検事・朝日奈耀子3 2014.12.15


(店内の音楽)あの…お客様。
ポケットの中の物は精算はお済みでしょうか?ちょっと事務所のほうへお願いします。
(目覚ましのアラーム)
(朝日奈耀子)わぁー遅刻だぁ!う〜ん…。
確かに私っていけてるかも…。
(小柳倫子)だからさぁおかしい訳よ。
私みたいな美人とよあんたみたいなまあ…私ほどでないにしてもそこそこの女が…。
先輩そのなっ…何ですか?そこそこって何ですか?いやだからね夜な夜なこうして2人で飲んでると。
ねっ?世の中の男達は一体何をしておるのかと。
そういう話よ。
うん?えっ?いやいや頼んでないわよ。
あちらの方が美人のお二人にと…。
えっ嘘…。
ふふふ…。
やっぱり人並み以上よね私って。
ふふふ…。
あっ遅刻だ!
(大山聡)へえ…カクテルをね。
でそのおじさんどうしたんですか?カクテルいただいてお礼を言ったらお付き合いがどうのこうのって言うから…。
丁重にお断りしました!ははは…なるほど。
でも検事も小柳検事もどうして毎晩のように飲むんですかね?この書類の山のせいかもね。
事件事件…。
どれも殺伐としてて考えさせられちゃうのよね。
世の中どうなってるのって。
まあ確かに言えてますけど。
お酒は気晴らしには一番!…で次は?はい窃盗犯です。
スーパーの万引き事件ですね。
万引き?はい。
万引きで送検されて来たの?
(ノック)はい。
失礼します。
これからあなたの取り調べをする検事の朝日奈です。
まず名前と生年月日を言ってください。
松下道子。
昭和45年2月11日生まれ。
職業は?無職です。
今仕事を探しています。
あなたが犯した窃盗の罪についてこれから取り調べをします。
ただしあなたには黙秘権がありますので言いたくない事は言わなくて結構です。
でも言う時には本当の事を言ってください。
いいですね?調書によるとあなた警察を呼んでいいね?と尋ねた保安員にうなずいたそうですね。
どうしてですか?窃盗については初犯なんだし普通は穏便にしてくれるよう頼むと思いますが。
あの保安員さんが怖くて頼んでもどうなるものでもないと思ったんです。
それにいくら出来心とはいえ自分のした事が恥ずかしくなって…。
出来心…ですか?あのアクセサリーが無性に欲しくなってしまって…。
あなた単純な窃盗の罪なのに地検に送検されて来たその訳おわかりになりますよね?立場もわかってますよね?今あなたの立場で罪を犯せばどうなるかも。
もう一度お訊きします。
なぜ保安員に穏便にするようにと頼まなかったんですか?ですからどうなるものでもないと…。
拝見します。
右手を出してください。
朝日奈検事お医者さんなんですよ。
はい結構です。
脈拍正常。
血圧もそう高くはない。
この取り調べでの動揺はないようです。
覚悟していましたから。
今度の事で逮捕された時から覚悟はできていましたから。
そうですか…。
でもあなたの処分は保留にします。
帰ってもらって結構です。
(警官)はい。
検事…どう思われました?
(ため息)納得できないものがあるわね。
(倉持哲也)何でなんだ?単純な窃盗犯じゃないのか。
そうよまた始まっちゃった。
耀子ちゃんの悪いクセよ。
あなたがトントントーンって被疑者の処分決めてくれないとそのしわ寄せが私んところに来るんだから。
朝日奈君は何にひっかかってるんだ?松下道子。
単純な万引き犯なのに送検されて来たその訳なんですが…。
うん。
彼女仮出所の身なんです。
仮出所!?はい。
だから所轄の東世田谷署も送検するしかなかったと。
そういう事かい?はい。
その松下っていう女性何の罪で服役したの?殺人です。
夫を殺害しています。
松下道子。
旧姓石塚道子は懲役10年の判決を受け模範囚として7年服役し2週間前に仮出所。
仮出所の身で事件を起こせばどうなるか本人が一番知ってるはずなのに万引きなんか…。
それに捕まった後保安員に穏便にしてくれるようにとも頼まなかったんです。
ほう…前に一度逮捕された経験からあがいても無駄だって思ったのかもね。
本人もそう言ってます。
朝日奈君はそれが納得できないとこう言うんだね?はい。
うんうん。
それに検事の前であまりに冷静過ぎる気がして…。
大胆だった?ええ…大胆というかさして迷うふうもなくあっさりと上着のポケットに入れた…。
そんな気がしましたね。
監視カメラのテープ見せてもらえますか?ちょっと巻き戻してくれます?はい。
そこ。
そのちょっと前。
そこで止めて!見てますね。
カメラを。
(保安員)確かに。
気にし過ぎなんじゃないの?チラッと監視カメラが目に入った。
だけど自分を抑える事ができなかった。
そういう事ってよくあるわよ。
この前私が起訴の決済をした万引きの常習犯なんて何度逮捕されてももう…。
そこにカメラがあるってわかっててもどうしても自分を抑える事ができなかったってそう言ってたもん。
でも松下道子は常習犯じゃないんです。
うんだから…常習犯になる前の何て言うの?予備軍!そう予備軍みたいなもんよ。
ねぇ部長?あのさぁ礼子さん。
(宮崎礼子)はい?今度あの…映画でも一緒に行って…。
でも…。
えっ…。
えっ部長?いや…何なんだよ君。
僕は今さ礼子さんと大事な話をしてる最中じゃないのよ…。
えっ大事な話って何ですか?何だよ聞いてないのかい君。
人の大事な…。
すいませんすいません。
えっ!?だからさ礼子さんと今度一緒に映画に行こうって。
ねえ。
えっ…ええ。
まあ…。
えっいいの!?ホントに?
(ため息)ダメだこりゃ…。
何で…?だからね…。
ちょっといい?ごめんなさい。
万引きの常習犯っていうのは…。
こんばんは。
(礼子)いらっしゃいませ。
部長お疲れさまです。
あっどうもどうも。
検事ちょっとよろしいですか?礼子さん…。
あちらへ。
はい失礼します。
どうも。
どうだった?はい。
松下道子が服役していた栃木の刑務所に行って来ました。
確かに彼女模範囚でした。
ただちょっと気になったのはですね…。
彼女が仮出所になる半月ほど前に1本の電話が刑務所に入ったそうなんですよ。
電話が?はい。
相手は刑務官にですね松下道子の出所はいつだと問い合わせて来たそうです。
携帯電話からで着信記録が残っていまして相手わかりました。
相手の名前は西川裕一。
西川病院っていう世田谷にある個人病院の院長をやっています。
確認しました。
山さん。
その電話の何が気になるの?実は松下道子が服役していた7年の間外からの面会者は1人もいなかったそうです。
娘さんが1人いたはずよね。
ですが面会には来ていません。
外からの連絡は皆無。
その出所前の1本の電話だけが唯一…。
私ちょっと気になりまして…。
(礼子)お待たせしました。
ああおいしそうですね。
はいどうぞ。
あっ検事すいません。
ねぇ耀子ちゃん…。
うん?どうしたらいい?何が?あっ…倉持部長からの誘い。
ああ…。
誘いって…デートですか?ええ。
映画に行かないかって。
ああ…!行けば?部長独りなんだし不倫でも何でもないんだから。
礼子さんさえその気なら。
うん…。
部長。
礼子さんとどんな映画見るんですか?えっ!?ああララ…ラブストーリーかな?ははは…。
ラブストーリー!やだもう…。
すいません。
朝早くから伺いまして。
(西川裕一)いえいえ。
でも何ですか?東京地検の検事さんが私に。
松下道子さんの事なんですが。
松下道子?ええ旧姓石塚道子。
ご存知ですね?知りませんが。
まったく聞いた事もない名前ですね。
でも西川さん電話なさいませんでしたか?彼女の事で。
えっ?実は彼女栃木刑務所にいたんです。
そこに彼女の事を問い合わせる電話がありまして着信記録からあなたの携帯電話だとわかったんですが。
ああ…そういう事ですか。
いや実はね1か月ほど前に携帯を落としたんですよ。
私気がつきませんでした。
そしたら夜になって二十歳くらいの男の学生さんが拾ったって届けてくれたんですよ。
なぁ?
(西川久美)ええ。
あっそうだ。
正美支度大丈夫か?ちょっと見て来ます。
ああ。
失礼します。
幼稚園に行ってるんですよ。
彼言ってました。
自分の携帯充電切れちゃったんで1本だけ申し訳ないけど電話かけさせてもらったって。
そうですか。
その時の事じゃないかな…。
栃木刑務所って知らない番号だから。
これかな…?失礼します。
日時も電話番号も間違いありません。
でその学生さんの氏名は?名前も言わないで帰っちゃったんですよ。
お礼したかったのに。
名前言うほどの事はしてないって。
近頃の若い人にしては立派な…。
どこに住んでるかもおわかりになりませんか?近くに住んでると思いますけど…。
名前聞いとけばよかったですね。
すいませんお役に立てなくて。
いえ…。
また伺う事があるかもしれません。

