(セキュリティーチェックの音)
(後藤新次)僕に博打を打てって言うんですか?
(中村忠是)先代の時も同じようにして難局を切り抜けました。
多少の批判を受けたとしても最終的には評価される。
大丈夫。
自分に自信をお持ちなさい。
だけど僕は親父とは違います。
必ずしも同じ結果になるとは…。
自分が信じられないのなら私を信じてください。
中村さんには勝てませんね。
(松岡京介)古賀君。
(古賀)はい。
下島議員の来週のスケジュールを確認してきてください。
わかりました。
よろしく。
またです。
(中村)いつも通り先生の目につかない所で処分してください。
(松岡)しかし…!
(中村)あなたも公設秘書になって5年目。
今年の終わりに事実上政策秘書になる資格が生まれる。
そうなれば私の代わりに議員の片腕…いえパートナーになるのです。
この程度の事でうろたえていては務まりませんよ。
はい…。
申し訳ありません。
(電話)はいこちらは後藤新次議員事務室。
(受付)「後藤議員に贈り物が届いておりますが」通してください。
(爆発音)
(非常ベルの音)あっちだ!逃げろ…逃げろ逃げろ!
(松岡)どいてください!通して!どいて!通して!
(男性)ちょ…ちょっと君危ない!
(松岡)先生…!先生!
(後藤)あ…ああ…。
(松岡)先生!
(松岡)先生!大丈夫ですか?
(後藤の咳込み)あ…中村さん…!?
(米沢守)死亡したのは政策秘書の中村忠是さん。
死因は爆発によるショック死だと思われます。
議員も負傷して先ほど病院に搬送されましたが命には別状ないそうですから。
(伊丹憲一)この爆発でよく助かったもんだな。
(米沢)議員は議員室側にいてちょうどこのあの…倒れた棚の陰に入った形になったようです。
(三浦信輔)一歩ずれてれば議員も確実に死んでたな。
で爆発物の特定は終わったのか?急いではいますが何しろこの有り様ですから…。
(芹沢慶二)今朝議員あてにこんなものが届いてたそうです。
(伊丹)おいこりゃあ…。
中村氏に言われて秘書が処分するとこだったみたいですね。
(内村完爾)それが脅迫状です。
(中園照生)現在消印の住所で聞き込み捜査を始めています。
刑事部らしいのんびりとした捜査ですねぇ。
何か問題でも?我々はすでに犯人の目星は付けてます。
今回の犯行は左翼系過激派集団…。
殺人事件の初動捜査に公安部の色眼鏡はかえって邪魔になりますね。
(テレビ)「つい先ほど永田町の衆議院議員会館で爆発が起き死傷者が出ました」「亡くなったのは後藤新次議員の政策担当秘書を務める中村忠是さん66歳です」
(杉下右京)後藤新次議員といえば確か7年前に亡くなられた元通産大臣後藤真一氏のご子息でしたね。
(亀山薫)ええ。
テレビにも出たりして政治に興味ない人たちにも随分人気あるみたいですよ。
つい先日決まった厚生労働省の大臣政務官就任も現内閣が後藤人気にあやかったとまで言われていました。
でも知ってます?今回の事件その就任とちょっと関係あるみたいですよ。
はい?就任祝いに方々から贈り物が届いてたらしいんですけどね爆発の位置からして爆弾はその中に仕掛けられてたんじゃないかって。
贈り物の中に…。
はい。
