五感を刺激し食欲を駆り立てる極上の料理。
それは料理人たちの情熱と卓越した技の証し。
一度食べたら忘れられない味。
その神髄に迫ります。
冷たい北風に乗ってやって来た渡り鳥が冬の到来を告げる頃。
日本中のフランス料理店に待ちに待ったメニューが登場します。
それがジビエ。
冬に備えて体に栄養を蓄えた野生動物の肉。
狩りが解禁となる冬ならではのごちそうです。
ジビエ料理をスペシャリテに掲げ日本全国の食通たちをうならせてきた谷昇さん。
野性の味を引き出すのは丁寧な火入れ。
そしてこまやかな包丁さばき。
野趣あふれるジビエのイメージとは裏腹の繊細な仕事の積み重ねです。
生き物の命を余すことなく生かしきる。
料理人のあるべき姿をストイックに追求してきた谷さんの料理哲学がこの一皿に詰まっています。
お皿の上に行き着くまでのその過程が大切かなっていう。
一年に一度巡ってくるジビエの季節。
野生の命と向き合う事で生まれた珠玉の一皿です。
11月中旬谷さんの店に今年初めてのジビエが届く日です。
来ねぇな亮平。
ハハハハ!今日は2件届いております。
ありがとうございます。
以上になります。
どうもありがとうございます。
いや〜やっぱりしびれるなぁ。
すごいね。
宮城の猟師が網で捕らえたばかりの青首鴨。
谷さんの気持ちがぐっと引き締まります。
リアル感がすごく伝わってくるわけですよ。
生きてる動物としてがすごく自分に伝わってくるっていう。
ちゃんとやらないとちゃんとしないとと思います。
谷原さんが店を訪ねました。
(谷原)おはようございます!おはようございます!シェフ早速よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
最初は何をやっていくんでしょうか?まず冷蔵庫に青首の鴨。
鴨…。
うわ〜。
これは谷原さん美しいですよ。
お〜。
きれいと言いますかほんとそのまままだ生きてたまんまみたいですね。
でもこれふだんスーパーとかだときれいに処理されてるからあんまり考えない事ですけどこの姿見ると…。
食材ではないですよね。
今はまだ食材に見えないですね。
料理をする前に谷さんが必ずする大切な事があります。
餌を見ます。
何を食べて生きていたのかを。
これが砂肝に。
この中に…。
これ何ですか?砂みたいになってますね。
鴨が食べてた籾です。
お米です。
お米なんですか?これ。
お米なんです。
すごいですね。
砂に混じってこれだけの籾が。
ですからここが枯れ草だったりする事もあるわけです。
そうすると彼らは餌が不足していたっていう。
でもこれ面白いのは上の方はまだ粒の大きな籾ですけど下に行くとすり潰されていってるんですね。
ここでどれだけの事を感じ取れるかっていう事も料理人としては間違いなく必要だと思います。
ここからやっぱりインスピレーション湧いてくる事もあるんですか。
もちろんですね。
なるほど。
ではこちらをさばいていきます。
まず最も飛ぶ鳥にとって大事なのは胸なので胸の部分はなるべくかっこよく。
胸の肉皮ですねこれを残してあげたいんですね。
特に長距離を飛ぶ鳥なのでやっぱりここの腕のところからの胸筋が発達してますから。
そのワイルドな胸筋を味わってもらうためのこの焼き方なんですか?おっしゃるとおりですね。
通常はローストをします時に一羽ですよね。
胸をきちっと焼こうとするとももはほとんど半生。
胸には胸のベストがある。
ももにはもものベストがありますよね。
胸肉は脂が少なくてもも肉は脂が多くてちょっと弾力ありますよね。
今日はこのももを取り除きます。
そしてももはももで。
別に焼くんですか。
そうです。
切り込みを入れて頂きます。
この関節を外して頂く。
もうこれで。
ここにすごいですね脂が。
もうこれだけのってますね。
脂もすごいですしこの肉の色が濃いですね。
これで関節外れましたね。
素材は全て筋肉の流れになってますのでその筋肉の流れに沿っていかないと駄目ですね。