(久美)走っちゃダメよ!
(西川正美)パパいってきます!大丈夫?
(久美)正美…。
大丈夫だった?すいませんでした。
失礼します。
お邪魔いたしました。

(江藤健作)ああーっ!
(目覚ましのアラーム)遅刻だー!そうだ…よかったぁ。
1時間早めといたんだった。
はあ…。
あの西川病院だわ…。
(電話)あっいいいい。
はい大山です。
あっ検事…。
おはようございます。
今朝の記事ですか?
(大山美穂)やだ!パパに着せてもらう。
(大山サユリ)美穂!パパはお仕事の電話中でしょ!ほら!ねっ。
ああ出てますね。
渓谷で亡くなった男性の名前は江藤健作さん。
昨日会った西川さんの病院の事務長。
はあ…。
昨日の夕方渓谷で転落して死んだ…。
偶然…ですかね?山さん私これからまた西川院長に会いに行く。
山さんにも頼みがあるんだけど…。
はい。
はい…わかりました。
パパー!おっ着れたか。
よしよーいしょ!パパ今日のお弁当なんだけどどっちにする?サユリちゃんそろそろこれやめませんか?検事もどちらか食べさせられてうんざりしてると思いますから。
嫌なんだ…?あなたの愛もう冷めちゃったんだ…?いや…違うでしょ。
毎日作ってください。
はい。
うわぁ!お願いします。
お願いします。
(チャイム)
(久美)「どなた?」朝日奈です。
昨日伺った。
「すいません。
今手が離せないんです」あの今日は江藤健作さんの事で。
「警察に訊いてください」「あの人はもううちには関係ない人なんです」
(西川)「久美何してんだ。
早くしなさい」
(久美)「お願いです。
帰ってください!」・
(西川)お前が注意してないからだ!・
(久美)してるわよ!でも私にも用事があるのよ!あの…西川さんのお宅で何か?私…。
検事さん…?いえあのね昨日の午後なんですけど私達ちょっと気になるもん見ちゃって。
気になるもの?すぐそこの公園でベンチに座ってた西川さんとこの正美ちゃんが見た事のない女の人に車に乗せられて。
見た事のない…?ええ…髪の長い…。
車の中には男の人がいたような…。
私には正美ちゃん嫌がってたように見えたんです。
だからその話を西川さんちでしたんだけど…。
あっ検事さんそれでいらしたんですか?《誘拐…!?》・西川さん!検事さん…。
まだいたんですか?正美ちゃん今どうしてますか?元気ですよ。
今は知人の家へ遊びに行ってます。
家にはいらっしゃらないんですね?正美ちゃんの身に何か起こったんじゃありませんか?冗談じゃない!バカ言わないでください。
検事さん…。
昨日私に松下道子って人の事訊きましたよね。
なぜですか?その松下って人今どこに?なぜその事をお訊きになるんですか?いやそれは…。
ある事件で拘留中です。
失礼…。

