(テーマ音楽)皆さんから頂いたお便りでつづる「忘れられないわたしの旅」。
今回は350通の手紙とメールを頂きました。
ありがとうございました。
まぶたに焼き付いたあの日の笑顔。
心の支えとなった温かな言葉。
第1回は時を超えて輝く出会いの記憶をたどります。
「ある日突然届いた彼女からの手紙。
『結婚することになりました』と。
後を追うように彼女のお父様からの招待状。
驚くと同時に感激でいっぱいになりました」。
最初のお手紙は千葉県いすみ市にお住まいの鈴木ひろ子さんから頂きました。
旅先での出会いから生まれたもう一人の家族。
心通わせ続けた日々です。
「今から25年ほど前。
長年の仕事を勤め上げた私たち夫婦はこれからは自由を満喫しようと旅に出ました。
訪れたのは行った事のなかった飯田線の湯谷温泉。
ひなびた雰囲気のとてもいい温泉でした」。
夫婦水入らずのひとときを楽しんだ鈴木さん夫妻。
翌朝帰りの電車の中でちょっとした出会いがありました。
「『お二人で旅行ですか?』と声を掛けてきた女子高生。
なんと人懐っこい純粋な女の子なんだろうと驚きました」。
「更に『私も勤めるようになったら両親を旅行に連れていってあげたい』と。
今どきの子には珍しいと驚きました」。
列車の中のふとした会話。
鈴木さんとその高校生は打ち解け会話が弾みます。
「『私の夢は高校を卒業したら大きな病院の検査技師になる事。
そのために勉強してるんです』と夢を語ってくれました」。
「勉強に行くという彼女は先に降りていきましたが別れ際にお互いの連絡先を交換しました」。
時間にしてほんの45分ほどの事でした。
偶然の出会いは手紙によって引き継がれ再会につながります。
「翌年高校を卒業した彼女は私たちの住む千葉・外房に遊びに来てくれました。
うちに泊まり話をする中で彼女が大事に育てられてきた事が分かりました。
車中で言葉を交わしただけの私のもとへ一人娘を旅立たせてくれたご両親に対し感謝の気持ちでいっぱいでした」。
その後も年賀状や季節の挨拶など手紙のやり取りが続きました。
ただ実際に会ったのは2回だけ。
10年が過ぎたある日一通の手紙が届きました。
結婚式への招待状でした。
「結婚式は浜名湖を見下ろすすばらしいホテル。
さんさんと降り注ぐ太陽の下彼女の花嫁姿に接しました。
これがあの日の女子高生?初めて会ったあの日を思い出し感無量。
披露宴では身内の席に入れて頂き彼女の家族の一員になれたようで夢のようでした」。
あの日車内で夢を語った高校生今泉千波さん。
夢をかなえ今臨床検査技師として働いています。
当時多分高校3年生で受験で進路を考えて臨床検査技師になるっていう事で学校を決めて勉強に励んでいた頃だと思いますので私の頭の中がそういう事で多分いっぱいでもしかしたら一方的に話したのかもしれないんですけど。
何か遠くにいるんですけどいろんな事をお知らせしておかないとあれも言ってなかったとかって思うような感じで。
また手紙を最近書いてないなとか思って…するような何かほんとに親戚のおばさんのようなそんな感じですね。
来年千波さんは2人の子供を連れて鈴木さんのもとへ遊びに来る予定です。
出会ったあの日から24年。
千波さんに会うのは結婚式以来です。
「2人のお子さんは私の事を『千葉のおばさん』と呼んでいるそう。
初めて会う日を楽しみにしています」。
「車中で交わしたあの日の言葉は今私の掛けがえのない宝となっています」。
「『生きるってつらいなあ』と妻に愚痴っていました。
『お父さん気分転換に静かな遠くへ旅してみません?』と妻が言いました。
気持ちが動かされました」。
続いてのお手紙は東京・飾区にお住まいの梅原明さんからのものです。
結婚して50年余り2人はたくさんの苦労を共にしてきました。
40歳の時に会社が倒産。
やっと見つけた職場でがむしゃらに働く中病に倒れた梅原さん。
一時は生死の境をさまよいました。
支えてくれた妻の亨枝さんも肺炎で3か月入院。
2人は長年病と闘ってきました。
そんな時ふと思い立った旅でした。
「行こう!そして何とか元気になろうと私たち夫婦は遠い旅路を決めたのです。
14年前70歳の時でした。
向かったのはあの純愛の物語を生んだ神島でした」。
神島は伊勢湾の入り口にある周囲4キロほどの小さな島。
三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台となりました。
「渥美半島の伊良湖岬から小型の高速船に乗り15分ほどで神島に着きました」。
「西も東も分からず歩いていると海辺の集落には昔ながらの人の肌のぬくもりがありました」。
「網の修理をしていた漁師さんたちも路地で会う人もみんな笑顔で挨拶してくれ『よく訪ねてくれたね』と声を掛けてくれました。
生きている幸せがほのぼのと心を温めてくれました」。
入り組んだ細い路地。
梅原さん夫妻はここで一人の漁師と出会います。
「挨拶を交わすと『東京からよく来たね。
お茶でもどうかね』と声を掛けてくれました」。
「家に入ると奥さんも喜んで迎えてくれました。
ご主人は漁師で奥さんは海女さんとの事でした。
『おらが取ってきた海藻のアラメやけど』と煮つけをごちそうになりました」。
「素朴な笑顔にじ〜んと心がぬくもりいいなぁとしみじみ感謝しました」。
漁師の家を後にした梅原さんたちは島一番の眺めの場所に向かいました。
