オイコノミア「“障害”を見つめ直そう」(後編) 2014.11.18


(テーマ音楽)経済学という視点で障害を見つめ直した前回。
又吉さんは聴覚障害のある子供たちの暮らす施設や当事者の視点から障害に切り込む研究者を訪ねました。
今回も東京大学の松井先生と障害について共に考えます。
2人はまず大きな絵のあるギャラリーにやってきました。
(又吉)うわっすごいですね!
(松井)すごいですね!へぇ〜!太陽の塔ですか?万博かな?すごく緻密な感じがしますね。
そうですね。
一つ一つ丹念に描かれた模様。
白いペンだけで黒いキャンバスが埋め尽くされています。
作者は寺尾勝広さん。
知的障害があるアーティストです。
寺尾さんの作品のモチーフは一貫して「鉄」。
自分の作品を「鉄骨の図面」と呼びます。
海外から高い評価を得ている寺尾さんの作品。
世界が注目するきっかけを作ったのが前回も登場したこの人です。
(今中)こんにちは。
こんにちは。
今回もよろしくお願いします。
お願いします。
デザイナーの今中博之さん。
企業のショールームなど数々の空間デザインを手がけた後2002年に立ち上げたのが「アトリエインカーブ」。
知的障害のある人たちが絵画や立体作品などを制作する社会福祉施設です。
現在26名のアーティストが在籍。
今中さんは障害者のアートという枠組みを超えて作品そのものの価値が評価される市場に送り出してきました。
おいくらぐらいだと思いますか?100万円とかするんですか?400万近い。
そんなするんですか!そんなするんです!海外のコレクターもたくさんおられます。
絵画の中でも相当高いですよね。
そういうことですね。
へぇ〜!私もアートフェアに行ったときに値札を見て目が飛び出てですねいろいろ悩んだ結果このくらいの大きさの絵を購入しました。
これは「ネジ」という題が付いているらしいんですがネジっていうのは要するにこのネジ山とかネジ穴とかがどうもモチーフみたいで。
円の部分とかが…。
そうですね。
これで普通ネジって我々名前付けないじゃないですか。
付けないですね。
そういう発想も面白いなと。
なるほどね〜!それは今中さんが美術的な指導をされたりしてるんですか?いいえもう全く。
筆の持ち方から絵の具の溶き方から全くノータッチなんです。
あっそうなんですか!ゆえにこういうものができると僕は思うんですけどね。
管理して教育してっていう中ではいわゆるオリジナリティーあふれるものは作れないように思いますけどね。
なるほど。
確かにこんな絵見たことないもんな。
へぇ〜!アトリエインカーブでは作品が売れたら経費を除いた収益をそのアーティストに還元します。
一方で絵画をもとに制作したグッズを販売しその収益は均等に分配。
生活の基盤を作るという福祉的な役割も果たしています。
先生はアトリエインカーブの活動をどうお考えになりますか?はい。
私は非常に興味深いと思っていて非常に重要な側面は福祉施設ということで知的障害者と言われる人たちの生活をある意味で保障しているわけですよね。
その一方で伸びた人に関してはどんどんチャンスを与えて市場の世界福祉の世界から市場の世界にある意味で打って出るような方々を生みだして。
そういう意味では福祉と市場をうまく結びつけた接点にいるようなあるいは接点を作った施設だと思うんですね。
寺尾さんはそれで自分の表現したいことができて生活ができてる。
そうじゃない人もたくさんいるという事ですよね。
たくさんおられますね。
本当に一握り。
テラさんを含めあまりにもちょっと先頭の方がグ〜っと山を登ってしまったのであまりにも高いので向こうが。
追いつかないっていう葛藤はあります。
でもどの世界でも同じですよね。
研究者の世界でももう最先端行く人はアッという間に行ってしまって。
でもボトムアップはもう本当に難しい。
よく言いはんのが「山高ければ裾広し」なんてよく言うんですがやっぱりイチローの存在が日本の野球界もリトルリーグも草野球もサッカーに負けないだけのスポーツに活性したわけですからそういう意味では寺尾が山ならば寺尾にはもっともっと高くなってもらえれば裾野は広がるというふうに僕らは思うんですけどね。