(電話)
(佐野誠)はい刑事課。
朝日奈検事…。
えっ?現場は世田谷区桜町9丁目西川裕一さん宅。
西川さん本人は否定してます。
でも目撃情報からも誘拐の可能性が…。
事件として対処してください。
わかりました。
すぐ調べてみます。
誘拐!?まだ断定はできない。
それと気になるのは松下道子との関係。
はっ?西川裕一さん彼女が今どこにいるか私に訊いたの。
拘留中だと言ったら驚いてたわ。
あの驚きようは普通じゃなかった…。
松下道子を知らないと言っていたのは嘘。
携帯電話の件も恐らく…。
で死んだ江藤健作さんの事何かわかった?はい。
秋川署に照会したんですが江藤健作は西川病院の金を使い込んでいたらしいんです。
使い込み?ええ。
それがバレて院長からクビを言い渡されていたそうです。
そうなの…。
江藤っていうのはギャンブル漬けだったそうで。
奥さんはだいぶ前に愛想をつかせて子供を連れて実家に戻ったそうです。
で江藤の転落死なんですが秋川署のほうでは殺人の疑いが濃いと思っているらしいんです。
殺人!?ええ。
現場に争った跡が残っていたそうで。
近くで釣りをしてた人が現場から逃げるように走り去る女を見ています。
女…?髪の長い女が子供を抱いて逃げていたそうです。
検事。
山さん。
松下道子を呼んで。
彼女と西川裕一さんやっぱりつながりがある。
あるとすれば8年前の事件…。
はい。
西川裕一さんについて伺います。
西川裕一…?はい。
ご存知ですね?知らない名前です。
西川さんの携帯電話で刑務所にあなたの出所を問い合わせた人がいるんです。
西川さんは自分ではないと言ってますが…。
私に電話をしてくる人はいませんし何かの間違いなんじゃないですかね。
電話があった事は事実です。
西川裕一さんもあなたを知らないと言っています。
ところがあなたが拘留中だと聞いて驚いた。
なぜでしょうか?さあわかりません私には。
その西川さんのお宅で今事件が起きている可能性があるんです。
一人娘の事で。
何の関係もありませんよ。
その人と私は…。
本当です。
あなたが罪に問われた8年前の事件について話してください。
何で今更…。
もう終わった事ですし今度の事は関係ありませんから。
関係あるかないかはこちらが決める事です。
話してください。
8年前まで私群馬県の伊香保に住んでました。
平凡なパート主婦。
娘1人。
ちっちゃなアパート暮らし。
もう誰も住んでませんけど。
夫は医療器具メーカーの営業マン。
女遊びの派手な人で方々に女を作っては出張と言って何日も家に帰らずとうとう東京でホテル暮らしまで始めました…。
娘のためにもと夫と別れる事を決めました。
話をつけに行こうと思いました。
(道子)あの日あの人は榛名湖のそばにある自分の実家に用があって戻っていました。
私は夫に会いに行きました。
榛名湖の近くの林を通りかかったら…。
うめき声が聞こえました。
(石塚真一のうめき声)あっあなた!あなた…。
道子ナイフ…ナイフ抜いてくれ。
うっ…。
ああ…。
ああ…。
あなた…。

(女の悲鳴)
(道子)凶器を手に夫を見下ろす私が目撃された…。
私は逮捕された。
私は無実。
でも警察は私が犯人だって決めつけた。
夫婦仲は最悪。
動機はある。
林から出て行く男を見たって何度も言ったけど聞いてもらえなかった。
出まかせを言うんじゃないって怒鳴られた。
どんな男だったかって言われたけど知らない顔だったしどんなって言われても…。
調書によるとあなた夫を殺したのかと訊かれ黙秘していますね?取り調べの間ずっと…。
(刑事)殺したのか殺してないのか?どうなんだ!?なぜですか?なぜ黙秘を…。
それは…。
検事の前でも黙秘を続けた。
そして判決の日になって突然言い出した。
私はやっていない。
殺していないと…。
裁判では黙秘が決め手となった。
黙秘は犯行を認めたものと認定され判決が下りた。
有罪…。
懲役10年の実刑。
なぜ黙秘をし続けたんですか?もう済んだ事です。
それより私の万引きの処分を決めてください。
ただの万引きなんです。
早く決めてください!処分…保留にします。
何で!?連れて帰ってもらって結構です。
(警官)はい。
いや何もないって言われてもですね!本当なんだ!誘拐だなんてあの検事さんおかしいんだ。
さあ帰ってくれ。
帰ってください。
帰ってください!検事がおかしいってどういう事なんですか!?・
(電話)西川です…。
違います。
間違い電話よ。
帰ってくれ。
帰ってくれって言ったでしょ!ほら!頼むから帰ってください!!やっぱり様子がおかしい…。
ええ。
検事のおっしゃるとおりだと思います。
事件の可能性がありますね。
張り付きます。
動きがあったらすぐ連絡してください。
松下道子の保護司に会って来ました。
ええ。
ところで検事…。
うん何だ?あっこんなところにこんな物がお弁当が…。
今日はちょっと食欲が…。
いやいや食べましょう。
ちゃんと食べましょう。
あっこんなところにベンチが…。
はははどうぞ。
どうぞどうぞはい。
さあさ今日はどっちにしましょうか?ピンクとですねグリーン。
ピンクのほうを。
ピンク…ピンクどうぞ。
いただきます。
はいどうぞ。
(ため息)ああ…。
おおー!あっこれねサユリが書いてくれたんですよ。
私すっごく愛されちゃってて…。
あははは…。
ははは…ごちそうさま。
いえいえ…。
でどうだった?はい。
出所後の松下道子の行動なんですが出所してすぐに群馬県の榛名湖に向かっています。
榛名湖へ…娘さんね?ええっ榛名湖へ出張?ちょっとこの忙しい時に何言ってんのよ!ねえ部長!ええっ…うん。
ちょっと…部長!いやいや…。
朝日奈君ねその行かなきゃならん理由ってのは何だい?松下道子…西川裕一さんとの関係を否定してます。
その西川家で今事件が起きています。
事件!?その事を知った時松下道子微笑んだんです。
その事件なんですが一人娘の正美ちゃんが誘拐された可能性が…。
2人はどこかでつながってる。
微笑みの訳を解く鍵が榛名湖にある気がするんです。