このももに関してはお尻の方から頭の方に向かって筋肉が流れてます。
あとはこの皮を切って頂ければいいです。
焼いていきます。
まずお米が餌でした。
単純に米油です。
米が餌だから米油。
そうですね。
昔からそうだったんですか?この鴨に出会ってからです。
以前はどういう油で…。
以前は普通の。
いわゆる僕はローストする時はサラダ油で焼いてました。
油の種類って実はすごく大切で素材の味に近いものが一番無理がない。
相性もよさそうですね。
単純にその発想です。
焼くというのはおいしそうに焼くという事大事ですよね。
つまりきれいな焼き色に焼きたいっていう。
その時には何を大事に。
判断する基準みたいなものは…。
全部です。
もう五感総動員。
パチパチパチパチ大きな音ですよね。
これは今素材が持ってる水分たくさんの水分が油に行ってしまってはねてる音です。
これが水分がなくなってくるともう少し小さい音になってきます。
聞き逃さない。
そして焼き色そしてにおいでこの煙の状態。
そういうものを常に感じながらやるととても楽しいですよね。
どんどんどんどん変わってきますから顔が。
じ〜っと見ちゃいますねこれ。
そうです。
こちらの裏側がもうかなり焼けましたね。
そうしたところでこれを今度は胸側を焼いていきます。
僕は今フライパンの壁面を利用してますけれどもこの壁面が鴨の形に似てるので焼き色付けやすいですね。
ちょうどいいですね。
ですからこの状態ではなくてあらゆる場面にこう変化させて焼いていかれるといいのかなと思います。
油の色があまりにも黒くなってくるようでしたらこれは酸化になってますからこれは紙で僕は拭き取ります。
細かいとこですけど結構重要なポイントですか?僕は大切にしてます。
お魚を焼く時ですとかその時もそうですし。
もう一度きれいな油ですね。
谷原さんいかがですか?今焼いてる時の音が全然変わってきてますよね。
動かさないと音たたないですね今。
また動かすと中の水分が出てくると油に当たってこの音ですね。
これから鴨を出すんですけれどもその時に一つ素材を持ち上げてこのお尻からジュースが。
これ血が出てきてますね。
この血が半透明であればOKです。
これで一旦上げます。
この香りをちょっと嗅いでみて下さい。
煙のにおいしません?します。
これが僕嫌なんです。
仕上げにきれいなフライパンでバターを熱し鴨をサッとくぐらせて煙でいぶされたにおいを取り除きます。
鴨本来の香りを最大限に生かすための一手間です。
まずここに胸骨がありますのでこの胸骨の両サイド包丁を入れて頂きます。
そのまままっすぐ下ろします。
抵抗するものはなくなりますのでめくれてくるこの筋だけを切ってあげればこれで終わりですね。
ちゃんと構造の理屈があるんですね。
ささ身ですね。
きれいですよね。
どこも傷んでない。
ここに筋がありますのでこの筋を取って頂きます。
ここの胸肉に2種類筋肉。
違いますねこれ。
もう明らかに違いますね。
これを僕はこの間に筋が入ってるんで柔らかく召し上がって頂きたいのでこの筋を取りましてここですね。
きちっとやってあげたいんです。
これは僕抱き身という言い方をしてるんですけれども胸に抱かれた部分です。
肉質の違うところ。
あとはこちらの胸肉。
せっかく柔らかいものが小さな筋がある事によって途中で止まるんですね食べてる時に。
それが僕は嫌で。
きれいですね。
そうしますと鴨の味の醍醐味をお客様が味わえるのかなという。
焼き上がったあとに繊細にお掃除をしていく。
美しいですね。
ほんとにおいしく召し上がって頂きたいんです。
でないと最初知ってますから。
最初知ってますんで。
この時になって初めてちゃんとやれてない自分がいたとしたら最初の映像がパッて出てきちゃうんですよ。
素材を生かしきり命を全うさせる事が料理人としてのけじめ。
谷さんは毎年この鴨と向き合う度に気持ちを新たにするといいます。
