美の壺・選「ツイード」 2014.12.14


(テーマ音楽)
(鼻歌)見てください。
このごろツイードがはやってるんで出してみました。
昔イギリスに洋行したおじいちゃんが着たツイードのジャケット。
迫力あるでしょう?う〜ん着てみようかな。
ああ…どっしりとした感触だな。
へえいいな。
草刈さんお似合いですね。
あそう?まあそうだね。
いきなりですがここでクイズです。
3種類のスーツ。
どれも羊毛で織られています。
この中でツイードはどれでしょう。
う〜ん…一番左かな。
(正解の音)ピンポン!そう。
こちらがツイード。
違いは生地を見れば分かります。
ツイードは羊毛のけばだちが粗く一つ一つの糸がはっきりと見えます。
他の2つギャバジンとサージは同じウールでもけばだちが少なく手触りも滑らか。
主にビジネススーツや学生服に使われます。
ツイードの糸を見てみましょう。
羊の短い毛を集めて撚るため毛が飛び出てごわごわしています。
長い羊毛を使い手触りの滑らかな他のウールとは異なります。
けばだった糸で単純な模様を織り込んだ素朴な毛織物。
ツイードが今注目を集めています。
ツイードのふるさとはイギリス。
スコットランドで誕生しその後上流階級の紳士が着るふだん着として広まります。
1950年代には婦人服に取り入れられ世界的なブームになります。
社会で活躍するようになった女性たちの心を捉えたのがココ・シャネルがデザインしたツイードのスーツ。
ツイードという素材は少々汚れても気にしない手入れも簡単で非常に機能的で…そして今もツイードは進化を続けています。
ここが和紙。
和紙。
毛皮。
そしてシルクなど。
羊毛以外も織りまぜて新しいツイードの美が生み出されています。
今から100年前のこと。
ツイード作りは日本の岩手に伝えられました。
岩手ではツイードをホームスパンと呼びます。
農村など「小さな共同体で作られた毛織物」という意味です。
本場スコットランドでもあまり見られなくなった手紡ぎ手織りの技法が大切に守り伝えられています。
盛岡市郊外に住む岩井沢さんご夫妻。
岩手伝統のツイードを30年以上愛用しています。
手紡ぎ手織りのためジャケットの生地代だけでもおよそ15万円。
高い値段を払うだけの値打ちがあると言います。
どっか行くときはサッと着て。
体にはぴしっと合ってるしね。
暖かさも結構あるし。
ふだん使い。
何でも着てます。
どこでも。
作業する時以外は着てるな。
うん。
今日は寒さも吹き飛ぶ暖かいツイードの世界をご案内します。
まずは色に注目。
ツイードは一見するととても地味な色や柄です。
近づいて見てみましょう。
赤や緑ベージュや黄色。
たくさんの鮮やかな色がまじり合っているのが分かります。
こうやって生地を見ていただくと…人間が作った織り物の中でも奇跡に近いと思うんですね。
ツイードならではの色彩美を岩手で追求した人がいました。
染織家の及川全三。
昭和の時代を通してツイードの色染めを探究しました。
及川はこんな言葉を残しています。
「派手な色の組み合わせで渋い模様を作るのである」。
渋く味わい深い趣は鮮やかな色をまぜることで初めて実現するというのです。
今日一つ目のツボは…ツイード独特の色はどう作るのか。
その秘密は糸作りにありました。
こちらは刈り取った羊の毛です。
いくつかの毛の塊に分けてそれぞれの色に染めていきます。
こうして生まれたさまざまな色の羊毛を機械でまぜ合わせるのです。
羊毛の配分に特別なルールはありません。
経験と勘に基づいて違う色と色を組み合わせ奥行きのある色を実現するのです。
さまざまな色がまじった羊毛の塊が生まれます。
それを棒状に丸めたものが糸の原形です。
赤や青緑や黄色。
これらがまじり合い独特の色となっています。
そしてこの羊毛の塊から複雑な色合いの糸を紡ぎ出していくのです。
自然な色を着たいと思ったんでしょうね。
色を巧みにまぜ合わせると私たちの身の回りにある自然の色に近づくというのです。
例えば野山を彩る紅葉。
葉の一枚一枚をよく見るとそこにはさまざまな色があります。
それを遠くから見ると色が溶け合い燃えるような秋の光景。
ツイードの色のマジックはこの自然の神秘にならったものでした。
ツイード発祥の地…ツイードは湿原に生えるヒースなど地元の植物を染料にしました。
身近にある自然の材料から生み出される色。
