんがどこから来たのか気になりましてねさっき入り口で会ったおかあさんに聞いて驚きましたね。
みんな「うちから来た」って言うんだよね。
お前もそうでしょうが。
うちからでしょうが。
芸人やってますといろんなお客様と知り合いますからね。
新しい出会いもありますしね。
「漫才さんはいいわよね。
好きなおしゃべりでお金になって」なんてよく言われますけどね。
そんな事ないんですよ。
朝起きてくるとね今日は人の顔なんか見たくないなとかしゃべりたくないなって思う時はプロでもあるんですよ。
そりゃ生身ですもんね。
それがちょうど今日なんですが。
あのね。
ちょうど今日って事はないじゃないかあんた。
あとね今日さっきロビーで言われたんですけど「春風さんしかしあんたの世界も厳しいですね」。
サラリーマンの世界と違いますからね。
お笑いっていっても芸能界ですよ。
いい時ありゃ悪い時ありますから。
浮き沈みがあるでしょ。
浮いたり沈んだり。
でも僕らにとってはあんまり浮き沈みっていうの関係ないのよ。
何で?浮いた事がないから。
人から言われるのも「潜水艦コンビなの?」って。
「何で?」って言ったら「潜りっ放しだから」。
(笑い)ハウス行きなさいうるさいから。
ですからね我々もそうですけどやっぱりねふだんねあえて言いますけど…ちょっとごめん。
あえて言わせてもらいます。
何を?今思い出したから。
これでね我々も結構忙しいんですよ。
でも忙しすぎると駄目ねおかあさん。
テレビに出る暇がないのよ。
テレビ出ろよだから!テレビ出なさいよ。
でも本当に驚きましたよ今日。
ふだんどこへ出てるの?浅草ですよ。
浅草の東洋館とか木馬亭とかあるじゃないの。
寄席しかやってないのか?あんた。
いいじゃないすか2軒出りゃ1年間食えるんだから。
食えないわあんた!誰が食えるんだ!食えませんか。
でも今すごいですよ寄席の方お客さんいっぱいでね。
見たら全部年寄りばっかり。
ブ〜ッ!若いの一人もいないのね。
全部年寄りって事はないけど…。
近頃は本当にお年寄りが元気でね。
皆さんねうちのおふくろも90近くで元気でやってますよ。
秘けつね健康の秘けつ。
これやっぱりカラオケらしいですよ。
うちのおふくろカラオケが大好きで。
本当にやってんの?やってますよあんた。
うちのおふくろがひばりが好きなの。
あら!あんたんとこのおばあちゃんひばりが好きだったの?うちのおふくろはどっちかっていったらねジュウシマツが好きだって。
いっぱい卵産むから。
誰が鳥の種類しゃべってんだ。
歌の話でひばりっていったらもう美空ひばりさん。
ひばりさんなの?若い子だって分かってますよ。
だから今日はおふくろの代わりにちょっとここで1曲歌いたいんですよひばりさんの。
じゃあ心おきなく歌って帰ればいい。
名曲知ってんでしょ?「リンゴ追分」。
これ。
これ俺が歌うからお前悪いけどちょっと伴奏やってくんない?ブッ!何で?