山ウズラウサギそして鴨。
野生ならではの味を生かす料理を40年にわたり追求してきた谷さん。
決め手となるのが赤いソースです。
ジビエの野趣あふれる風味を生かすためには血を使ったソースを使うのが伝統。
しかし2年前谷さんはそれを覆す大きな決断をします。
きっかけとなったのが東北から送られてきた美しい鴨。
手にした瞬間谷さんは大きな衝撃を受けたといいます。
これこれ。
これ。
いいですか?ほら籾ですよこれ。
ここにも入ってたここに。
籾がもう喉に詰まってるわけですよ。
餌を食べてる最中に捕らえられてその場で命を絶たれそして僕のまな板の上に載るっていう。
でもそれがなければ彼らは間違いなく季節が来れば少し春風が吹いてくればまた北の地に戻るわけじゃないですか。
それは僕たち人間も同じですよね。
親子の絆を絶たれた鴨たちが僕のところに来るわけですよ。
彼らがいてくれて生かされてるわけじゃないですか。
それはもう再三申し上げてるようにきちっとやらなきゃいけないよねっていう…。
ジビエたちが僕たちに伝えてくれる事のような気はしますね。
谷さんに料理人として最も大切な事を改めて教えてくれた東北の鴨。
その持ち味を極限まで生かし命を全うさせようとたどりついた答えがこの白いソース。
伝統を覆すその中身とは?白いソースに使うのは焼いた鴨のガラ。
骨から出るうまみを生かします。
これから鴨のだしをとっていきます。
背骨は焼かれてる状態ですから骨の中の水分がフワーッと膨らむんですね。
これが一番おいしいだしがとれるんです。
僕は一番好きです。
この状態をだしに使うのが。
水です。
お野菜は加えません。
鴨のストレートな香りと味を出したいのでお野菜は邪魔。
今回はジビエはあくまで主役は鴨だと。
鴨の味だけを味わって頂きたい。
そうです。
鴨の場合だと血を使ったソースを…。
そうですね。
そうずっとやってきたんですけれどもとって頂いた鴨が送られてきた時そして餌袋砂袋を見た時にその瞬間に決めました。
もうやめよう。
もう今年から白いソースにしようというのはスタッフ全員に申し伝えました。
言われたんですか?その時どんな空気感だったんですか?想像がつきませんでした。
シェフの頭の中では何か出来上がってるんだろうけど周りはちょっとポカーンとするような。
それぐらい今までやってた事とは全然違う事やろうとしてた?違いましたはい。
アクを丁寧にすくい雑みを徹底的に取り除く事で鴨本来のうまみだけを際立たせます。
鴨の持ち味を極限まで引き出しソースのベースにします。
おいしい!おいしいです。
よかったです。
ありがとうございます。
何なんですかね?このクリーミーな味わい。
鴨が持ってる脂がこの液体の中にきれいに乳化してる証拠ですね。
加えるのはバターと僅かな塩のみ。
まさに鴨のありのままの味を生かしたソースです。
いよいよ料理の仕上げ。
焼いた胸肉は皮目だけをじか火であぶります。
鴨の香りを引き出すとともに身のしっとりした食感とのコントラストが生まれます。
付け合わせは鴨のだしで作ったリゾット。
米を食べていた東北の鴨への敬意を込めて。
ソースはたっぷりで結構です。
鴨の味の付いたリゾットと鴨とそして鴨の味の付いたもちろんソースをご一緒に召し上がって頂ければ。
そして部位ごとに全て食感のグラデーションがある。
すばらしい!命を頂いて下さい。
(2人)ありがとうございます。
肉ソースリゾット。
全てが一体となった鴨の生命力に満ちた一皿。
命を頂く事への感謝をまっすぐに表現しました。
さあここからは谷原さん。
残ったもも肉でもう一品。
「男の食彩」の意地を是非!これ責任重大ですよね。
そのとおりですよ。
あそこまできれいにさばいて処理されてお掃除されたあのさっきの状態見ると…。
よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
じゃ入れさせて頂きます。
まず最初にお伝えします。