それはスコットランドの人々には必要な色でした。
釣りや狩猟になるとやはり自然に溶け込む色がいいわけです。
スコットランドだったりイングランドの…岩手の及川全三も天然の植物を染料として駆使しました。
アカネ。
ヤマモモの木の皮。
クルミの皮。
自然の恵みを使うことによって岩手ならではのツイードが完成したのです。
及川のふるさとの…このホームスパンの会社では現代にふさわしい色の探求が進められています。
ここにあるのはまるで…鎖帷子みたいに見えますけども実はこれはラメを編んで。
メタリックな輝きを見せる銀のラメ。
純白のシルク。
きらびやかな色が新たなツイードの美を生み出しています。
岩手の人々の挑戦は今も続いています。
へえなるほど。
すごいなこれ…。
草刈さん。
うん?いろんな色が見えるでしょう?見えるよ。
緑黄色灰色でしょ。
ああ羊そのものの色も見えるよ。
ツイードってこうしてじっくりと見てみるとずいぶん派手だよね。
飽きたり目移りしたりしないのかな。
そんなことはありません。
一着のツイードを着続けることで得られる着心地のよさっていうものがあるんですよ。
ほう…。
時間がツイードを育ててくれるんです。
ツイードは買ったばかりの時はとても着心地の悪いものといわれます。
しっかり織られた丈夫な布である分…貴族の狩猟地を守る番人が着たという…しっかりと織られたツイードは雨や風はもちろん樹木の棘も通さないほどの強さ。
着る人にとっても手ごわい相手だといいます。
そうですねうちが取り扱っているツイードだと最低3年はかかると思います。
今日二つ目のツボは…イギリスから輸入された古着を扱うお店。
1940年代から70年代にかけて作られたツイードが並んでいます。
もともとツイードのジャケットって要は野良着なんですね。
いろいろな作業をするときに…ツイードはもともと寒さの厳しいスコットランドで猟師や農民が屋外の作業着として作ったものでした。
スコットランドで育った羊は寒さから身を守るため暖かい地方の羊より太く丈夫な毛を蓄えます。
その毛を糸に紡いで織る。
羊毛が絡み合い丈夫な一方で固くて着づらいツイードが生まれます。
しかし時間が徐々に変えていきます。
これはおよそ50年前に作られたジャケット。
何度も袖を通すうちに生地に適度な力が加わりチクチクと立っていた羊毛が滑らかなものへと変わりました。
夫婦で長年ツイードを愛用する岩手の岩井沢さん。
ものすごく風合いが違ってる。
そしてねもっと体になじんで。
すごいんですよ。
これは10年ほど前にあつらえたジャケット。
最初は固かった生地が着ているうちに自分の体の一部のようにぴったりと合うようになりました。
なじむっていう感じがしてます。
着こなすというより自分にピタッと合ってくるんじゃないかな。
着るほどに体になじんでいくツイード。
イギリスの上流階級の人たちの間で乗馬や狩猟などアウトドアの衣服として発展します。
こちらのツイードのジャケットはハッキングジャケットといって前に傾斜がついて上がっているポケットが特徴です。
乗馬を前提にしているので馬にまたがって前かがみになった時手が入れやすいようなデザインです。
ポケットや背中につけられるプリーツ。
これも固い生地を着やすくするための工夫です。
ポケットは使うものという前提でこういった機能あるデザインが生まれたりするわけですね。
人間のこういう動き…屋外での使い勝手を追求してたどりついたデザイン。
伝統を感じさせしかも温かみのある魅力を醸し出しています。
どんどん着ていただいて着込むことによってジーンズのようになじんできて…そういうところがツイードは魅力として大きい部分だと思っています。
毎日のように着ることで育てていく。
ツイードでそんなおしゃれを楽しんでみませんか。
おじいちゃんも若いころ買ったツイードのジャケットを長いこと時間をかけて自分のものにしたんでしょうね。
あれ?何か入ってるぞ。
宮沢賢治の本だ。
うん…おじいちゃん好きだったからな宮沢賢治。
岩手の人々にとってふるさとが守り育てたツイードは思い入れの深いものです。
こんにちは。
いらっしゃいませ。
創業80年を超える仕立屋。
自分のツイードジャケットを手にしたお客さんがよく訪れます。
今日は小倉さんご夫妻がかつてこの店で仕立ててもらったジャケットを持ってきました。
