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「佐賀知事選は既存と新たな政治の相克」 内山融教授
先の衆院選から保守分裂の傾向が強まったように感じる。
麻生派と古賀派が争った福岡1区や二階派会長の二階俊博氏が無所属候補を推した山梨2区などが注目を集めた。
個々の地域で事情は異なるだろうが、全体的に既存の自民党政治と新しい政治の相克が生まれているためだろう。
小泉政権以降に顕著となった官邸主導型の「新しい政治」と、農協など組織票を下支えに見返りとして派閥の連合体が業界団体に利益分配する「既存政治」の対立だ。
佐賀県知事選も、その構図が当てはまる。市長時代に構造改革を進めてきた樋渡氏に対し、農協改革を掲げる政権に対抗する農協側の反発を取り込む山口氏の対決となったのだろう。
自民党一強体制のもと党の規模も大きくなった。「寄らば大樹の陰」ではないが、かつて民主党や日本維新の会(現・維新の党)に期待した政治家志望の人間が、自民党に流れこみ選挙に出るようになった。
自民党側も官邸主導と派閥重視の微妙なバランスに苦しんでいるように感じる。グリップが弱まり、中選挙区時代に見られた派閥の争いが部分的に表出しているのだろう。
同様の事例が英国でも2011年に起きている。6月の総選挙で政権与党の労働党は大勝したが、一方で党内で「しょせん出世は無理だろう」とあきらめムードが広がり、議員の造反が相次いだ。