出入り口はここと裏口の2か所だけですね。
金属探知機ですね。
ええ。
右京さん俺らこっちから入れるんですよ。
ああ…。
(金属探知機の警告音)失礼。
ご苦労様です。
宅配業者などもここを通らなければ入れないわけですね?はい荷物にも同様に検査を実施しております。
どうもありがとう。
かなりの感度のようですねぇ。
これにも反応しました。
ええ。
うっかり爆弾を通すなんて事はまずなさそうですね。
うーわ…ひでえなこりゃ。
ここで爆発したら逃げ場ないっすね。
(米沢)これはお二方。
ああどうも。
何かわかりました?科捜研の結果が出ないとはっきりした事は言えませんが爆発の状況から見てバイナリ式爆弾ではないかと。
バイナリ式…?AとB2種類の物質を混合させる事で爆発する化学爆弾です。
はあ2種類ですか…?あっ…!?右京さん右京さん!これこれ…これどうですかね?ほら地方からの贈り物と言えば受け取らないわけにいかないしまさか混ぜると爆発するなんて思わないでしょ?しかしみかんジュースとぶどうジュースを混ぜ合わせて飲む人が世の中にそうそういるとは思えませんがね。
まあマズそうですもんね。
この胡蝶蘭はいつからここにあったのでしょうね?それは今日送られてきたものだと思います。
だとすれば妙ですね。
え…?どう…どうかしました?胡蝶蘭の鉢には土ではなく根の絡まりやすい水苔などが使われるのですがしかしここに落ちているのは普通の土ばかりです。
おそらくこれらは他の鉢のものでしょうねぇ。
それが何か?あ…失礼ですが…。
公設秘書の松岡と申します。
警視庁の杉下です。
亀山です。
胡蝶蘭の鉢に入っていたのが水苔ではなかったとしたらこの場合一体何が考えられるでしょう?え…まさかそれが爆弾だったって言いたいんですか?例えば鉢の中に物質Aそして栄養剤の瓶などに物質Bを入れて挿せばバイナリ爆弾が成立しますね。
うーん…だけどそれだと議員会館に届く前に爆発する可能性だってありません?何時に届くかなんて差出人にはそこまで正確にわからないでしょう。
しかし調べてみる価値はあると思いませんか?そりゃもちろん調べますよ。
あっ犯人は差出人ではなくて配達員だとか!?おっ!入館時刻の監視映像に何か映っているかもしれませんねぇ。
はいはいはいはい…。
種田正。
住所は書いてません。
会社名シティプラント。
入館目的は配達業務。
10時50分に入って11時15分に出てますね。
あっここです。
(ノック)失礼しまーす!
(伊丹)あっ…!?特命係の亀山〜!はいどうも〜。
国家の一大事にまで首突っ込んできやがって。
おとなしくおい引っ込めてらんねえのかこのスッポン山!悪い事言わねえから黙って10時50分の映像見せろ。
10時50分?ああ。
その時間に持ち込まれた胡蝶蘭の土と栄養剤がバイナリ爆弾だったかもしんねえんだよ。
何…!?
(警備員)10時50分ですね?ええ。
あはい。
あそれだ…これ!ちょっと寄れますか?あはい。
ほら見ろ!胡蝶蘭の…あれ?
(伊丹)どこにその栄養剤があんだよ?この男何か隠し持ってませんでした?懐に。
あの…何か栄養剤とか。
(警備員)いやご覧の通りボディーチェックも行いましたが何も…。
えぇ…右京さん?