(笑い)あんたが歌ってアタイが伴奏するの?CDMDとか出してないの。
今思いつきで言った。
どうやってやるの?だから簡単なの。
・「トゥントゥントゥトゥントゥントゥトゥントゥントゥ」これ繰り返し。
これ繰り返せばいい訳?みんな知ってるから。
じゃあ「リンゴ追分」。
「リンゴ追分」伴奏を聴いて下さい。
(笑い)別にお前の伴奏なんか聴いたってしょうがないでしょ。
何なの?歌を聴いてもらわなきゃ。
歌を聴いてもらう訳なの?私の歌を聴いてもらうんだから。
じゃあ歌もついでにどうぞ。
ついでじゃねえわ!・「タンタタンタタンタンタタンタタンタタン」・「タンタタンタタンタンタタンタタンタタン」
(笑い)・「タンタタンタタンタンタ」うるせえ!何?タンタカタンタカじゃないでしょ。
どこから歌いだすんだ?どこから歌いだすって隙間見て入ってこいこの野郎!隙間って俺ゴキブリじゃないんだから。
隙間見て入れないわ。
あっそうか。
伴奏の方をフェードアウト。
自然に消していく方が歌いやすい。
パッと切らないでず〜っとやってちょうだいよ。
・「タンタタンタタンタンタタンタタンタタン」・「リンゴの花…」・「ゴ…」高いなあんた。
(笑い)キーが高すぎるだろ。
高かった?誰が聴いたって無理だと思ったよみんな。
どのくらいでやったらいいの?低めだよ!低めってどのくらいよ?自分の背に合わせなさいよ。
(笑い)もう今日お散歩なし!お散歩ありません。
ウウ〜!うるさいねもう…うるさいな。
ちゃんとやってちょうだい。
・「トゥントゥントゥトゥントゥントゥトゥントゥントゥ」・「リンゴ」俺が歌うんだよ!お前油断も隙もならないな。
ここはだから俺が中心なんだ。
俺の歌なんだから。
だからキーの高さを教えた。
その辺で見繕えばいいのね。
見繕うってすし屋じゃねえんだ。
ちゃんとやってちょうだい。
・「タンタタンタタンタンタタンタタンタタン」・「リンゴの花…」もうすぐ終わるからね。
うるさいなあんた!誰としゃべってんだよ?
(笑い)指をさすなお前も!指が腐るか?バカ言ってんじゃないよ。
目の前で「面白いわね」って。
だったらいいじゃないか。
あの人が気になっちゃって。
あの人じゃないよあんた。
ぼ〜っとしてないで何か考えなさいよ。
暇だからさ。
暇だからこそだよ。
暇だからあの人と話してた。
こちらと話したってしょうがないでしょうがあんた。
そうじゃなくて俺が歌うだろ。
そしたらお前は機転を利かせてバックコーラス。
バックコーラスやったらいいのか。
適切な事考えて。
バックコーラスやればいいんだね。
2人仲良く努力しなきゃ。
・「タンタタンタタンタンタタンタタンタタン」・「リンゴの」バックコーラスやるからねバックコーラス。
・「花びらが」・「あリンゴリンゴリンゴあリンゴリンゴリンゴ」
(笑い)・「風…」・「あリンゴリンゴリンゴ」・「か…」・「あリンゴリンゴリンゴ」・「か…」・「あリンゴリンゴリンゴ」うるせえ!
(笑い)うるせえな。
何だよ?リンゴが多すぎるんだよ。
リンゴが多くたっていいんだよ。
何でよ?「リンゴおおいわけ」っていうんだよ。
あのな。
(拍手と笑い)何か多い訳聞きたいか?しゃれ言ってる場合か。
どこにこの俺が目立たない歌があるんだよ?バックコーラスそっちが目立っちゃってんだよ。
いいからあんた。
もうなし!そこんとこなし。
なし!なしなの?なしだって。
・「リンゴの」分かった?・「花びらが」楽でいいね。
・「あなしなしなしあなしなしなし」しかしうちの漫才って分かりやすくていいなおい。
「なし」って言ったら前の人が「次なしって言うんじゃない?」。
「ほら言ったわよ」だって。
(2人)アハハハハ!よいお年を。
歌やめさせてもらうわ!
