日曜サスペンスドラマ「捜査検事 近松茂道14 秘湯・乳頭温泉に消えた女」 2014.12.14


〜お連れさまは結局おいでにならなかったんですか?連絡もじぇんじぇん?なんぼ?ご予約は2名だったすべ。
いいってば2人分で。
尚美ちゃん…。
秋田県仙北市は平成17年角館と田沢湖町西木村との合併によって誕生しました。
市の中央には水深日本一の田沢湖東には秋田駒ヶ岳北に八幡平南に仙北平野が開けここ角館は観光の重要拠点となっております。
特にこの通りは春ともなるとしだれ桜が。
あの石森さん。
はい?せっかく角館に来たんですから武家屋敷見学していきませんか?それは後日お一人でどうぞ。
今日は県内25市町村をまわりますのでとてもそんな時間は。
えっ!?県内25市町村を1日で?そうですよ。
日曜を利用して県内を視察したいとおっしゃったのは検事ですから。
しかし1日では…。
じゃあこうしましょう。
今日は3分の1で残りは来週と再来週の日曜日に。
え〜っ!へば休みどこじぇんぶ潰れるでが!えっ?今日だけのつもりだのに!ああの。
わがりました。
ではお望みどおりにいだします。
いや秋田弁というのは案外迫力がありますね。
やはりその土地の言葉には力があるということでしょうね。
ハハハ…。
ああ申し遅れました。
私は捜査検事の近松といいます。
捜査検事とは法廷に立つ公判検事とは違い警察からまわってくる事件を調べ起訴の可否を判断する検事のことを申します。
常に出会いと別れを繰り返す転勤族の身ですが果たしてこの地ではどんな出会いがありますやら…
私中に入ったの初めてです。
えっ。
じゃあちょうどよかったじゃないですか。
勘弁してくださいよ。
このあと予約が入ってるんですよ。
そうしていただかないとお支払いできませんから。
ほんとになくしたんですか?まさか初めから無賃乗車のつもりじゃ…。
そんな。
さっきはお財布ちゃんと持ってたんです。
じゃあもういいです。
お代は結構です。
私先を急ぐんで。
ちょっと待ってください。
ちゃんとお金お支払いしますから。
お支払いしますよって財布持ってないじゃないですか。
ですから一緒に探してほしいって言ってるんです。
だから!あのちょっとすみません。
お代おいくらなんですか?えっ?6,000円ですけど。
それじゃああのこれで。
どうぞ。
いえ困ります。
やあいいじゃないですか。
まず清算をしてで財布はあとでゆっくり探せば。
いいんですか?どうぞ。
申し訳ありません見ず知らずの方に。
この人力車に乗る前どちらにいらしたんですか?樺細工の伝承館にいたんですけれど。
角館へは観光でいらしたんですか?ええ。
でもこんなことになってしまって…。
一人旅なもんですからもしお財布が見つからなかったらどうしよう。
そのときはご家族に迎えに来てもらえばいいじゃないですか。
家族はおりません。
ああそうですか。
検事適当なとこで警察に任せちゃったほうがいいですよ。
また立て替えとかになっても困るし。
財布をお探しの方は。
私です。
お名前は?長谷川文乃です。
間違いありません。
まあどこにこれが?トイレの洗面台です。
洗面台?あああのときそのまま。
いやだわ私はそそっかしい。
本当にありがとうございました。
ホテルも未払いだったんで内心ヒヤヒヤだったんですよ。
そうでしたか。
乳頭温泉で変死体が出たそうです。
えっ?あのよろしかったらお昼いかがですか?このあと何かご馳走させていただきたいんですけど。
ああ残念ですがちょっと予定がありまして。
じゃあ。
あのそれではお名刺いただけませんか?これ私の名刺でございます。
そうですかじゃあ。
あら検事さん?検事。
それじゃあ私たちはこれで。
では。
どうかなさいました?ん?ああいや。
じゃあ次は大仙市にご案内します。
乳頭温泉へ行きましょう。
えっ?現場に行きます。
現場に?検事がですか?1時間くらいかかりますよ。
〜死体が遺棄されたのはたぶん昨日の夜ですな。
この先の休暇村の客が昨日夕方ここを散歩したときは何もなかったそうです。
大沢さん。
お久しぶりです。
やだ忘れちゃいました?事務官の石森ですよ。
内山検事のときにご一緒した。
ああ!ということは…。
新しく赴任された近松検事です。
こちら県警の大沢警部。
こんな顔して泣き上戸なんですよね。
あの〜検事が現場を見たいっておっしゃってるんですけど。
それはずいぶんご熱心なことで。
しかし私もまだ臨場したばかりですからね。
あ〜ご説明なら私が。
角館中央署の山田です。
遺体はあの林の奥でして。
どうぞ。
なんでこんなにはえ〜んだ?角館にいたんですよ。
県内視察の途中で。
だったらそのまま視察を続ければいいじゃねえか。
なんでわざわざ現場まで連れてくるんだよ。
だって検事が見たいっておっしゃるから。
めんどくせえんだよ検事が現場に来るとよ。
そんなこと言われても…。
行きますよ。
(カメラのシャッター音)身元はわかってるんですか?それがケータイも財布も身元につながるものがなんにもないんです。
ただ着替え一式を所持しておりましたからもしかしたらこの近くの泊まり客かもしれません。
死因は?後頭部を何かにぶつけたか殴られたかしています。
死亡推定時刻は昨日の昼間。
12時から15時ではないかと。
殺しでしょうかね。
道路から引きずった跡がありましたからどこか別の場所で殺されて運ばれたと思いますよ。
だとすると通り魔か物とりという線は薄くなりますね。
顔見知りの犯行と見て間違いないでしょう。
今どきケータイを持ってないとは考えられない。
ホシが持ち去ったとするとそこに何か不都合な情報があった証拠ですな。
財布を持ち出したのも目くらましでしょうね。