(伊丹)さすが特命の言う事はいつも冴えてますなぁ。
くだらん思いつきで捜査を混乱させないでいただけますか。
何だと…!亀山君行きましょう。
失礼。
はぁ…右京さんこれからどうするんですか?亀山君。
はい。
ここ見てください。
はい。
「高本信嘉杉並区グリーンショップ」「3・4階観葉植物保持作業入館10時5分退館11時」…。
これが何か?それからここ。
「中井雅人東京都豊島区東京園芸」「4・5階観葉植物メンテナンス入館10時半退館11時5分」。
ん?保持とメンテナンスって同じ意味ですよね?何でまた同じ日の同じフロアにわざわざ2社も?どうやら見えてきたようですねぇ。
見えてきましたか?右京さんありました!ほら。
これですこれ。
ね?あっ…。
あ…すいません。
おそらく爆発した胡蝶蘭にもこれと同じものが挿し込まれていたはずです。
え…まさかこの鉢も爆弾だって言うんじゃないですよね?だってねこれだったら…ほらあの…この鉢にも挿さってますよほら。
ね?全部爆弾だったら今頃議員会館全体が吹っ飛んでますよ。
これは先ほどあちらの鉢から採取したものです。
ただの土にしてはやけに黒いっすね。
この階の観葉植物をよく見ると栄養剤が挿さっていない鉢にはこの黒い土が入れられています。
はい。
逆に栄養剤が挿さっていれば黒い土は入っていません。
ど…どういう事ですか?これは1つの推論なのですが…。
まず種田がセキュリティーを抜けて胡蝶蘭を持ち込みます。
この時点では胡蝶蘭はただの胡蝶蘭なのでセキュリティーで止められるはずもありません。
その間高本がこの階にある観葉植物の土を…中井が栄養剤を挿します。
2人が作業を終えるのを待って種田は爆弾と化した胡蝶蘭を持って6階の後藤議員の部屋へ向かいます。
そして栄養剤の液体が流れきる頃爆発が起きる。
(爆発音)おそらく高本と中井はこのために雇われたアルバイトか何かで本当にメンテナンスの仕事だと思って動いたのでしょう。
だからこそ関係のない鉢の土と栄養剤までもが交換されていたんです。
じゃ何も知らずに結果的に犯行に加担させられたって事ですね?土と栄養剤どちらか一方だけでは爆弾にはなりませんからねぇ。
2人の作業がダブらないように指定しておけば胡蝶蘭以外が爆弾になる事はありません。
なるほどねぇ。
今度こそ手順が見えましたね。
早速高本と中井捜しましょう。
いえ。
この入館記録は一課の方々にお渡ししましょう。
えっ?我々2人だけで追うのはいささか骨が折れますからねぇ。
まああいつらにもそのぐらいやらしてやるか…。
何で俺たちがあいつらの思いつきで動かなきゃなんねえんだよ。
(芹沢)でもやっぱ鋭いっすね。
だって植木鉢なんて見ませんよ普通。
褒めてんじゃねえよ!すいません…。
あっあいつじゃないですか?
(高本信嘉)俺は日雇いのアルバイトをしただけですよ。
警察ナメんじゃねえよ!!おい!お前が言ってた派遣会社とっくに裏とってんだよ!議員会館での仕事なんて扱ってないって言ってたぞ。
(高木)いやそんな…!ちゃんとそこのホームページに載ってましたよ。
じゃ中井さんは何の疑いもなくその仕事に飛びついたと…?
(中井雅人)指示役の人から20本くらいの栄養剤とそれをどの鉢に挿すか細かく書かれた紙をもらいました。
その指示役ってのはこいつで間違いないんだな?
(中井)はい。
(高本)この人で間違いありません。
(米沢)こちらが実在する派遣会社のサイト。
そしてこちらが偽サイトです。
うん?どっか違いますか?偽サイトのほうには議員会館の仕事が載っていますね。
あホントだ。
じゃ高本と中井はこのサイトに引っかかったってわけですね?アップロードは都内のネットカフェからでした。
足が付かないようにしたという事でしょうか?それもあるとは思いますが…。
入館記録にあった種田正の名前で前歴者データベースを当たったところ1件だけヒットしました。
あっ…。
(米沢)罪状は窃盗罪。
こいつ…偽名使ってなかったんですね。
本名でしたか…。
「職業日雇い派遣アルバイト」。
いわゆるワーキングプアと呼ばれる生活を送っていたようで住む部屋もなくネットカフェやコーヒーショップなどを宿代わりにしていたようです。
苦しい生活に自暴自棄になり同い年なのに余りに立場の違う議員を狙ったと捜査本部は見ているようです。