「古里の浜は巨岩がそびえ立ち夢誘う絵のような景観です」。
「妻と岩場をよじ登り大海原に見とれている時でした。
妻が海に向かってこう語り始めました。
『すばらしい景色。
昔が思い出されるわねぇ。
私あなたを尊敬していたのよ。
16歳で上京して苦学したあなたを見てこの人しかいないと恋い焦がれたの』と」。
「『俺も会社でいつもひたむきに尽くしてくれるお前に心底惚れたんだ。
小学校の時死なれた母さんの優しさをお前に見つけたんだな』と私も話しました」。
「二人きりこの世界に二人きりの小島の浜でもう何十年も昔の初恋を語り合ったのです。
何か希望が生きる力が込み上げてくる思いで2人の出会いを感謝したのでした」。
「念願した遠い静かな旅はかないました。
大自然の恵みと島人の人情が生きる希望をよみがえらせてくれました。
助け合って長生きしようよと誓い合った神島の旅でした」。
「青年は未来に生き老人は回想に生きるといいます。
私は今まさに回想の中に生きています」。
最後のお便りは埼玉県川越市の小川安子さんから頂きました。
戦後間もない女学生時代。
恩師と共にたどった東北の旅の思い出です。
「戦争中私の学校には軍隊が常駐していた事もあり校舎は荒れていました。
図書は廊下に。
しかもあるのは辞書辞典の類いで読むものといったら「漱石全集」くらい。
活字に飢えていた私はそれでも貪るように読んでいました。
そこへ栗原先生が戦場から復員され図書係となりました。
先生は生徒たちに本を読ませてあげたいと毎週読書会を開いてくれたのです。
ガリ版刷りで読ませてくれた宮沢賢治。
珠玉の童話の数々まぶしい言葉のリズム。
私は夢中になりました」。
宮沢賢治の世界に魅了された小川さん。
そんな時東北への旅の話が持ち上がります。
先生がみんなで賢治の生家を訪ねようと言うのです。
戦争が終わってまだ4年。
気軽に旅行など行けなかった時代に夢のような話でした。
「私たちは賢治に思いをはせわくわくしながら上野を後にしました。
仙台一関北上を経て花巻に」。
「朝の澄んだ空気があぁ賢治のふるさと花巻に来たのだなぁとの思いを深くさせました。
透明な空気赤松林。
眼下には北上川が美しく光っていました」。
「そして宮沢賢治の生家へ。
『宮沢』の表札がなぜか懐かしく胸の高鳴りを必死で抑えたのを今でもよく覚えています」。
「賢治の弟の宮沢清六氏が現れ居間に通されました。
そして直筆の原稿などを見せて頂きました」。
「手あかのつかぬよう息をのむようにして感激しながら読みました」。
賢治の心に触れた小川さんたち。
喜びで満たされ更に北へ向かいます。
「小岩井農場の雄大な草原を歩き羊やヤギと戯れました。
そこここに寝転び賢治の詩に再び思いをはせました」。
日が傾き小川さんたちはその日の宿を探し始めます。
しかし初めての東北。
道に迷います。
「歩けども歩けども辺り一面は草に覆われ暗く人影は全くありません。
もう駄目だとどっかり草原に腰を下ろし水筒の水を回し飲みして時計を見ると8時を回っていました。
今夜はここで野宿か…。
そんな事を考えながらしばし星空を眺めていました。
とその時でした。
静けさの中から川の音が。
音を頼りに歩くと川の対岸とおぼしき方に明かりがちらちらと点在するのが見えました」。
「温泉郷のようでした。
太鼓を鳴らし古代を思わせる踊りを舞っていました」。
(太鼓)「まるで異次元の世界に迷い込んだような錯覚を覚え目を疑ったものでした」。
(小川)「雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ」。
あの日から60年余り。
小川さんはずっとこの旅の思い出を心の支えに生きてきました。
恩師栗原先生のようになりたいと教師になった小川さん。
今再びの東北の旅です。
「老いてなお生きる喜びに浸れる人生を孫たちに民話童謡の世界を語る喜びの人生を与えて下さった先生に心より感謝しております」。
「振り向けば涙いで来ぬみちのくの淡く愉しき青春の旅」。
(テーマ音楽)手紙に記された忘れられぬあの日の出会い。
思い出を胸に人生の旅が続きます。
(テーマ音楽)2014/12/13(土) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
小さな旅 手紙シリーズ 忘れられないわたしの旅▽第1回 出会い こころ支えて[字][再]
旅の思い出をつづる、手紙シリーズ「忘れられないわたしの旅」。生きる希望を得た三重・神島への旅。飯田線で出会った少女との交流など、心に刻まれた旅の物語です。
詳細情報
番組内容
小さな旅では、毎年、視聴者のみなさまから旅の思い出をいただき、手紙シリーズ「忘れられないわたしの旅」を放送しています。今年度は、350通のお手紙やメールをいただきました。病と闘い続けた夫婦が、生きる希望を取り戻した三重・神島への旅。飯田線で偶然出会った女子高生との交流。女学生時代、恩師とたどった宮沢賢治の生家と東北への旅。第1回は、それぞれの人の心に深く刻まれた旅の物語を紹介します。
出演者
【語り】国井雅比古,山田敦子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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