(石塚高雄)あの女が刑務所を出て来たのは知ってたよ。
(高雄)孫の友子から聞いた。
2週間近く前中学の校門のところであの女友子を待ち伏せしてたそうだ。
(石塚昌枝)でも友子は言ったそうですよ。
あなたはもう母親ではない。
一緒に暮らせないって。
母親ではない…?そりゃそうだ。
実の父親を殺した女なんだ。
確かに真一は出来の悪い息子だった。
でも殺す事はない。
俺達の身にもなってみなよ検事さん。
一人息子を殺されたんだ。
でも…道子さんは無実だと。
だったらなぜ刑務所入ったんですか?なぜ有罪の判決受けたんですか?あの女は…友子から父親を奪ったんですよ。
私達から息子を奪った…。
だからあの女から親権を取り上げたんです。
親権を…?確か裁判が終わる頃だったと思うなぁ。
友子の親権を俺達に移すって事をあの女に知らせたのは…。
それからしばらくしてあの女は元の名字に戻ったって聞きました。
だからもうあの女と私達は関係ないんです。
アカの他人なんですから…。

(石塚友子)ただいま。
友子おかえり。
お母さんセーラー服姿のあなたを見て何て言ったの?
(友子)えっ…?別れた時あなたまだ5歳だったでしょ?13歳になったあなたを見てお母さんどう思ったかなって…。
さあ…黙って泣いてました。
またね。
バイバーイ。
友子!私8年振りだけどすぐにあの人だってわかりました。
あの人…?だって…もうお母さんじゃないっておじいちゃんもおばあちゃんも…。
その事お母さんに言ったの?言いました。
一緒には暮らせない。
お母さんとも思わないって…。
だから私7年間あの人の面会にも行かなかったんだし…。
そう…お母さん悲しかったでしょうね。
だってしょうがないもん…。
今頃私は無実だなんて言われても…。
刑務所行ったんだしお父さん殺したから刑務所行ったんだし。

(嗚咽)
(友子)あの人泣いてた…。
でもどうしようもなかった。
《松下道子は男を見たと言った》《男がこの林から飛び出したと言った》《事実だとしたら…一体誰なの?》
(電話)西川です…正美か!?もしもし…正美か?
(正美)「パパ…」正美!正美!!
(女の声)「金金はできたの?」できた。
できた!頼む正美の体は?
(電話の不通音)もしもしもしもし…!
(荒い呼吸)いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
朝日奈です。
朝日奈様…。
お世話になりました。
これでよろしいですか?ありがとうございます。
はいどうぞ。

(館内の音楽)朝日奈です。
西川家の様子は?依然動きがありませんねぇ。
このまま張り付きます。
そろそろ動きがあっていいはずなんだけど…。
わかりました。

(携帯電話)山さんだ…。
はい。
ええ伊香保の岸権旅館に着いたところ。
松下道子と西川裕一つながりましたよ。
つながった!?ただいま。
おかえりなさい。
検事早速ですが…。
私刑務所の刑務官と仲よくなっちゃいましてははは…。
実は松下道子服役して3年目に突然弁護士を呼んでこう言ったそうです。
犯人がわかったと…。
刑務所の中で読んだ雑誌に犯人の顔が出ていた。
この男だ。
この男が犯人だと…。
林から飛び出した男はこの人だ…。
(飯村徹)確かに私彼女にそう言われました。
今までは誰だかわからなかったけどとうとうわかったと…。
で私西川さんを訪ねましたよ。
でもダメでした。
ダメと言いますと?西川さん笑ってましたよ。
ちょっと雑誌に載ったぐらいで有名税にしてもひど過ぎるって。
彼は松下道子の夫とは面識はないそうです。
それに事件のあった時の事はよく覚えてましてね。
アリバイありました。
アリバイが…?出入りの医療品メーカーの女性営業員江崎史子って言ったかな…。
その人と商談でホテルのロビーで会っていたと言いました。
ホテルのほうでは確認取れませんでしたが江崎さんからは証言取れました。
(江崎史子)ええ間違いありません。
確かに会ってました。
(飯村)嘘だ!松下道子はそう言いましたが私は諦めるしかないって言ったんです。
西川さんも言ってましたが実は私も思ってました。
彼女の妄想だと…。
長い服役生活の末の妄想なんじゃないかと。
で松下道子は?私をクビにしました。
別の弁護士を呼んだそうです。
でも聞いた話ではその弁護士も私と同じ事を言った。
また弁護士を代えた。
でも同じだった。
3人目にも同じ事を言われて彼女は諦めた。
それから彼女模範囚になったと聞きましたね。
娘さんに会ってきました。
かわいいお嬢さんですね。
あなた西川裕一さんを知っていた。
飯村弁護士から聞いたんです。
あなた榛名山の林の中でぶつかった男は西川裕一さんだったと弁護士に訴えた。
何度も…。
でも取り上げてもらえなかった。
そして娘さんを失ったまま殺人犯として仮出所をした。
その西川さんのお宅で今事件が起きています。
一人娘の正美ちゃんの誘拐です。
検事さん私あなたの言う事がさっぱりわからないんですけど。
そうでしょうか?西川裕一さんはあなたが拘留されてると知って驚いてました。
それは正美ちゃんの誘拐があなたの犯行だと思ったから…。
私が何のためにそんな事をするんですか?娘さんを取り戻すために…。
松下さんあなた西川正美ちゃんの誘拐に関わってますね?関わってません。
だって無理でしょ!?私ここにいるんだから。
共犯がいたら?どうですか?共犯がいたら可能ですよね。
黙秘ですか?検事さん私の処分決めてください。
保留です。
おかわり。
はいはい。
あのね礼子さんこれどっどれが見たい?あっ…どれって言われても。
怪獣映画でも見ればいいじゃないですか。
何言ってんだよ君は。
失敬だね。
耀子ちゃん。
いいの?こんなに飲んで。
いいの。
あの人関わってる。
でもそれは絶対に認めないのよね。
朝日奈君何ぶつぶつ言ってるんだね君は。
気になる…あの子の事が。
あの子ひょっとしたら…。
ううんそうじゃなければいいけど…。
あの子って?うん。
あの子2階から駆け下りてきて息が上がってうずくまった。
起き上がったあの子の唇が紫色に変わってた。
チアノーゼ。
何を言ってるのかさっぱりわからん。
何なの…。
あっそうだ。
ねえねえ!あっ…。
そうそうああこれ。
ねっ?ねえ礼子さん。
このラブストーリー…。
私こっちこの『初雪』がねすごいいいと思う。
ちょっとね君の事を聞いてるんじゃないんだよ。
ねえ礼子さんどう?これ。
ええ…はい。
ホント!?それじゃ決まった!ははは〜!という事でごちそうさま〜!いやまだいいじゃないのよ〜。
帰りましょ。
もう十分飲みましたもん。
大丈夫ですか?私頭痛い。
頭痛いの?頭痛いもう。
しょうがないな〜もう。
ちょっと飲み過ぎちゃった!送ってくよ送ってくよ!ありがとうございます。
すいません。
あっ朝日奈君はどうするの?私はあのここで山さんと待ち合わせしてるんで。
あっそうかい。
あっそうなの。
あっそう。
どうもありがとうございました。
いいえ〜。
お疲れさまでした。
礼子さんどうもありがとう。
また今度ね。
また。
じゃ耀子ちゃんごちそうさまね。
いつもねすいません。
ホントに。
お気をつけて。
は〜い。
じゃ映画楽しみにしてるから。
はい。
失礼します。
おやすみなさい。
うふふっ。
礼子さん聞いてくれる?うん?夫を殺された女がいた。
夫はうめいて凶器のナイフを抜いてくれと女に頼んだ。
女はナイフを抜き取った…無実。
なのに黙秘した。
刑事の前で検事の前で殺したのかと訊かれて黙秘した。
なぜ黙秘を?女には夫への殺意があったのかな。
えっ…。
このまま死んでくれたらと願ったとしたら。
確証はないの。
だから礼子さんに訊いてみたの。
かもしれないなぁと思って…。
(ため息)ごめんね。
いつもグチ言ったり何だかわかんない事ばっかり言って。
いいのよ。
私は耀子ちゃんのグチ係だから。
遅くなりました。
いらっしゃいませ!こんばんは。
礼子さんちょっといいですか?ええどうぞどうぞ。
すいません。
検事。
大丈夫?検事。
検事の推理当たってたみたいです。
松下道子の刑務所仲間で共犯になり得る女が1人浮かび上がりました。
刑務官から聞いたのね?図星です。
名前は高野加奈子。
亭主と息子を居眠り運転をしていた男にはねられたそうです。
2人は即死。
一瞬にして家族を失った高野加奈子は刑を終えて出てきた男…亭主と息子をはねて殺した居眠り運転をしていた男をつけ狙いました。
男は務めは終えた。
事件は終わった事だと詫びる事もなかったそうです。
うわっ!?高野加奈子はその男を刺し殺した。
そして服役1年前に出所しています。
その高野加奈子と松下道子は…。
親しかったそうです。
松下道子にとって唯一の話し相手だったそうです。
そして高野加奈子は仲間の囚人達にこう言っていました。
(高野加奈子)ねえねえ自分は無実だって奴はいっぱいいる。
誰も彼も嘘ばっかり。
でもさ道子は違う…道子の言ってる事は本当だよ。
道子は無実よ。
高野加奈子の現住所です。
(ノック)高野さん。
(ノック)高野さん。