自暴自棄ですか…。
(芹沢)はいどうも。
くっそ…住所不定ってのは捜すのも一苦労だな。
(携帯電話)はい伊丹。
何…?本当か?それ。
(三浦)事件の翌日座席の下に置き去りにされていたのを忘れ物として店で預かっていたそうだ。
(三浦)議員会館の資料脅迫状と一緒にこんなもん入ってた。
(伊丹)なるほどここでせっせと資料を集めてたってわけか。
あれ?これUSBのメモリーっすよ。
(芹沢)よいしょ…。
(芹沢)ああ例の偽サイトの元データですね。
何だ?これ。
「10月10日衆議院議員・後藤新次ワープア憐れみながら一生自分には関係ないって顔」「ムカつく」「10月16日世の中が僕に死ねと言う」「望み通り死んでやるがタダでは死なない」まさか見つからないのはもう死んでるんじゃ…。
おい急ぐぞ。
(芹沢)え…急ぐって?バカ…。
これで自殺なんかされてみろ。
それこそ本当に救いようのないヤマになっちまうだろうが。
(亀山美和子)ワーキングプアが日雇い派遣を使ってテロか…。
苦しい生活に自暴自棄になっての犯行だとさ。
(宮部たまき)何だかやりきれない事件ですね。
確かに貧困が動機の犯罪は海外では珍しくありませんがね。
(美和子)はぁ日本もとうとうここまで来ちゃったか。
格差だか何だか知らねえけど若い奴らがさ夢とか希望とかじゃなくて不安ばっかり抱く社会ってのは絶対おかしいよな?政治に期待したいとこだけどそういう意味では皮肉だね。
よりによって狙われたのが後藤議員なんて。
ん…皮肉って?後藤議員のお父さんってさ元通産大臣の後藤真一でしょ?うん。
後藤大臣といったら当時消えゆく石炭産業を何とか残そうと尽力したので有名じゃない。
うんそれぐらいは俺も知ってますけどね…。
後藤大臣が石炭産業を守ろうとしたのは経済効果を狙ったというよりむしろ炭鉱労働者の一斉失業を心配したためだったと言われていますね。
言うなりゃ弱い立場にある人間を守ろうとした人だったってわけですか。
その息子がワーキングプアに命狙われたんじゃ無念すぎて成仏できませんよ。
秘書の方は気の毒でしたけどその議員さん助かってよかったですね。
ええ。
爆弾の謎は解けたしこれで一応捜査の方向性見えましたよね?あれ?どうかしました?僕の中でどうしてもかみ合わない事があります。
何ですか?かみ合わない事って。
種田正が入館の際偽名を使わなかったのは自暴自棄による犯行だったからというのが捜査本部の見解でしたね?ええ。
もともと死ぬつもりなら隠す必要もないって事ですよね。
それにしては議員会館を調べ上げ偽サイトを作り無関係の人間を利用する。
綿密すぎるとは思いませんか?そう言われればええ確かに…。
(角田六郎)暇か?あ…。
おい読んだ?これ。
ああ今。
(角田)この後藤って議員はさ偉いお人だねぇ。
はい?二度とこのような事件が起きないように今後より一層ワーキングプア問題に向き合っていくんだとさ。
来月も早速若者集めてシンポジウムやるらしいよ。
館内の写真にセキュリティー情報事務室の見取り図…しかし集めたもんですね。
インターネットにはいろんな情報が転がってますからね。
これは何の跡でしょう?
(米沢)ああおそらくペットボトルの水が漏れて滲んだんでしょう。
ペットボトル?ええ。
種田のカバンの中にありました。
ネットカフェは飲み物がタダですからね。
空のペットボトルを水筒代わりに使えば飲み物代が浮くんです。
私もやった事あります。
あれ…米沢さんよく行くんですか?かつて漫画喫茶と呼ばれていた頃一時は毎晩のごとく。
似合うハハ…。
いやぁ世の中一体全体どうなってるんすかねぇ?働き盛りの若者たちが住む部屋も持てないだなんて。
右京さん何やってんですか?少々興味がありましてね。
興味…?あっ亀山君。
はい。
え…これに興味があるんですか?ああ…ちょっとあ…な…何やってるんですか!?やはりどうやっても滲みませんねぇ。
滲まない…?種田のカバンから見つかった資料の1枚に滲みがありました。
しかし水で滲むのは染料インクを使った家庭用のインクジェットプリンターだけです。
ここにあるようなレーザープリンターは滲まないんですよ。
家庭用って…家がないからここにいたんじゃないんですか?資料を作ったのが…種田ではなかったとしたらどうでしょう?