(拍手)
(出囃子)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)サクラかと思えるような見事な拍手ありがとうございます。
こんなに早く羽織を脱ぐんだったら着てこなくてもよかったんでございますけれども。
一席の間おつきあいの程を願っておきますが人のまねというのはうまくいかないもんでございまして御成街道の立派な道具屋の店先にお立ちになりましたお武家様。
黒羽二重の衣類に仙台平の袴白足袋に雪駄履き。
そして手には鉄扇を携えまして…。
「おお亭主お前の店はここか」。
「おやこれはこれはお殿様。
なんぞ御用でございますか?御用でございますればお使いを下しおかれればすぐさま手前どもの方から参上致しましたのに」。
「いやいや別に用ではない。
今日はな墓参の戻りであるが供の者にはぐれてのう。
ぶらぶら歩いてまいるとそちが表へいたので初めて気が付いたがお前も店先におるのはたまさかであろう」。
「さようでございます。
たまにしか店へは出ておりません。
ちょっと捜し物をしていたために出ておりましたがよいところでお目にかかりました。
え〜いかがでございましょう。
どうぞお上がり下さいましてお茶など召し上がって…」。
「うむせっかくの志だいぶ歩いてくたびれてもおるから休息させてもらおうか」。
「あっどうぞ奥の方へ」。
「いやいや奥は遠慮致そう。
ここにおらば供の者が後から参ると認める事もできるが奥へ参ってはそれができん。
この店先では邪魔であるかのう?」。
「いいえとんでもございません。
ではご随意に。
おいおい布団を持っておいで。
それからたばこ盆を」ってんで下へも置かないような丁重なおもてなし。
たばこ盆が先に出る。
これが昔は礼儀だそうでして。
ぐっと膝の所まで引き寄せまして袂落しというキセル。
結構な袋に入っているやつをつっと抜きますとこれが金の無垢ですよ。
無垢というのは犬ばかりかと思うとそうでない。
キセルにも無垢がございまして。
紫菖蒲のたばこ入れ腰から取り出しますと結構な葉を詰めてたばこ盆の上にかざしただけでいいたばこでございますからチリチリチリチリってんで呼び火をするという結構な代物。
「亭主最前からわしは見とれておるのじゃがあの隅に掛けてある鶴は見事なものじゃのう」。
「あれでございますか?相変わらずお目の高い事でござりまして恐れ入りますがまあ私の見たところでは見事な作ではありますが文晁の作と心得ますが御意はいかがなもので?」。
「ほう。
そちが見て文晁とあらばそれに相違あるまい。
は〜なるほど。
文晁は名人じゃのう。
よく描いた見事な作だ。
う〜ん見れば見るほど見事なものだ」ってんでキセルをくわえながら感心をした。
キセルの掃除が行き届いてますからふっと息が入っただけでこの雁首に載せてありました火玉がぴょこっと跳ねまして広げてあった袴の上へ。
「お殿様!お殿様!」。
「何じゃ?」。
「あのお袴の上に火玉が落ちましてございますが」。
「ん?おっ最前より異な臭いが致すと思うたら身共の粗相であったか。
とんだ騒がせを致したのう。
許してくれ」。
「いいえとんでもございません。
それよりもお召し物に傷がつきは致しませぬか?」。
「いや〜これはいささかのう。
ふだんの袴である」。
こんなやり取りをしてこのお侍が行っちゃった。
これを脇で見ておりましたのがまあ我々同様と申したいところですがもう少し日当たりの悪い所で育っちまったぽ〜っとした人間で。
「驚いたねおい。
あの両個なんてえものはあんな昆布みてえな窮屈袋を焦がしやがっても驚かねえんだ。
『異な臭いが致すと思うたら身共の粗相であったか』。
俺あの侍がおならでもしたのかと思っちゃったよ。
しかしねまた亭主野郎焦ってたよ。
『お召し物に傷がつきは致しませぬか!?』。
『これはいささかふだんの袴だ』。
