(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(三遊亭金馬)ようこそのお越しでありがとうございます。
一席おつきあい願いますが。
いつの時代でも町内の鼻っつまみならず者ってなぁどこの世界でもいつの時代でもいるもんでございますがね。
他人のことを脅かしたりゆすったりして世渡りをするというね。
この長屋にも1人いましたなならず者が。
名前が馬五郎ってんですよ。
であだ名が「らくだ」ってんですがね人間が動物の名前2つ付いてるんですからこれろくな者じゃないですな。
うん。
でまたここへ人が集まってくるってぇと大概同じような奴らでね肩怒らせてやって来て他人の顔ジロッと見て何かうさんくさいのがやって来るんですよ。
「おうらくだおう。
俺だ俺だい。
おいちょっと開けろや。
金儲け持ってきたんだよ。
おうお前に手伝ってもらいてえんだよ。
らくだ。
何だ?いねえのかな?おい。
おらっ。
あらっ?開いてやがる。
何だ寝てるよ。
おいらくだ。
いつまで寝てんだよお天道様が頭の上来てるぜ。
おい起きなよ。
この野郎何してやがる。
ほらおいらくだおい。
あれっ?」。
「あっ冷たくなってやがる。
死んでんだよ。
ええ?何で死んだんだろう?あ〜食い散らかしてあるわい。
そうだ昨晩あの野郎『湯の帰りだ』ってなんか河豚ぶら下げて歩いてやがった。
『これを肴に一杯やるんだ』って。
『よせお前そんな物素人料理でもってあたったら大変だぞ』ったら『な〜にあたるもんか。
俺のほうであててやらぁ』なんて威張ってやがった。
あの野郎河豚にあたって死んじゃったのかおい。
ア〜ア〜ア〜ア〜らくだめ悪い時に死にやがったね〜。
もう少し死ぬ事考えてくれよお前。
お前の野辺の送りしてやりてえと思ったって俺銭が一文も無えんだもんな〜。
困ったなこりゃ」。
「くず〜い屑屋おはら〜い」。
「あっ屑屋が来た。
そうだここの家の物をみんな売ってなんとか銭にしよう。
おい屑屋」。
「へえ〜。
いけねえ。
ここの家は黙って通ろうと思ったんだい。
うっかり言っちゃったよ。
らくださんに捕まると…。
もうしょうがねえな逃げりゃまたあとでいじめられるしな。
今日は駄目だ厄日だ諦めて行っちゃおう。
へいこちら…。
あれっ?こちらあの〜らくださんのお家ですよね?」。
「そうだらくだん家だよ」。
「らくださんお留守ですか?」。
「お留守じゃねえここに寝てらぁ」。
「えっ?ア〜ア〜ハハハそこにお休みになってる?」。
「そう。
お休みになってんのもう一生お休みになってんの。
二度と起きねえんだ」。
「ええっ?どうしたんです?」。
「死んだんだよ」。
「エエ〜ッ!らくださん死んだんですか?何で?」。
「河豚食ったんだよ。
河豚にあたってふぐ死んじゃったんだよ」。
(笑い)「そうですか。
そりゃいい按配…。
ウウ〜ンいえあの〜そうですか?そりゃどうも。
ええ。
でご用ってぇのは?」。
「おうそれで頼みてぇのはなこういうこったい。
俺これの兄ぃとか何とかって言われてるんだけどさ野辺の送りの真似事したいと思ったけど銭が無えんだよ。
それでお前に頼みってのはこの家の物をバッタに売っていくらでもいいんだよ。
金作りてえんだが買って持っててってくれや」。
「アハハハハそうですか。
え〜ありがたいお話なんですけどね実はこちら様の物は何も頂く物は無いんですよ」。
「何だい?そんな事は無えだろう?ほらあそこにほら七輪がね?土瓶もある」。
「いえいえ。
親方ね分からないでしょ?あれ七輪ったって置いてあるから七輪なんですよ。
持ち上げようとするとグズグズグズッて崩れちゃう。
土瓶はこっちから見るから土瓶に見えるけど向こうから回ったら注ぎ口が無いってやつなんですよ。