現にこのパールのブローチが残されておりました。
パールのブローチ?本物の?このバッグの中に。
芥子パールですね。
でもなんだか古っぽい。
これが被害者のバッグの中に?ええ。
これだけが地味ですね。
かなり上質そうですが。
もらいもんでしょ。
私もそう思いまして他のものと別にしておきました。
あとで被害者の交友関係を調べるときに役に立つかと思って…はい。
よしわかった。
警部!情報が出ました。
ゆうべ乳頭温泉に泊まった男が女と泊まる予定だったにもかかわらず一人で泊まったそうです。
女は最後まで現れなかったそうでもしかするとその女が…。
男の名前は?小坂勉です。
えっ?この梨誰がくれたんだ?寺山がくれたんだ。
食べてみ。
小坂さんですか?ゆうべ乳頭温泉に泊まったのはあなたですね?な…何?あんたら。
警察の者です。
あなたがゆうべ宿で待ち合わせをした女性のことでお聞きしたいんですが。
何だど?おめは俺どこショートステイにやっておなごと温泉なんかさ行ったのか!違うって。
行ってねえよ。
あんたら妙なこと言うなよ!温泉とか女とか知らねえよ。
ウソつけ!あのおなごだべ。
母ちゃん違うって。
おめだばまだわがんねのか!あんな性悪女に騙されて。
違うって。
このバカタレ!バカけぇバカけぇこの〜!女は浅井尚美36歳。
秋田市内の紹介所に籍を置く家政婦。
週3回のペースでここに通ってきていた。
独身で秋田市内のアパートで一人暮らし。
その家政婦と深い関係になったのはいつからですか?尚美と俺はまだ何も…。
確かに温泉宿には2人ひと部屋で予約したけど…。
いやフラれたと思ったんだ。
やっと誘ったのに結局来なかったし。
まさかすぐ近くで殺されていたなんて夢にも思わなかった。
でもいったい誰に…。
こんなことなら待ち合わせなんかしなきゃよかったんだ。
ごめんな尚美ちゃん。
ごめんな…。
(すすり泣く声)小坂の母親はなぜ尚美との交際を反対したんです?カネです。
お金?浅井尚美は兄弟の借金を肩代わりさせられていると小坂に訴え5万10万とカネをせびっていたらしい。
全部でいくらくらいですか?母親の話によると100万は下らないそうです。
小坂自身はちょっと貸しただけだと言い訳してますがね。
兄弟の借金っていうのは本当なんですか?真っ赤なウソですよ。
浅井尚美は横手市の農家の出で親はすでになく兄が家を継いでますがこの兄は親が残した狭い農地を倍に広げたほどの働き者ですよ。
一方尚美は高校を出ると秋田市内の飲食店に勤め21の時にその店のコックと結婚しています。
浅井というのは嫁ぎ先の姓ですか。
旧姓は金本。
尚美は結婚後はずっと専業主婦だったようですが7年前に亭主を水難事故で亡くしてます。
そのとき尚美には1,000万の保険金が残ったんですがわずか2年で使い果たし結局実家に出戻った。
実家に戻った尚美は忙しく働く兄夫婦を尻目に家の手伝いをするでもなく働きに出るでもなく1年以上もタダ飯を食ってたそうです。
でついに兄嫁がキレてケンカになり困った兄が妹を追い出した。
以来尚美と兄夫婦は完全に縁が切れてます。
じゃあ尚美はお金欲しさにその小坂って人を騙したんですか?自分がかわいそうな女みたいに装って。
小坂がいつどこでそれに気づいたか知らねえがどうせカネ絡みでトラブったんだろうな。
では大沢さんは小坂が怪しいと見てるんですね?当然でしょう。
小坂は初め尚美と一緒に宿に入るつもりだったと私は思いますね。
そうか。
宿に行く途中で事件になったのか。
小坂以外に尚美と親しかった男性は?今のところは誰も。
アパートも調べてみましたが男の影はありませんでした。
まぁ捜査はこれからが本番です。
おいおいわかってくるでしょう。
では今日はこれで。
大沢さん。
なになに?今日の帽子すてきですね。
これ高かったのよ。
大沢さん。
例のパールのブローチ。
あれ小坂が贈ったものですか?ブローチ?あ〜あれね。
いやいや違うそうです。
そうですか…。
ブローチ…。
なにこだわってんだ?ブローチ1つに。
警察にも話したんですけどうち登録家政婦の私生活かかわらないことにしてるんです。
ほとんどメールか電話のやり取りなんでかかわりようがないんですけどね。
では浅井さんの異性関係などは?全然知りません。
浅井さんが担当していたご家庭は何軒なんですか?2軒です。
小坂さんとあと週一で独り住まいのご老人の家の掃除。
それだけですか?ちょっと待ってよ〜。
ちょっと担当さん!はい。
浅井さん廣田さんのお宅に毎週1回掃除に行ってたんですよね?そうですよ。
だったらなんであんなに汚れてるんですか!流しも風呂場も何か月も掃除した様子ありませんでしたよ。
普通なら2時間で終わるはずが4時間かかったんですよ。
これまで浅井さん何やってたんですか!いや普通にやってたでしょ。
でなきゃほら廣田さんからクレーム来てるはずだし。
でも事実そうなんだから。
おかしいなぁ。
あのどんな方なんですか?その廣田さんって方は。
検事さん。
よく知りませんよ。
ちょっと変わった人ですけどね。
独り暮らしなのに女物の歯ブラシとか化粧品があったりして。
延長分払ってよね。
所長と相談します。
廣田和之。
ここでいいんだが?その老人が尚美と関係してたってことか?とにかく会ってみましょう。
お前近所に聞き込んでこい。
はい。
(玄関チャイム)
(玄関チャイム)なんだ?浅井さんは半年ほど前からこちらを訪問されてたと聞きました。
仕事ぶりはいかがだったんでしょうか?きちんとこなしてましたか?お手洗いお借りしました。
家の中に女物の歯ブラシとか化粧品があったそうですね。
それどなたのものですか?浅井尚美さんのものじゃないんですか?あなたと彼女は単なる雇い主と家政婦の関係じゃなかったんですね。