(大家)高野さんならいないよ!ここ1週間ばかり帰ってないみたいだね。
どこへ行ったか知りませんかね?さあ勤め先は知ってるけどね。
ああ加奈ちゃんなら半月前に辞めたわよ。
辞めた?あの…店のお金がね7万だかなくなったのよね〜。
であの人さほら前科があるじゃない?だからみんながあの人の事疑ってさ。
いづらくなったんじゃないかな〜。
そうだったんですか。
あっあの人の事なら…。
あっひょっとしてあの事務長さん知ってるかも!あっ…そんな事ないか。
ないわね。
あはは!ないない。
あのその事務長さんというのは?加奈ちゃんをしつこく訪ねてきた客がいたのよ。
加奈ちゃんねその人の事事務長さんって言ってたのよ。
どっかの病院の事務長だとかで。
何かねうまい儲け話があるから乗らないかって言われて困ってるって加奈ちゃん。
その事務長さんって…この方ですか?あっ!この人よ!えっ…この人死んじゃったの?高野加奈子さんの写真あったら貸していただけますか。
あっはい。
ちょっと待って。
写真と…ええどこだったかな。
あああったあった。
えっとね…。
ああこの人!
(主婦)〔見た事もない女の人に車に乗せられて。
髪の長い〕これでつながりましたね。
事件の裏が。
東世田谷署に高野加奈子の事を知らせて。
写真も一緒に。
はい。
(電話)俺が出る。
(電話)はいもしもし西川です。
わかった。
言うとおりにする。
(戸田茂幸)佐野さん!うん?おい!
(戸田)待て!おい!
(加奈子)何〜!あっご苦労さまです。
高野加奈子は?誤認逮捕だって騒いでます。
西川裕一さんは?今うちの者が事情聴取を。
高野加奈子に訊きたい事があります。

