(麗子)う〜んどれにしよっかな。
(影山)どれもお似合いになるかと思いますが高価な宝石を着けてどちらへ行かれるのでございますか。
(麗子)テレビ局よ。
これにしよっと。
テレビ局。
うん学生時代の先輩が歌舞伎役者で今度ドラマに主演することになったの。
それでその制作発表パーティーに友達と一緒に誘ってもらったの。
まさかその役者のお名前は。
染田松五郎。
何と七代目染田松五郎とご学友でございましたか。
私もぜひ高校時代の松五郎を拝見してみたいものでございますね。
あらあなたタマちゃんのファンだったの?タマちゃん。
ああ屋号の玉乃屋からとったのでございますね。
へえあなた歌舞伎にも詳しかったのね。
はい。
高1のときにね学校の行事で歌舞伎見学に行ったんだけどその舞台に染田先輩が出ていたの。
そうしたら。
そこで初めて先輩の屋号を知ったんだけどそれ以来みんなタマちゃんって呼ぶようになったってわけ。
染田松五郎といえば名門玉乃屋の名跡。
それをタマちゃんとお呼びになるとはなかなか粋でございますね。
まあでもみんな本人の前では普通に松五郎先輩って呼んでたけどね。
うちの学校は付属だから大学までずっとタマちゃんと一緒だったんだけどタマちゃんはとにかくモテたわけ。
高1のとき友達から預かったラブレターをタマちゃんに渡したことがあってそれで私は知り合いになったの。
(松五郎)《気持ちだけ頂いておくよ》そういえばあのときは結局受け取ってもらえなくて。
そんなこと友達に言えないし手紙を捨てるわけにもいかないしホント困ったのよね。
で大学に入ってからタマちゃんと同じゼミになって仲良くなったの。
なるほどそういうことでございましたか。
さすがはテレビ局でございますね。
出待ちの方がたくさんいらっしゃいます。
私が降りたらどんな反応かしら。
女優と間違われたりして。
(悲鳴)あっ。
(一同)あっ。
お嬢さま。
(一同の笑い声)影山。
はい。
今私は転んだのかしら?何のことでございましょう。
お嬢さまは今車から降りられただけでございますが。
そうよね。
私もそんな気がするわ。
ではいってらっしゃいませ。
今日はついてこないでよ。
お友達と会うだけなんだから。
承知いたしました。
私もこの後ちょうど私用があります故。
あっそう。
じゃ。
(夏希)相変わらずそそっかしいな麗子。
見られてたか。
中学時代からの友人宮本夏希
代々医者の家系でさばさばした性格の姉御肌
(麻衣)大丈夫?
(雛子)麗子さん足首90度くらい曲がってましたけど。
大丈夫よ90度に曲がるわけないから。
天然キャラの森雛子。
お父さまは商社マン
高校1年の秋に海外の学校から編入してきて今でもみんなに敬語を使っている
私たちの中で一番控えめな性格の木崎麻衣
お父さまは日本画の巨匠木崎観山お母さまは書道家木崎万葉という芸術一家の一人娘
《まだこの3人に見られたのは許せる》《しかし》・
(綾華)オホホホホホホ。
地べたにはいつくばるなんて恥ずかしいにも程がありますわね。
運動靴に履き替えていらしたらどうかしら?
桐生院綾華。
歴史ある桐生院財閥の令嬢でいつも私と張り合ってきたあしきライバル
(綾華)やっぱり宝生家と桐生院家では格が違うということね。
家柄関係ないし。
(夏希)またケンカかよ。
(雛子)ホント姉妹みたいに仲が悪いですよね。
(夏希)さあ行こうか。
(麻衣)うん。
(雛子)はい。
(ため息)
(麻衣)ちょっと早く着いちゃったみたいだね。
(綾華)で麗子これはいったいどういうことかしら。
えっ?
(綾華)丸かぶりじゃない。
胸の宝石まで一緒じゃん。
完全に狙ってるわね。
たまたまに決まってるでしょ。
(雛子)あっあの人も。
(夏希)赤いドレスに赤い宝石。
(雛子)はやってるんですね。
(麗子・綾華)はやってない。
まあまあむきになんない。
あっ。
タマちゃん相変わらずカッコイイ。
そういえば私いいこと聞いちゃった。
タマちゃん結婚するんですって。
(一同)えっ。
綾華は相変わらずそういう情報早いな。
ねえねえ相手は?