いい形だったね〜。
また亭主野郎がそれ聞いて何か鳩が豆鉄砲を食らったような…もうきょとんとしてやがった。
ハハハハ!『お召し物に傷がつきは致しませぬか!?』。
『これはいささかふだんの袴じゃ』。
『でも…お召し物に傷がつきは致しませぬか!?』。
『ふだんの袴じゃと申しておる!』。
やろう。
あれかっこいいもんな。
あれやろうっと。
だけど俺は袴持ってねえんだよな〜。
え〜っとどうしよう。
誰かから借りるか。
あっそうだ!大家さんのとこ行きゃあるかもしれねえな。
大家といやぁ親も同然店子といやぁ子も同様親子の間柄だ。
だけど俺の事つかまえると『がらっ八がらっ八』って呼びやがんだ。
八五郎って呼んでくれねえんだよな。
こんちは!こんちは〜!」。
「はいはいどなた?」。
「おい大家!」。
「何だ?」。
「…さん」。
「何だよ。
後から『さん』を付けるやつがあるか。
その声だとがらだな」。
「『がら』だって言ってやがる。
八が抜けちゃったよ。
安い縁日の植木みてえ」。
「何をくだらない事を言って。
早く上がってこい」。
「ヘヘッどうも」。
「『どうも』だってえばって入ってきやがった。
何しに来たんだ?」。
「借りもんなんですよ」。
「何を借りに?」。
「窮屈袋」。
「えっ?」。
「窮屈袋」。
「何だい?その窮屈袋ってのは。
ぬか袋かい?」。
「ぬか袋じゃありませんよ。
ほら何かありますでしょ?何か大家さんがほら自身番に行く時に何かこんなになってこう突っ張らかしてここら辺も結んであるこういうほらもう…もうじれったい!」。
「こっちの方がじれったいよ。
袴か。
職人のお前がそんなもんはこうなんてのには何かいわれがあるはずだ。
何だって借りてえんだ?」。
「ヘヘヘ!それは言えません」。
「あ〜何か言えねえ訳がある。
てれくさいのか。
口上茶番の衣装か何かに使うんだろ。
おいばあさん出してやんな。
いやいやたんすなんかそんな開けなくていいよ。
その折れっ釘にぶる下がってるふだんからはいてるやつで。
じゃあこれいいから持ってきな持ってきな」。
「どうもありがとうござんす。
ハハハハ!けれどもこれまた安直だね。
いやにあのペラペラがないね」。
「何だい?そのペラペラっていうのは。
ああそのひだの所か。
それはいつも私がはいてるもんだから崩れちまったんだ」。
「崩れちゃってんの?何だかかっこつかねえな。
まあいっかこれでも。
どうせ焦がすだけだから」。
(笑い)「何だ?」。
「こかすような事はしませんよ」。
「当たり前だ。
お前人に借りたもんを質なんぞに入れられたらたまったもんじゃねえ。
はいたらすぐに返しに来るんだぞ」。
「ええ分かりました。
ありがとうござんす。
ハハハ!ありがてえねこれでもって『ふだんの袴だ』ができるよ。
いけねえ!俺着物持ってねえんだよ!半纏しか持ってねえしまた大家んとこ行くと今度は何に使うんだとかうるせえだろうしな。
まあいっか。
この半纏の上に着けちゃおう」ってんで乱暴な格好をしたもんで。
上が半纏で下が袴という。
早く言えばまあ飛脚の方が仮装パーティーをしてるような感じでございましょうか。
袴なんですけれども皆さんはご案内でないと思います。
袴というのはこうなってこうなってるんです。
脚をこう片っぽずつに入れるんでございますがこの男袴をはいた事がないから分かりませんのでこの半分に両足を突っ込んでしまった。
このひもの結び方も難しいんです。
いろいろとしきたりがあるんでございますがこの男結んだ事ありませんからどうしようってんで長いひもをこう作りましてでかいちょうちょ結びか何かをこしらえまして自分自身が誕生日プレゼントみたいな訳の分からない格好を致しましてその道具屋の店先にカニのような歩き方で…。
「よいしょよいしょよいしょ!おう許せよ!」。