(ドアの開く音)東京地検の朝日奈です。
誰でもいいんだけどさ困んのよね〜。
誘拐だどうだって言われても誤認逮捕なんだから。
じゃあどうしたんだバッグの金は。
5千万だぞ。
だからこつこつ貯金したの。
(ため息)正美ちゃんはどこにいるんですか?知らないわよ。
誰の事よ?一体。
どこですか?正美ちゃんはどこにいるんですか!私の思い過ごしならいい。
だけどそうでなかったとしたら正美ちゃんは重い心臓病なんです。
一緒にいた時の正美ちゃんの様子を教えてください。
唇紫色になってましたか?何よ…そんなの知らない!
(ノック)わかりました。
西川さん正美ちゃん心臓に疾患がありますね?何でそれを?正美は先天性の…。
心疾患。
ファロー四徴ですね?はい。
酸素吸入はしてますね?はい。
心内膜炎予防の抗生物質の投与も?ええ。
最後はいつ?誘拐された日の朝…。
正美ちゃんの様子を教えて。
意識はありましたか?発熱は?命に関わるんです。
酸素吸入をしないと死ぬかもしれない。
命の問題なんです!あの子だるそうにしてて熱出して静かに眠ってた…。
意識がない…。
無酸素発作を起こしてるわ。
急がないと。
正美ちゃんはどこにいるんですか!私が亭主と息子と暮らしてた古い家に…。
(加奈子)場所は秋川の…。
酸素吸入。
ベーターブロッカーと抗生物質の点滴!あの先ほど連絡した医師の朝日奈です。
西川正美ちゃんは?酸素吸入で意識は戻りました。
現在血栓症と心内膜炎に対する処置を続けています。
危険な状態でした。
(ため息)正美は?間に合いました。
きっと助かります。
西川正美ちゃんは無事保護されました。
犯人は高野加奈子。
高野加奈子をご存知ですね?高野加奈子は西川裕一さんに5千万円要求し金を受け取って逃げるところを逮捕されました。
検事さん私を引っ掛けようとしてる。
そう言われた私が全部しゃべると思ってる。
私は事実を言ってるんです。
あの人がお金なんて…5千万だなんて。
あなたは高野加奈子と計画した誘拐の目的はお金ではなかった。
あなたは西川裕一さんに8年前の事件の真相を告白するようにと要求するつもりだった。
真実を明らかにして娘さんを取り戻そうとした。
でもあなたが誘拐すればすぐに捕まる。
あなたには保護司がついていて所在は明らか。
高野加奈子は言った。
代わりに自分が誘拐すると。
彼女の目的は結局はお金だった。
あなたは裏切られた。
嘘よ。
あの人がお金なんて…。
嘘よ。
本当です。
嘘…。
嘘よ!うっ…くっ!離せ!死なせてぇ…!死なせてー!!
(電話)朝日奈です。
松下道子が逃げようとした?失礼します。
昨夜ここの表で松下道子逃げようとしたそうです。
聞いてますか?捕まえられて死なせてくれと叫んだんだそうです。
あなたに裏切られた事を知って。
バカなのよあの人。
私を信じたあの人がバカなの。
最初から松下道子を騙すつもりだったんですか?違うわね。
あの人は無実よ。
本当にそう思ったし同情もしたし。
でも途中で気が変わったの。
だから全部私が計画したの。
話してください。
話すわよ。
復讐。
友子ちゃんを取り戻すためにはこの手しかないってあの人に持ちかけたの。
西川の娘を誘拐して要求を突きつける。
要求は8年前の真実。
そうすれば夫殺しの無実は晴れて娘と暮らせる。
それしかないって。
松下道子はあなたを信じた。
そう。
アリバイを確かにする方法も教えたわ。
ふっ万引きよ。
そして検事の前に立つ。
これ以上確かなアリバイはないもんね。
あの人は誘拐とは無関係。
あの人私の言うとおりにしたわ。
私は西川の娘を誘拐して金を出せって要求した。
警察には知らせるな。
あんたの病院の実態を知り尽くしてる男だって私にはついてるんだって脅かして。
男っていうのは江藤健作の事か。
そう。
うまくいくはずだった。
でも今度の事で誤算が2つあった。
1つは道子の出所する日を西川が刑務所に問い合わせてたって事よ。
怯えてたんでしょきっと。
であなたが…朝日奈検事がその事を嗅ぎつけた。
ふっこんな事にならなかったら金持って逃げられてたのに。
2つ目は何ですか?江藤よ。
あいつ私が勤めてたバーの客だったの。
その江藤に私が西川の家探ってるの見られちゃって。
何企んでるんだ〜?って嬉しそうに訊いてきたわ。
あいつ使い込みがばれて西川にクビにするって言われて恨んでたから。
(加奈子)儲け話があるってしつこかった。
一緒にやろうって。
西川の娘を誘拐して金を取ろうって。
ふふっ!私あきれちゃったわよ〜。
私と同じ事考えてる奴がいるって吹き出しそうになっちゃった。
なぜ江藤健作の話に乗ったんですか?あいつの事だから1人でやったらすぐに警察に通報されるでしょ。
だから仕方なく一緒にやったの。
江藤を殺したのはお前だな。
そうよ。
なぜだ。
なぜ殺した?邪魔だったのよ。
邪魔になったから殺したの。
私に共犯はいらない。
佐野さんお願いがあるんです。
本当はどうだったのか。
高野加奈子は邪魔になったから江藤健作を殺したのか。
でも彼女正美ちゃんの命が危ないと知ったら私に居場所を教えた。
はい。
シラを切りとおそうとすればできたのに。
秋川渓谷で何があったのか…。
それを知りたいんです。