現にそういう形で人数は増えていってると思います。
はい。
インカーブの才能のあるアーティストさんたちは大丈夫だと思うんですがそれ以外の障害を持ってる方は仕事はどうされてるんですかね?そうですね。
まずそれを考えるために統計を少し見てみましょう。
年齢階層別の就労率を示したグラフです。
全体を表したものと身体障害者知的障害者精神障害者の就労率を比べてみます。
特徴的なのは知的障害者の就労率。
高校や大学に進学せずに働き始める人が多いため24歳までは就労率が高いのですがその後急激に落ち込んでいます。
再就職の難しさを表しています。
更に就業形態を見てみます。
身体障害者は常用雇用の割合が大きいのに対し知的障害者は福祉的就労が6割以上を占めています。
この福祉的就労というのは旧授産施設とか作業所と呼ばれる所で働いている方々でこの方々は本当に労働者と考えるべきかどうかというのも微妙でもう賃金に関しても最低賃金法なんてもう適用されない世界なので月ずっとフルタイムで働いていて1万円とか場合によっては5,000円とかそういう工賃と呼ばれるものをホントお小遣いみたいな感じなんですけどもいただくと。
働けてる人でも僕らが思っている働くとはちょっと違うかもしれないってことですか?そうですね。
今中さんデータを見てどうですか?何を目指すかやと思うんやけど一般就労一般企業というところを目指せというデータだと僕は思うんです。
そういう働き方ばっかりではない。
インカーブは一般就労に対して専門的就労なんて言うたりするんですが例えばこれやったら絵の好きな方が通う。
同じように音楽が好きな方が通えるところ。
料理の園芸の乗馬の…。
知的障害の方を含めてですねそういう分野の就労形態はありやと思ってます。
もっと開発をしてかなあかんと思ってます。
やっぱり僕も学生時代本当に自分が社会に出て会社で働くイメージって全く湧かなくて。
例えば又吉っていう職業があれば最高やったんですよ。
世界の人口と同じ数だけの職業があって将来皆それになれば…それでちゃんと生活できていけるならそれでいいじゃないですか。
じゃなくて世界の人口よりもだいぶ少なくなった選択肢を選ばなあかんから「いや俺のないで」みたいな。
「特にないんで」って。
ほんならあったんですよ。
端っこのほうに。
でよかったという状況なんですがそういう意味で言うとやっぱりインカーブさんもそうですしそういういろんなもっといっぱいあってもいいなって思いますね。
うん。
先生障害を持ってる方の就労について国はどういうふうに対応してるんですかね?そうですね。
何もやっていないというわけではなくて実は障害者雇用制度というものがあります。
はい。
数合わせのためだけに雇用しているんだとお互いにアンハッピーだと思うんですがそれをうまく使って新しい就労形態を見つけていくという方に使えればいいことだと思います。
なるほど。
そういう意味では我々の大学でやった取り組みとしてですね在宅就労というものがありましてこれはやはり法定雇用率が無ければそもそも考えもしなかった事だと思うんですね。
今まで働けないと思ってた人たちはどこがまずかったかと言うとただ単に移動ができなかった。
通勤ができなかっただけなんです。
やはり今まで働くということを1つのパッケージ。
これもできてあれもできる。
通勤もできてオフィスに行って挨拶もできてうんぬんかんぬん。
いろんなことが全部できないと働ける人とは呼べなかったんだけれども1か所ができないという人はそこだけねぇちょっと別な形態にしてあげて働けるんだったらそれでも十分いいんじゃないかと。
仕事の直接的な部分でいうと他の人と同じか時によってはそれ以上できるにもかかわらずそれ以外の面で働けないのはもったいないですもんね。
それが家でできることによってクリアされるということですよね。
物理的な障害というのは技術進歩とか最近では先ほどの例で言えばIT技術の進歩などによって働けるようになると。
クリアできると。
在宅就労の制度っていうのはソフト面の問題なのでこのソフト面をどういうふうに改善していくかというのはまさに我々がどう行動するかということに非常に強く依存しているという意味でも経済学の問題なのかなという気がしています。