こちらが頂く物何も無いんですから」。
「そうか。
弱っちゃったな」。
「え〜なんでございます。
あの〜親方まことになんです私今仕事に出てきたばっかりで持ち合わせもいくらも無いんですがまんざら知らない仲じゃないんでこれはお香典じゃないんですけどらくださんのお線香代の足しにして頂いて」。
「おうそうか。
すまねえなおいええ?金使わしちゃって。
俺がもらうんじゃねえかららくだの…おうもらっとく。
おっそうだおい屑屋さんひとつ頼まれてくんねえか?」。
「へえ。
何でしょう?」。
「この長屋の月番がいるだろう?」。
「ええ。
今月は路地の突き当たりの下駄の歯入れ屋さんですけど」。
「そこへ行ってこいや」。
「な何です?」。
「いやほららくだが死んだって知らせてこいよ。
な?で『長屋のつきあいでもってお香典なんてものあるでしょうけどもお香典はできるだけ現金でお願い致します』とね?『物でもらうと困るから』そう言って行ってこいや」。
「あっそうですか。
じゃあ…」。
「おいおいおい。
そんなお前笊背負って秤持って行く事は無えじゃねえか」。
「だって私これ商売道具」。
「商売道具は商売道具だって『死んだ』てぇ使いにお前鉄砲笊とお前秤持って行く奴…。
置いてけよ置いてけてんだよ。
こっちへよこせこの野郎ア〜ッ…。
早く行ってこい」。
「じゃあ行ってきます」。
「どうしたぃ?」。
「行ってきました。
下駄屋さんに行ったらね『らくださんが死んだ』ってったらもう『そりゃなんだ。
よかっ…』。
いいやそんな…。
いやあの〜『よろしく』っていう事でございましてねで『貧乏長屋ですから大した事できませんが後ほどご挨拶に』っていう事で」。
「そうか。
ご苦労だったな」。
「すみません親方すみませんその鉄砲笊と秤下さい」。
「ちょっと頼まれて…」。
「いえいえもう親方勘弁して下さいよ〜。
これからしご…まだ仕事してないんですよね?だからちょっと仕事に行かなきゃならねえんで。
家に嬶と子供と婆と皆口開けて待ってるんで」。
「分かったよ。
だから無理な事は言わねえ。
ちょっと行ってこいってんだもう一軒行ってこいよ」。
「どこへです?」。
「ここの大家の家知ってるか?」。
「ええええ。
これ出てって右っ側へ行って左っ側に四つ目垣のある家で」。
「そこへ行ってこいや」。
「何で?」。
「何でじゃねえや。
『らくだが死んだ』って知らせるんだよ。
でな『今夜通夜の真似事をしたいと思うんですけども大家さんお忙しいですからお通夜に顔出さなくても結構でございますがその代わり大家といやぁ親も同然店子といやぁ子も同様と言いますんでねお通夜の方に水だけでもってお帰しする訳にもいきませんからお酒のいいのを3升ばかりとそれから何かね牛蒡とか人参とかねはんぺんとか蒲鉾とかそういう物を細かく切ってちょっと甘辛く煮たやつを大皿にいっぱい頂きたい』と。
で『あと御飯を2升ばかり届けてもらいたい』とそう言ってこい」。
「そそれ誰が言うんです?」。
「お前が言ってこいってんだよ」。
「アハハ駄目駄目アハハ。
親方知らないからそういう事言ってんですよ。
ええ?この長屋の大家さんは大変なしみったれなんですから。
そんな事言ったってそんなもんくれる訳ありませんよ」。
「いやくれるのくれないのっつったらさ『じゃあらくだの死骸のやり場に困っておりますかららくだの死骸をここへ運んで参りましてその時にご愛嬌に死骸にかんかんのうを踊らせます』そう言ってやれ」。
「そんな事言えませんよアハハ。
そんな事とても駄目ですよ。
親方行って…。
私本当すみません。
鉄砲笊と秤頂いて商売に…」。
「そうか行かねえのかフ〜ン。
じゃあここに置いてあらぁ。