(ノック)
(警官)失礼します。

(ノック)
(警官)失礼します。
松下さんあなた自分の娘を取り戻すためには西川正美ちゃんを誘拐するしかないと思ったんですね。
父親を殺したのがあなたではないとわかれば娘さんは戻ってくる。
罪を償えば一緒に暮らせる日も来ると…。
でも高野加奈子はあなたを裏切った。
お金のためです。
何で…何でなの?何が?信じたのに…。
誰も信じてくれなかったけどあなたは私を信じるって言った!ホント!?うん信じる。
ひどい話だよね…。
私あんたの言ってる事嘘じゃないと思う。
信じる。
なのに何で?何でなの?検事さんにも言ったけど信じたあなたがバカなのよ。
あなたは無実よ。
信じた。
同情もした。
でもその同情が嫉妬に変わったのよ。
刑を終えて出所して最初の1年は地獄だった。
みんな私を白い目で見る。
口では違う事言うのよ。
罪は罪。
罪を償ったんだからもういいの。
違う。
みんな私を特別な目で見るのよ!仕事先では何かあると疑われてその繰り返し。
1年の間に勤め7回も変わったの。
今のアパートに入るのも大変だった。
お金なんかとうに底ついた。
それが何だって言うの?私は無実なのに…!あんたには…!友子っていう娘がいるじゃないの。
私には何もない。
亭主も息子もいない。
何も残ってない。
あんたは幸せよ。
娘がいていつか一緒にって夢がある。
私には何もない。
だから裏切ったの…。
そうよ。
せめてお金ぐらいって思ったのよ。
あんた…あんた…!失礼します。
高野さん。
あなたが江藤健作を突き落とした時の事を正美ちゃんが話してくれたそうです。
あなた邪魔になったから江藤健作を殺した訳じゃなかった。
正美ちゃんは江藤の顔を知っていた。
金を奪って正美ちゃんを返せば自分の犯行だと知られる。
だから江藤健作は正美ちゃんを殺そうとした。
その子に何するのー!?うるさい!こいつが生きてたら俺がやばいんだよ!やめてー!この子に罪ないでしょ!やめなさい!きゃーっ!やめて!
(江藤)ああーっ!あなたは正美ちゃんをかばった。
江藤健作を殺した訳じゃなかった。
正美ちゃんを助けたんです。
8年前?8年前あなたは松下道子さんの夫石塚真一さんを殺害した。
はははっ冗談じゃない。
何を言ってるかわかってるんですか?検事さん。
ええわかってます。
あの事件は終わってるんですよ。
犯人は逮捕され刑を宣告されて服役した。
何を今更…。
あの時の真実を明らかにするために松下道子さんは今度の事件を引き起こしたんですよ。
検事さん確かに私達はあなたに感謝してる。
正美を助けていただいた恩は感じてる。
でもそれとこれとはまったく別の話ですよ。
あなたの言ってる事はすべて真実だと?まあ1つ嘘をついてます。
携帯を落としたって言いましたよね。
あれはとっさについた嘘です。
私が栃木刑務所に電話して問い合わせました。
あの女何年か前弁護士をとおして妙な妄想を言い出した。
それを思い出したんですよ。
出所してまた妄想を言い出すんじゃないか。
そう思ったんです。
彼女が言い出した8年前の事はやはり妄想だとおっしゃるんですね。
ええそのとおりです。
妄想かどうかはっきりさせます!山さん。
西川8年前の事認めました?やっぱりね。
検事松下さんのご主人の事でちょっとおもしろい事を聞き込んだんですよ。
松下さんのご主人は医療器具メーカーの営業マンだった。
いろんな病院に知り合いがいた。
でこの病院の女性の看護師と愛人関係にあったそうです。
その看護師さんは8年前に亡くなってるんですがその親友って人から話が聞けまして。
私に話してくれた8年前の事もう一度検事に。
(森村恵子)はい。
私死んだ節子とは親友でした。
節子は石塚真一さんと奥さんいるの知りながら付き合ってました。
で8年前節子妊娠したんです。
妊娠?相手は石塚さんでした。
節子切迫流産でうちの病院に担ぎ込まれました。
でも院長節子を放置したんです。
ちょうど急患があって…。
その急患の家族すごいお金を院長に差し出したんです。
私その現場に居合わせました!院長西川さんはその急患を先に治療した。
ええ手術しました。
節子を放置したまま。
その急患は助かりましたが節子は手遅れで死にました。
あの私…口止めされて…。
それに恋人殺されて石塚さん怒るかと思ったら違ったんです。
節子の死の原因は追及しない。
その代わりに俺の会社の医療器具を納品させろ。
そう言ったんです。
そうだったんですか…。
節子の通夜の時に…。
死んだ女は帰らないそれよりもこれからだ。
あいつ脅して金ふんだくってやる。
その後にあの事件…。
石塚さんが死んだ…。
私思いました。
あっもめたんだ。
院長と石塚さんって…。
それから検事西川病院いろいろ問題あるみたいなんです。
問題というのは?ええ…。
あっ…もういろんな…。
出入りの業者からのリベートとか高額医療費を払えない患者の追い出し…とかです。
私も話を聞いて直感しました。
石塚真一は医療器具を納品させなければ節子という女性看護師の死の一件その他もろもろを世間に公表すると西川を脅した。
そしてもめていた。
あるいはもう公表寸前だった。
西川は榛名湖に戻った石塚を待ち伏せしてナイフで…。
でもすべて推測。
証拠は何もない。
ええ。
向こうにはアリバイがある。
医療品メーカーの女性の証言が。
江崎史子っていう女性ですね。
ええ。
その事なんですが…。
こちらです。
はは…今日だけで何度も来てるんで向こう困ってるみたいで…。
話す事はないと言ったはずです。
こちら朝日奈検事江崎史子さんです。
検事さん困るんです。
この事務官の方何度も何度も…。
松下道子さんという女性がいます。
8年前夫を殺害したとされて服役していました。
知ってます。
娘さんがいます。
当時5歳今13歳になります。
その松下さん3週間ほど前に仮出所になってその足で娘さんを訪ねたんです。
中学生になった娘さんは松下さんに言ったそうです。
一緒には暮らせない。
あなたは私から父親を奪った人だと…。
悲しいと思います。
つらいと思います。
無実なのに…無実なのに。
そのうえ彼女は真犯人を知ってるんです。
でも相手はアリバイがあると言い張ってる。
私…。
そのアリバイを証明した人がいる。
検事さん…。
いいんですかこのままで。
江崎さんいいんですか!私…当時焦ってたんです。
女に何ができるんだってバカにされて…。
そんな時あの西川院長が私にささやいたんです。
嘘のアリバイ証言を?ああ。
弁護士に言われてとっさにあんたの名前出したんだ。
だから話があるって来るはずだ。
頼むよ。
あの日俺と2時にはサンウエストホテルで商談してた事にしてくれ。
買ってやるから。
見返してやりたいんだろ。
バカにしてる奴らを…。
全部買ってやる。
あんたの手柄にしろよ。
こんな事になるとは思ってもいませんでした。
その女性を…こんなに苦しめる事になるとは。
(西川)何ですか?こんなところまで呼び出して。
ここで石塚真一さんが亡くなりました。
8年前何が起こったのか知りたいんです。
まだそんな事を。
江崎史子さんに昨夜会ってきたんです。
江崎さんあなたに頼まれてアリバイを偽証した事を告白してくれました。
まさか…。
本当です!でもあの事件は決着したんだ刑が決まって…。
まだ決着してません!奥さん決着していないんです。
松下道子さんは娘さんの友子さんを取り戻していません。
友子さん。
8年前に何が起こったのかあなたがご存知の事があったら話してくれませんか?私あの…。
女房は知らない。
何も知らないんだ!奥さん…正美ちゃん生きて帰ってきてよかったですね。
あなたに正美ちゃんは戻った。
でも松下道子さんは友子さんを失ったままなんです。
娘を奪われた8年間。
女として母として一人の人間としてつら過ぎると思うんです私。
久美何も言うな。
わかるな!検事さん!久美!奥さんお願いです。
松下道子さんに友子さんを返してあげてください。
お願いします。
お願いします!8年前…あの人のご主人石塚さんを殺したのは…。
主人です!久美…。
8年前のあの日主人は夜遅く帰ってきました。
洗面所でシャツの袖を洗ってました。
返り血のついた袖を洗ってたんです…。
驚いた私に主人は言いました。
殺した…石塚を殺したって…。
今までは言い出せませんでした。
でも…正美を取り戻して松下さんの気持ちがわかるんです。
母親としての思いがわかるんです…。
お母さんじゃなかったの。
お父さんを殺したのはお母さんじゃなかったのよ。
石塚は医療器具を納品させろと言って脅してきた。
さもないと節子っていう看護師の件や週刊誌が飛びつきそうな事を何でも公表すると言って聞かなかった。
だから殺したんですね。
器具のメーカーはもう決まってた。
リベートももらってた。
だから私は…。
嫌ならいいんだよ。
雑誌の記者にばらすだけだ。
ああっ…。
(西川)確かに石塚を刺したけど石塚も悪いんだ。
看護師の件や何かで脅したりゆすったりするから…。
ねえ?あなたも医者ならわかると思うんですよ。
しょうがなかったって事は…。
しょうがない?だってそうでしょ?あの看護師はもつと思ったんだ。
金出してくれる急患を先にするのは当然でしょ。
病院経営が大変なのはあなたならわかるはずだ。
当然の処置だったと言うんですか。
だから私は悪くない。
経営者として…。
何を言ってるんだかわかってるんですかあなた!あなた…あなたはそれでも医者ですか?私は…!医者がお金で患者を選ぶ。
それが当然だとあなたは言うんですか?同じ医師として私はあなたを許せない。
そのうえあなたは自分の罪を人になすりつけた。
松下道子さんは無実なのに7年も服役したんですよ。
大切な時間を…。
娘さんと過ごせたはずの大切な時間を。
あなたは彼女から奪った!事件は確かに間違った形で決着しています。
でも私は許さない。
あなたを決して許さない!あなたを殺人罪で起訴します!松下道子の無実は立証されました。
よかった…。
私もよかったと思います。
あなたのほっとした顔を見てよかったと思います。
それでいいんだと…。
えっ…?私思うんです。
それがあなたの本当の姿だと…。
私…。
今まで少し…少し寂し過ぎたんだと思います。
ねえ約束してくれませんか。
罪を償って出てきたら私達を訪ねてくると。
約束してください。
必ず来ると。
検事さん…。
白い目で見る人ばかりではないと思います。
あなたを受け入れる人も見守りたいと願う人もいるんです。
待ってます。
あなたを過失致死および未成年者略取誘拐の罪で起訴します。
無実が証明された…?西川裕一が自白しました。
あなたは無実です。
(嗚咽)1つ聞かせてください。
夫を殺したのかと訊かれ黙秘しましたね。
刑事の前で検事の前で。
なぜですか?それは私の中に夫への殺意があったからです。
(道子)あの人ナイフを抜いてくれと言ってそしてこう言ったんです。
(石塚)助けてくれ…。
病院…救急車…。
(道子)でもその時私の中に生まれた一瞬の殺意がありました。
このまま死んでくれたら…。
ああっ!ううっ…!ナイフを抜いたら死ぬとわかっていたのに私動けませんでした。
人を呼びにも走らなかった。
そして…ナイフを抜きました。
あの人は死んだ…。
警察で訊かれました。
殺したのかと。
否定できませんでした。
私が殺したのかもしれない。
そう思うと否定できませんでした。
そして起訴されて裁判。
書類が届きました。
夫の両親からでした。
友子の親権を両親に移そうとする書類でした。
その時初めてわかった…。
ダメ…!ダメダメ…!友子は渡さない!私の命。
命よりも大切な友子が取られる!バカな私は私の黙秘の結果そうなった事を初めて知りました。
だから否定した。
やっていないと。
でも…叫んでももう遅かった。
誰にも届かなかった。
人って悲しいですね。
私ね思うんです。
人って悲しいものだなって。
あなたは自分の気持ちを裏切れなかった。
正直に生きた。
だから一瞬頭をよぎった殺意を否定できなかった。
その事であなたの運命はまったく違うものになった。
何年も苦しむ事になった。
でもあなたにはこれからの人生があります。
生きてください立派に。
あなたを誘拐罪共謀共同正犯で起訴します。