(松岡)お怪我が軽くて何よりでした。
例のものは見つかりそう?いえ…。
ひょっとしたら事務室のどこかにあるのかもしれません。
だとしたら警察が見つける前に押さえてくれないか。
(後藤)今あれが表に出ると誤解されかねない。
はい。
何かお探し物ですか?
(松岡)あ…。
立入禁止が解けるまではご協力願いたいんですがね。
(松岡)申し訳ありません。
明日の会議でどうしても必要な資料がありまして。
あの…鑑識作業は終了したと聞いてますが…。
いささか気になる事がありましてね。
爆弾が置かれていたのはこの辺りだと聞きましたがしかし考えてみれば不思議な話です。
仮に種田が犯人だとして議員を狙ったのならば奥の議員室に置くのが自然だとは思いませんか?入り口で中村が引き受けたのかもしれませんね。
なるほど。
ここに置かれたのは中村さんご自身だったと。
そんな事が気になられたのですか?いえ今度の事件狙われたのが後藤議員ではなく実は中村さんだったとしたらどうだろうかと思ったものですから。
ちょっと待ってください。
後藤はともかく中村は秘書です。
なぜ種田のような人間に狙われなくてはいけないんですか?実はお邪魔したのはそれと関係がありまして。
やはり…そうでしたか。
あ…何か?これは種田のカバンから見つかったという見取り図なんですが「全室共用」と書かれていますね?ここが落とし穴なんですよ。
確認したところここには水道の配管が通っているそうです。
ビル設計の都合上そう造られたものでこの柱があるのは1フロアにつき1部屋だけ。
つまり全部で252室ある事務室のわずか7室に過ぎないんですよ。
変ですよねぇ。
7室しかない部屋の見取り図が「全室共用」だなんて。
察するにこの図面を描いたのは事務室にはこの柱があると思い込んでいる人間つまり日常的にこの部屋を使っている何者かではないかと。
まるで我々のうちの誰かを疑っているようにしか聞こえませんが…。
何のためにそんな事をしなければならないんです?それがわかれば事件は解決するのですがねぇ。
ところで後藤議員はもう退院されたそうですね?ええ運良くスチール棚の陰にいて軽症で済みました。
それは不幸中の幸いでしたね。
はいどうぞ。
サンキュー。
何締め切り間に合ったんじゃなかったの?それが『週刊帝都』のライターが1人穴開けちゃって急にお鉢が回ってきちゃったのよ。
ふ〜ん…『帝都新聞』もここんとこ後藤議員一色だな。
でもそのライター何でまた急に穴開けちゃったんだよ?後藤議員の過去ネタつかんだとか言ってたんだけど結局裏が取れなかったらしいのよ。
しょうがないから今昔の発言適当に混ぜ合わせてごまかしてるとこ。
過去ネタって?後藤議員ってさ先代が急死して政界入り決めるまでは結構やんちゃしてたらしいのよ。
支配人が逮捕されたような怪しいクラブかなんかにも出入りしてたもんだから…。
美和子。
(美和子)え…?詳しく教えて。
(角田)「いのうえりょうへい」ね。
(角田)おおあった。
「大麻取締法違反」。
店の客に大麻を売りさばいていましたか。
うーん…。
後藤議員も若い頃ここの常連だった。
ひょっとしたら…。
記者がつかんだという事は当然他の人間もこの情報をつかんだ可能性もありますねぇ。
(角田)うーん…。
松岡秘書の探し物もこれと関係があるのかもしれませんね。
(後藤)ご苦労様。
あとはこれを送りつけてきた人間と話し合わないと。
相手はたぶん暴力団か何かです。
たとえ今回金を払ってもすぐに次の要求をしてくるでしょう。
そうすれば今度はそれ自体が問題になりかねません。
この件は法律上もう時効です。
やはり自ら公表なされてはどうでしょうか?それじゃ中村さんと同じじゃないか。
君も僕も中村さんには本当に世話になった。
だけどもう中村さんはいないんだ。
これからは君自身の考えを聞かせてもらわなきゃ。
はっ…。
隠し通すんだ。
いいね?実は昨日事務室に警察がやって来まして…。
狙われたのは議員ではなく中村さんではないかと。
中村さんを?一体誰が何のために?それが内部犯行を疑っているようでした。
内部犯行って…。
僕らは被害者だろう?松岡君…これから2人でやっていく前に1つだけ聞かせておいてもらいたいんだけど…。
君は中村さんとは違うよね?