否定されないとこ見るとそういう関係と見てよろしいんですな。
老いらくの恋ってやつですか。
いけませんか?尚美が家政婦だからいかんというんですか。
尚美が私よりずっと若いからおかしいっていうんですか。
だとしてもあなた方から責められるいわれはない。
7日の土曜昼の12時から15時どちらにおられました?私が事件に関係あるとお考えならお門違いだ。
お話しすることは何もありません。
お帰りください。
警部!どうだ?だいぶウワサになってますよ。
尚美は週一どころか年中入り浸ってたそうですよ。
こちらも廣田が尚美のために飯を作っているのを目撃されたそうです。
廣田が尚美に飯を?靴まで磨いてやってたそうです。
靴磨き!?あきれてものも言えねえな。
あの廣田さんは何をやってた方なんですか?学者さんです。
企業の研究施設に勤めてました。
学者か…そんな男がなんでまた。
寂しかったんじゃないですか?奥さんは25年も前に死んだそうですし。
息子はアメリカの大学に進んでそのまま向こうで結婚したらしいです。
じゃあずっと独り暮らしだったんですか?7日の土曜廣田は一日中家にいた様子ですか?土曜?あっ昼間は出てらしたみたいですよ。
私が12時にカルチャーセンターに行くときに廣田さんの車ねがったですから。
戻った時間は?私が帰ったのは2時頃ですけどそのときは車ありましたね。
夜はどうですか?いやぁちょっとそこまでは。
あの男の可能性もありますな。
小坂と尚美があいびきしたと知ってあとを追ったかな。
大沢さん事件当日の尚美の足取りをできるだけ早くつかんでください。
殺害現場の特定のために。
わかってますよ。
素人じゃねえんだから。
ただいま。
おかえりなさい。
検事昨日の人から荷物届いてますよ。
えっ?ほら角館で会ったあの人。
あぁ何でしょうね。
開けてみてください。
はい。
きっとお礼の品ですよ。
お年寄りってこういうところが義理堅いんですよね。
あっほら。
あっいいですね。
これ一輪挿しでしょ。
ここで使えますよ。
えぇ。
あっ手紙も入ってますよ。
「旅先でのご親切身に染みました。
ありがとう存じます」ですって。
それだけですか?えぇ。
やはり思い出してもらえなかったんですねぇ。
何をですか?実はねあの女性は私の中学のときの担任なんです。
えっ!中学の先生?東京のですか?よく似た人だなと思ったんですがまさか本人だとは思わなかったんです。
しかし名前を聞いて間違いないとわかりました。
へぇ〜よく覚えてましたね。
特別な人でしたからね。
初恋かもしれません。
初恋の人?あのおばあちゃんがですか?だから中学のときの話ですよ。
当時の先生は理知的っていうのかな…。
少し近寄りがたい雰囲気でね厳しくて優しいそんな先生でした。
だから先生の前で私はいつも緊張してました。
しかし先生は私のことを忘れているようです。
だったら会いにいって名乗ればいいじゃないですか。
せっかく何十年ぶりで再会できたんですから。
長谷川文乃さん。
はい3日前から1週間のご予定でお泊まりいただいております。
今お部屋にいらっしゃいますか?いえお出かけのようですが。
そう…。
長谷川先生。
あら…。
東京の黎明中学?えぇ3年1組です。
あらごめんなさい。
いやいや無理はありません。
もう40年も昔ですから。
でもあなたはよく忘れずに…。
先生はちょっとおっかなかったですからね。
あらそう?当時の不良たちも先生には一目置いてましたよ。
あなた不良だった?いや残念ながら。
ただ不良たちの間では先生はミス黎明だったんです。
まぁ。
ミスター黎明は美術の先生。
これはまた別の意味で生徒たちに人気がありましてね。
何しろ自分の創作活動に熱心で生徒たちには自習ばかりさせてましたから。
それとあと話題になったのは臨海学校で溺れかけた体育の先生。
泳げなかったのバレちゃったのね。
ええ。
それから外国人が来ると逃げ出す…。
英語の先生?英語の先生。
あっそうそう。
(笑い声)先生はその後…。
ずっと教師をしてたわ。
定年後も海外でボランティアをしながら教師をしてたの。
おととしまでね。
じゃあご結婚もなさらずに?ええ。
おかげで教師としての仕事は全うできたと思ってるわ。
あなたは検事さんなのね。
あらっ優秀な教え子ね。
いやいや。
ご家族は?あっ妻が東京におります。
単身赴任でして。
ああそう。
今どんな事件を担当してらっしゃるの?あっごめんなさい。
守秘義務があったわね。
秋田県仙北市の乳頭温泉で変死体となって発見された浅井尚美さんの事件で警察は殺人事件と断定すると同時に本格的な捜査を開始しました。
警察では浅井さんは7日土曜の昼間に殺害されたとみておりその後…。
何だよ。
おめえあの日あのおなごをここへ呼んだのか?呼んでねえ!乳頭温泉で待ち合わせたんだ。
何だよ。
検事殿!ああ。
捜査本部なら3階ですが。
いや被害者のお兄さんが遺体を引き取りに来られると聞きましたんで。
あっお兄さんならこちらの金本靖男さんです。
地検の近松です。
このたびは。
廣田は何の用で?浅井尚美の遺体を引き取りたいそうです。
えっ。
何で?何で赤の他人のあんたが…。
尚美から家を出たいきさつはいろいろ聞いておりましたので。
いきさつ?何だかんだあったようですな。
あなた方ご夫婦とは。
尚美は自分にはもう家族はいないと言っていました。
だったら遺体は私が引き取らなければならない。
何言ってんだあんた。
あんたと尚美どういう関係なんだ。
刑事さん何なんですかこいつは。
妹さんとはかなり親密な仲だったそうで。
あんたと尚美が?尚美にはできるだけの葬儀を出してやりたいと思っています。
あなた方がもしも義理で遺体を引き取られるならどうか私に任せていただきたい。
バカ言うんじゃねえよ!尚美は俺の妹だぞ。
誰があんたなんかの世話になるか。
尚美があんたに何話したか知らねども俺は別に好き好んであいつを追い出したんじゃねえんだよ。
自立させるつもりで家を出したんだ。
300万のカネと一緒にな。
あいつはそのカネが手切れ金だと思ったようだけど血のつながりがそれで切れるはずもねえよ。
そうだろ?それにしてもよ尚美はどういうつもりであんたみたいな年寄りと…。
あんたもあんただ。
どこがえかったんです?尚美の。
野良猫ですよ尚美は。
いやお兄さんにこんな言い方は失礼かもしれないけど尚美はふらっと入ってきた野良猫みたいなもんです。
気ままな野良猫は人の暮らしをかき回す。
しかしいつの間にか手放せなくなる…。
よせバカ冷たい
(笑い声)70年の人生で初めてのことでした。
廣田さん。
今夜のあなたはなかなかのおしゃべりだ。
その勢いでぜひとも私の質問に答えてもらいたいもんですな。
事件のあった日の昼間あなたは車で出かけられたようですがどこへ行ったんです?ここへ来てだんまりは困りますよ。
昔の家の跡地を見に行きました。
昔の家とは?昔両親が蕎麦を作っていた跡地ですよ。
だからそこはどこなんですか?西木町西明寺。
うちの管轄です。
ここです。
ここが西木町西明寺。
ここから乳頭温泉まで30分。
なるほどそこへ案内していただこう。
お断りします。
そんな義務も理由も私にはない。
そっちにはなくてもこっちにはあるんだよ。
大沢さん!乳頭温泉からわずか30分の距離ですよ検事。
事件当日にそんな場所に行ったって言われて黙って家に帰すわけにはいかんでしょ。
西尾車用意しろ。
はい。
一緒に来てもらおうか。
あなたが私を疑うのは勝手だが私は尚美殺しには無関係だ。
これ以上私を容疑者扱いするんだったらそれ相応の証拠を見せてもらいたい。
理屈はあとで聞きますよ。
私は家に帰りたいんだ。
これ以上は人権侵害じゃないのかね?大沢さん手を離しなさい。
検事!廣田さんは自宅に帰りたいとおっしゃってるんだ。
それを阻止する権限はまだありません。
手を離しなさい。
はぁせっかくのチャンスだったのによ。
あのバカ検事が!デカの苦労も知らねえで。
そうだろ西尾。
そうだろ?はいはい。
わかってねんだよ誰も俺の苦労は…。
はぁ。
私は刑事事件に介入するつもりはまったくありませんがね。
昨日の警察の廣田さんへの対応はいささか問題ありと言わざるをえませんな。
廣田さんが何か訴えを?いえいえそうではありません。
昨日の一件を聞いてこの際廣田さんと尚美さんの関係をお話ししておいたほうがよいかと思いまして。
何のお話ですか?実は廣田さんと浅井尚美との間には養子縁組が進行しておりました。
養子縁組?廣田さんが浅井尚美を養女にと?尚美さんの将来を考えてのご決断でした。
そうですか。
廣田さんは尚美さんの将来のことまで。
なのに殺人の疑いをかけられちゃ気の毒ですよ。
ハハハハ。
尚美さんも養女になることを望んだんですか?もちろんです。
だから私も手続きに入ったんですがその矢先の事件ですよ。
そうでしたか。
なんでも乳頭温泉で殺されたそうですな。
けどまたなんでそんな場所へ。
昼間は鷹巣行きに乗ってたのにね〜。
えっ?いやあの土曜の昼間ね尚美さんは秋田内陸線に乗ってたんですよ。
それも上り。
乳頭温泉とは方向が違うでしょ。
秋田内陸線っていうのは?秋田内陸縦貫鉄道のことです。
角館と鷹巣を結ぶローカル線で上りってことは角館から鷹巣に向かったってことですよね。
乳頭温泉ここですから。
確かに方向が違いますね。
その電車にあなたは浅井尚美と乗り合わせたんですか?いえ私は車です。
電車には乗ってません。
しかしあの鉄道は線路と道路が並行して走る場所がいくつかありましてね。
道路を走ってる車の中から電車の中の人物が見えるんです。
私はその時荒瀬というところに住む親戚を訪ねるために車を走らせてたんですがなにげなく電車を見たら尚美さんの姿があったんです。
彼女は1人でしたか?向かいに若い女性がいたようですがそれが連れなのかただ居合わせただけなのかはわかりません。
時刻は?12時…40分か45分か。
それくらいの時間でしょ。
浅井尚美がどこで降りたかは?そりゃ知りませんよ。
私はすぐ脇道に入ったんで。
はい私尚美の兄ですが。
秋田内陸線?あぁ尚美の死んだ亭主の実家がその沿線ですけど。
では元のご主人の家へ出かけたんでしょうか?いやそんなはずないです。
とっくに縁が切れてますよ。
だけど…もしかしたら墓参りかな?今思い出したけんど尚美が殺された日は浅井さんの命日の翌日にあたるんです。
だとすればあいつわざと1日外して行ったのかもしれません。
向こうの親族と顔合わすのが面倒で。
あのそのお墓はどこにあるんですか?墓ですか?たしか阿仁合という駅のそばです。
浅井の実家もそこから近かったと思いますけど。
そうですか。
どうもありがとうございました。
(サイレン)警部警部!出ました。
大沢さん。
どうですか?何か出ましたか?出ましたね〜。
ルミノール反応が。
じゃあやっぱりここが殺害現場ですか?今調べさせてますがその血液が浅井尚美のものだと確定すればね。
だったら何落ち込んでるんですか?わかんねえか?ここが殺害現場だとするとますます難しくなるんだよ。
弁護士が目撃した時刻から考えると尚美が乗った電車は1日1本しかない角館発12時17分の急行もりよし2号だ。
この電車が阿仁合に到着するのが13時25分。
駅からここまで歩いて15分。
つまり事件は13時40分よりあとに起きたということだ。
尚美の死亡推定時刻は12時から15時。
事件が13時40分よりあとなら…。
私が帰ったのは2時頃ですけどその時は車ありましたね廣田はシロですね。
はぁ…かと言って小坂かというとこれも微妙でね。
小坂が乳頭温泉の宿にチェックインしたのは15時45分。
しかしここで殺人を犯し車に遺体を積みそれから乳頭温泉に向かったとすると…果たして?検証してみるしかないんじゃないですか?言われなくてもわかってるよ!!そんな…怒鳴らんでもいいじゃねだが!警部!尚美の連れがわかりました。
死んだ亭主の妹です。
妹?あの日…私は角館に買い物に出たんです。
その帰りに偶然あの人に。
尚美さんとは兄の死後ほとんど没交渉だったんですけど。
あの日は兄の命日の翌日だったんでつい私から声をかけてしまったんです。
尚美さんあの人小さな花束を持っていました。
もしかしたら兄のお墓参りに行くのかもしれないって思って。
ちょっと嬉しかったんです。
少しは兄のこと思っていてくれるのかなって。
兄は結婚後秋田の駅前に店を出しました。
尚美さんの勧めで兄らしくない派手な店で。
私たちはすごく心配していました。
案の定1年も経たないうちに店は潰れて残ったのは借金だけ。
それで…兄は自殺したんです。
自殺?記録では海釣り中での水難事故になってますが。
でもあれは自殺だと思います。
たいして好きでもない釣りにたった1人で出かけたんですから。
じゃああなたはお兄さんは自分が死ぬことで借金を清算したと考えているんですか?尚美さんに残された保険金はそういうお金だと。
両親は今でも尚美さんを恨んでいます。
あの人には愛情なんてないんですよ。
あるのは欲だけ。
近いうちにさそのじいさんの養女になるのよね。
アメリカにそいつの息子がいるけど息子には一筆入れさせようと思ってる。
一筆って?だからさ息子に遺産放棄させんのよ。
じゃなきゃあのじいさん死んでも財産私の自由になんないでしょ。
尚美さんその人が死ぬの待ってるの?やだぁ。
息子さんが遺産放棄なんかするはずないわよ。
そのときは別のに乗り換えるだけよ。
他にもいるの?今夜そいつと乳頭温泉で会うことになってんのよね。
そいつには口うるさいばあさんがいるけどまぁそれは施設に入れちゃえばなんとかなるしさ。
でもやっぱり本命はあのじいさんだよね。
土地を含めた財産が1億もあるんだって。
すごくない?私だんだん不安になったんです。
この人もしかしたらそのお年寄りに何かひどいことをするんじゃないかって…。
兄がそうだったんじゃないかって思いました。
借金で苦しんでる兄に自殺をするように仕向けたんじゃないかって。
私ヘドが出るほど気分が悪くなって…。
尚美さん。
悪いけど今日はこのまま帰って。
えっ?兄はあなたに殺されたも同じよ!もうここへは来ないで。
一生来ないで!なんだよせっかく来てやったのに。
バカにすんじゃないわよ!私はそのまままっすぐ家に帰りました。
あなたがそのあと墓地へ行かなかったと証明する何かがあるんでしょうかね?もちろん身内の証言以外に。
私が尚美さんを殺したとでもおっしゃるんですか?いや彼の質問はあくまでも念のためです。
ですから…。
そうですか…。
尚美がそんなことを。
息子に遺産放棄をね。
廣田さんは25年も前に奥様を亡くされたそうですがこれまで心を動かされた女性はなかったんですか?いやなくはないが行動に移すことはありませんでした。
しかし若い時には一途に思い詰めた女性もおったんですがな。
奥様ですか?いや事情があって結婚はできませんでした。
はるか昔の記憶の中だけの女性ですよ。
しかし思い出の中の記憶というのは残酷なもんですな。
自分はだんだん歳をとっていくのに記憶の中の相手はいつまでも若いままですからな。
確かに。
時が経てば経つほど記憶は純化される。
だけどそれが壊されると何か裏切られたような気になる。
切ないもんですな。
あっ廣田さん。
尚美さんの芥子パールのブローチあれはあなたがプレゼントされたんですか?芥子パール?ええ。
尚美さんが殺された日バッグの中に入ってました。
あなたが贈られたものでは?いや私ではありませんがそれが何か?わりあい高額なものですし尚美さんが自分で買うとは思えなかったんで。
かなりの年代物のようでしたし。
そうですかね私には普通のブローチに見えましたがね。
で乳頭温泉まで何時間かかったんだ?阿仁合から車を飛ばして1時間40分でした。
じゃ十分可能だな小坂の犯行は。
楽勝ですよ。
じゃちょっと周辺で聞き込んでから本部のほうへ戻ります。
はい。
あぁどうも電話すみませんでした。
いやいや。
んだどもケータイが使えないっていうのはやっぱり不便ですな。
機種によってはつながるんだどもここで仕事するお客さんもいねえしな。
そらそんだ。
あぁそういえばこの間のお客さんも困ったってべな。
お連れさんとじぇんじぇん連絡がとれねえって。
この間の客って小坂のことですか?んです。
お連れさん昼のうちに殺されたの知らねえで捜しに行ったんだべ。
捜しにって?うちの別館のもんが夜見かけたらしいんだ。
あのお客さんが車で出かけていくところ。
小坂が夜ここ出たんですか?うん。
誰がそれ見たんだすか!?ちょ…この間そっだごと言わねがったべ!おめえなして言わねえのや!ほだがごと…。
いいえそんな私は別に何も。
あっちょっとお待ちください。
検事例の先生です。
えっ?あっもしもし。
警部小坂は夜に車で宿を出てます。
ん?この宿の別館の従業員から目撃証言が出ました。
駐車場を出ていく宿泊客の車を目撃してます。
時刻は?9時10分前。
車は秋田ナンバーあの日この宿に泊まった客で秋田の人間は小坂一人です。
わかった。
ようし!明日帰るそうです。
もう少し話したかったんですがね。
でも今日はまだいらっしゃるんですよね?だったら最後に会ってこられたらどうです?今度いつ会えるかわからないし次は死んじゃってるかもしれませんよ。
石森さん!うちのばあちゃんがよく言うんですよ。
人さだば会える時会っとけって。
すみません長谷川文乃さんのお部屋に。
あっつい今しがた潟分校へいらっしゃいましたよ。
潟分校?昭和49年に廃校になった小学校なんです。
その後修復されまして現在は思い出の潟分校として一般公開されています。
長谷川様はこの小学校のご出身だそうですね。
当時の姿のまま大切に保存されてると知ってそれはもう大変なお喜びようでした。
どうぞこちらですごゆっくりしていってください。
失礼します。
まぁ昔のまんま。
〜先生。
この小学校の出身だったんですね。
ホテルで聞いたの?はい。
お生まれもこちらだったんですか?父親が役場の出納係をしていたの。
今はもう親も兄弟もみんな誰もいないけど。
秋田に来たのは30年ぶり。
父親が亡くなって以来ね。
どうして今回こちらに?元気なうちにもう一度ふるさとを見ておきたかったのよ。
去年ちょっと大きな手術したもんだから。
どこがお悪いんですか?心臓。
そうでしたか。
いや気がつきませんでした。
でももういろんなこと考えさせられたわ。
これまでの人生やこれからのこと。
老いとか死とか。
そしたら急に確かめたくなったの。
私の中にあるふるさとの記憶を。
それであちこち観光を?でもすっかり変わってた。
当たり前よね。
私も変わったもの。
でもここだけは時が止まってる。
昔のままね。
ほらここに私がいるのよ。
ほら。
えっ!これ先生ですか?そうよ私よ。
でもこの写真よく残ってたわね。
ほらほら頭の毛がクチャクチャで。
ほら見て…まぁ。
文ちゃん!は〜い!よかったらどうぞ。
すみません。
今月はこれで2人目なんですよ。
この写真に写っている方がこうして訪ねてこられたの。
へぇ〜他にもそんな方が?はい。
この間来られた方はこの男の子が自分だとおっしゃっていました。
覚えていらっしゃいますか?いいえ。
西木町に住んでたそうですけど。
西木町?はい。
西木町西明寺その方はいつここへ?先週の土曜日です。
昼間ですね。
土曜…。
先生廣田という名前に記憶ありませんか?さぁ…。
そうですか。
ゆんべから帰ってねえ?ええ。
今朝こちらにお邪魔したらお母様がお一人で。
あなたは浅井尚美さんの代わりの家政婦さん?はい。
どういうわけか浅井さんの仕事はみんな私に。
まさか逃亡じゃ?せがれが俺どこ置いて逃げるはずねわ。
おがあさんせがれはゆんべの何時から帰ってねえんだ?わからねえ。
なんか心当たりはねんだが。
ほんたらもんねわ!勉…勉…。
もうやだ!浅井さんの後釜は!文乃さん!あら!あなたわざわざ来てくれたの?だってあなた明日帰っちゃうんでしょ?もう会えないかもしれないもの。
私の高校時代の同級生。
この人ね私の教え子。
こちらへ来て偶然出会ったのよ。
あらまぁ。
あなた膝が悪いんでしょ?どうやってここへ?息子に車で送らせたの。
今外で待ってる。
お近くなんですか?いえいえ米内沢です。
すると秋田内陸線の?ええ。
この間せっかく文乃さんに来てもらったんですけどね孫がうるさくてなかなか話ができなくて。
これ荷物になると思ったんだけど秋田のお漬物。
まぁどうもありがとう。
それからこれね。
私趣味で編んだんだけどよかったら着てもらえない?カーディガン。
だってあなたこの間上着破いてたでしょ。
ほらここんとこ。
破けてたじゃない。
あれどうした?うんあの…しまってあるわ。
東京へ帰ったら直しに出すの。
じゃあ新幹線の中でこれ着てよ。
ありがたくいただくわ。
今日で最後かもね。
もうこっちへは来ないんでしょ?どうかしら?来ないわよ。
これまでだって来なかったじゃないの。
達者でね。
あなたもね。
すみません!ちょっとすみません。
つかぬことを伺いますが長谷川先生があなたを訪ねたのはいつですか?先週の土曜日ですけど。
何時ごろ?4時ごろです。
朝の電話じゃ2時ごろだって言ってたんですけどね。
急行で行くからって。
でも乗り遅れたみたい。
はい。
検事すぐに戻ってください。
小坂が死体で発見されました。
小坂の死亡推定時刻はゆうべの9時から11時です。
家を出たあとどこかで殺されたんでしょうな。
しかしいったい誰に?小坂は尚美が殺された日の晩あの宿を抜け出してるんです。
尚美の遺体をこっそり捨てに行ったと確信したんですがね。
大沢さん。
あなたに調べてもらいたいことがあります。
大至急!まさかなぁ…。
検事何考えてるんですか?どうして大沢さんにあんなことを…。
検事。
〜朝の電話じゃ2時頃だって言ってたんですけどね急行で行くからって。
でも乗り遅れたみたい息子に遺産放棄させんのよ。
じゃなきゃあのじいさん死んでも財産私の自由になんないでしょパールのブローチ…本物の?だってあなたこないだ上着破いてたでしょ。
ほらここんとこはい。
検事廣田はやはり潟分校の出身でした。
事件のあった昼間廣田が車で向かった先は潟分校です。
それから廣田は秋田の研究所に入る前東京の大学の研究室に所属していました。
その大学は検事の中学校のすぐ近くつまり長谷川文乃の職場のそばです。
秋田に来てからの文乃が廣田を訪ねなかったかという点ですがこれに関してはまだわかりません。
しかし廣田が潟分校を訪ねたのはやはり文乃との再会があったからじゃないですかね。
どうもご苦労さまでした。
〜そうですかね…私には普通のブローチに見えましたがね〜長谷川先生。
どちらにいらっしゃるんですか?荷物を預けて。
あの最後にもう一度潟分校を見ておこうかなと思って。
じゃあ私の車でお送りしましょう。
いいのよここで。
いや先生送らせてください。
ぜひ。
〜さぁどうぞ。
(バイブ音)潟分校。
(エンジン音)行きましょう。
はい。
わかった。
長谷川文乃は今近松検事と一緒です。
先生にとっての潟分校は単に思い出の小学校…ではないのかもしれませんね。
とても大事な人との最初の思い出の場所ではないんですか?そのとおりよ。
生涯でただ1人好きになった人がこの小学校の出身だったの。
不思議な縁ね。
彼とは28の時に再会したの。
彼は近くの大学の研究室にいた。
私は中学校の教師だった。
そして私の担任でした。
出会ってすぐお互いにわかったわ。
秋田の潟分校の出身だって。
彼は小学校を卒業すると秋田市内に引っ越したからその後の接点はなかったけどとても頭がよかった男の子のことを私は覚えてた。
再会した頃彼は秋田の企業の研究所に入ることが決まってた。
秋田の研究所ですか?えぇ。
秋田の両親のためにそういう決断をしたのね。
でもそこには許嫁が待ってた。
初めっから障害があったのよ。
悩んだのよ彼も私も。
だってどうしようもないくらい惹かれあってたんですもの。
やがて彼は決断したの。
すべてを捨てる覚悟で婚約を解消するって。
でもその時気づいたのよ。
私がそれを受け入れることはたくさんの人を傷つけるんだって。
〜後悔はなかったわ。
私には教職の道があったから。
これでいいんだって…。
でも人生の終わりを自覚したときにこれでいいんだろうかって…。
その決断が正しかったかどうか確かめたくなったの。
彼は幸せかしら…。
秋田へ来て両親のお墓参りを済ませたあとすぐに彼の家を探したの。
私は今ただの旅人。
たとえ彼の家族に不審がられても旅の途中だと言えばトラブルにはならない。
そんな気持でチャイムを押したのよ。
何?保険屋さん?いえ…あの廣田さんは?カズちゃん!誰か来たよ。
あぁ。
誰だ?文乃です。
あぁ…。
誰?ああ…ご飯ができてるから先に食べちゃいなさい。
すまなかった。
あまり突然だったんでちょっと…。
あの方どなたなんですか?家政婦だよ。
あなた家政婦さんにご飯作ってあげてるんですか?奥様はどうされたの?ずっと昔に死んだ…。
あらそう…。
それであんな…。
キミはなぜ私に会いに来たんだ?今さら何を…。
両親のお墓参りのついでに。
お元気ならそれで…。
じゃあ私…。
あのちょっと寄るとこがありますから失礼します後悔したわ。
とっても。
会わなきゃよかったって…。
翌日米内沢の同級生を訪ねたのは当初の予定だったんですか?秋田に着いたとき電話をしたの。
土曜に行くって。
電車は1日に1本の急行ですね。
近いうちにさそのじいさんの養女になるのよねあんなことってあるのね。
あの人がいたの。
同じ電車に。
連れの女性とずっとしゃべってた。
息子に遺産放棄させるのよ。
じゃなきゃあのじいさん死んでも財産私の自由になんないでしょ?驚いたわ。
この人はそんなつもりで彼に近づいたのかって。
他にもいるの?今夜そいつと乳頭温泉で会うことになってんのよね信じられなかった。
彼がこんな人といるなんて。
でもやっぱり本命はあのじいさんだよね。
土地を含めた財産が1億もあるんだって何とかしなきゃって思ったの。
このままじゃ何かひどいことが起こるような気がしたのよ。
尚美さん…その人たちは阿仁合の駅で降りたわ。
気づいたら私も降りてた。
兄はあなたに殺されたも同じよ。
ここへは来ないで。
一生来ないで!なんだよ。
せっかく来てやったのに。
バカにすんじゃないわよ!声をかけなきゃ…何度もそう思った。
でも何を言えばいいか…。
考えてるうちに墓地に出たの。
あんた昨日の…電車の中での会話を聞いたって正直に話したわ。
もし財産目当てなら別れてほしいって。
でも彼女ははじめからイライラしてケンカ腰だったわ。
ふざけんじゃないわよ!あのじいさんと私がどうしようとあんたに関係ないでしょ!こんなとこまでつけてきていったいどういうつもりよ!ちょっと聞いてちょうだい。
あなたのためにも廣田さんとは別れてほしいの。
人の財産をあてにしたり人の好意を利用したりするのはあなたこの先…。
言っとくけどね!私を養女にって言いだしたのはカズちゃんのほうだからね。
それを私がそそのかしたみたいに…。
あそっか。
あんた私にやきもち焼いてんだ。
カズちゃんの昔の恋人だもんね。
そんなこと言ってるんじゃないのよ。
私は彼をおとしめるようなことはやめてほしいってお願いしてるのよ。
いい歳してみっともないよあんた。
わかる?あの人はきちんと生きてきた人よ。
あなたにはただの年寄りに見えるでしょうけれどあの人はとっても優秀な人なの。
そんな人を…。
そんな人が今は私に首ったけなんだよ。
ほら見な。
ちょっとエッチなのもあるよ。
ほら。
ちょっと…。
ほら。
ほら見なって。
ほら!これがあんたの彼氏の40年後の姿だよ!ほらほらほら!あっ!見たくなかった。
見たくなかったのよ。
他に理由はないわ。
ただ気づいたらあの人…。
何が起きたのかすぐには理解できなかった。
あの人死んでた。
そのときケータイが鳴ったの。
もしもし尚美。
月曜のことだが予定を変更してくれないかな。
ちょっと一人で考えたいことがあってなあの人の声だった…。
若いときのままの彼の声…。
不思議ね。
声は変わらないのよ。
声だけは…。
もしもし?聞いてるのか?もしもし?電話を切って遺体を林の中へ隠してそれから多恵さんの家へ行った。
そして角館へ戻ってレンタカーを借りて…。
そして乳頭温泉へ運んだの。
先生が運んだんですか?他に誰が運ぶのよ。
廣田さん…どうしてここへ?刑事さんに私が頼んだ。
逮捕される前にあなたに会いたくて。
逮捕?浅井尚美死体遺棄容疑および小坂勉殺害容疑です。
この人何もしてませんよ!ねえ何とか言ってちょうだい。
私罪を認めたでしょ。
ねえだからこの人関係ないって言ってちょうだい。
文乃さん。
もういいんだ。
検事さんは何もかもご存じだ。
そうですね。
きっかけはブローチでした。
あれは尚美さんのものではない。
先生あなたのブローチです。
それが尚美さんのバッグの中に入っていた。
あのブローチを見たときなぜかとても懐かしい気がしました。
初めは気づかなかった。
でも思い出しました。
私が中学卒業のしばらく前から先生はいつもずっとあのブローチを胸につけていらした。
あれはもしかすると廣田さんが贈られたものではありませんか?それなのに私は気づかなかった。
あのとき尚美のケータイにつながったにもかかわらず相手は何も言わない。
だからすぐに異変を感じた。
もしもし?尚美じゃないのか?もしもし?誰なんだ?答えなさい!もしもし?文乃です文乃さんは震える声で事実を伝えてきた。
私はあまりのことに言葉もなかった。
私はこれからすぐ警察へ参ります。
あなたにご迷惑はかけません。
ダメだ文乃さん。
それはダメだ。
あなたはすぐそこを立ち去りなさい。
後始末は私がする。
いやこれは私と尚美の責任なんだ。
だから行きなさい。
いいえそんなことはできません。
死体はすぐ見つかります。
あなたが来る前に。
それならそれでいいんだ。
あなたがそこにさえいなければいいんだ。
だから行ってくれ。
頼むから行ってくれ。
文乃さんあなたの人生にとって今まで汚点は一つもなかったんだ。
それなのにここにきて…この結末は私は我慢ならん。
あなたは私にとって大事な思い出の人なんだ。
いや愛とは言わん。
恋とも言わん。
しかしあなたは私にとってかけがえのない人なんだ。
頼むから…頼むから行ってくれ。
頼む…頼む!墓地の場所を聞き急いでそこに向かった。
遺体は林の中に隠されていた。
尚美…ブローチはてっきり尚美のものだと思った。
だがあれは私がキミに贈ったものだった。
それを思い出したのは検事さんからあれは尚美が買ったものではないように思うと聞かされたときだった。
うかつだった。
私は…。
すまなかった。
遺体を乳頭温泉に運んだのは尚美さんがそこで別の男と待ち合わせていたと聞かされたからですか?それが間違いのもとだった。
私が乳頭温泉で尚美の死体を隠しているときに小坂が私の車を見たらしい。
私も小坂もお互いのことは知らなかった。
しかし尚美の代わりにやってきた家政婦から私のことを聞きもしやと思ったらしい。
帰れ!待て!あれはお前の車だった。
表にある車とまったく同じだからな。
お前だろお前が尚美をやったに違いないんだ!同じ車ならいくらでもあるだろ。
いやねえよ。
尚美と関係した男の車はな警察に訴えると彼は言った。
車を見たと訴えるのではなく私を見たと訴えるんだと彼は言ったんだ。
でもそれはウソだ。
だがウソをついてでも私を死刑にしてやると彼はわめいた。
絶対に死刑にしてやる!それが俺の尚美への愛情だどうしようもなかった。
どうしようも…。
私のためね。
私は自首するつもりだったのよ。
なのに…。
会うべきじゃなかったのね。
私のわがままだったんだわ。
それがいけないことだろうか?私はあなたとの思い出を美しいと思っている。
さようなら。
先生。
あなたはどんなときも正しい道を選択する人でした。
情に流されず常に正しくあり続けようと努力されてた。
そんな人を最後にこの手で裁きの場に送らなければならない。
できるなら私はその役目を…。
近松君。
あなたは自分の職務を全うすべきよ。
私の教え子ならそうすべきよ。
検事。
東京の奥様ならこれでしょ。
いやこっちじゃないでしょ。
絶対こっちですよ。
いや私の妻ですから。
へば私に聞かねえでけれよ。
一応あなたも女性ですからね参考にと。
一応って何だべ?一応って何だべ!?すみませんこれください。
ちょっと待って!実はね…。
えっ?何ちょっちょっと…。
何ですか?見せてくださいよ。
見せないね。
ケチ!あれでしょ私が言ったの買ったんでしょ?とんでもない。
あれは買ってない。
なんだかんだ言いながら…。
2014/12/14(日) 11:00〜12:54
テレビ大阪1
日曜サスペンスドラマ「捜査検事 近松茂道14 秘湯・乳頭温泉に消えた女」[字][解]

秋田の乳頭温泉で女の変死体が発見される。捜査検事の近松は遺体の所持品に注目。それはやがて“再会”が呼び起こす悲しい真実にたどり着く…。

詳細情報
番組内容
秋田に赴任してきた捜査検事の近松は、視察先で中学時代の担任・文乃と再会する。そんな中、乳頭温泉で女の変死体が発見されたと連絡を受け現場へ急行。近松は女の所持品に目を留めるが…。女は家政婦の尚美で、派遣先であり当日一緒に宿に泊まる予定だった小坂や尚美と養子縁組の話が進んでいた廣田に疑いがかかる。だが二人とも死亡推定時刻にはアリバイがあった。
出演者
近松茂道…高橋英樹
長谷川文乃…若尾文子
廣田和之…山本學
石森温子…安達祐実
大沢徳二…六平直政
浅井尚美…黒坂真美
小坂勉…春田純一
横山多恵…長内美那子
小坂富子…大方斐紗子
林芳江…風祭ゆき  ほか
原作脚本
【原作】高木彬光
【脚本】坂上かつえ
監督・演出
【監督】岡屋龍一

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
解説放送あり
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
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