(友子)お母さん!友子…。
待ってる!絶対待ってるから!友子…!お母さん!
(2人の嗚咽)ええーっ!?ついに2人で映画見に行ったんですか?うん。
ええ…まあ。
部長どんな映画見たんですか?えっええとねあの…。
あのねあの…何とかっていうラブストーリーでしょ。
うん。
だからどんな話?どんな話?ですからストーリーです。
ストーリー。
いやですからその…。
ストーリーってのはだからその…。
私も何か緊張しちゃってあんまり覚えてなくて…。
えっ!?ちょっと待って。
ちょっと待って!2人共映画見ないでお互いの顔見てたんじゃないの?いや顔は見てないけどねぇ。
(礼子)やぁね部長さんも。
だって緊張するだろう?
(倫子)いやらしい!いやらしい!何でいやらしいの?君自分の事言ってるんじゃないの?検事。
うん。
どうぞ。
うん…今度は山さんに助けられたわね。
いやぁそんな事ありませんよ。
ただ私にとっても子供は宝ですから。
あの人の気持ちよーくわかりますから。
幸せになってほしいわね。
松下さんにもあの高野加奈子さんにも。
ええ。
あっ。
朝日奈君さねえ小柳君さぁ失礼なんだよ。
怪獣映画でも同じじゃないかってこう言うんだよ!だってそうじゃないですか。
見てないんだから映画。
それでは!ああ。
おいしい。
2014/12/15(月) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
検事・朝日奈耀子3[再][字]

聴診器を持つ女検事、娘を8年間奪われた母!心臓停止55分前!紫の唇が暴く誘拐トリック…

詳細情報
出演者
眞野あずさ、内藤剛志、北村総一朗、深浦加奈子、大島さと子、藤田朋子、筒井真理子、矢島健一、神保美喜、中根徹

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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