(松岡のため息)
(松岡)刑事さん…。
実は後藤議員にお伺いしたい事がありまして。
おやおや顔色が悪いようですがいかがなさいました?あなた方内部犯行がどうとかおっしゃってるようですけどそれは警察の見解ですか?いいえ。
あくまで我々の勝手な推測です。
だったら勘違いも甚だしい。
これ以上不快な思いをさせられるなら手段を考えますよ。
お気を悪くされたのならば謝ります。
しかしその前に1つだけよろしいでしょうか?亀山君。
はい。
この男お知り合いですよね?あ…松岡さんから聞いたわけではありませんよ。
だけどご存じみたいですね。
知りませんね。
誰です?あるクラブの支配人なんですが長年にわたり店の客に大麻を流していた容疑で先日検挙されました。
ところで議員はお若い頃この店の常連だったそうですね。
知らないと言ってるでしょう。
ご心配には及びません。
クラブに通っていたのは議員が学生の頃。
仮にそのような事実があったとしてもすでに時効を迎えています。
もちろん公表したりもしませんよ。
我々は警察ですから。
しかし警察以外の者がこの情報を手に入れたとしたらどうでしょう?議員は清廉で人気の議員です。
このような事が表沙汰になれば大打撃を受けるのは明らかです。
脅迫にこれほど適したものはありませんねぇ。
そこでこれまた勝手な推測なのですが実際に議員が脅迫されていたとします。
相手はそうですね…ゆすりをネタに裏社会にはびこる連中。
議員は過去の過ちについて動かぬ証拠を突きつけられ金銭を要求された。
応じなければマスコミにリークするとか何とか言われて。
議員なら是が非でも止めたいですよね?しかし中村さんはどうでしょう?かつて大臣の右腕を務められたほど秘書として老獪な方です。
かような脅迫に屈し金銭の授受を行ったが最後今度は黒社会との癒着としてそれをネタに泥沼に陥ってしまう事ぐらいは予測したでしょう。
一方過去の過ちについては時効が成立しています。
ひょっとして中村さんはあなたに過去の自らの過ちについて公表するように求められたのではないかと思いまして。
だけどあなたはどうしてもそれを止めたかった。
だから僕がテロに見せかけて中村さんを殺したと言うんですか?頭おかしいんじゃないのか!?いえそこまでは申しておりませんがしかし種田が犯人ではない事について我々は確信しております。
何を根拠に?少なくとも私はあなた方よりワーキングプアという人種を知っている。
自分の非力を社会のせいにしている連中です。
あいつらがやったに決まってるんだ!もういい。
おい彼らの上司に連絡してくれ。
はい。
ああそれには及びません。
今日のところはこれで失礼します。
(松岡)いや…正直驚きました。
あそこまで言い当てられるとは。
ではやはり…。
お察しの通り昨日事務室で捜していたのは後藤の過去に関する写真なんです。
後藤から捜すように言われまして。
そうでしたか。
じゃあ後藤議員と中村秘書の関係ってのはやっぱり…。
先代が急死して経験の浅いまま政界入りした後藤をここまで導いてきたのは中村なんです。
長年先代の右腕を務めてきた中村は地盤に対して絶大な影響力がありました。
中村に逆らって後藤が独りで政治家を続けていく事などできません。
なぜお話しになろうと思ったのですか?後藤を信じていいのかわからなくなってきているんです。
ひょっとしたら秘書を辞めるかもしれません。
辞めてどうされるんですか?故郷に帰るかもしれません。
ではお気をつけて。
松岡さん。
ありがとうございました。
すみませんねぇしつこくて。
(松岡)いえ…。
後藤との関係でしたでしょうか?ええ。
後藤は大学の政治サークルの先輩でして先代が亡くなった時秘書にならないかと。
長い付き合いなんですね。