手前で取れ」。
「ええ。
そりゃ親方はねここの大家さん知らないからそういう事言って…」。
「おうおう屑屋」。
「へっ?」。
「お前も随分と命を粗末にするなぁ」。
「はい。
へえへえ行ってきます行ってきます。
あ〜驚いた。
ドスの利く人だね。
『命を粗末にするな』なんて言われてブルッちゃったよ本当にな。
え〜大家さんワア〜ッ怖い顔してるなどうも。
こんちは〜」。
「お〜何だい?あ〜屑屋さんか?まだ屑は溜まってないよ」。
「いえいえ。
そうじゃないんです。
お知らせに伺ったんですけど」。
「何だい?」。
「実はらくださんが死んだんですよ」。
「何?何だって?もう一遍言ってくれ。
らくだが死んだ?死んだ?本当に死んだのか?ええ?間違いなく死んだのか?生き返りゃしねえか?頭潰したか?」。
「いや。
ゴキブリじゃないですからね」。
(笑い)「あの〜昨日河豚食べて河豚にあたって死んじゃったそうですよ」。
「そらぁいい河豚にあたったな〜」。
(笑い)「そりゃよかった。
そうかい。
それでわざわざお前知らせに来たのか?」。
「いえ。
そこになんですらくださんの兄貴分という人がいましてね『大家さん所へ使いに行ってこい』って」。
「あ〜そうか。
ああいうねならず者でもまぁなんだけじめがきちんとしてるもんなんだよななにか?『らくだの家賃が溜まってたらいくら溜まってたか聞いてこいそれ払ってやる』って言ったのか?」。
「そんな事言わないですよ。
怒らない…私が言うんじゃないそこの兄ぃ分が言うんですから兄ぃ分がええ。
でというのは『今夜その〜らくださんの通夜の真似事をしようと思うんですけど大家さんはお忙しいからおいで頂かなくとも結構で…』」。
「当たり前だよ誰が行くかいそんなもの行かないよ」。
「それで『ついてはお通夜の方にえ〜水でお帰り願う訳にいかないから…』これ私が言うんじゃないですよ。
その人が言うんですからね。
『いいお酒を3升ばかりとそれからあの〜牛蒡とか人参とかはんぺんとか竹輪とかそういう物を細かく切って甘辛く煮たやつを大皿にいっぱいとお飯を3升ばかり届けてくれ』ってこう言うんですけどね」。
「お〜い屑屋さん。
お前ね子供の使いかよ?ええ?何だ?それ。
そんな事言われなく…。
お前ね分かるだろ?あのらくだって野郎は。
あいつはお前な俺の長屋へ来てどんな悪い奴でも初めの一月ぐらいは家賃払うもんだよ。
それをあいつはこれ2年何か月一つも払わねえ。
二十いくつ溜まってんだよ。
冗談じゃねえや。
ええ?まぁとにかくね死んじゃったんならいいよ。
『店賃は棒引きにしてやるからそれは香典代わりだって。
でらくだの死骸持ってどっか行ってくれ』ってんで早く言ってこい」。
「あっそうですかへい。
行ってきました」。
「どうした?」。
「フフフ駄目です。
親方全く駄目です。
あれだってらくださんは家賃二十いくつ溜めてんですってね」。
「当たり前だばか野郎家賃なんて払うもんじゃねえや」。
(笑い)「溜めるもんだよ。
それがどうしたぃ?」。
「それがねまぁ『溜まってるのにねそんな事する訳にいかない』ってんですよ。
ええ。
で『店賃は棒引きにしてやるから死骸持って早くどっか行ってくれ』ってんですよ」。
「どうしたぃ?ええ?らくだの死骸持ってくって言ったのかい?」。
「いえいえ。
あの〜…。
あ〜そういうのがありましたね」。
「言ってこいよこの野郎」。
「また行くんですか?嫌だな〜もうのべつそういう事言って…。
あの〜大家さん」。
「また来やがったな。
何だい?」。
「いえなんか『どうしても駄目って言うんならですねらくださんの死骸のやり場に困っておりますからここへ死骸を運び込んで死骸のかんかんのうを踊らせますよ』って言ってんですが」。