視点を変えるといろいろ選択肢が広がっていくんですね。
そうですね。
うん。
今障害者の中で就労のチャンスを増やそうとよりよい教育環境を求める動きが出ています。
こちらは高卒者全体と障害者の大学進学率。
大きな差があるのが現状で聴覚障害者の大学進学率は18.9%です。
葛飾区にある金町学園は耳の不自由な子供たちが暮らす社会福祉施設。
2006年の法改正によって東京で質の高い教育を受けたいと全国から子供たちが集まるようになりました。
ここでは学習塾が毎週開かれ手話を使える大学生や社会人が先生役を務めます。
また自習ができるように一人一人に学習スペースを確保しています。
でもなんか集中して勉強できそうな感じですよね。
そうですね。
あっすごい。
目標が!へぇ〜!薬科大学に現役合格。
なるほどねこういうの。
これ自分たちで書いてるんですかね?
(濱崎)そうですね。
それぞれの。
壁には子供たちが自ら立てた目標や勉強のスケジュールが張られています。
20時〜22時で22時を赤ペンで書き直して23時までにしてますね。
気持ちが変わったんですかね。
(濱崎)多分。
しかし私は部活をして帰ってきたあとは3時間はしてないな。
どうでした?又吉さん。
いや僕なんか1分もしてないですね。
私もほとんどしてないと思います。
2000年代の障害者施策によって措置制度から契約制度へ移行が進みました。
措置制度では行政が決めたとおりのサービスが提供されました。
契約制度では利用者の経済的な負担は重くなりますがサービスを選択できます。
金町学園さんはまさにその措置制度から契約制度に移ったということをうまく利用して東京で学びたい手話を使う子供たちをこの学園にお呼びしたと。
子供たちが今29人いるんですけれどもほとんどの子供が都外から来てるんですよね。
そうなんですね。
ええ。
都立のろう学校の教育がいいっていうことで1つは来てるんですけども。
まあ逆に言えば地方ではなかなか聴覚障害の子供にやっぱり適した教育がどんどんこう出来にくくなってるという表れかなとは思いますけどね。
なるほど。
将来にどういうふうにつながっていくんですかね。
1つは自分の進路が広がってくるってことだと思うんですね。
自分がやりたい仕事が見つかったときにそれをするのは何かっていうとやはり基本は学力だと思うんですよね。
そこをもう一歩踏み出すためにはやっぱり底力になるのは学力だろうと思うんですけどね。
金町学園では徐々に大学進学者が出始めています。
…って質問。
2時間?1時間ぐらいね。
神戸女学院に入るレベルまでもう達してる?金町学園の取り組みに関してはインカーブに非常に似た取り組みのように感じました。
山をとっても高く持ち上げていこうとする。
それによって裾が広がっていく試みであろうと思うんですね。
例えばこの学園のように勉強だけに特化するぞと。
他方それは我々も一緒ですけどやっぱりバッシングもいろいろあるんやろうなというのも感じました。
福祉というのは「薄く広く平等に」というのが原則なんです。
どこまで行っても原則はありましてねそこから逸脱するものに関してはやっぱり非難の声が上がってくるとは思います。
ただ今こういう取り組みがね僕が言うのも変なんですけど大事なんですよ。
例えば質問なんですけどバッシングする人たちにとっては何を恐れてのバッシングなんでしょうかね?横並びじゃなければいけないというのは?福祉はね「あてがわれるものや」と思ってはると思います。
上から。
あてがわれるものは平等であるべき。
それが前提にあるからバッシングにつながっていく?そう思いますね。
特にインカーブとか金町学園さんとかはあてがわれたもの以上のものを自助努力でやろうと民間活力でやっていこうとしてはるんやけどもそれは本流ではない。
まだないですね。
と思いますけどね。
僕はそこまで福祉のいろんなシステムに詳しくなかったんで今説明聞いたときに福祉という全体が持っているイメージがあってそこから今僕がいろいろ聞いてきたことっていうのは新しい試みってことなんですよね。