実はこのツイードの生地は妻の絹枝さんが機織りを習って織ったもの。
体形が変わっても着続けたい。
そんな思いで仕立て直しに来ました。
岩手は極寒の地ですから寒いでしょ。
だけども…だからもう最高のものですね。
小倉さんが46歳の時仕立てたジャケット。
それはちょうど会社の役員になった時でした。
5センチくらい…。
人生の節目に自分のツイードを作り直しながら一生大事に着ていく。
岩手の人たちに伝わるツイードの着こなし方です。
今日三つ目のツボ。
寒い岩手。
明治以前は暖かい衣類を手に入れるのが困難でした。
人々は麻で織った目の粗い服を重ねて着るなど工夫をして寒さをしのぎました。
明治になりイギリスからもたらされた羊毛はこれまでにない暖かいものでした。
岩手を中心に東北地方で毛織物が盛んになりました。
そりゃうれしかっただろうと思いますよ岩手の人たちは。
麻から直接ウールになったので。
ウールの暖かさっていうものはあの寒さにぴったり合ったと思います。
岩手花巻で生まれ育った詩人の…農業高校の教員を務めていた頃新しい産業としてツイードに注目します。
ツイード作りを農閑期の副業とすれば貧困を救えるのではないか。
さらに美しいものを作ったり着たりする生きがいにも結びつくのではないか。
賢治が詩の中で表現した農民の理想郷。
そこには「ハムを作り羊毛を織り」とあります。
ツイードは芸術の香りの漂う新しい時代の農村にふさわしいものと考えたのです。
それから80年。
岩手には本場スコットランドでさえ失われつつある手仕事が今も息づいています。
岩手の人って根気が強いんじゃないですか?すぐ諦めないでずっとその仕事を守り続けるという気持ちの方が多いと思います。
心を込めて作られたツイードは時に世代を超えて受け継がれます。
川島弘也さんは12年前には父親3年前には叔父から形見としてジャケットを受け継ぎました。
右は学校の先生で一緒に野山を散策したお父さんのジャケット。
真ん中は川島さんを優しく見守ってくれた叔父さんのジャケット。
一番左は30年前川島さんが結婚する時父親からプレゼントされたものです。
3着をその日の気分で羽織る。
川島さんの冬のおしゃれです。
僕ら子どもの頃はたいがいコートだとかほとんどツイードのものばっかりだったんで。
僕がこれを作った時は「ああ僕にも回ってきたか」という感じですね。
若い時はまだ着せられてるかなという気はしないでもなかったですけどだんだん年と共に合ってきてるなというところはあると思います。
手仕事で生み出されたとっておきの一着は財産のように親から子へと受け継がれています。
25年前に作った小倉さんのツイードが仕立て直されました。
どうですか。
まあ…よくできてます。
昔のままに。
よかったですねぇ。
着る人と共にひと冬ひと冬年を重ねていくツイードのジャケット。
岩手の人たちにとって単なる防寒具を超えた大切なものなのです。
うんそうか。
ツイードと一緒に成長し年を取る。
確かにそういうのもありだな。
久々におじいちゃんのこと思い出しちゃった。
あれまた何か入ってるぞ。
あれ?これ確かおじいちゃんが僕に買ってくれたおもちゃだ。
ああ無くしたと思ってたのにおじいちゃんが持ってたんだ。
おじいちゃんこのジャケット大事に着るからね。
去年11月本州のはるか南2014/12/14(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「ツイード」[字]

身近なテーマを3つのツボで指南する新美術番組。今回は「ツイード」。スコットランドの漁師発祥のおしゃれ着。岩手の名産ツイードの職人技にウットリ。案内役:草刈正雄

詳細情報
番組内容
毛羽立つ羊毛で織った素朴な毛織物“ツイード”。素材感のある服が見直される今、女性にも男性にも大人気だ。もともとは、スコットランドの漁師の作業着だったが、丈夫さなどが受け、貴族のスポーツジャケットとして発展する。国内の知る人ぞ知る名産地である岩手を訪ね、いかにして生み出されているか、楽しい着方など、美と機能性を兼ね備えたツイードの鑑賞のツボにせまる。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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