(ナレーション)
「Gospel」とは「Godspel」という古英語が語源
古代ギリシャ語の「Evangelion」に由来し「福音」すなわち「良い知らせ」という意味である
「ゴスペル」は1982年「ヴォーリズ建築事務所」によって設計された鹿ケ谷にあるカフェ
元は個人の住宅であったが現在は2階がカフェ1階が骨董という店舗兼住宅となっている
あらゆる世代が気軽に集う空間である
北白川通から東へ銀閣寺に程近く鹿ケ谷通を進むと洒な白亜の建物が現われる
「ゴスペル」である
昭和57年に竣工
京都大学や哲学の道も近く文化人や若者が集った昭和のカフェである
1982年に私の叔父が家を改築する際に個人住宅として建てました。
「Gospel」っていうのは「Goodspell」と古英語で申しまして良い知らせを持って帰って来たり良いお話がここでできればなっていうことでそのお名前にさせていただきました。
現在の店主の叔父滝口泰彦さんが「ヴォーリズ建築事務所」に設計を依頼
ヴォーリズの様式を継ぐ作風に自身の趣味を反映しながら粋を凝らして2年掛かりで建てたという
外観でまず目に入るのがうろこ屋根
硯や石碑にも使われる玄昌石という重く黒い石が使われている
塀は焼過瓦という高温で焼き込まれた赤瓦である
玄関の吹き抜け
階段脇には飾り机
親柱の装飾はここで彫られた
ヴォーリズ建築に傾倒していた叔父滝口さんのデザインだという
(山中さん)ヴォーリズさんがお亡くなりになられてから「ヴォーリズ建築事務所」の方に設計していただいたんですけどメンテナンスとか実用というよりももう好きなものを集めて建てたようなものですね。
元は家族が集うスペースであった
4メートルの高い天井もヴォーリズ風
調度は1920年代のアンティーク
ひときわ目を引くのが「JBL」のスピーカー「Paragon」
(「ブルー・ムーン」)
スピーカーの幅に合わせてレコード棚も設計された
真空管アンプで鳴らされるジャズのレコードが2000枚
今流れている曲は車椅子で座りながら歌い続けたコニー・ボスウェル
かつては店内に時計がなくレコードのA面B面を換えるタイミングで時間の目安にしていたという
優美な大理石の暖炉
薪がたかれ温かい雰囲気が演出される
席数を抑えたゆったりとしたスペース
椅子の高さが少しずつ変えられておりテーブルごとの独立性が保たれている
ピアノはチェコの「PETROF」
色合いも雰囲気に合わせてありここで私的な演奏会も開かれる
ここは近所の人々に我が家のように利用されているという
2000年に「ゴスペル」と改名するまでは「OTENBA−KIKI」という店名のカフェであった
「オッテンバー・キキ」という海外の歌もあり当初の店名はそこから取られたという
ちなみに「お転婆」の語源には諸説ありオランダ語で「手に負えない」という意味の「ontembaar」がなまったともいわれる
カフェの中のキッチンはドイツの…
システムキッチンを世界で最初に作ったブランドである
16種類のスパイスが入ったカレー
コーヒーは一杯ずつ豆から挽いて提供される
ここで焼かれる自家製ケーキに合わせて豆も替えて挽かれる
イギリス風の伝統的なスコーン
流行に左右されず気持ちの込められたもの昔からつながってきたものを提供するというのが店の方針でそのもてなし方はまるで個人の家に招かれたかのような感覚になる
光を取り込む出窓
会議や朗読会絵画教室にも使われたりする個室感のあるスペースである
トイレには今は作られていないアメリカの「シャール・ワグナー」製の洗面台
アンティークな陶器ボウルに合わせて台が作られ蛇口が付けられた
もう「こんにちは」みたいな感じで入られてくるお客様も非常に多くて初めてなのに初めてじゃないようななんか懐かしいような感覚とも思いますね。
1階は骨董店「迷子」
20年弱ですね…始めました。
当時カタカナの店が多かったのでとりあえずカタカナを避けたい。
時間が止まってるとは言われますね。
重厚な梁天井や窓の落ち着いた風格
アンティーク雑貨と古書がひしめく店内
昔は生活の中に普通にあったものしかし今では見られないものが集められている
古いものが好きというよりも新しいものが苦手なんですよ。
垂れ流しのように量産されて。
なんかねそういうのを眺めてる方がこの時代の人間ってこんなこと考えてたんだと時代が見えるような気がします。
アメリカ人でありながら日本的なものを尊重した昭和初期のヴォーリズの名残を感じさせる空間に品ぞろえがなじんでいる
(山本さん)売りたくないものできればもうちょっといてほしいものから売れていく傾向っていうのはやっぱりあります。
昭和初期の随筆
ひと言のフランス語もしゃべれない石黒が「柔道を教える」とパリに乗り込んだ話である
「怪人二十面相」で知られる江戸川乱歩SF作家の草分け海野十三など量産された娯楽ものが中心に並んでいる
(山本さん)「奇面城の秘密」と「サーカスの怪人」がこれ江戸川乱歩ですね。
でこれは「謎の金属人間」海野十三の。
「謎の金属人間」ってこのタイトルからして…こういう時代のタイトルも好きかな。
昔の映画のタイトルもそうでしたけど。
この人の面白いのって動機どうでもいいんですよね。
やりたいからやっちゃったと。
「二十面相」に限らず。
より時代が見えるという昭和初期の大衆文芸
乾いた笑いナンセンス小洒落ていないタイトル
「LAVIEENROSE」とかでいいですか?
「ビクトローラ」の蓄音機で店主が掛けるSPレコードは戦後間もないシャンソン
(「バラ色の人生」)
原詩はエディット・ピアフ
「あなたの口づけに天国のため息目を閉じてもバラ色の人生が見える」
夜ランプの明かりに「ゴスペル」はまた別の表情を見せる
夜のとばりにゆったりと流れる時間
お父さんとお母さんが昔デートしてた所だからってお見えになられたりかなり…ちょっと年配の方が帰るときに「ゴスペル」全然変わってないねって言われたんです。
変わってないねって言われるのが私どもにとってもう最高の褒め言葉で非常にうれしい感じになります。
没後50年を経た建築家ヴォーリズの系譜を継ぐ昭和初期のスタイルが随所に感じられるカフェ
時代にとらわれない建物は世代を越えて愛着と親しみを感じさせる
変わってないねと言われるそれが「ゴスペル」なのである
古都の暮らしを支え文化を育んだ京の水をご紹介します
2014/12/07(日) 06:15〜06:30
MBS毎日放送
美の京都遺産[字]
「昭和のカフェ・ゴスペル」
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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