今までと比べれば。
それはすごく当然じゃないのってフラットに見れる数が増えていったらだんだん変わっていくからやっぱりそういう活動はどんどん増えていけばいいなとすごい思いましたね僕は。
平等であるべきところはあると思うんですね。
ベースの給付であるとか生活のための補助とか。
このベースのところをそろえておいてあげてあと能力のある人は更に上がってちょうだいと。
今いる子供たちをどうやってすくい上げていって能力ある子を伸ばしてあげるかというこの視点がね障害のあるお子さんの教育にはもっとあってしかるべきだなと思いますね。
先ほどのVTRにもあったと思うんですけれどもまあ措置制度から契約制度と。
この変化というのはどういうふうにお感じですか?あのううちのところで言うたらアーティストと直接お話しができるというのが大きいですよね。
そういう意味でももう裸のつきあいができます。
ただ措置の場合は我々もそんなに理解せず向こうも行政が言うもんやからこっちへ来ました。
という意味では向こうも選択されてない。
こっちも選択してないですから好き同士ではない場合でも来はる。
契約の場合は本当に相思相愛でないと契約は結ばれない。
市場での取り引きというのも本来はそこがポイントで要するにいろいろな選択肢がある中であなたから物を買うことにしました。
あなたと契約を結ぶことにしました。
そういうふうに決める。
お互いにそれを決めるのでそういう意味では市場というのもそういう出会いの場だと思うんですね。
やはり障害問題というのは社会のさまざまな問題を拡大して映し出すような拡大鏡のようなものだと。
どうしたら障害者が輝けるかという問題を考えることは我々みんながどうしたら輝けるかという問題を考えることでもあると思うんですね。
やっぱり今まで経済学で障害を論じたケースをそんなに僕知らないんでねそういう意味では新鮮ですし福祉だけで解決できることってとっても少ないんです。
特に障害分野は少ない。
そういう意味で外野を分厚くするってよく言うんですよ。
それは経済学を専攻されてる方もそうだし政治家もそうだし意見を言うてもうてそん中でええとこ取りをさしてもらう。
そういう意味では外野を分厚くしていく。
今回は経済学という外野ができたのでとてもうれしいと思います。
やっぱりやりたいことやるっていうのは人間誰もが持つ欲求ですからね。
そこを抑制する必要はないなとは思いますね。
それが経済と結びついてるっていうこともそうですしすごくなんか勉強になりました。
ありがとうございました。
(今中松井)ありがとうございました。
学校ではまじめキャラ。
2014/11/18(火) 00:00〜00:25
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「“障害”を見つめ直そう」(後編)[字][再]

大阪の福祉施設「アトリエインカーブ」で活動する知的障害のあるアーティストたち。彼らの作品は世界の美術市場で注目されている。福祉と市場の関わりを経済学で考える。

詳細情報
番組内容
大阪の福祉施設「アトリエインカーブ」には約30名のアーティストが所属する。ここでは、ミュージアムショップなどで販売する商品を独自開発、収益を皆で分配してきた。その上で能力の高いアーティストには、絵画などの制作に打ち込める環境を整えてきた。これまで福祉サービスは平等であることが大切にされてきた。それが、能力のある人はよりよい環境を「選択」できる制度に変わってきた。経済学的には望ましい状況といえる。
出演者
【ゲスト】大阪成蹊大学准教授…今中博之,【出演】又吉直樹,【解説】東京大学大学院教授…松井彰彦,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
福祉 – 障害者

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サンプリングレート : 48kHz

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