「すごい格好の人が来たね!へえへえ何か御用で?」。
「ハハハ!用はない」。
「用のない人が来ちまったよ。
え〜どうかなさいましたか?」。
「ヘヘヘ!今日は今日はぼさ…ぼさ…ぼ…ボサノバ聴いた帰り道供の者にはぐれてのう」。
「この人の方がよっぽど供の者に見えるよ。
へえへえ」。
「ぶらぶら歩いてまいるとそちが店におったので初めて気が付いたがこの野郎いい所に巣くってやんな。
これじゃあ賃貸の方も高えだろ?」。
「何でございます?」。
「家賃も安くあるめえってんだチクショー!」。
「いやこれ手前どもの持ち家でございますから別に家賃うんぬんというものは気にはしておりません」。
「あの用のない方がまだ何か御用でございましょうか?」。
「この野郎失礼な野郎だな!ずっと歩いてくたびれてんだ。
『どうぞ奥の方へお上がり下さいましてお茶など召し上がって』ってどうして言えねえんだよ!」。
「いやあまり上がって頂きたくないんでございますがそれではどうぞ奥の方へお茶など召し上がって頂いて…」。
「いやいや奥は遠慮致そう」。
「どっちでございますか!」。
「いいんだよこの店先でもって。
おい小僧たばこ盆持ってこいってんだ。
そうすりゃ俺の値打ちが上がるってやつだ。
あ〜たばこ買ってくるの忘れちゃったよ。
しょうがねえな。
このあるだけのものを詰めてこのたばこ盆の上にかざすと…あ〜!落ちちゃった!」。
(笑い)「しょうがねえな。
こうなったらこの袂クソで…。
もう火が付きゃいいんだからな。
プップップップッ…。
プ〜ッ!はあ〜!ハハハ!付いた付いた!火が付いた!」。
「あっどうもおめでとうございます」。
「ああここからが本番だ。
あ〜亭主!」。
「何か調子が変わったよ。
へえへえ?」。
「最前からわしは見とれておるのじゃが…」。
「ずっとあなた目をつぶっていらっしゃいますけれども」。
「心の目で見とれておるのじゃが」。
「随分器用な方でございますな」。
「隅に掛けてある鶴見事だな」。
「あれでございますか。
お見それを致しました。
私は亡き父から人は見かけで判断してはいけないという事を口を酸っぱくして言われてまいりました。
本当に恐れ入りました。
申し訳ございません。
ご覧のとおり見事な作ではありますが惜しい事に落款がございません。
しかしながら私の見たところでは確かに文晁と心得ますが御意はいかがさま?」。
「えっ?いや俺が言ってるのはあれだよ。
いや悪いけども俺あれ文鳥じゃねえと思うよ。
文鳥ってのはなりがちっぽけでくちばし赤えの文鳥だろ。
あんな首が長くて頭が赤くてこんなくちばしのあれどう見たって鶴だよ。
えっ?この野郎半纏の上に袴着けてると思ってバカにしてやがんだろ!あれお前誰が見たって鶴だよ」。
「ただのバカだったんだよ…。
さようでございます。
鶴でございます」。
「そうだよな鶴だもんなあれな。
いやいい鶴だよ。
プッ!いやいやいい鶴だと思うよ。
プッ!いやいい鶴…プッ!いい鶴…」っていくら吹いたって掃除が行き届いてないから吹けっこない。
「いい鶴だ!」。
思い切ってパ〜ッと吹いた。
キリキリッと舞い上がった火玉が袴の上へ落ちないでこっちに落ちまして…。
「ガッ!いい鶴だ!」。
「プ〜ッ!あっおつむの上に火玉が落ちましてございますが」。
「な〜に心配するねえ。
ふだんの頭だい」。
(笑い)
(拍手)おはようございます。
柳家権太楼でございます。
本日のゲストでございますけど私と40年来の友達で今日はちょっと私も気が楽なんでございますけども料理評論家の山本益博さんでございます。
先生!おはようございます。
いやいやいや。
どうぞ。
すいませんね。
ありがとうございます。
お声かけて頂いて。
いやいや。
お久しぶりでございます。
足を投げ出して下さいませ。
どうもよろしくお願い致します。
何かこんなふうにしゃべんの何か変ですね。