「あ〜そうかい。
面白いね〜。
やってもらおうじゃねえか。
ええ?な〜?婆さん。
死骸がかんかんのう踊るって見た事無えやな?『そんな事で驚くような大家じゃない。
さっさと退いてくれ』そう言ってこい」。
「ヘイヘイヘイヘイ。
あっち行ってどなられこっち行ってどなられ嫌になっちゃうな。
行ってきました」。
「どうした?」。
「え〜強い大家さんですね。
そう言って話したらね『死骸がかんかんのう踊るなんて見た事ねえから見てえ』ってねで驚かないんですよ」。
「フ〜ンそう言ったのか?」。
「そう言ったんですよ」。
「おう屑屋。
その土間へな向こう向いて座れ」。
「ええっ?」。
「そこへ座れ」。
「ここへ座るんですか?ええ。
いや〜あの大家さん駄目です。
ウア〜ッハア〜ッハア〜ッウッ何?何ですか?背中冷たくなってここれ腕が出て。
ハア〜ッア〜ッらくださんの顔がここにある」。
「ほらっこの野郎らくだの死骸背負って立て」。
「いえいえ。
た立てません腰が抜けて」。
「この野郎どてっ腹穴開くぞほらっ立て」。
「ウア〜ッはいはいっ」。
「ほらさっさと歩けほら。
さっさと歩けほらほらどんどん歩けほら。
どこだ?大家の家ってぇのはどこだ?さぁ歩けほらな?どこだ?ここか?よ〜しじゃあ死骸受け取ってやるからなおう戸開けてなそこでもってお前かんかんのう歌え」。
「いえいえ。
うたっうたっ…そんな事できません」。
「この野郎やらねえとぶち殺すぞ」。
「ア〜ア〜ア〜やりますやりますやりゃいいんでしょ。
かん…」。
・「かんかんのうかんかんのう」・「きゅうのれんすキュッキュラキュ〜の」「おらっドッコイおらっそらっお望みだ〜。
おらっ死骸のかんかんのうって…」。
「ダ〜ダ〜ダ〜ッオウッワア〜ッお婆さんお婆さん。
逃げるんなら私も一緒に逃げるよ。
分かった分かった。
すみません。
いやおお見それ致しました。
お仰るとおり致します。
どうぞどうぞお引き取り下さい。
どうぞお引き取り下さい。
どうも相すみませんで」。
「ほらっエエ〜イほらっ。
ア〜ッ。
屑屋。
ご苦労だったな」。
「ハア〜ッハア〜ッ。
あ〜気持ち悪いいまだに背中冷っこくてエエ〜ッエエ〜ッ。
これでいいですね?エヘッ。
あの〜すみません。
旦那鉄砲笊と秤を」。
「おう。
ちょっとすまねえけどなもう一遍行ってこい」。
「いえ〜。
勘弁して下さいよ。
家にね女房と子供が3人婆と5人が口開けて待ってるって…」。
「分かったよ〜。
もう1回行ってこいってんだよ。
無理は言わねえ1つだけだ本当に…本当に1つだけ」。
「そうですか?な何やろうってんです?」。
「お前そこに漬け物屋があるだろう?」。
「ええ。
大きな漬け物屋あります」。
「あそこへ行ってな漬け物樽のな大っきいの古いのもらってこい」。
「へえ。
何するんです?」。
「何するんじゃねえや。
見たら分かるだろう?ええ?らくだの死骸そこへ入れて早桶代わりにして焼き場へ持ってくんだぃ」。
「あ〜そうですか。
くれるかな?」。
「くれねえったら借りてこいよ。
『使ったら返す』ってそう言ってやれ」。
(笑い)「返されても困ると思うんですけどもね。
ええじゃあ行ってきます。
あの〜こんちは親方」。
「お〜屑屋さん。
らくだが死んだんだって?ええ?ありがてえな。
今町内中大喜びだよ。
うん。
でお前方々知らせて歩いてんだって?親戚か?」。
「あっいやいやいや」。
(笑い)「ウ〜ンらくださんの兄貴分という人がいましてねそれで『あそこ行ってこいこっち行ってこい』ってこき使われて」。
「ばかだな〜お前逃げちゃえよ」。
「逃げたいと思っても鉄砲笊と秤取られちゃったからねだからンフッ逃げる訳にいかねえんですよ」。
「しょうがねえ。
何だ?俺ん所へ知らせに来たのか?」。
「いえ。
そうじゃなくて親方ん所の古い漬け物樽大っきいの1つ下さい」。
「何?どうすんだよ?」。
「え〜らくださんの死骸入れて焼き場へ持ってこうってんですよ」。
「やらないよ。
冗談言っちゃいけねえや。
ほらなお前知ってんだろ?あのらくだって野郎ええ?家なんか湯の帰りしょっちゅう通って気に入った物パ〜ッと持ってくんだよ。
『お勘定を』ってぇと『何をこの野郎』ってすぐ暴れ出すんだよ。
おっかないからしょうがねえもう持ってくの黙って見ててどれくらい持ってかれたか分かりゃしねえや。
そんな野郎によ俺の所の樽が腐ったってやる訳いかない。
やらないよ」。
「そうですか。
いやあの〜借りてこいってんですよ『使ったら返すから』って」。
「返されたって使い物にならないよ。
やらないよ」。
「じゃあア〜ッいや『くれるのくれないのって言ったら』あの〜『らくださんの死骸をこちらへお持ちしてでその死骸にその時ご愛嬌にかんかんのうを踊らせます』って言うんですけどね」。
「あ〜そうかい。
ヘエ〜ヘヘヘヘ面白いね。
ええ?ハア〜死骸がかんかんのう踊るなんて俺見た事は無えや。
ここでやったら人集めになっていいやなおう『やってくれ』そう言ってくれ」。
「あっそうですか。
こうお座敷が多くて困っちゃうな」。
(笑い)「おおい。
ちょいと待てちょいと待て。
お座敷が多いってお前どこかでやったのか?」。
「ええ。
長屋の大家さん所行ってやったんですよ。
大家さん腰抜かしちゃってお婆さん四つん這いになって裏から逃げ出したんです」。
(笑い)「樽持ってっていいよ」。
(笑い)「ええ?死骸持ってくるんじゃねえよ。
だだからいい樽は駄目だ一番古いの持ってけ」。
「すみません樽縛るんで縄ももらいたいんで」。
「いいから持ってけそんな物は」。
「差し担いになると思うんですがあとで清めて返しますが天秤棒も1本」。
「分かったよ〜持ってけよ〜。
死骸持ってくるんじゃねえぞ分かったか」。
「ウウッ。
親方。
行ってきました」。
「おうご苦労だった。
どうだった?」。
「え〜あの〜アハッくれるのくれないのって言ったんですけどねちょいと『あとでもって死骸持ってきてかんかんのう踊らせます』ってたらねエヘヘ慌ててくれたんですよ」。
「お前もゆすりがうまくなったな。
な〜」。
(笑い)「樽はどうしたぃ?」。
「ええあの〜なんです今井戸端へ持ってってたが緩んでましたから水張ってしっかり締まってるとね。
であとで縛るように縄ももらってきてあるんで差し担いの天秤も借りてきてきました」。
「いろいろ気が付いたなああ」。
「じゃあ親方これでいいですかね。
あの〜笊と…」。
「いやちょっと待てよ」。
「親方勘弁して下さいよ。
私商売まだ何もしてないんですから。
家帰って嬶と子供と…3人子供がいてね婆…」。
「分かったよだからさっきから聞いてるよ。
いいやまぁまぁ話聞けよええ?今長屋からなあれだよ『お香典』て届いたんだよ。
それで今大家の婆がな酒と煮しめと持ってきたよ。
うん。
アア〜ッまずい酒だったら突き返してやろうと思ったけど一口やったら割かしいい酒だったからなだからそれ勘弁してやったんだけどさな?どうだ?お前も一杯やれや」。
「いえいえ親方私もう酒は飲めねえんです本当に。
仕事に行きたいもんですから」。
「いいじゃねえか飲みなよええ?飲めよ。
しかしお前死骸担いだんだろ?お清めだお清め」。
(笑い)「一杯ぐらい飲んでけこの野郎。
飲めよ」。
「ア〜ア〜いい頂きます頂きますから。
じゃあじゃあじゃあ少し少しだけ。
ワ〜ッエ〜ッ駄目そんなに飲んじゃこんないっぱい注いじゃっちゃ。
じゃあお清めで一杯だけ頂きます。
うん」。
「エ〜ッご馳走さまで」。
「いい飲みっぷりじゃねえかよ。
飲めるんだろ?うん?じゃあもう一つやれ」。
「いいいい。
もう親方勘弁して下さいよ。
ね〜?子供が3人に…」。
「分かってるてんだよ。
ええ?まぁいいさもう一杯ぐらい飲めよ飲めてんだよ。
おとなしく言ってるうちに飲みな」。
「ウウウッはいええええ。
じゃあもう一杯だけもう一杯だけ。
エエ〜エ〜ッ。
じゃあ頂きます。
うん」。
「いいお酒ですね」。
(笑い)「エヘッ大家のあそこのおかみさんびっくりしたんですね。
こんないいお酒買ってくるんじゃもう。
大家さんも珍しいこんな酒うん」。
「ア〜ッ。
どうもごち…」。
「おいおい。
何だい人がチビチビやってるの目の前でガブガブガブガブ飲んじゃっちゃ俺は置き去りになっちゃうじゃねえかよ。
な?おう『駆けつけ三杯』だもう一杯…」。
「いえ。
もう勘弁して下さいよ婆と嬶と子供…」。
「分かってるよおらっ。
何言ってんだ。
おい飲めよ。
飲まねえのか?」。
「いいや。
頂き頂きます。
じゃあええもう一杯だけええ。
エッエッエッもう少し…。
イヤ〜ア〜ッウッすみません頂きええ頂きますうん」。
「えっ?えっ?あ〜ありがとうございます。
あっ煮しめヘエヘエ。
ええ。
あっこれお芋ウンフンフン。
うん。
フフフ上手な味付けですね。
うん。
あそこのおかみさん煮物上手だ本当に。
うん」。
「ア〜ッ。
だけど親方あなた偉い人だねええ?ウ〜ン兄弟分の面倒を見るったってねここまで面倒見る人いませんよ。
ええ。
私もね他人の面倒は見る事ありますけどね面倒見るってなぁこれやっぱりね銭もなくちゃいけねえんだよええ?だけど親方一文無しでこれだけやるんだもの」。
(笑い)「ヘヘヘ偉いね本当にさエヘヘヘ。
らくださんもあなたみたいな方がねエヘヘ兄弟分にいて幸せだよねエヘヘヘヘヘ本当にさウンウン」。
「ア〜ッ。
アハッね〜らくださんも威勢よかったんですどねエヘヘ死んじまやぁお終いでこんなもんですねエヘヘ。
ええ?あ〜そうですか。
すみませんヘエヘエはいヘエヘエ。
あっエッエッエッアイッ。
いや〜アハハハ今思ってみりゃねこの人には随分いじめられたんですよアハハハ」。
「何しろねまぁやる事はねこすっからいんだよ本当にさ。
でまた私もねばかだからすぐひっかかっちゃうアハッ」。
「ある時ね『屑屋。
おう丼のいいのが5つ揃ってるぞ買わねえか。
ああ50文でいい』なんて。
ええ?だってさぁ50文で丼5つ買えりゃそりゃ大儲けですよ。
私はね『どの丼です?』っつったらね『そこの流しの所に置いてある。
これだ』。
見たらいい丼なんですよ。
『あ〜そうですかじゃあ頂きますが』。
『金出せ』って言う。
その時ね気が付きゃよかったんだよね。
うん。
でもさ50文で売るなんて言うからそれで夢中になっちゃってさアハハハハ先金渡したんですよ。
金渡したらね『じゃあそれ持ってけ』って言う。
傍へ行ったの傍へ。
そしたら丼の中にね『尾張屋』って書いてあるんですよ。
ね?この先のね蕎麦屋の丼なんです。
『あんたこれ尾張屋さんの丼だけどさこれあの〜私が持ってってもいいんですか?』ってったら『いや悪いと思ったらお前断わりに行ってこい』って言うんです」。
(笑い)『いや駄目だよこの品物頂く訳にいかねえよ』っつったら『金返して下さい』っつったら『もらったら俺のもんだ。
この野郎』ってんでね拳振り上げたんででそれで50文まる損ワハハハハハハハハハハ。
ちゃらいちゃらい本当にさ。
ウンウンウン」。
「ア〜ッだけどまぁ死んじゃえやそれまでのもんだなうん。
うん本当にさアハハハハ。
ウウィッウウィッ。
おいおい。
無いよほら」。
(笑い)「ぼんやりするなよ注げ」。