あ…後藤議員のお書きになったこの記事素晴らしいですねぇ。
(松岡)ああ…この内容はほとんど中村さんが考えたものなんですよ。
あ…そうでしたか。
なるほど。
政治家の息子として裕福な暮らしをしていた後藤にわかるわけがないんです。
貧しさがどれだけ人を追い詰めるものか弱い立場に立たされた人間がどんなに惨めなものかなんて…。
あの申し訳ありませんが予定がありますのでこちらで。
あ…お忙しいところすみませんでした。
失礼します。
松岡さんも揺れてるんでしょうね。
右京さん…?後藤議員の父親は確か…。
(伊丹)この男に事情聴取しましてね。
あなたの事を聞きました。
脅迫されてたんじゃないですか?
(後藤)いい加減にしろ!
(松岡)失礼ですがこう何度もいらっしゃいましても。
申し訳ありません。
ただ秘書をお辞めになってしまうかもしれないと伺っておりましたので手遅れになる前にお伝えしなければと。
(松岡)一体何事です?それがああ…後藤議員の容疑が晴れそうなんですよ。
それはまた突然ですね。
何があったんですか?何分未公開情報ですので内密に願いたいのですが種田正が逮捕されました。
ほう…どこで見つかったんでしょうか?あ…残念ながらこれ以上は。
現在警視庁で取り調べ中ですのでまもなく事件の全容も明らかになるかと。
辞職の決断はそれからでも遅くはありません。
それだけお伝えしておきたいと思いまして。
失礼します。
すいませんでした!その方…種田正さんですね?嘘だったんですね…?ええ。
しかしあなたは確かめずにはいられなかった。
事件から今まで種田さんが思惑通りに死んでくれたかどうか確かめる機会はなかったはずですからねぇ。
中村さん殺害を胸に秘めその手段を思案していたあなたはある日後藤議員の活動を通して日雇い派遣に出会いました。
多少の金銭で無関係の人間を1日中動かせるその仕組みにあなたは今回の計画を思いついたんです。
ワーキングプアによる議員殺害未遂事件と見せかけて実は中村さんを殺害する計画です。
偽サイトを通して自分と無関係の若者を3人集め捜査をかく乱するため議員あてに匿名の脅迫状を送りつけておいた。
そして計画は遂行されました。
(爆発音)種田さんには議員会館の後にもう1つの仕事を命じてありました。
別の観葉植物をここへ届ける仕事です。
その鉢にもまた爆弾が仕掛けられていました。
あとは種田さんがそのスイッチを押すように仕向けるだけです。
(爆発音)万事計画通りに終わるはずでした。
しかし内部犯行を疑う我々が現れたために今度は後藤議員に疑いの目を導くようにしたんです。
私が…中村さんを殺そうとした理由は?あなたが生まれた北海道のあの炭鉱の町にあります。
どこでそれを…?炭鉱労働者は爪の間に入った炭粉を洗い流すためにとてもきれいに指先を洗う…。
あなたの手の洗い方を見てそれを思い出しました。
きっとお父様もそうだったのでしょう。
もちろんそれだけですべてがわかったわけではありませんが後藤議員の父親後藤真一氏を連想させるには十分でした。
後藤議員はあなたが平凡なサラリーマン家庭で育ったと思い込んでましたよ。
なぜ自分の過去を偽る必要があったのか…。
後藤真一氏は当時消えゆきつつある石炭産業を何とか守ろうと尽力していました。
炭鉱イコール危険というイメージを払拭するために最新の保安設備を導入しました。
しかし不幸な事に早々に爆発事故が起きてしまいました。
5人の方が犠牲になりました。
この方はあなたのお父様ですね?松岡というのはあなたのお母さんの旧姓だったんですね。
(小谷妙子)あの人が坑内でタバコなんか吸うはずありません!奥さん大きな声を出さないでください。
(妙子)調べてください。
火が出たのは会社のミスでしょう。