てれくさいような感じがしますけど。
飲んでる方が?いえいえお声かけて頂いて本当にもううれしかったです。
まずは私も一応紹介の中で…。
料理評論家?料理評論家。
しょうろんか?ひょうろんか?評論家。
分かんねえんだ「ひ」と「し」が。
僕の前にはそういう人いなかったんですよ。
大体ほら物を書く作家随筆書くような人が功成り名を遂げて。
それであとは食べる事でも書こうかなみたいなね。
ちょっと言ってみると今から40年ぐらい前は。
そういう専門で…毎日外で食べてれば食っていけるというそういう商売作っちゃおうかなと思って。
人がやらない商売を始めるのは面白いなと思って…。
すいませんそれまで落語を一生懸命やってたのに…。
噺家大家やってた訳じゃないけど落語の会を主催したりいろいろやってたのにあっという間に何か食べ物の方に行っちゃいました。
フランス料理。
私なんか最初ねフランス料理なんか食った事ないじゃない?本当の事言ってこの世代は。
だからフランス料理とは一体何ぞやから教えてもらいたい。
僕も最初分かんなくてでも中学校の時実は落語の前に好きだったものがあるんですよ。
クラシックの音楽なの。
権太楼師匠はクラシックなんか聴かないでしょ?聴かないでしょ。
分かんない。
それがね中学校の時一生懸命聴いててで落語に行っちゃったんですよある日ね突然。
だからクラシックっていったらヨーロッパじゃないですか。
ヨーロッパのものがあっという間に江戸の世界に行って。
その下地があったもんだからフランス料理ってのがす〜っと入ってきちゃったのね。
僕がだから25歳の時黒門町の師匠こと桂文楽師匠がちょうど亡くなったあとぐらいなんですけどもある本屋さんで立ち読みしてたらなんとたまたま取ったのがフランス料理の本だったんですよ。
「パリの料亭」って書いてある本で。
それを開いたらねはしがきって前書きのとこに「その日の夕方私はひとりでレストラン・ラセールの隅のほうに席をとってもらいうららかな初夏の星空を眺めながら今食べたばかりのウナギのパテとシャブリのよく合うのに感心しつつこれから出てくる鴨のオレンジ煮を心待ちにしてサン・ルイのグラスにボージョレーをついでちびりちびりやっていたのでした」って書いてあった。
今で言うと何でも分かるんだけれども…。
俺は今でも分からない。
分かんないでしょ?サン・ルイのグラスとかボージョレーとか。
ボジョレーは知ってる。
ボージョレーは知ってるでしょ。
40年前は知らないでしょ?知らない全然。
ワインも知らなかった。
ワインも知らないもんね。
ぶどう酒って言ってた。
ぶどう酒って言ってたもん。
そのころですよ急にその世界に引き込まれちゃって。
その本を読んでうちに持って帰るうちにフランスへ行っちまおうかなと思って。
それで行ったんですか?1年間一生懸命お金ためて。
はあ〜えらいですね。
突然落語からフランス料理行っちゃった。
すいません。
いやいや。
フランス料理というものはですよ要するにメインは何なんですか?フランス料理の面白さってね日本料理と違ってメニューを開くとねメニューって料理長シェフの履歴書が書いてあるんですよ。
あっそうなんですか。
本当は。
だから僕最初の1,000回ぐらいは自分の知ってる料理とか食べた事ある料理を比較しようと思って取ってたんだけど1,000回超えたら何を食べたらいいのかなっていうのを選ぶ。
この人が何を考えてんのかなって料理を取ろうと思ってるから自分の好きな料理って…。
フランス料理実際5,000回ぐらい食べてるんですが40年ぐらいで。
よく食ったなと思うでしょ?うん。
でもまだ飽きないのはねつまり作ってる人が何考えてこういう料理を組んでるのかなっていうのがメニューに履歴書が書いてある。
いくつぐらいの人かな?どこで勉強した人かな?あっそんな事が…。