(綾華)詳しくは分からないんだけど年上で同じ業界の人らしいわよ。
へえ。
(綾華)この会場にいるんじゃないかしら。
(夏希)えっ誰?誰誰。
麻衣さん?あっ大丈夫?麻衣。
(麻衣)あっごめん。
何だか具合悪いから先帰るね。
じゃ下まで送ってくよ。
どうしたんだろう急に。
雛子麻衣と仲良かったでしょ?何か知らない?
(雛子)あっさあ。
(松五郎)やあよく来てくれたね。
あっ先輩おめでとうございます。
(綾華・雛子)おめでとうございます。
ありがとう。
あっ楽しんでってね。
(綾華)あの人誰だったかしら。
先輩のお姉さんの瑞穂さんよ。
何度か会ってるでしょ。
あっ今は染田一門を切り盛りされているとか。
(瑞穂)お久しぶりね麗ちゃん綾ちゃん。
確か青山のお店のオープンパーティー以来だから半年ぶりかしら。
こんにちは瑞穂さん。
ごきげんよう。
(瑞穂)それに雛子さんも。
こんにちは。
夏希さんと麻衣さんは?あっあの今ちょっと。
そう。
とにかく今日は弟のためにありがとう。
ゆっくりしてってね。
・
(風祭)フフ俳優じゃなくて刑事ですよ。
(男性)これは失礼刑事さんでしたか。
(松五郎)僕のわがままで今回の警察監修はリアリティーを追求するために現職の刑事さんにお願いしたんです。
(風祭)え〜私日本一ドラマティックな刑事として白羽の矢に打ち抜かれてしまいました風祭京一郎と申します。
業界の皆さんシクヨロ。
何でこんな所まで。
・本日はおめでとうございます。
私松五郎さんの大ファンでございまして。
(瑞穂)そうですか。
影山さん今日はお忙しいところお越しいただきありがとうございます。
楽しんでいってくださいね。
ありがとうございます。
すみません。
んっ何であなたがここにいるのよ。
今日はついてこないでって言ったでしょ。
私も招待されていたというだけでございます。
あなたもタマちゃんの知り合いなの?いいえまったく。
一言おめでとうと言いたかったものですから宝生グループの力を使って強引にチケットを。
勝手に力を使うな。
あっ旦那さまの許可はちゃんと。
もう今度ちゃんと紹介してあげるからとにかく今日のところは私の前から消えて。
しっしっしっ。
ホントでございますか?では失礼いたします。
(ため息)
(西山)あの宝生さん。
あっちょっとお話ししたいことがあるんですけどいっいいですか?
(西山)お久しぶりですね。
あの1つ聞いてもいいですか?
(西山)どうぞ。
あなた誰?えっ?あっあそっそうですよね僕のことなんて覚えてないですよね。
高1のとき同じクラスだった西山です。
今は染田先輩の付き人をさせていただいてます。
西山君?ええ。
ごめん思い出せない。
あっ。
あっ僕女子とはほとんどしゃべってなかったんで。
でも宝生さんとは1回だけしゃべったことがあります。
(西山)《あの森雛子さんのことなんですけど》《雛子?》
(西山)《雛子さんはそのすっすっすっ好きな人とかいるんでしょうか》《ああこの間タマちゃん宛てのラブレター渡されたけど》《松五郎先輩ですか》ごめんまったく思い出せない。
(西山)僕にとっては生涯忘れられない瞬間でしたけど。
で9年ぶりに会って今度は何の用?あの1つお聞きしたいんですが今でも雛子さんはその染田先輩のことがすっすっ好きなんでしょうか。
ああさっき。
(雛子)《タマちゃん相変わらずカッコイイ》って言ってたからまあ好きなんじゃない?何?あなたまさかまだ雛子のことを。
はい。
9年間もずっと?はい。
少しでも雛子さんの憧れの人に近づこうと染田先輩にお願いして付き人にまでさせていただいたんですけどやっぱり僕は僕なので変わりようもなく。
重い。
何だかそのストーカー体質良くないって。
あっはあ。
当たって砕けてみなよ。
砕けるの前提で話すのやめてくださいよ。
(瑞穂)はいおかげさまで今日制作発表に。
ええ新春舞台のスケジュール大丈夫ですので。
ぜひお付き合いよろしくお願いします。
はいはい失礼します。
・
(瑞穂)キャー!・
(セットの倒れる音)おっ。
今の。
あっスタジオの方で。
うん。
瑞穂さん?