そんな事調べたって旦那さんが生きて帰ってくるわけじゃないでしょう。
(中村)今石炭産業はね風前の灯なんです。
そんな時期に会社のミスで事故が起こったなんて事になったら…。
だからって…。
まさかうちの人を犠牲にして…。
私がここに来たのは事故の原因を探るためじゃない。
(中村)これからあなたがどうやって生きていくか…。
息子さんをどうやって育てていくかを話し合うためです。
私利私欲で言ってるんじゃないんです。
(中村)どうかこれでご主人の命を…いえ…死に様を売ってください。
(中村)それが多くの人を救う事になるんです。
お父様は命を奪われただけでなくその死までも汚されてしまったと残されたご家族は思った。
あんな親父…どうでもいいんですよ。
え…?親父もこの男も弱いから利用されるんです。
あんた!人の命何だと思ってんだよ!!弱い人間はね…いつもただ利用されて終わるんですよ。
生きてても死んでも同じ。
何もできないし誰も救えない…。
あの時の僕みたいに…。
(窓ガラスの割れる音)
(女性の声)人殺し!うちの人を返せ!
(男性の声)人殺し!町から出て行け!
(男性の声)親父返せ!この町から消えろ!母さん…!母さん!お母さん…!1つお聞かせ願えませんか。
あなたが秘書になられたのは5年前。
これまでにも復讐の機会はあったはずですがなぜ今なのでしょう?今年の初めに中村さんがくれたものです。
公設秘書を5年務めると事実上政策秘書になる資格が生まれる。
その祝いにと先代からもらったという万年筆を僕に。
あなたに後を譲るおつもりだったのですね。
すぐに復讐を果たすつもりが実際に会ってみると中村さんは驚くほど穏やかな人物で…。
優しさも厳しさも含めて僕を随分とかわいがってくれました。
戸惑うままに5年が過ぎてしまった。
これをもらった時心のどこかに誇らしさを感じている自分がいました。
その時気がついたんです。
最初の目的を忘れかけている自分に…。
それが怖かった…。
僕の人生は復讐のためだけにありましたから。
復讐のための人生はあなたにとって満足のいくものでしたか?刑事さん…僕は後悔していませんよ。
天井にぶら下がる母親を抱いた時…この手に刺さった重みと冷たさ…。
誰に何と言われようとも忘れるわけにはいかなかったんです!最後に1つだけあなたにお伝えしておきたい事があります。
あなたを秘書にしたいと言い出したのは後藤議員ではなく中村さんだったそうですよ。
後藤議員に聞きました。
その時中村さん確かにこう言ったそうです。
「これも運命かもしれません」って…。
中村さんはあなたが何者であるかご存じだったのでしょうねぇ。
そしてあなたを受け入れたのも中村さんなりの罪の償いだったのかもしれませんね。
(嗚咽)
(パトカーのサイレン)かつて炭鉱にはカナリアが連れていかれたそうですよ。
カナリア?カナリアとは普段常に鳴き続けている鳥です。
しかしガスに触れた途端その苦しみのあまり沈黙してしまう。
その様子で坑内の危険を察知するために連れていくそうです。
ああ…何だか哀れな話ですね。
2014/12/12(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
[新]相棒 season7[再][字]
「沈黙のカナリア」
詳細情報
◇出演者
水谷豊・寺脇康文・鈴木砂羽・益戸育江
川原和久・大谷亮介・山中崇史・山西惇・六角精児
小野了・片桐竜次
【ゲスト】眞島秀和 大沢健 磯部勉
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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