だから落語と同じですよ。
噺1回聴くとどこの系統でこの噺はどの師匠から教わったらしくてここん所が自分の個性を発揮してるみたいなねそういうのがねメニューを開くと…。
出るんですか?あとあれは…おソース?そうそうソース。
フランス料理と日本料理の違いは何よってよく聞かれるの。
そうするとやっぱりクリーム油脂。
中国料理もそうですが油を使う料理と日本料理ってほとんど水ですよ。
そうですよね。
お刺身だってお水ですよ極論すると。
それからおわんのおだしもあるじゃないですか。
そこが一番違うとこだなって。
私テレビでね一度京都の料理人の方々がフランス行って何か作って皆さんに出した時に言ってた事が同じでしたね。
要するに油を使うのか水を使うのかによってはこんなに味が違ってくるんだとか素材をこうやって…。
だからやっぱり油を主体に使った料理とソースというよりも油。
和食日本料理はお水。
だからどこが違うかというとフランス料理食べつけてるっていうかヨーロッパの人欧米の人はお皿が出てきたら向こうの方から「おいしいでしょおいしいでしょ」って言ってくれるんですよ。
日本料理の場合はおわんの蓋を取った時に向こうから「おいしい」って言ってくれないから自分から探しに行かなきゃいけないんですよ日本料理って。
それぐらい日本の料理って微妙なもんですよ。
そのために実は…。
箸を持ってきたんだけど箸。
箸。
師匠が扇子あるじゃない私も扇子持ってんだいつも。
扇子と同じような意味合いが実はねお箸にもあるんですよ。
これ両方が細くなってて利休箸とか祝箸ともいうんですが両方使えるんですよ。
日本料理ってこう置くじゃないですか?こう置く場合にこう取って使うでしょ。
そしたらこっちしか使わないでしょ。
こっち使う人いないですよね。
その時はね。
僕ねおわんの時だけはこうやるの。
神様に失礼しますって。
実を言うとこちらが人間が使ったとしたらこっちは神様が使うって意味なの。
お箸というもの自体が?お箸というものは。
それでこれは扇子と同じで結界なんですよ。
こっち神様の領域。
こっち人間様の領域。
料理人は食べるお客様のために作っているようでいて神様にささげるつもりで作ってんの日本料理って。
だから神様が頂いたものを結界を取り除いて頂きますっていうのが和食日本料理なの。
昔私四條流の和食のこう…神様…。
それも同じような事でしょ?同じ事なんです。
「最後の晩餐何?」ってアンケートがあるでしょ。
そうするとね炊きたて…。
何にします?炊きたての白いごはんにしょうゆを一垂らし。
フランス…。
フランス料理なんかもういいよ。
何ですか?それ。
だって一番長い事おつきあいしてくれたごちそうだもんごはんとしょうゆは。
炊きたてのものが一番ごちそうだな。
それが最後の晩餐?そう。
それにおしょうゆ。
2014/12/07(日) 05:15〜05:45
NHK総合1・神戸
柳家権太楼の演芸図鑑「春風こうた・ふくた、三遊亭王楽、山本益博」[字]

落語家・柳家権太楼が、演芸界のよりすぐりの至芸をナビゲートする。演芸は、春風こうた・ふくたの漫才、三遊亭王楽の落語「ふだんの袴」。対談のゲストは山本益博

詳細情報
番組内容
落語家・柳家権太楼が、演芸界のよりすぐりの至芸をナビゲートする。演芸は、春風こうた・ふくたの漫才、三遊亭王楽の落語「ふだんの袴」。対談のゲストは山本益博
出演者
【出演】春風こうた・ふくた,三遊亭王楽,山本益博,【ナビゲーター】柳家権太楼

ジャンル :
バラエティ – お笑い・コメディ
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:27065(0x69B9)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: