日本三景の一つ天橋立。
海の中に延びた砂地です。
一帯に生えるクロマツは見事な景観をつくり上げています。
秋。
豊かな恵みを求めて集まる鳥たち。
砂地に育つ多様な植物は多くの命を支えます。
初秋から晩秋。
天橋立で繰り広げられる生き物たちの営みを見つめます。
京都府の北部丹後半島の付け根に位置する宮津湾。
この湾の奥にあるのが天橋立です。
全長は3.6km。
細長く延びた砂州が外海と内海を隔てます。
宮津湾の潮の流れと山から注ぐ川の流れがぶつかり砂れきや土砂がたまる事で天橋立はつくられました。
独特の地形を彩るのはクロマツ。
黒みを帯びた幹と緑の葉が鮮やかなコントラストを描きます。
砂地に続くクロマツの並木。
幹の太さが10cmを超える松の数はおよそ5,000本にもなります。
砂地の幅は狭い所では20mしかありません。
外海から並木道を挟んで反対側の内海まで見渡す事もできます。
外海側に広がる砂浜を走る鳥がいました。
細いくちばしを砂に差し込んでゴカイなどの食べ物を探します。
南へと渡る途中に立ち寄ったようです。
(波の音)砂浜に現れたのは…砂の上や草陰に潜む虫を狙います。
松の枝先から辺りを見回すのはカワラヒワです。
地面に降りてきました。
太く短いくちばしで草や実をむしり取るようにして食べます。
砂浜には鳥たちにごちそうを与えてくれるさまざまな植物が育ちます。
こちらはイネ科の植物…穂にたくさんの実をつけます。
こちらは主に寒冷な地域で育つ植物ハマナスです。
天橋立では異なる環境を好む植物を同時に見る事もできます。
すぐそばに主に温暖な地域で育つ植物を見つけました。
実の中には粘りけのある種があり実をついばんだ鳥の体に付いて遠くまで運ばれます。
天橋立を訪れる鳥はおよそ300種類。
その鳥たちが種を運ぶ事もありさまざまな環境を好む植物が入り交じって育っているのです。
天橋立は鳥たちでにぎわうようになります。
はるか上空をカモが飛んでいます。
天橋立で仕切られた内海は波が穏やかで渡り鳥が羽を休める格好の場所となっています。
シベリア方面から渡ってきたカモの仲間ホシハジロです。
水に潜るのが得意で主に魚や貝を食べます。
長い時には30秒くらいは潜る事ができます。
貝をくわえて上がってきました。
そのまま飲み込みます。
主にシベリア方面から渡ってくると考えられています。
逆立ちするようにしてメスが食べ物の水草を探しています。
内海は外海よりも塩分が少なく川から運ばれる栄養分もたまりやすいため水草も多く生えます。
ミサゴが現れました。
ミサゴは魚を専門にとるタカの仲間です。
魚の豊富なこの内海では冬を過ごす事もあります。
もう1羽ミサゴが現れました。
くいの上にいたミサゴが後から来た1羽を追い始めました。
魚を狙う場所を争っているようです。
多くの獲物がいる内海。
でもライバルとの争いは少なくはないのです。
岸から50mほど離れた場所に鳥が集まっています。
ウミネコです。
さざ波があっても群れは全く動きません。
よく見ると足が見えています。
潮が引くとこの辺りまで浅瀬になるのです。
内海のところどころに現れる浅瀬。
こうした浅瀬が多いのは天橋立の南にある大江山連峰とも深い関わりがあります。
大雨が降ると山からの土や砂は川に流れ込みます。
そして内海へと注ぐ野田川によって運ばれます。
内海は天橋立に仕切られているため運ばれた土砂は外海に流されにくく内海にとどまって浅瀬をつくるのです。
魚や水草をとりやすい浅瀬。
内海は鳥たちに暮らしやすい環境を与えているのです。
深い緑に包まれた天橋立。
ここではマツの他に広葉樹も1,200本ほど育っています。
こうした広葉樹も鳥たちが種を運ぶ事などによりこの地に芽吹いたと考えられます。
高さ10mを超えるスダジイの巨木がありました。
この林が形づくられてから長い年月がたっている事が分かります。
新たに芽吹いた木を見つけました。
ツバキの若木です。
こうした若木が次々と育つ事で広葉樹の林が保たれます。
広葉樹の他にシダの群生も見られます。
普通山の中で見かける広葉樹やシダの仲間。
こうした植物が海辺の砂地に育つのは地中を流れる水に秘密があります。
林の一角にある井戸。
山から流れてくる地下水が湧き出しています。
天橋立の地下には真水の層があるため多様な植物が生きていけるのです。
天橋立は山と海がひとつながりになった場所とも言えるのです。
秋の深まりとともにクロマツにも変化が現れました。
枝先に伸びた冬芽。
来年の春ここから新たな葉や枝が芽吹きます。
内海にも冬の訪れを告げる鳥が現れました。
多い年には60羽ほどのコハクチョウがこの穏やかな水辺で冬を過ごします。
さまざまな命が輝く天橋立。
多様な自然環境が植物を育み鳥たちを養っていました。
大江山連峰に日が沈みます。
天橋立は間もなく本格的な冬を迎えます。
2014/12/15(月) 15:46〜16:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「天橋立」[字]
京都府宮津湾に伸びる砂州、天橋立。地下では真水が流れるため、多様な植物が育つ。宮津湾と区切られた内海には渡り鳥の姿も多い。秋の天橋立で生きものの営みを見つめる。
詳細情報
番組内容
京都府の宮津湾に伸びる全長3.6キロの砂州・天橋立。砂浜を覆う5000本のクロマツと白砂が織りなす優美な景観は「日本三景」の1つとして知られている。砂州には地下水脈が流れているため所々で真水が湧き、ハマナスや広葉樹の木々などさまざまな植物が育つ。こうした植物の果実を求め、鳥が林を飛び交う。天橋立で宮津湾と区切られた内海には渡り鳥の姿も多い。初秋から晩秋、移ろいゆく生きものの営みを天橋立で見つめる。
出演者
【語り】望月豊
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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