(テーマ音楽)今も噴煙を上げ続ける北海道十勝岳。
荒々しい光景が広がります。
しかし山麓では噴火で荒れ果てた大地が豊かな森へとよみがえろうとしています。
その森に新たな住みかを求めた動物たち。
火山がつくり出す多様な環境の中でたくましく命をつなぐ生き物たちの営みを見つめます。
北海道の中央部2,000m級の山々が連なる十勝連峰です。
噴煙を上げているのが主峰十勝岳。
山頂近くには確認されているだけでも7つの火口があります。
この100年の間に3回の噴火を起こしている日本有数の活火山です。
山肌には大量の噴石や火山灰が降り積もり荒涼とした岩場が広がっています。
至る所から噴き出している火山性のガス。
硫黄などの有毒成分が含まれています。
ここはまさに死の世界です。
しかし山の中腹では若い森が育ち始めています。
荒れ地に真っ先に生える…水分や養分が乏しい環境でも根を下ろす事ができる広葉樹です。
笹藪の中に小さな木を見つけました。
芽を出しておよそ6年たった…噴火で失われた森は再生への道を歩み始めていました。
溶岩の隙間に生き物を見つけました。
体の大きさは10cm足らず。
小さく愛らしいその姿からこの名が付きました。
何かを拾っています。
植物の種でしょうか。
よみがえろうとする森が小さな命を育みます。
火山という過酷な環境の中で再生を果たそうとする森。
麓には更に深い森が広がります。
ここもかつては荒れ果てた大地でした。
150年前の噴火の際発生した泥流によって全てが埋め尽くされたのです。
今ではミズナラやナナカマドなど数十種類の木々が生い茂る森。
秋実りの季節を迎えていました。
森は生き物たちに多くの恵みをもたらします。
更に森は豊かな水も育みます。
落ち葉の層に大量の水をため込むのです。
地中に蓄えられた水はやがて地表にあふれ出します。
一年中かれる事のない湧き水です。
このひときわ澄んだ湧き水が川をつくりました。
美瑛川です。
火山の地層でゆっくりろ過された冷たく澄んだ水。
この水が絶滅が心配される貴重な生き物たちの命を支えています。
北海道や東北地方の限られた水辺に住む…水質の変化などの影響を受けやすいため近年その数を急速に減らしています。
こちらは…ニホンザリガニと同じように冷たく澄んだ水に住むイワナの仲間です。
好物は昆虫。
森の木々から落ちてきた虫をパクリ。
ここはオショロコマにとって日本に残された数少ない楽園です。
よみがえった森がつくり出した生き物たちの楽園。
しかしその楽園の範囲は狭く限られています。
朝日に照らされて姿を現した青い池。
オショロコマのいた辺りから5kmほど下流に下った所です。
紅葉の黄色と鮮やかなコントラストを見せる青い水。
神秘的な光景が広がっています。
立ち枯れたカラマツの林。
青い池に生き物の気配はありません。
池の底に見えるのは落ち葉だけ。
魚や水草の姿さえありません。
なぜ生き物たちはこの池に住む事ができないのでしょうか。
そしてこの池の水はどうして青いのでしょうか。
秘密を解く鍵は美瑛川ともう一つの別の川が合流する地点にありました。
澄み切って流れる美瑛川。
左から合流するのは硫黄沢川です。
実は噴火口近くに源を発する硫黄沢川には生き物にとって有害な硫黄分が含まれています。
そしてこの水が美瑛川に混ざる事によって化学反応が起き水は青く変化するのです。
火山がつくり出す過酷な環境。
オショロコマたちは限られた場所でその命をつないできました。
10月中旬。
美瑛の森に雪が降り始めました。
秋の終わりはオショロコマにとって繁殖の季節。
産卵を終えたばかりのメスの姿がありました。
川底の砂利の中に産み落とされた卵。
メスは冷たくきれいな流れに新たな命を託します。
卵がふ化するのはおよそ3か月後の事です。
北海道美瑛の森。
火山の麓で生き物たちの営みが続きます。
がれきに覆われた丘をのぼる男性。
2014/12/07(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「北海道 美瑛の森」[字]
北海道・十勝岳の麓に広がる。噴火の影響で場所ごとに異なる木々が生え、パッチワーク状の紅葉を見せる。川では火山灰成分で水が透明から青へ変化。秋、多彩の森を訪ねる。
詳細情報
番組内容
北海道・大雪山系の十勝岳の麓に噴火の爪痕が色濃く残る森が広がる。“美瑛の森”と呼ばれ、火口から僅か数キロの場所に、うっそうとした原生林や溶岩や噴石が積み上がる岩塊地、荒廃から再生した若い森など、様々な景観の大地が密集している。森を流れる清流、美瑛川は、火山灰由来の鉱物の影響で、水が透明から青色へ瞬く間に変化。紅葉真っ盛りの秋、木々の赤や黄色、水の青が映える森で、生きものたちの営みを見つめる。
出演者
【語り】