「お前そろそろ商売に行かなくちゃいけねえんじゃねえか?」。
(笑い)「何をっ商売だ?コンチクショーメ。
行こうが行くまいがこっちの勝手じゃねえかふざけやがって何だこの野郎。
出せ出せよその酒。
お前一人で稼いだ酒じゃねえだろう!グズグズするない出せ」。
「おうおうっお前酒癖良くねえなお前な」。
(笑い)「おうおうじゃあこれ」。
「ケチケチするないばか野郎。
俺が死骸担いでやったからこの酒が手に入るんだ。
何言ってやんでぇチクショーメ…」。
「このらくだって野郎ももう何遍ぶち殺してやろうかと思ったんだ。
悔しいからな家へ帰って『らくだの野郎明日は叩き殺してやる』っつったらおふくろがさ『兄ちゃん兄ちゃん。
兄ちゃんね怒るととんでもない事になるからよまぁ堪忍しなよ堪忍しなよ』って俺に泣いて言うからさしょうがねえ今日までズ〜ッと生かしておいてやったんだ。
クア〜ッこんな野郎なんてとっくにあの世へ行ってんだ。
ふざけやがって。
うん」。
「まぁ何かの縁だこの野郎が死んだのはな。
おう兄弟。
俺はもう帰らねえよ俺は」。
(笑い)「ああ?お前なんだろう?偉そうな事言ってるけどなんだこんな死骸を扱った事無えんだろう?ええ?湯灌のしかた知ってんのかい?」。
「いやいやそう…そう言われると俺もな死人ってなぁあんまり扱った事は無えもんだからさよく分からねえんだけどどうしようかなと思って」。
「何を言いやがるざまあみやがれ手前みたいな青二才に何もできる訳ねえか。
うん。
俺なんざな随分死人扱ったからいろいろ知ってんだよハッ。
おうこいつお前の兄弟分だろ?湯灌してやれ湯灌をよ」。
「おうおう。
湯灌てどうする?お湯沸かすのか?」。
「…ってやがるいいんだよお湯なんか沸かさなくったって。
体雑巾がけしてやりゃいいんだから」。
(笑い)「おう。
水汲んでこいよ。
そこ手桶があるだろ?井戸端行って早く水汲んでこい!グズグズすんな!」。
「おっオ〜オ〜オ〜」。
(笑い)「水どうする?」。
「この野郎どうするもへったくれもねえだろう。
雑巾があるだろう。
雑巾でよ雑巾で絞って体拭いてやれ。
ぞう…。
ええ?雑巾。
何を?雑巾が無え?チェッチェッ貧乏人だぜ。
え〜しょうがねえおらっ何で損するか分からねえや。
おらっ手拭いこれくれてやらぁそれで体拭け。
もっとキュッと絞って拭くんだよ。
タ〜ッお前の兄弟分だ丁寧に拭いてやれ。
うん」。
「ア〜ッしょうがねえ焼き場へ運んで…。
ア〜ア〜ア〜ッコンチクショー頭の毛ボウボウ伸ばしてやがって。
あ〜この頭じゃあの世へ行ったって極楽…。
どっちにしたって極楽なんかヒャック行けねえけどよ。
ええ?ちょっとおい毛剃って坊主にしてやらないと仏にならねえな。
おいおい。
ちょっと刃物持ってこい刃物。
ば〜か。
菜っ切り包丁持ってきて剃刀の代わりになるか。
いやいや探せ。
無きゃいいよ路地の入り口の所は女所帯だ。
あそこへ行きゃ剃刀の1丁や2丁はあらぁ。
あそこへ行ってな剃刀借りてこい」。
「いや借りてこいったって俺この長屋の人知らねえから貸してくれるかどうか」。
「何?貸すの貸さねえのって言いやがったらな死骸持ってってかんかんのう踊らせてやれ」。
(拍手)2014/12/14(日) 14:00〜14:30
NHKEテレ1大阪
日本の話芸 落語「らくだ」[解][字]
落語「らくだ」▽三遊亭金馬▽第663回東京落語会
詳細情報
番組内容
落語「らくだ」▽三遊亭金馬▽第663回東京落語会
出演者
【出演】三遊亭金馬,斎須祥子,瀧川鯉○,金近こう,三遊亭遊松,柳家小はぜ
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:28127(0x6DDF)