(松五郎)姉貴。
瑞穂さん分かりますか?
(松五郎)おい姉貴。
瑞穂さん。
(瑞穂)麗ちゃん。
何があったんですか?急にセットが倒れてきて振り返ったら知らない女が。
知らない女?でもどこかで見たことあるような。
特徴は。
赤いドレス。
それと胸に赤い宝石が。
もうこれくらいで。
僕が付き添います。
発表会は延期にしましたのでご心配なく。
大丈夫だよ骨折はしてないって言ってたから。
・
(救急車のサイレン)あっいた。
影山。
し〜。
お嬢さま私は今ティータイムでございます故。
えっ?あっちょっとこれ私の卒業アルバムじゃない。
何勝手に持ってきてるのよ。
あっ高校時代の松五郎を拝見できるかと思いまして。
写ってるわけないじゃない2年も先輩なんだから。
残念でございます。
もういいからとにかく急がないとまずいのよ。
お嬢さまにおかれましては何やらのっぴきならない事態に巻き込まれているご様子。
しかしながらティータイムだけは執事の権利として。
じゃくつろぎながらでもいいから聞いて。
タマちゃんのお姉さんが襲われたの。
それで風祭警部と一緒に捜査することになって。
《瑞穂さんはこう証言していました》《犯人は知らない女だった。
でもどこかで見たような顔だったと》《フッそれは矛盾だね。
おそらく混乱していたんだろう》《いいえ瑞穂さんの言うとおりだったのでは?》《パーティーには大勢のお客さんが来ます》《その大半が知らない人ですよね》《でもどこかで顔を合わせる》《そのとおり。
僕も最初からレイちゃんと同じことを考えていたよ》《つまり犯人はパーティーの参加者の中にいる》《分かっていて言わなかったのはもしかして僕たちが気付くのを待っていてくれたんですか?》《ザッツライツ》《何て器のでかい男なんだ》《はい》
(ため息)《目撃証言によれば犯人は赤いドレス姿胸に赤い宝石を着けていた》《足止めしたパーティー客の中から条件に合った人物を選び出すんだ》《分かりました》《ちょっと待ってください》《宝石のことは秘密にしませんか?》《どうしてだ》《その情報をこっちが知っているとバレたら犯人は宝石を外してしまうかもしれません》《オールライツ。
あえて僕が気付かないふりをしていたことによく気付いたね》《合格だよレイちゃん》《くそ俺は刑事失格だな》《松五郎君》《はい》《宝石のことは言わずに条件に合った女性を集めるんだ》《はい警部》《さすが役者刑事になりきっている》《しかしレイちゃんとは波長が合うね》《初めて一緒に捜査をしたとは思えないよハハハハハ》《そうですか》でその後条件に合う女性が集められたの。
《オールライツ》《彼女たちはご友人ですか?》《ええみんな瑞穂さんの知り合いですが》《皆さんの6月のご予定は?》《え〜と雛子の誕生日があるぐらいですけどそれが何か》《結構ではレイちゃん式の日取りはやはり6月ジューンブライドということで》《はっ?》《何で私たちだけ残されんのよ》《夏希さん》《実はケガをされた瑞穂さんが赤い服を着た女性が逃げていくのを見たと証言しておりましてね》《あらそれだったらもっと大勢いたんじゃありませんの?》《それが落ち着いた色合いの装いが大半で赤いドレスなどという張り切り過ぎた格好の方はそれほど》
(3人)《張り切ってません》《まあそう興奮なさらず》《それに全員を疑ってるわけではありません》《僕にはすでに犯人の絞りこみができていますからね》《何ですって?》《ところであなたは?》
(永瀬)《永瀬千秋。
モデルだけど》《被害者の手代木瑞穂さんをご存じですか?》《さあ》《はいはいはいはい》《いよいよクライマックスだ松五郎君》《えっ》《ところで永瀬千秋さんその胸の宝石は見事ですね》《ルビーだけどそれが?》《実は手代木瑞穂さんが目撃した犯人は赤いドレスを着た女性で胸元に赤い宝石を着けていたそうなんです》《なるほどね》《確かに私はその条件にぴったりね》《でもだったらあの2人だってそうじゃない?》《おっしゃるとおり。
しかし犯人は手代木瑞穂さんの知らない女性だったそうです》《ところが彼女たちは4人全員手代木瑞穂さんと知り合いなのです》《えっ?》《よってこの4人は全員犯人ではない》《犯人の条件に合致する人物は永瀬千秋さんあなた1人しかいないんです》《ちょっと待って》《松五郎君よく覚えておきたまえこれがプロの捜査だよ》《警部》《永瀬千秋さんあなたを逮捕します》《ちょっと待った》《ワイなぜ止めるんだい》《警部千秋さんは犯人ではありません》《えっ?》《まだ正式な発表はしていませんが彼女は僕のフィアンセなんです》《姉貴とも何度も食事をしております》《嘘》《あの人がタマちゃんの結婚相手》《えっ?》《ということは》《姉貴は千秋さんのことをよく知っている》《だから千秋さんは犯人ではありません》《松五郎君》《千秋ちゃん》そのころ私はティータイムを楽しむ場所を探していたのでございますが。
自由過ぎる。
そこで思わぬお宝映像を発見いたしまして。
(リポーター)《「本日卒業式を迎えられました染田松五郎さんがいらっしゃいました」》んっ?タマちゃん?ええ高校卒業時のインタビューを受けている若き日の染田松五郎でございます。
《「その手に持っている物は何ですか?」》
(松五郎)《「ああ楽屋ののれんです」》《「卒業祝いに大切な人から頂きました」》
(リポーター)《「大切な人ひょっとして彼女ですか?」》《「いえあの秘密です」》へえあのころタマちゃんに彼女いたんだ。
実に初々しい。
しかとダビングしてまいりました。
また勝手に。
で散々引っかき回した揚げ句結局風祭警部が。
《はいはいはいはいはい》《やっぱり最初から僕が見立てたとおりだったというわけか》《え〜捜査結果を発表しますこれは事故です》《事故?》《たまたまセットが倒れて起きた不運な事故なのです》《まさか警部最初から事故と分かっていながら僕の役作りのために捜査をしてくれたんですか?》《どこまで器のでかい男なんだ》《はい松五郎君》《僕が君に教えるべきことは他に何もない》《警部》《立派なデカになれよ》《はい》《はい捜査終了お疲れちゃん》《待ってください。
ちょっとこのまま待っててもらえますか?お願いします》《このまま》でここに来たってわけ。
どう?何か分かった?まさかお嬢さまは犯人が分からないのでございますか?じゃあなたは分かったの?急いでいるから教えてよ。
そのためには少々説明が必要となります。
それよりほんの一瞬で事件を解決に導く方法もございますが。
そんなことできるの?はい。
そのためにはお嬢さまの協力が必要不可欠でございます。
私の?お嬢さまにはもう一度だけ皆さまの前であれを披露していただきたいのですが。
あれって何?
(悲鳴)またか。
オホホホホ一度ならず二度までもぶざまなことね。
(雛子)大丈夫ですか?これはいけない。
僕のジャガーですぐに僕のうちへ。
だましてごめん雛子。
(夏希)赤何で?緑だったのに。
アレキサンドライト。
光によって色が変わる宝石。
雛子あなたがやったの?
(泣き声)ごめんなさい。
何で。
(雛子)本当にごめんなさい。
(雛子の泣き声)はいはいはいはいはい。
結局僕の推理していたとおりだったね。
所轄の警察署まで一緒に行きましょうかお嬢さん。
(雛子)はい。
何であの雛子が。
どうやらお嬢さまは森雛子さまというお方をあまりご存じなかったようでございますね。
そんなことないわよ。
雛子は私の親友の1人よ。
ならば今回の事件の真相は簡単にお分かりになるはずです。
ご自分でよくお考えください。
何よやけに突き放すじゃない。
この事件は私が解決するよりもお嬢さま自身で真相に気付かれた方がよろしいかと。
あなたに言われなくたって自分で考えてたわよ。
でも瑞穂さんは犯人は知らない女だって言っていたのにそれなのにどうして知り合いの雛子が犯人なのかしら。
分かっちゃった。
瑞穂さんは雛子のことをかばっていたのね。
いいえかばう理由はございません。
分かっちゃってなかった。
じゃどうして雛子のことを知らない女だなんて言ったのかしら。
簡単でございます。
瑞穂さまは本当に雛子さまのことを知らなかったのでございます。
はっ?2人は今日もパーティー会場で挨拶をしていたのよ。
それは私も見ておりました。
じゃ知り合いじゃない。
あなた何を見ていたのよ。
お嬢さまお言葉を返すようで恐縮ですがお嬢さまの方こそどこに目ん玉お付けになってらっしゃるのでございますか?ああ見える見える。
さっきもよ〜く見えていたけどやっぱり冬の夜空は奇麗ね。
私目だけはホントいいから。
そう言わなくても分かるでしょ。
ここよここ。
ここに目ん玉ばっちり付いてるでしょうが。
何よ。
本当に何も気付かれていないのですね。
今回の事件の発端はほかでもないお嬢さま自身にあるのでございますよ。
私?言ってる意味が分からないわ。
ならばしかたありません。
無粋ながら私から事件の真相について説明しなければなりませんがよろしいでしょうか。
えっ?よろしいでしょうか。
はいお願いします。
かしこまりましたお嬢さま。
ご友人の一大事。
のんきにディナーを楽しんでいる場合ではございません。
こよいはすぐに謎解きをいたしましょう。
何でこの私がお預け食らわなくちゃならないのよ。
さっさと説明してもらおうじゃない。
どうして瑞穂さんと雛子は知り合いじゃないのよ。
そもそもお嬢さまは雛子さまと瑞穂さまがお二人だけでお話されてるところをご覧になったことがあるのでございますか?えっそれはないけどでも2人は松五郎先輩を通じて会っているはずよ。
今日だって。
《それに雛子さんも》《こんにちは》瑞穂さんは雛子の名前を知っていたわ。
雛子もこんにちはって。
絶対知り合いじゃない。
いいえこの世の中挨拶を交わした2人が必ず知り合いであるとは限りません。
ご自分に置き換えてお考えください。
もしもお嬢さまが知らない会社員から突然挨拶されたらどうなさいますか?《あれ?すいません》《お久しぶりです。
どうもこんにちは》《どうもこんにちは》そのとおり。
多くの大人は相手が知らない人でも挨拶をされれば挨拶で返すものなのでございます。
でも待って瑞穂さんは雛子の名前まで知っていたのよ。
手品じゃあるまいし知らない相手の名前まで言えるわけがないでしょ。
それがまか不思議なことに言えるのでございます。
《私松五郎さんの大ファンでございまして》《あっそうですか》《影山さん今日はお忙しいところ…》事実あのとき瑞穂さまは私の名前を口にしました。
初対面で自己紹介もしていないというのに。
確かにどうして分かったの?その手品の種は一緒にいた西山さまの手帳でございます。
そこにある出席者リストを見て西山さまが事前に耳打ちしていたのでございましょう。
《3人は先輩の学生時代のご友人で右から順に宝生麗子さん森雛子さん桐生院綾華さん》《あと宮本夏希さんと木崎麻衣さんがご一緒のはずですが》
(瑞穂)《お久しぶりね麗ちゃん綾ちゃん》《こんにちは瑞穂さん》《ごきげんよう》《それに雛子さんも》《こんにちは》てことはその場で聞いた名前を言っただけ?おそらく瑞穂さまはよくパーティーで会われるお嬢さまと綾華さまのことは覚えていたのでございましょう。
しかし雛子さまのことはまったく知らなかったのではないかと。
でもその場で雛子の名前を覚えたんじゃ。
いいえ瑞穂さまはあのパーティーのホスト役。
多くの方々と挨拶を交わしたはず。
その全てを覚えているとはとうてい思えません。
ですからどこかで見たような女と証言したのでございましょう。
なるほどね。
でも何で雛子が犯人だって特定できたのよ。
ヒントはあのドラマセットに使われる夕日でございました。
アレキサンドライトは太陽光や蛍光灯の明かりの下では緑。
暖色系の明かりを受けると赤に変化いたします。
《こんにちは》会場内は蛍光灯。
雛子さまの宝石は緑でした。
しかしあの夕日を受けたとき確か雛子さまの石は赤だったのではないかと記憶していたのでございます。
よく覚えてたわね。
確信はございませんでした。
しかし風祭警部の言葉が決め手となったのでございます。
警部の言葉?《皆さんの6月のご予定は?》《え〜と雛子の誕生日があるぐらいですけどそれが何か》あの会話のおかげで雛子さまの誕生月が6月だと分かりました。
6月の誕生石の1つはアレキサンドライトでございます。
それで雛子がアレキサンドライトを持っていると。
はい今回も見事にやってくださいました。
重ね重ねミラクルな方でございます。
《はい》赤いドレスで知らない女で赤い宝石。
確かにこれで雛子が犯人だと特定できるわね。
でも動機は?何で雛子は瑞穂さんを襲ったのよ。
お嬢さまアレキサンドライトの石言葉をご存じでございますか?石言葉?「秘めた思い」でございます。
雛子さまはある人物への恋心をその胸にしまいこんできた。
それが今回の事件の引き金となったのでございます。
雛子が好きだった相手ってもしかしてタマちゃんのこと?はい雛子さまは思い続けてきたタマちゃんが結婚することを知り犯行に至ったのでございます。
じゃまさか瑞穂さんをタマちゃんのフィアンセだと勘違いして狙ったとか?そのとおりでございます。
それはない。
だって瑞穂さん言ってたもん。
《今日は弟のためにありがとう》知り合いじゃなくてもあの言葉で瑞穂さんがタマちゃんのお姉さんだって雛子にも分かったはずよ。
タマちゃんのフィアンセだと勘違いするわけないわ。
さてお嬢さまここが考えどころでございます。
タマちゃんとは本当に染田松五郎先輩のことなのでございましょうか。
えっ?何言ってるの?そんなの当然でしょ。
玉乃屋のタマちゃんだって私の同級生なら誰でも知ってるわよ。
そこにお嬢さまの思い込みがあるのでございます。
思い込み?お嬢さまたちにとってタマちゃんとは松五郎先輩のことでした。
が雛子さまにとってタマちゃんとは先輩とは違う別人のことだったのでございます。
はっ?お嬢さまたちは高校1年の春に松五郎先輩の屋号を知り彼のことをタマちゃんと呼ぶようになったのですよね。
しかしこのとき雛子さまは舞台をご覧になっていたのでしょうか。
当然でしょ。
ってあれ?そうです雛子さまは高校1年の秋に転校してこられました。
ならば染田松五郎の屋号もみんなが彼のことをタマちゃんと呼んでいることも知らなかったはずです。
そう言われればそうね。
でも私たちの話を聞いていれば気付いたんじゃない?果たしてそうでしょうか。
染田松五郎先輩イコールタマちゃんだと気付くためには玉乃屋という屋号を知らなければなりません。
偶然気付くことはまずないでしょう。
そうね。
そんな中もしも身近によりタマちゃんと呼ぶにふさわしい人物がいたとするならば雛子さまがその人物をタマちゃんだと勘違いした可能性もじゅうぶん考えられます。
タマちゃんと呼ぶにふさわしい人物?例えば名前にタマという文字が含まれる人物はいらっしゃいませんでしたでしょうか。
う〜んそんな名前の人いなかったけど。
そこにもお嬢さまの思い込みがございます。
例えばお嬢さまが日ごろ顔を合わせている職場の仲間の方々。
その下の名前を覚えてらっしゃいますか?下の名前。
そういえばまったく覚えてない。
(並木)《あらためまして並木誠一です》
(山繁)《山繁悟です》
(江尻)《江尻由香です》
(宗森)《宗森あずみです》あっそうだったっけ。
このように下の名前というのは意外と覚えていないものなのでございます。
じゃ私たちの身近なところにタマがつく名前の人がいて雛子はその人のことをタマちゃんだと思っていたってこと?さようでございます。
誰だろう。
私もティータイムに知りました。
おそらく彼のことかと。
「西山珠樹」ってまさか。
染田松五郎の付き人をされているあの西山さまでございます。
《あっ森雛子です》《あっえっにっ西山珠樹です》おそらく雛子さまは皆さんがすっかり忘れていた西山さまの珠樹という名前をしっかりと覚えていたのでございましょう。
(麻衣)《やっぱりタマちゃんってカッコイイよね》《えっ?そうかしら》《まあいいんじゃない?タマちゃんなら》そしてお嬢さまたちの会話を聞きタマちゃんとは西山珠樹さまのことだと勘違いしたのでございます。
えっ。
じゃもし仮に雛子が勘違いをしているとしてどうして瑞穂さんを襲うのよ。
よくお考えくださいお嬢さま。
雛子さまはタマちゃんのことが好きだったのでございますよ。
はっ。
気付かれましたか?そうです雛子さまは松五郎先輩ではなく同じクラスの西山珠樹さまのことが好きだったのです。
ホントに?そう考えれば全ての辻褄が合うのでございます。
(雛子)《麗子さんこれタマちゃんに渡してもらえませんか?》《えっ?》雛子さまは西山珠樹さまに恋文をしたためお嬢さまにお渡しになられた。
あのラブレターは西山君宛てだったってこと?しかしお嬢さまは手紙を松五郎先輩に渡してしまった。
《気持ちだけ頂いておくよ》《どうでした?》《うんタマちゃんに渡しといた》《あっそうですかありがとうございました》もちろんその後雛子さまは返答をもらえず西山珠樹さまに振られたのだと思ったはずでございます。
そして事態は新たな局面を迎えます。
《ねえ雛ちゃんびっくりしないでね》
(雛子)《えっ何何?》《私タマちゃんと付き合うことになっちゃった》《えっ?》木崎麻衣さまがタマちゃんと付き合い始めたのです。
ちょっと待ってそんなの聞いたことないわよ。
お嬢さまが知らなかっただけでございましょう。
それはタマちゃんの卒業式の?はい。
(松五郎)「卒業祝いに大切な人から頂きました」
(リポーター)「ひょっとして彼女ですか?」彼女からもらったと目されるこの楽屋のれんは私が見るかぎり木崎麻衣さまのご両親日本画家の巨匠木崎観山と書道家木崎万葉の作品に間違いございません。
じゃ。
染田松五郎の彼女とは木崎麻衣さまでございます。
《私がタマちゃんと付き合うことになったの麗子ちゃんたちには絶対内緒だよ》《うん》そしてここで勘違いの連鎖が生まれます。
雛子さまは麻衣さまがタマちゃんつまり西山珠樹さまと付き合い始めたのだと勘違いされたのです。
《どうしたの?雛ちゃん》《あっううん》自分を振っておきながら友達を選んだ。
その事実を知り雛子さまは大きなショックを受けたことでございましょう。
《よかったね麻衣さん》
(麻衣)《うん》《ねえお茶して帰ろう》
(雛子)《あっうん》
(麻衣)《私がおごるから》大学生になってからも雛子さまはずっと1人心を痛めておられました。
しかし相手が親友の麻衣さまなら仕方ないと自分に言い聞かせてきた。
しかし今日。
《タマちゃん結婚するんですって》タマちゃんが別の誰かと結婚することを知ります。
(綾華)《詳しくは分からないんだけど年上で同じ業界の人らしいわよ》さらにここでも雛子さまの勘違いは続きます。
大好きなタマちゃんつまり西山珠樹さまは年上で同じ業界の人と結婚する。
西山さまと談笑する瑞穂さまがその相手だと映ったとしてもおかしくはございません。
そして長年親友のために抑え込んできた気持ちが一気にあふれ出し。
それは新たな恋敵への憎しみへと変わったのでございます。
《あの人がタマちゃんの結婚相手》その後雛子さまはようやく自分の勘違いに気付かれます。
でもすでに遅かったのです。
《ごめんなさい》たった1つの勘違いと9年分の純粋な恋心が起こしてしまった悲劇。
これが今回の事件の真相でございます。
でもやっぱりそれってあなたの想像よね。
雛子が本当に西山君のことを好きだったかどうかなんて分からないじゃない。
ならばお嬢さま雛子さまの本心を確かめる方法がございます。
どうするのよ。
お嬢さまはまだお持ちなのではありませんか?証拠の品を。
あっ。
あった。
やはり捨てられずに持っていらしたのでございますね雛子さまから預かったラブレターを。
雛子ごめん。
(雛子)「西山珠樹くんへ」「急にこんな手紙を書いちゃってごめんなさい」「迷惑ですよね」
(雛子)「それから西山くんの事をずっと見ちゃいます」「勉強もそうじもとにかく一生懸命な姿を見ているうちに好きになっちゃいました」「西山くんからのメールを待っています」「森雛子」雛子さまは自分の思いをずっとその胸にしまいこんできたのでございましょう。
9年間一度も開けられることのなかったそのラブレターのように。
私バカだ。
(雛子)《これタマちゃんに渡してもらえませんか?》《えっ?》
(雛子)《お願いします》《うん分かった》《ありがとうございます》雛子の気持ちに気付いていたらこんなことにならなかったのに。
それはしかたのないことでございましょう。
友達とは勘違いや擦れ違いから時に互いを傷つけてしまうものでございます。
しかしながらその傷を癒やしてあげられるのもまた友達だということをお忘れなきよう。
かけ違えたボタンは最初から直せばいいだけです。
そして間違えを直すのに遅いということはございません。
影山車。
どちらへ?ちゃんと届けなくっちゃ西山君に。
かしこまりました。
2014/12/15(月) 15:53〜16:48
関西テレビ1
謎解きはディナーのあとで #08[再][字]
「殺意のパーティーにようこそ!!」
櫻井翔 北川景子 椎名桔平 福士誠治
詳細情報
番組内容
影山(櫻井翔)は宝生麗子(北川景子)をテレビ局まで送る。この日、テレビ局では麗子の先輩で歌舞伎役者、染田松五郎(福士誠治)が主演することになった刑事ドラマの制作発表パーティーが催されるのだ。
会場には麗子の友人、森雛子(早織)、桐生院綾華(岩佐真悠子)、宮本夏希(森カンナ)、木崎麻衣(平愛梨)も来ていた。華やかなモデルの永瀬千秋(入山法子)や芸能関係者が集っている。なぜか風祭京一郎(椎名桔平)
番組内容2
の姿も…。さらに、影山まで会場にいる。
麗子は友人たちと一緒に、松五郎の姉でありマネジャーの瑞穂(笛木優子)に挨拶。そして松五郎の付き人、西山珠樹(浅利陽介)に声をかけられる。麗子の高校時代の同級生だった西山は雛子が松五郎をまだ好きなのかと聞く。実は、高校時代に西山から雛子への想いを聞かされた麗子は、彼女はタマちゃんが好きだと答えていたのだ。タマちゃんとは松五郎の屋号「玉乃屋」からきた松五郎の
番組内容3
愛称。また、その頃、麗子は雛子に託されたタマちゃんへのラブレターを松五郎に渡せずにいた。
話を終え、麗子が西山と会場に戻ろうとすると大きな衝撃音と悲鳴が聞こえる。スタジオで瑞穂がセットの下敷きになっていた。事故として片付けられそうになるが、麗子は影山に助けを求め、事件は解決する。
だが、その夜のディナーで影山は、
「今回の事件の発端は、他でもないお嬢様にあるのですよ」
と、麗子に突きつけた。
出演者
影山: 櫻井翔
宝生麗子: 北川景子
並木誠一: 野間口徹
山繁悟: 中村靖日
宗森あずみ: 岡本杏理
江尻由香: 田中こなつ
風祭京一郎: 椎名桔平
原作・脚本
【原作】
東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」(小学館刊)
【脚本】
黒岩勉
監督・演出
【演出】
土方政人
【プロデュース】
永井麗子
音楽
菅野祐悟
【主題歌】
嵐「迷宮ラブソング」
【オープニングテーマ】
倖田來未「Love Me Back」
制作
フジテレビ
【制作著作】
共同テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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