おいしそうに焼いて下さい。
五感を総動員してですよね。
これもね谷原さん欲を言いますとここの太もももものところとすねのところって全部筋肉質違いますから。
その事もちょっとイメージしながらやるって事なんですね。
そうして下さい。
ちょっと音も出てきましたもんね。
素材から水分が出てきてます。
ここだけちょっとやっぱりなかなかに火が入らないですね。
あんま押さえちゃうと…。
そうです血が出てきてますよね。
僕はほんとにフライパンをこまめに動かすんですよね。
そこら中に。
素材の形に合わせながら油のある場所に。
そうですそうです…。
この理屈っぽい僕の理屈をちゃんと理解してやって下さってるのがうれしい。
ちゃんと動いてるんでそういうふうに。
だいぶこれもう…もういいですかね?お〜谷原さんすごい!じゃちょっと上げていきます。
そうですそうです…。
そうです!どうですか?ちょっとおいしそうになってる気がします。
おいしそうですよね。
もう皮パリッパリ。
こっちはフワッフワ。
ここ触ってみて下さいどうですか?フワフワです。
肉を休ませたらいよいよ仕上げ。
鴨肉の醍醐味を存分に味わえるよう余分な骨や筋を取り除きます。
グリーンサラダの上に盛りつければ出来上がりです。
はい出来ました!僕のためのサラダが出来上がりました。
すね肉がバツになってます。
これが僕でこれが谷さんです。
(笑い声)ジビエらしくワイルドな盛りつけ。
さて野生の鴨「可も」なく不可もなくでは困りますね。
どんな味わいなんでしょうか?早速頂いてもいいでしょうか?もちろんです。
僕も遠慮なく頂戴します。
いただきます。
どれからいきましょう。
やっぱりささ身からでしょうかね。
むちゃくちゃ柔らかいですね。
鴨って濃密なんですね味が。
そうなんですそうなんです。
で雑みがないんです。
またソースと合いますねこれおいしいですね。
これ胸肉のとこですか?そうですね。
う〜ん。
すごく豊かな弾力っていうんですか。
あとやっぱり皮目の粗いきちんと火が通されてる味わい食感とあとやっぱり身のモチモチした感じのこの差が面白いですね。
ワイルドにいっていいですか?いかがですか?まさに「男の食彩」です。
「男の食彩」でしたね。
男らしかったですね。
僕好きですね。
おいしいです。
ありがとうございます。
年に一度しか出会えない野生の命。
ジビエ料理に懸ける谷さんの思いは尽きる事がありません。
毎年毎年もっといい方法があるかもしれないしもっとおいしくなる事があるかもしれないんでそれにはチャレンジし続けていきたいですけどね。
あとないんですよ。
1年に1回だけなんで与えられたチャンスは。
ちゃんとやらないとまずくないですか?ですよね。
(テーマ音楽)2014/12/15(月) 11:00〜11:25
NHKEテレ1大阪
きょうの料理 谷原章介のザ・男の食彩「命をいただくジビエ 鴨のロティ」[字]
俳優の谷原章介がプロの味に迫るシリーズ。今回のテーマは「ジビエ」。秋に狩猟が解禁になる野きん類のことで、フランス料理の世界では秋冬の定番食材。その生かし方とは?
詳細情報
番組内容
東京・神楽坂。全国からあまたの食通が通うフランス料理店のオーナーシェフ、谷昇さん。毎年秋、店に届く野きん類=ジビエを扱っていると、食べるとは、命をいただくことだということを、改めて認識するという。今回の食材はジビエの代表格、鴨。丸のまま一匹を丁寧にさばき、その持ち味を最大限に引き出す、プロならではの焼き方の極意に迫る。ソースも鴨のうまみを生かし、鴨のガラを煮出したものにバターを加えてつくる。
出演者
【講師】フランス料理店オーナーシェフ…谷昇,【司会】谷原章介,【語り】江原正士
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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